地方分権一括法案が審議入り
--衆議院本会議で趣旨説明、代表質問--

(国公労連「行革闘争ニュース」99年5月13日付)

 本日(5/13)・13時から開かれた衆議院本会議で、地方分権一括法案の趣旨説明と各党代表質問がおこなわれ、行財政改革特別委員会に付託されました。政府・自民党は、次に定例本会議日である18日には、行革関連法案の趣旨説明を強行しようとしており、両法案を並行審理して、通常国会の会期内に成立させることを狙っています。
 本日の本会議では、野田自治大臣が分権法案の趣旨を説明した後、各党の代表質問がおこなわれました。各党の質問と政府答弁の要旨は次のようなものです。

【自民党、自由党・虎島議員】
* 分権法案は先に成立した情報公開法と一体で、自治体、住民の自治意識を喚起する契機になる。
* 分権で行政はどう変わるか、分権と行政開花宇土の関係は、地方財源の確保をどうすすめるかについて聞きたい。

(政府答弁)

  • 分権法は、国と地方を対等の協力関係とするヨコの関係を構築するもの。環境など身近な行政を自治体で決定することで、社会福祉を自主的に展開することが目的。

  • 国、地方の新しい行政システムを構築するものであり、国の関与の最小化を前提に自治体のスリム化についても数値目標の公開などを指導し、行政全体としてスリム化の達成をめざす。また、合併特例債の新設などを通じて広域合併の加速をめざす。

  • 独自税の弾力化を通した地方税体系の見直しと、地域間の交付税による調整で税源を確保。

    【民主党・伊藤英成議員】
    *一括法案は上からの改革となっており、求められる分権とは異質であり期待はずれだ。徹底審議を
    *5次勧告では分権の理念がさらに後退した。首相はリーダーシップを発揮したか。
    *法定受託事務と自治事務の区分けの基準はなにか、法定受託事務の性格が分権計画よりも後退したのはなぜか、法定受託事務の多くが政令で決定することになっているのはなぜか、国の関与で自治事務にまで是正命令が及ぶのは関与の強化ではないか、新設される係争処理委員会は中立の「3条機関」とすべきではないか、自治体の歳出にみあった税収のバランスを考えるべきではないか、について回答を
    * また、地方事務官問題で、社会保険、職業安定事務を国の事務とすることは分権に逆行する。特に社会保険事務の国一元化は、国の行政範囲の拡大であり、利用者の利便に沿わない。

    (政府答弁)

  • 分権は実行段階に至った。4次までの勧告にもとづく推進計画をもとに法案を策定している。

  • 地方分権推進委員会の論議を経て、自治事務と法定受託事務を区分。法定受託事務は今後とも抑制する。法定受託事務の性格、自治体への関与は分権推進計画と変わらない。

  • 自治事務にかかわる是正命令は、自治体の違法状況の是正を念頭においており、些少限度にとどめている。

  • 社会保険は国が経営責任をおうべき保険事務、職安事務は国の出先である安定所を指導する以上重点は国の事務。直接執行となっても市町村への法定受託事務などもあり利便性に影響しない。また地方事務官は国家公務員であり、定員上も人件費も増やすことにはならない。

    【公明党・桝屋議員】
    *自治体への権限移譲が少なく財源が手当されていないなど分権法は不十分だ。
    *一括法では審議が保障されない。なぜ一括法か
    *国の関与が少なくなれば国家公務員は減らせるのではないか、機関委任事務廃止後の自治事務が6割となり原則自治事務とした勧告よりも後退したのはなぜか、係争処理委員会は勧告権しか規定しないのはなぜか、市町村合併は国のリーダーシップで進めるべきではないか、自治体財源の確保はどうすすめるのかについて答弁を
    *地方事務官を廃止し国一元化するのは行革に逆行する。社会保険は特に問題であり、労働と一律の論議はできない。

    (政府答弁)

  • 分権推進計画の枠の中で、機関委任事務廃止と国の関与基準の穂的整合性を保つために一括法案とした。

  • 地方分権は国の事務事業の減量化の一環であり、事業量が減少すれば可能な限り定員を削減するのは当然。地方事務官廃止部分も含め、10%、25%の削減に努力。

  • 係争処理委員会の組織的な位置づけは、行政の肥大化を避けることも一要素。行政は各省が分担するという基本化して勧告にとどめる必要があった。

  • 財源にかかわる補助金は、内容と時代で補助金の性格も変化しており、新たな補助金は5年を基本としてサンセットで運用している。

    【日本共産党・春名議員】
    *法案は問題が多い。徹底審議が必要だ。
    *一括法案で審議の充実は可能か、地方自治・住民自治を基本とする地方自治の本旨の実現こそ必要ではないか、税財源問題は何時までに処理する考えか、法定受託事務が4割に増えたのはなぜか、分権の受け皿づくりの合併促進は問題だ、などの点に答弁を
    *自治事務に代執行を規定すること、是正要求を各省大臣にまで拡大したこと、自治体運営への技術的助言指導を残していることなどからして、国の関与が強化されているのではないか。
    *なぜ、地方議員の削減を上から指導するのか。
    *米軍用地特阻法の代執行を国の事務とするのは、基地用地確保のためのガイドライン法の先取りではないか。

    (政府答弁)

  • 国と地方の財源配分問題は今後とも検討する。

  • 自治事務の代執行は、個別法での規定が前提。その拠り所を通則法である自治法に掲げた。

  • 行政の分担管理の原則から、是正要求を各省大臣とした。関与制限の趣旨から係争委員会を設置。

  • 国の自治体への技術的助言指導は、地方自治行政の運営に必要。

  • 議員定数については上限基準であり、必ずしも削減を意図していない。

  • 米軍基地用地の問題は、国と地方の事務分担の明確化の観点から措置。ガイドライン法の先取りではない。

    【社会民主党・畑山議員】
    *分権法を全面否定はしないが、徹底審議は必要。
    *分権はこれで終わりではない。定期の改革機関を盛り込むべき。
    *係争処理委員会を総務省に置くのは問題、自治事務と法定受託事務の区分の基準は、議員定数の上限設定ではなく下限基準とすべきだ、の点に回答を
    *地方事務官のおこなっている事務を国の事務としたのはなぜか。社会保険では職員も地方公務員を希望している。
    *是正要求と是正指示を使い分けているのはなぜか

    (政府回答)

  • 地方分権推進委員会の存続期間経過後の問題は、その時点で検討。

  • 是正要求、是正指示とも自治体は改善について法的義務を負うが、措置はより具体的な改善事項を指示することになる。


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