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本日、政府は、中央省庁等改革(行政改革)にかかわる17本の法律案(内閣法改正法案、独立行政法人通則法案など)と、「行政減量化計画」などを内容とする「中央省庁等改革の推進に関する方針」(推進方針)を閣議決定した。同じ日に、新ガイドライン関連3法案にも見られるように、いま「この国のかたち」を強引に変えようとする動きが激しくなっている。それは、戦後の憲法がめざした平和国家、福祉国家の解体・縮小をめざしたものである。決定された「行政改革関連法案」は、そのような「構造改革」の体制作りであり、推進の突破口と位置づけられるものである。我々は、行政の変質とリストラ「合理化」をともなう「行政改革関連法案」とその「推進方針」にあらためて反対の意思と、法案成立・具体化をゆるさないたたかいに全力をあげる決意を表明する。 決定された法案は、中央省庁等改革基本法の枠組みもこえて、首相への権限集中による政治軍事大国化と新自由主義による行政変質、行政実施部門の切り捨てをさらにすすめる内容となっている。法案の問題点は、次の点に特徴的にあらわれている。 一つには、首相権限の強化にかかわって、首相の発議権にくわえて、内閣が国民主権を直接的に代表するかの規定を盛り込んだことである。新ガイドライン法のように、内閣に国民の基本的人権の制限さえ「白紙委任」する法律が制定されようとしている今、そのような内閣法の規定が「内閣の独走」につながる危険性を強く指摘せざるをない。 二つには、経済財政などの重要施策の企画・立案が機能が集中している内閣府に、内閣の補佐機関として大きな権限が集中している。経済・財政方針や税制などの基本方針決定を 民間企業の利益代表者等で構成されると思われる「合議機関」にゆだねることで、国民生活に直接影響する施策が、これまで以上に財界よりに決定される仕組みが出来たと言わざるをえない。 三つには、各省の任務等にかかわって、見過ごすことの出来ない点が多数含まれている。それは、1)法務省の所掌事務として「司法制度に関する企画立案」が明記され司法への行政の介入が強まることが危惧されること、2)経済産業省の任務に「民間経済活力の向上」を盛り込み、所掌事務に「経済構造改革の推進」を規定するなど、規制緩和を軸とする「新自由主義的政策推進省」としての位置づけを明確にしたこと、3)厚生労働省の任務に、「国民生活の安定」や「労働者の福祉」の言葉が欠落し、経済施策の観点からの行政任務規定に変質していること、などの点である。 これらのことからして、あたらしい各省の主要な役割が、いわゆる「6大改革」推進であることは極めて明白と言える。 四つには、「6大改革」推進のための政策の企画・立案が重視される一方で、実施庁の組織規定が省令委任とされ、独立行政法人が行政組織法に根拠をもたないこととされているように、行政実施部門の組織的安定性が希薄になっている。この点は、効率化・簡素化の名による実施部門切り捨ての危険性を拡大するとともに、国会を通じた、国民の行政実施部門の監視を困難にするものである。 五つには、実施部門の減量化が法的にも強調される一方で、副大臣、政務官、「分掌職」など、政策決定の中枢に位置する政治家と官僚のポストが新設・温存されている。官僚腐敗や、「政・官・財」ゆ着に対する国民の激しい批判が、行政改革の要因であったことに照らせば、逆立ちの改革であることが鮮明になっている。 焦点となっていた独立行政法人制度は、通則法及び関連法である国家公務員法改正法案などが決定されている。いわゆる公務員型の独立行政法人の職員は「国家公務員」と規定されているが、行政組織法や定員法の制限をうけないことから、その身分保障が従来の公務員と同一とは言えない。また、総務省の評価委員会が、中期計画見直し時に、改廃・民営化の検討をおこなえるとしており、法人の安定性は決して高くない。さらには、企業会計原則の導入や労働条件にかかわる基準が明確にされていないなど、国公労連がこれまで指摘してきた問題点が何ら解消していない。中期計画終了時に、職員の身分を非公務員とすることで見直すことも論議されており、民営化の「次善策」であることは明らかである。 同時に決定された「推進方針」では、大綱決定時に6機関・事務を加えた90機関・事務の独立行政法人化と、貿易保険など4機関・事務の非公務員型独立行政法人化、2001年4月以降とする独立行政法人化への移行時期、独立行政法人化を含めて2000年度から「10年間25%の定員削減」の実施、10年間で30%の経常経費の縮減、118審議会の廃止などを決定している。行政実施部門に集中した減量化計画であり、行政サービス切り捨ての行政改革を強行する姿勢を露骨にしている。 法案等の閣議決定をうけて、各省も行政改革の具体化作業を開始しようとしている。能力・実績を反映する人事管理への変更を中心とする公務員制度「見直し」もはじまろうとしている。これらの流れをくい止め、公務員労働者の労働条件を維持・改善するためにも、国民の期待に応えた行財政を展望する上でも、行革関連法案の成立を許さないことが重要である。また、法案成立反対の国会闘争をつうじて、すすめられている行政改革の反国民性を明らかにしていくことが、これからのたたかいの足がかりを築くことにもなる。 そのことから、取り組んでいる「両輪の署名」や全国キャラバン行動を軸とした行革闘争を大きく成功させ、国会審議に影響をあたえるうねりを地域職場から作り出していくことが重要となっている。行政サービス切り捨て、労働条件切り捨ての行政改革に対する怒りをたかめ、国民生活重視の行財政確立をめざし、国会最終盤までねばり強く闘い抜こう。 1999年4月27日
日本国家公務員労働組合連合会行革闘争本部 本部長 藤田忠弘 |