行政サービス切り捨ての行革は即時中止を
--「行革大綱」決定にあたっての談話--
 本日、政府は、「行政改革大綱」(行革大綱)を閣議決定した。5年ぶりとなる「行革大綱」は、その経過からも明らかなように、政権与党である自公保3党が、来年夏の参議院選挙を強く意識されたものである。その内容は、1997年12月の行政改革会議最終報告や、それにもとづく中央省庁等改革基本法を下敷きに、2005年度までの5年間に「集中的・計画的」に実施する「改革」事項を列記している。
 それだけに、国・地方の行政組織・制度の「改革」を「隠れ蓑」に、社会保障や教育、環境などの公益(公共性)を破壊し、弱者を切り捨て、経済的な価値を最優先する「小さな政府」・社会システムへの「改革」をめざすものとなっている。
 そこには、この間の行政組織・制度の「改革」によって、雇用の不安定化や労働条件の切り下げに怒り、おびえている労働者や、年金、医療、福祉などの社会保障制度のあいつぐ改悪で将来不安を高めている国民、さらには「自由かつ公正」な経済社会を口実に強行される規制緩和に苦しむ中小零細事業者や農民、などに目をむける姿勢は全くない。
 国公労連は、そのような「行革大綱」に、強く反対の意思を表明する。「行革大綱」の撤回、それにもとづく諸制度改悪等に反対し、来るべき2001年春闘での最重点課題としてたたかいを展開する決意である。

 今回の「行革大綱」は、次の点で、中央省庁等改革基本法などをさらに具体化する内容となっている。
 一つは、特殊法人のすべてについて、廃止、整理縮小・合理化、民営化、独立行政法人化などの「措置」を内容とする計画を策定し、遅くとも2005年度までに個別の法制化もすすめるとしていることである。財政投融資や公務員制度のあり方などともかかわって、特殊法人が様々な問題を有していることは否定できない。しかし、その事業の公共性などを検討しないままに、一律的な基準で廃止等を強制することは公共性の否定にほかならない。
 二つには、国家公務員制度等の抜本的「改革」を行革の主要課題として取り上げたことである。特に、「政治主導」の行政運営を確立するために、成果主義・能力主義に基づく信賞必罰の人事制度の明確化や、「大臣スタッフ」を公務の内外から採用することなどは、公務員制度の基本である政治的中立性を損なう重大な問題である。
 また、級別定数や機構・定員を、各省大臣が、総人件費・総定員の枠内で弾力的に運用する方向も打ちだされている。労働条件と密接に関わる制度見直しであるにもかかわらず、労働組合や職員の存在はかえりみられていない。「行革大綱」の非民主性は、この一点からも明らかである。
 さらに、「再就職(天下り)」の「厳格な規制」を掲げながら、「省庁関与の再就職」を公然と認め、特殊法人への「役員出向制度」創設を打ちだすなど、「政官財」の癒着を温存しようとしていることも見過ごせない。
 三つには、市町村の合併について「自治体数1000」を目標にかかげ、強力に推進することを宣言していることや、地方財政の「自己責任の拡充」を求めていることである。実施事務を自治体に押しつけながら、財政面での国と地方の関係を見直さないことで被害を受けるのは地域住民である。行政サービスの後退をさらに加速することが「地方分権」であってはならない。
 四つには、中央省庁改革の「的確な実施」として、社会保険・労働保険事務の一元化などにふれていることである。高齢者の年金、雇用対策、生きがい対策をあわせた施策の展開などが宣言されていることとあわせ、発足する厚生労働省での労働行政の後退が危惧されるものとなっている。
 また、国立病院・療養所を単一の独立行政法人とする法案を2002年通常国会に提出することを宣言し、国立大学や「執行事務」についての独立行政法人の引き続く検討にふれている。「執行事務」への外部委託の導入の強調とあわせ、行政サービスの徹底した「減量化」を集中的にすすめることでの社会的な弊害への配慮は、無視されたままである。
 五つには、規制緩和について、「あらたな3カ年計画」を2000年度末までに策定するとしていることである。雇用や労働、教育、環境など社会的規制にまでふみこむ緩和が、国民生活を不安定化させている現実に目を向けていない。

 社会保障制度を次々に切り下げながら、公共事業のばら撒きをやめようとしない政府に対する国民の不信を逆手にとって、行政実施部門の「減量化」や公務員制度の改悪を「改革」と言いくるめることは断じて認められない。臨時国会終盤での政局にもみられた自民党政治の行きづまりを打破するために、集権的・強権的な行政システムの「改革」をすすめようとする党利党略の「改革」は、国民全体の利益にはならない。
 今、多国籍大企業やゼネコン、銀行など特定の利益を最優先し、国民全体の利益を軽視して、教育や医療の実施まで国の責任をなげすてる「改革」への国民の批判が日に日に高まっている。そのような国民世論と国公労働者との共同を一層拡大し、強固なものにするため、国公労連はあらたな決意でたたかいを展開する。道理も大儀もない政府の行革攻撃に反撃するたたかいに、すべての国公労働者の結集を強く呼びかける。   
   2000年12月1日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  小 田 川 義 和

トップページへ  前のページへ