国家公務員倫理法の成立にあたって
(談話)
- 民主的行政推進のため職場から運動を強めよう -

 8月9日の参議院本会議で、国家公務員倫理法が可決成立した。法案は、昨年の通常国会で当時の与党、野党からそれぞれ提出されていたが、事実上たなざらし状態とされていた。それが、延長国会での与野党合意により、旧与党案を一部修正したうえで全会一致で成立に至った。 近年、厚生省や、大蔵省、防衛庁などで、関係業界との癒着による汚職・腐敗事件が相次ぎ、あるいは社会通念を逸脱する接待や贈答品の受け取りなどの問題が多発している事実からしても、公務員倫理法の成立は必要であった。法は、清潔でガラス張りの行政を望む国民の声に応える一方策であり、国公労連はその成立を歓迎する。

 国家公務員法は、公務員に「国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すること」を求め、「信用失墜行為の禁止」など倫理観にまで踏み込む規定が設けられている。
 しかし、これまで、刑法上の収賄容疑の要件として、金銭の授受と合わせて「職務上の権限」の有無が問題とされ、その立証が困難な上級公務員についての追及がうやむやにされることが数多くあった。そのことが、「現金さえもらわなければ」という風潮につながり、その点も公務員倫理上の問題とされてきた。さらに、特権官僚の不正事件について、「身内意識」による裁量によって、処分内容での省庁間の不公平や、同一省庁でも特権官僚と一般公務員の取扱いの差など、恣意的なまでに不公正な取扱いがおこなわれてきたことも否定できない。
 96年12月に、事務次官会議の申し合わせを受けて、各省庁で「公務員倫理規程」が制定されているが、その後も前述したような腐敗問題が発生したことも、国民の不信感を増大させる一因となっている。

 成立した公務員倫理法は、「職務の執行の公正さに対する国民の不信を招くような行為の防止」を目的に、1)本省課長補佐級(行一7級)以上の職員が、事業者等(官官を含む)から5000円以上の贈与等を受けた場合の報告義務、2)本省審議官級(指定職)以上の職員の所得報告、3)公務員倫理審査会の人事院への設置、などを内容としている。なお、当初案から局長級以上職員の資産等の報告義務が削除されたり、刑事罰の適用が盛り込まれないことや、内部告発権が規定されないことなどや、国会議員にかかわる「斡旋収賄」が先送りされているという問題点も残している。また、政省令段階や法の運用にあたって、当局による人事管理強化や恣意的な活用をおこなわせないための労働組合のとりくみも求められている。

 真に民主的で清潔な行政を確立するためには、今回成立した倫理法だけで事足りるものではない。行政現場における内部告発権の保障、不当な職務命令に対する異議申し立て制度の確立、年金とリンクする年齢までの定年延長と、公務内部で働き続けることのできる仕組みの確立、民間企業等への「天下り」の廃止など、公務員制度の民主化が求められている。
 国公労連は、国家公務員倫理法の成立を機に、また既に成立している情報公開法なども活用し、行政民主化の取り組みを強化する。国民の疑惑をまねく行為や腐敗の一掃をめざした職場からの運動強化を全国の仲間に呼びかける。
1999年8月10日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 福田 昭生

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