情報公開法の成立にあたって(談話)

 5月7日の衆議院本会議で、懸案であった情報公開法が全会一致で採択され、2年以内に実施されることが決定した。行政の透明性を高めるととも、国民参加の行政に切り替える大きな転機となる可能性を持っていることから、国公労連はこの法の成立を歓迎する。
 法案の成立によって、事態はあらたな局面に入ることになる。当面する国公労働運動の課題は、行政情報公開法の基本的な理念にもとづいた「開示の基準」が各省庁において策定されるよう、監視と問題点提起を強めることある。そのこととあわせ、公務員攻撃を強めるための情報公開に変質させないことにも留意した取り組みが必要である。

 情報公開法は、国民が知りたいと考える行政機関の情報を開示することを基本原則にすえている点が最大のポイントであり、そこに法の精神がある。国民が、行政機関に対して情報の公開を求めることは、「主権者としての権利」(法第1条)とされており、「知る権利」までは規定されていないものの、一定の要件で定められる「不開示情報」以外は開示されなければならない。その点では、情報不開示に対する訴訟を高裁所在地にしか認めなかったこと、あるいは特殊法人や新設が検討されている独立行政法人を当面対象機関から除外していたりすることにも見られるように、出来るだけ公開する範囲や国民の開示請求の権利を制限する側面が法には含まれている。そして、不開示情報の範囲を運用上の裁量に委ねる内容となっている。このような基本原則を骨抜きにする内容の是正と監視は、これからの課題である。

 また、政府がすすめる行政改革の中でも、説明責任や政策・業績評価による「透明化」がその目的とされている。その際の情報開示は、結果として行政のスリム化、効率化の契機にしようとする意図が貫かれている。今回の情報公開法についても、その運用や活用如何では、行政「減量化」の攻撃や「ヤミカラ」問題を契機とする公務員攻撃に誘導される可能性も否定できない。その点でも、国が保有する情報を国民が知ることによって、民主的な政治行政への転機をめざすという法の理念が繰り返し確認される必要がある。それは、法を利用する国民サイドのみの問題ではなく、運用する行政機関の姿勢にもかかっている。この点での、監視と対応もこれからの課題である。
 なお、職場の慣行として確立している労働条件関連の事項でも、法や規則に則った適正化の立場で、今日的な見直しが必要である。事実を歪曲した不当な攻撃には断固とした対応をおこなうべきは当然として、国民に疑惑をまねきかねない運用への的確な対応も労働組合の責務として確認する必要がある。

 情報公開法は、基本的人権の保障・実現の立場から、主権者としての意思を政治・行政に反映させることが保障されてはじめて、法の重要性が確認されることになる。その点からすれば、行政改革の強行にあたって、国民の意見反映を軽視し、内閣機能の強化による行政の政治的支配が再編されようとしていることと大きな矛盾を持っている。法の成立が、国民本位、民主的な行政確立の契機となるよう、行政改革の反動性の告発や法の活用もふくめ、行政民主化運動の強化を呼びかけるものである。 
1999年5月7日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 福田昭生

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