国立研の行革問題で科技庁交渉

【国公労連「行革闘争ニュース」98年8月21日付より】


 国公労連研究機関対策委員会と学研労協で構成する国立試験研究機関全国交流集会実行委員会は、8月19日、科技庁川上行革担当室長と交渉を持ち、中央省庁等改革推進本部の作業状況、国立試験研究機関のまとめ役としての科技庁の対応方針、組合の主張する国立研の形態を維持しての改革要求に対する考えについて質しました。

<科技庁の回答>
  1.行革推進本部の作業状況

作業をどう進めるかは、推進本部、事務局が描いて進める。8月4日に、立案方針の事務局原案が出され、9月末には、立案方針の本部決定がされる。11月下旬には大綱の事務局原案が出され、1月に本部決定され、4月頃、法案・計画の決定される。立案方針の事務局原案は、若干踏み込んだものもあるが、かなりのものは中央省庁等改革基本法と、行革会議最終報告をなぞって今後の検討課題を整理したもの。各省には、検討・具体化は求められているが、原案へのコメントは求められていない。顧問会議で意見を聴取し、若干の変更の上、本部決定される。

 国立研については、議事録でははっきりと出ていないが、12日の顧問会議で、佐藤幸治顧問が、「基本法では3年から5年という期間で業務の評価がされるが、研究機関ではその期間で成果が出ないこともある。柔軟性が必要だ」という発言をされている。国立研の特徴を踏まえた検討がしていただけると考えており、具体化に期待をかけたい。

 スケジュールについては、独立行政法人についてどのようなことが書かれるかだが、来年4月には法案と計画の2本が決定される。計画のうち独立行政法人化計画は、国のどの組織か固有名詞をあげ、どういう時期に独立行政法人化するか、そのために法整備する、などが盛り込まれる。例えば、国立○○病院について、2001年10月1日に独立行政法人化する、そのため、2000年の通常国会に個別の独立行政法人法を提出し、成立を期す、という形だ。

 対象期間については、事務局原案は、行革会議最終報告の別表1の機関に加え、書かれていないものも広く検討対象にあげるとしている。該当機関、属する省庁の意見を聞いて欲しいとのことだが、該当機関だけでなく、各省庁の意見もぜひ聞いて欲しいと希望している。各省庁で、何らかの意見打診や議論が行われていると思う。労働組合との関係も最終報告にも、法律にもで良好な労使関係に配慮すると特段に書かれている。

   2.科技庁の対応方針
 科学技術会議政策委員会が出した中間とりまとめについては、当庁として、科学技術会議は科学技術界を代表してものを言うべきと考え、4月から本会議で自由討議し、7月から政策委員会で議論してきた。科技庁は、科学技術会議の庶務担当として機能を発揮し、推進本部にも意見が組み入れられるように、科技庁として述べている。

 科技庁の考えは、国立研は科学技術政策の中核と位置づけている。諸外国に比し、公的な研究機関の研究者の人員は少ないのが問題。国立研が行革の中で対象にあげられているが、単にスリム化でなく、大きな役割、有用な成果を出していくよう見直しがされるよう努力する。細分化されているもの、小規模なもの、重複している機能は統合しながら規模を拡大し、自由かつ競争的な環境の中、効率、効果的で、ダイナミックに研究を進められるようにと考えている。

 独立行政法人は、その中で考えられ、単にスリム化で国の組織の外に出すのでなく、自由、柔軟性を持ち、国の定員管理、会計上の制約から離れ、より研究のしやすい方向で制度が組まれることを希望し、前提として考えている。目標の設定や評価の期間については、ルーティンワークをしている他のところと違う国立研の特徴を踏まえ、まったく違うものにすべきと考えている。独立行政法人は、規模、資金(国がほとんど継続的に手当)、会計制度(柔軟な使い方ができることが必要)、身分、外部資金を中心に、科技庁として推進本部に議論を仕掛けている。

 省庁を超えた再編については、規模の問題、また研究開発を効率的効果的なものにするために、再編すべきものは再編すべき。

 国研協(国立研究機関長協議会)の意見書は2回にわたって出されている。現場の声として推進本部に紹介した。

   3.組合の主張に対する考え
 研究者、支援部門の大幅増員という主張はまったくその通りだ。現在はその主張を総定員法の枠内でやっている。支援職員についても、科学技術振興事業団の制度を新しく作って措置している。予算についても、どう柔軟化するかが課題だが、制度官庁の壁にあたっている。柔軟化せよと言うと、制度官庁は、独立行政法人に移って柔軟化してはどうかと切り返してくる。

 諸外国にも国立研に類するものもあるが、アメリカでは国が設立し、運営は民間というのもある。ドイツでは、公益法人であるマックスプランク協会があり、いろいろな形態がある。身分についても、国家公務員であったりなかったりだ。諸外国の例ももちろん研究しているが、諸外国がこうだから、国立研でなければならない、国家公務員でなければならないという議論にはならない。一方で諸外国の国立研は遙かに大きい。また、マックスプランク協会などは、科学技術行政の中心になっている。ぜひこうしたことを参考にしてもらいたいと、事務局には言っている。

   4.総合科学技術会議について
 内閣府は省庁より一段高い位置になる。そこに置かれる総合科学技術会議は、政策の基本、国家プロジェクトの選択、実施戦略、研究開発投資17兆円計画の次の目標などを立案することが任務となる。事務局は、内閣府に置かれ、研究者、民間、大学などから優秀な人を集めることになろう。

<やりとり ○国公労連・学研労協 ●科技庁>
○通則法はどんなものになるのか?
●推進本部は、いろいろ気を使っているようだが、中身はなかなか教えてもらえない。科技庁として、国立研の特徴を生かすため、組織的柔軟性、目標の設定、評価の対象期間(5年までに区切らず10年にするなど柔軟に)、資金は国がほとんどのものを継続的に支出(運営費、投資的経費、外部資金も導入)といったことを述べている。

 検査検定、病院、国立研と対象が様々ある中で、具体的なものに深入りすれば、対象によって違いがでてくる。具体的なものに深入りしないで1本でいくか、そうでなく特徴を踏まえ何本立てかでいくかははっきりしていない。一番好ましくないのは、国立研をらち外において、ルーチンワークを行なう機関、手数料収入がある機関を対象に書かれることだ。国立研を独立行政法人化する上で大事な点を整理し、ポイント踏まえてはなしていこうと考えている。独立法人になっても困らないものにすべきで、組合の出しているアピールや要望をなるべく踏まえているが、現場で研究を長くやっている人の意見を聞きたいので、他にあれば言ってほしい。

 科技庁は、国立研の窓口となっていない。所属する省庁ごとに議論し、事務局に意見をあげている。科技庁は、国立研全体のことを考えて訴えているが、科技庁も推進本部にすればワン・ノブ・ゼムだ。省庁を超えた統廃合は思惑が対立しており、科技庁が中心だと反発がある。当庁は、国立研の性格が幅広いことを踏まえ、全体がうまくいくよう考えているが、すべては推進本部が取り仕切っている。

 事務局長は、前行政管理局長の河野さんだが、次長のうち新日鉄出身の技術屋の杉田さんが業務の合理化合理化、整理、見直しを担当している。その下に、独立行政法人、業務・組織の減量化・効率化等の担当がいる。杉田次長に対して、国立研の重要性を述べ、今よりもいいもの、研究がやりやすいものになるようにと、アポなしで話を聞いてもらっている。次長には理解してもらっていないわけではない。筑波の現場も見てもらう話も途中まで進んだが、推進本部の会議が入り、流れてしまった。しかし、推進本部全体は手探り状態で、どうなっていくか予断を許さない。

 通則法は、原案を各省庁と顧問会議に同時に示し、事実上、各省庁が意見を言えないまま決められることもあり得る。

(身分・定員問題)
○身分問題についてはどう考えているか?
●身分問題は難しい問題だ。今後の議論の中で探っていくことになる。総理は公務員の20%削減を打ち出し、そのうち10%は独立行政法人化で行うとしている。それが、国家公務員タイプか非国家公務員かだが、研究をやるにあたり、兼業、裁量、昇進なでど、現行の仕組みが障害となっている面がある。それが国家公務員という名称の中で改善できるかで、国家公務員型か非国家公務員型かが判断できるのだと思うが、我々として触れかねている。身分問題については、行革会議の中でも芦田さんが強く言った問題だ。しかし、具体的な違いがどこにあるのかよく分からない面がある。

○全体の奉仕者である国家公務員が研究をやるから、環境技術、基礎研究、知的基盤など、パブリックセクターでしかできない研究ができるのではないか。
●独立行政法人も根っこは国にあり、国が資金を税金の中から出していく。国の資金でも外部委託もしており、税金を使えば全部公務員という議論にはならない。税金を使って研究をするということは絶対失ってはならないと言うことは、行革会議も推進本部も異論はない。独立行政法人があり、特殊法人があり、国から委託を受けた民間があるという状況で、どこで線を引くか非常に難しい。特に、特殊法人と独立行政法人は、どちらも国が丸抱えにする。安全の研究で、国家公務員がやるのはベターだというのは分かるが、絶対に国家公務員でないとだめと言えるかだ。

○国家公務員のプライドがあるから、地道な基礎研究に取り組めている面もある。
●第3回の顧問会議でも同じような問題が指摘された。国立でなくなると格落ちするという議論で、モラルを落とすという議論だ。そこでは、1つは、公の機関であることを明らかにする、第2に、制度と名称は別で、独立行政法人でも国立○○研究所であってもいい、ということが言われている。明らかに公の仕事として、公的法人で働いているのだから。国家公務員型か非国家公務員型かは、争議権のあるなしの違いしか明示されていない。

○国の組織として柔軟化すればいいのではないか?

●それを逆に言えば、ゆるくしていったら非国家公務員型との違いはどこにあるかという議論になるのではないか?

○身分の問題は9月ぐらいにははっきりするのか?
●推進本部が何を考えているかだ。えいやっ、とやってしまうこともある。理研、原研の職員も研究者の良心で研究をしており、あまり国家公務員型か非国家公務員型かで色分けされるのはどうか。動燃の問題は、あの組織のいい加減な体質の問題で、身分の問題ではない。

○身分保障の違いは大きい。業務の廃止もあり得、整理解雇がされる危険が生じる。
●組織がなくなれば労働慣行として、再就職斡旋をしている。国家公務員の場合も組織の廃止の場合は人事院規則上免職もあり得るが、その前に異動先を斡旋することになっており、実際に整理解雇された例はない。しかし、現在の国家公務員の場合でも、今後10%削減となると機関の整理の場合の免職を適用しなければならないかも知れない、と人事院がうちの課長にいっており、現在の国家公務員も安泰ではない。独立行政法人化するところへインセンティブを与え、国として残るところはつらくするという考えがある。科学技術予算は伸びており、その流れに乗り、独立行政法人化し、定員・予算を増やすことができると考えている。

(各省横断の政策調整)
○昨年の経団連の提言を見ても、今の仕組みでは、財界が国立研を使いにくいから独立行政法人に変えるのではないか?
●財界だけではないかもしれない。政策をもっと反映させたい、もっとスピードを持って新しい問題にとっかかっていける体制という点で、例えば環境ホルモンについても問題が発生してすぐ、あるいは問題化する前に国立研が取り組むということ。各省の付置機関では柔軟に対応できない。役所から距離を置いて新しい問題に取りかかれるようにした方がよい面もある。森林総研の方がいわれた環境問題でも森林だけでなく、農地や都市など全体の問題に広がった取り組みの方が本来あるべき姿ではないか。環境問題があるなら環境担当省庁から資金を受けて研究するとか。

○経常研究費の問題は?
●日経新聞の編集委員と話したが、彼が、独立行政法人になったら経常研究費がでなくなるのではないか、経常研究の積み重ねが重要だが、独立行政法人になったらプロジェクト研究ばかりになってしまわないかと心配していた。その心配は当然だが、独立行政法人化で経常研究費が全部認められなくなるわけではない。研究の重層構造の重要性を認識してもらい、配分してもらうことがなくなってはならないということは訴えていくポイントだ。必要という認識は皆持っている。

○国立研が独立行政法人化された場合、どこが横断的な政策を持つのか?
●教育科学技術省が基盤整備、横断的な施策をやれれば経常研究費は排除されない。国立研だから経常研究費があるのではなく、予算制度としてある。科技庁がやっているような横断的な政策がなくなったらだめだ。産業、農業と全部国立研がバラバラなだけなら駒としか扱われない。総合科学技術会議は、アメリカの大統領府に近い国政上重要な事項の総合調整を行なう内閣府に置かれるから、細かいことはやらない。全米科学財団的な機能を担うことも否定されている。おそらく教育科学技術省がそうしたことは取りまとめることになる。

○省庁を超えた再編はどう考えているか?3月に科技庁振興局長の私的諮問機関が、統合再編して大きな研究機関を作るという構想を発表したが?
●そういうことは考えている。しかし、当庁も国立研を持っている省庁の1つに過ぎず、なかなか聞いてもらえない。行革会議最終報告では再編が打ち出されたが、実行の段階で今まで通り各省庁の枠組みでということで終わってしまう。現場の研究者の問題意識は、もっと広い研究の組織化をやってみたいということだと思う。むしろ国立研の現場の人たちの意見を我々は聞きたい。省庁を超えた再編をやるなら科技庁をずたずたにすると複数の省庁からいわれている。

○科技庁はどんな再編を考えているのか?
●研究現場では、学問の分野でまとまるだろう。生物バイオ、地球、環境、情報、電子・電機、材料など。構想は当庁で何回も議論している。10数省庁を敵に回すことになりつらい立場だ。推進本部に仲人をしてもらえればいいが、仲人が仲人としてうまくいくのは、双方が乗り気の場合だけだ。ここは研究者が声を上げてほしい。あまりに議論がなさ過ぎる。研究者の声を広げていくのが重要だ。

 その他、科技庁側は、ヒヤリングに提出しス資料の公開は検討すると回答しました。国公労連・学研労協は、最後に、必要な時期に労働組合の声を聞くよう要求、科技庁側もその要求に同意しました。


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