日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員長 堀 口 士 郎
現在、貴本部において、政府が、昨年12月1日に決定した行革大綱にもとづき、公務員制度改革などの論議が進められていると承知しています。 橋本行革担当大臣が各方面の講演等で述べているところでは、公務員制度改革について、本年3月までにも「抜本改革」の大枠を固め、6月までには基本方針を固めるスケジュールが想定されていると考えます。 公務員制度「抜本改革」の具体的な検討課題については、現時点で明らかにされていませんが、行革担当大臣の講演等から、1)信賞必罰の人事管理システムへの転換、2)企画部門と実施部門の分離とそれぞれに見合った制度検討、3)事後規制型の「天下り規制」、4)公務員制度の運用にかかわる中央人事行政機関の関与・規制の見直し、などが検討されていると推測しています。また、政権与党である自民党における検討状況もあって、公務員の身分保障規定や労働基本権の問題も検討課題となる可能性もあると考えています。 公務員制度は、任用や服務などの規定により、憲法が規定する「全体の奉仕者」としての公務員の基本的性格を担保するものであると同時に、公務員労働者にとっては労働条件の基本を定めるものです。それゆえに、具体的な検討課題と推測される事項は、「民主的かつ能率的な公務運営」(国家公務員法第1条)と密接に関連する「公務員の政治的中立性」にかかわるものと同時に、労働条件決定に当たっての現行「ルール」である勤務条件法定原則に直接関連する課題だと考えます。 そのことからして、公務員制度改革では、広範な国民的な論議と同時に、当該の労働者である国家公務員労働者との間での十分な協議が求められるものと考えます。また、公務員制度にかかわっては、1996年以来の行政改革でも論議になり、専門的な検討機関が設けられるとともに、任用、再就職規制、服務(倫理)などでの新たな仕組みや独立行政法人制度も導入されています。そのような経緯にそった検証も必要だと考えます。 以上のような立場から、下記事項を申し入れ、貴職の誠意ある対応を強く求めます。 記 1 公務員制度改革の検討に当たっては、国民的な批判が集中している「政財官ゆ着構造」を是正することを最優先にすべきです。 その点では、省庁権限を背景とする営利企業への再就職斡旋の禁止、国家公務員の政治的中立性の確保、公務員労働者の市民的自由の確立などの検討が求められていると思います。 2 一般職国家公務員にかかわる身分保障は、全体の奉仕者である国家公務員の政治的中立性の担保であることを確認した上での検討が求められます。 その点からして、企画立案部門での人材登用や大臣スタッフの充実といった施策の検討では、特別職公務員と一般職公務員の差異についても検討すべきです。 3 身分保障にかかわりなく、国家公務員労働者の労働基本権を回復することでの検討が必要です。 公務員労働者の労働基本権を一律に制限することは、国際労働基準に照らしても問題です。加えて、人事管理や定数(給与)にかかわる人事院の関与を事後的チェックに改めるとする検討が行われるならば、労働条件決定での労使自治を保障する観点で、労働基本権の回復を前提とするあらたな労働条件決定システムが検討されなければならないことは当然です。 4 行政に対する多様な国民ニーズを行政施策に反映するためにも、企画立案と執行を分離することには反対です。 その立場からしても、現在以上に、独立行政法人の対象事務・事業を拡大すべきではありません。そもそも公務員制度の面から独立行政法人の拡大などが検討されることがあってはならないと考えます。 5 貴本部での検討に当たっては、国公労連の意見を反映するための場の設定など、具体的な対応を行うことが必要だと考えます。 (以 上)
記
(以 上)
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