橋本「行革」と対決して、民主的行財政改革の実現を

(全日本国立医療労働組合「全医労情報 No.179」より)
 政府・与党は、@行政改革、A財政構造改革、B経済構造改革、C金融システム改革、D社会保障構造改革、E教育改革の「6つの改革」を掲げ、これらを一体として推し進めようとしています。
 これらの6大改革に共通しているのは、部分的見直しではなく「構造」の変革であるということです。
 橋本内閣の「6つの改革」路線は、政治、行政、経済、社会の「変革と創造」の名による対米従属の諸政策を強めつつ、大企業・独占の利潤確保、国民大収奪の反動的な「21世紀国家づくり」をねらうものです。「オール与党」体制による翼賛政治が強まるもとで、98年度予算編成をめぐる概算要求期にかけて一気にその具体化が図られようとしています。
 橋本「行革」の攻撃は、21世紀にむけて政府・財界が一体となった労働者・国民に対する攻撃です。
 それ故、労働者・国民との共同闘争を発展させ、憲法遵守・国民本位の民主的行財政の実現めざしてたたかうならば展望を切り開くことができます。
 夏から秋にかけて、全労連、公務共闘、国公労連に結集して、「財政再建署名」「大量宣伝行動」をはじめとする「行革」反対闘争に積極的に取り組み、「行革」反対闘争を国民的規模に広げ、橋本「行革」を大きく包囲していく行動を展開していきます。
 また、「行革会議」において国立病院・療養所の独立行政法人化や廃止・民営化、地方移管について議論されています。国立病院・療養所の廃止・民営化等に反対し、「国立病院・療養所の存続・拡充を求める」国会請願署名、地方議会への請願・要請行動、全支部での「守る会」結成に積極的に取り組み、国立病院・療養存続・拡充の国民世論の形成をめざします。

1、「行政改革」の動き

 橋本首相の直属機関である「行政改革会議」が5月1日にまとめた「中間整理」は、@国家機能ごとの中央省庁の再編、A「内閣府」による危機管理機能の強化、B各省庁執行部門の独立行政法人化や廃止・民営化、C財政投融資制度の見直しと郵政3事業の民営化、D公務員人事管理の全般的な見直し、E道州制の導入、300基礎自治体への統合を前提とする本格的地方分権などを柱としています。
 省庁別ヒアリングや6月の地方分権推進委員会の「第2次勧告」などを経て、8月18日から21日までの4日間行革会議委員を都内のホテルに集め集中討議を行い、省庁再編案の骨格を囲め、11月に省庁再編最終案を決定のうえ、来年の通常国会に関連法案を提出するとしています。
 「行政改革会議」は、政策立案機能と実施機能の組織的分離により、それぞれの機能の充実を図るとして、実施に係る事務事業のうち、効率的・効果的な実施のために国とは別の法人格を付与して行わせることが必要なものについては、「独立行政法人」を創設し、当該事務事業を行わせることにより、目的に即した弾力的な組織・運営の実現を可能とするとしています。
 独立行政法人の職員の身分について、「一身分の取り扱いによって、法人の組織的性格や業務運営にどのような差異を生ずるか」「業務の内容・性格に照らして、労働基本権の取り扱い、勤務条件、服務、処遇等は、それぞれどのようにあるべきか」について検討しています。
 独立行政法人の対象としては、国立病院・療養所などの医療厚生施設、国立学校、博物館・美術館などの文教研修施設、試験研究機関、自動車検査などの検査検定業務、航空管制、気象・職業紹介・社会保険・労働保険などのサービス等業務などを検討の対象に上げています。
 国立病院・療養所に係わっては、独立行政法人化のみならず、廃止・民営化および地方移管にっいても議論がされています。

2、「財政構造改革」の動き

 政府と与党3党の協議機関である「財政構造改革会議」は、6月3日の全体会議で「財政構造改革の推進方策」をまとめ、橋本内閣が臨時閣議でこれを政府の正式方針とすることを決定しました。これを受けて6月16日に来年度からの予算編成をしぼる「財政構造改革法案(骨子)」(6年間の時限立法)を確認し、秋の臨時国会に法案を提出して早期成立を図ろうとしています。
 また、政府はこれまでの概算要求基準(シーリング)にかえて、財政構造改革会議の「推進方策」で示された数値目標にそった「新たな指針」を7月8日に閣議決定し、98年度予算の掘成作業を実質的にスタートさせています。
 この「推進方策」は、日本の財政赤字(国と地方)が「主要先進国中最高の危機的状況に陥っている」として、単年度の赤字発生分を6年かけて半減させるというものです。
 @来年度から2003年度までの6年間における財政健全化目標(財政赤字対GDP比3%、赤字国債発行ゼロ)の達成、A今世紀中3年間の「集中改革期間」における一切の聖域なしによる歳出の改革と縮減、B98年度予算における政策的経費の対前年度比マイナス、C主要経費の具体的・量的縮減目標等の概算要求段階からの反映にむけた具体策として、財政赤字の原因である軍事費や公共投資の’浪費の構造−にほとんどメスを入れず、「社会保障構造改革」や「教育改革」の名のもとに医療・年金・教育予算を軒並みに削減し、将来にわたる制度改悪を含めて国民生活分野に大ナタをふるう方向を露骨に打ち出しています。
 その具体的内容は、公共事業費や軍事費では、@630兆円もの公共投資基本計画(1995−2004年度)の総額に手をつけない計画期間の3年延長、A沖縄の米軍施設の整理。縮小に関する沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)の関連事業(総額1兆円)の別枠化、B総額25兆2,600億円もの中期防衛力整備計画(1996〜2000年度)の3年間で9,200億円のみ削減、C首都機能移転の「慎重な検討の提起」による新首都着工の2003年以降へのずれ込み(当初計画は2001年)などとなっています。
 一方、国民生活分野では、@社会保障費の98年度自然増分8,000億円(年金1,500億円、医療5,500億円超、福祉1,000億円)を3,000億円未満の増加に抑える5,000億円もの大幅削減、99年再計算による年金給付水準の引き下げと支給開始年齢の再延長、薬価基準や診療報酬体系など医療保険制度と医師数など医療供給体制の両面からの制度改悪、A公立学校の教職員配置計画の2年延長、私立学校の経費助成の対前年度同額以下への3年間抑制、国立大学の民営化と授業料引き上げ、B地方自治体や民間団体むけ補助金の3年間でそれぞれ1割削減、中小企業対策費の削減などの「(改革に伴う)極めてきびしい痛み」を国民に求めています。
 厚生省は医療保険制度の抜本改革案にっいて、薬剤辛を抑制することを目的に、欧米に比べて高い薬の価格構造にはメスを入れず薬代が一定額を超えると超過分を患者負担とする「参照価格制度」の導入することを決め、患者負担にっいては@高指者の負担は定額制(9月から月4回まで毎回500円)から定率制(1割)に転換する、Aサラリーマンの本人負担を実質3割程度に増やす、B医療費が比較的定額なかぜなどの費用負担は、保険給付中心から患者負担中心に移行させる、なども掲げる方向です。そして厚生省は8月上旬に細部を詰めたうえで与党医療保険制度改革協議会に医療保険制度の改悪案を示すとしています。
 この厚生省案を受け、与党3党が8月中に抜本「改革」案をまとめるとしています。9月に発足する厚生省の医療保険構造改革審議会(仮称)で検討したうえで必要な法案を来年の通常国会に提出することにしています。
 公務員労働者に対しては、3月の梶山官房長官の「公務員ベア凍結検討」発言、4月の武藤総務庁長官の「公務員採用半滅」発言、7月8日閣議における総務庁長官による各省庁の「増員抑制」発言を経て、定員面での第9次定員削減計画の「見直し」を含む「更に徹底した抑制」とともに、給与面における「人事院勧告制度の維持・尊重」と「事情変化による国政全般を考慮した責任ある協議と適切な対処」という形で、厳しい総人件費抑制攻撃をかけてきています。

3、たたかいの展望とたたかい方

 このような橋本内閣と「オール与党」勢力による国民犠牲、公務員いじめの「行財政改革」攻撃は、イギリスやニュージーランドを「典型」とするものです。
 しかし、ニュージーランドは、84年以来の「規制緩和・行財政改革」(国営企業の企業化・民営化、政府機関の統廃合・民営化による公務員半減、労働法制改悪による雇用不安、労働条件改悪と労働組合組織率半減など)で「行革モデル国家」とされていたが、昨年10月12日の総選挙で国民党が与党の「行革政権」が大幅な過半数割れで敗北しました。
 また、イギリスは今年5月1日の総選挙でサッチャー型の「自由市場万能」の規制緩和路線が国民に拒否され、18年間政権についてきた保守党が歴史的大敗を喫しました。
 フランスでも、6月1日の総選挙(決戦投票)で、国民・公務員犠牲の厳しい緊縮政策を推進してきた与党・保守連合が議席半減で大敗し、「欧州通過統合のための財政赤字削減」を理由にした国民犠牲の悪性に厳しい審判が下されました。
 日本では、7月6日の東京都議選で日本共産党が議席倍増で大躍進したのとは対照的に、自民党以外の「オール与党」勢力が軒並みに低迷・敗北する結果となりました。
 橋本「行革」が推し進める医療保険制度の抜本的改悪、国立病院・療養所の廃止・民営化をはじめとする社会保障の全面改悪や国民生活関連の行政サービスを切り捨てることに国民は決して合意しません。橋本「行革」が切り捨てようとする行財政分野の拡充、国立病院・療養所の存続・拡充などこそ国民は求めています。
 欧州連合(EU)諸国における労働者・国民の総反撃のたたかいには、労働組合、とりわけ攻撃の矢面に立たされている公務関係労働組合がその先頭に立って奮闘しています。
 日本では「連合」が「オール与党」勢力の悪政推進こ積極的に協力・加担しているもとで、まともにたたかう全労連や公務共闘の役割発揮が鋭く問われています。公務産別はもちろんのことナショナルセンター規模での全労働者・国民的な行革闘争方針と闘争体制の確立が必要となっています。
 そのため、全労連・春闘共闘への結集を一層強めつつ、橋本内閣の「6つの改革」路線に反対し、国民のいのちと暮らしを守る民主的な行財政・事業・教育・医療・福祉の確立をめざし、国と地方の政治革新のたたかいとも結合して、中央・地方一体で当面する行革闘争争の具体化と闘争体制の確立による主体的な取り組みの強化が求められています。
 全労連・春闘共闘は、98春闘潰しをも狙った公務員賃金の凍結・抑制を許さないたたかいを当面の最重点課題に掲げ、官民一体で労働者・国民総犠牲の「行財政改革」に反対する国民的な共同問争の発展に全力をあげるとしています。
 政府・橋本内閣は、98年度予算編成作業と絡んでアメリカ追随、大企業奉仕、国民犠牲の「6つの改革」を本格化させる第1弾として「財政構造改革法案」を秋の臨時国会で早期成立を図ろうとしています。
 また、社会保持の施策を維持するのに来年度8千億円以上の予算増が必要ですが、政府・与党は3千億円しか認めない方針です。そのため医療保換制度の抜本「改革」案とあわせて来年度予算で、薬剤費や入院食の負担増など2年連続の患者負担引き下げが検討対象にのぼっています。
 これらに反対する国民的な世論と運動の構築のために、全医労は、公務共闘の「財政再建署名」、守る会全国連絡会の「国立病院・療養所の存続・拡充を求める」国会請願署名、医労連の「看護婦の増員・夜勤改善を求める」国会請願署名に取り組むとともに、全労連・公務共闘・国公労連が秋に取り組む橋本「行革」反対の「大量宣伝行動」に積極的に参加します。
 全医労は、毎月第3土曜日を全国統一宣伝行動日として「国立病院の廃止・民営化反対」「二交替制反対」を訴えていきます。
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