国民いじめ、銀行「救済」・
大企業擁護の予算案は修正をもとめる

-98年度予算の政府原案決定にあたって(談話)-

  本日、政府は、98年度予算の政府原案を閣議決定した。 国公労連は、2003年度までの間、国民生活の基盤をささえる予算や総人件費を削減、抑制する一方で、軍事費や大規模開発に偏った公共事業費を「聖域化」する「財政構造改革法」の問題点を指摘し、その成立に反対して運動を進めてきた。その法案にもとづく初年度の予算原案は、我々が指摘してきた問題点が極めて露骨な形で示されている。国公労連は、あらためて「財政構造改革法」廃止と、これに基づく予算の修正を強く求める。

  98年度予算案では、本年9月からの医療費改悪による患者負担増が、国民生活に深刻な影を投げかけているにもかかわらず、その実態を無視し、社会保障費全体で当然増経費8000億円の内5000億円以上も削減している。この削減は、難病医療費での自己負担導入、国民健康保険への国庫補助金の削減と健康保険への負担転嫁、母子家庭に対する児童手当の給付制限の強化などとして具体化されており、容赦ない弱者切り捨ての方向となっている。
 また、失業給付での国庫負担金削減、中小企業対策費の減額、学校給食への補助金廃止など、景気低迷と橋本「改革」の断行、大企業の理不尽なリストラ「合理化」などによって深刻な事態に陥っている労働者と国民の生活に、さらに追い打ちをかける内容も含まれている。
 公務員労働者にかかわっては、定員の3700名(非現業国家公務員では1035名)というかつてない大幅な削減と給与改定費の0.5%への抑制が盛り込まれている。慢性的な過密労働の実態をさらに深刻にする厳しい「合理化」強行と、賃金抑制を当初から「念頭」においた内容となっている。

  その一方で、軍事費については、後年度負担への繰り延べや人件費の抑制で「見せかけの抑制」は行われているものの事実上聖域扱いとされており、米軍への「思いやり予算」も2538億円もの巨額な額を保障している。また、公共事業についても、「7%削減」を強調しているものの、先に12月20日に決定した97年度補正予算の中で1兆5千億円を前倒しして計上しており、事実上増額となっている。また、各事業費別の配分割合もほとんど変わっておらず、大規模開発中心の公共投資は温存されている。
 また、消費税を温存する一方で、法人税率を実質3%引き下げることも含まれている。

  加えて、「金融システム安定化の対策」と称して、補正予算と本予算併せて20兆円規模をこえる銀行救済・支援のための税金投入に道を開こうとしていることには、憤りを覚えるものである。先の補正予算案では、日本銀行の銀行むけ融資に10兆円の保障を付け、今回の予算ではこれを継続するとともに国債交付10億円をさらに上積みしている。しかも、これらの資金は、破綻した銀行の預金者保護だけではなく、危機に陥った銀行支援のためにも「活用」することが明らかにされている。これは、財政危機と称して、国民には負担と犠牲を押しつけながら、銀行の救済支援のためには多額の財政を惜しげもなくつぎ込もうとするものであり、財政をさらに破綻させる「税金の私物化」にほかならない。

  このような財政運営に加えて、国鉄長期債務の一般会計繰り入れなど、過去の失政のつけ回しもあって、国債発行残高は279兆円にまで膨らむこととなり、財政再建はおろか国民への一層の負担増と後世代への「負の遺産」転嫁という無責任極まりない予算案となっている。
 このような「政府の失敗」が繰り返される原因は、財政のムダ遣いに抜本的にメスをいれず、財界の求めに応じて税金を食い物にする「構造」が、橋本「行革」のもとで一層強固にされてきているからに他ならない。
 国民にとって「百害」しか及ぼさない橋本「行革」をやめさせる国民的なたたかいが極めて重要になっている。国公労連は、「行革大規模署名」を軸に、国民の皆さんとの対話と共同を広げ、世論の力で国民生活重視の行財政への転換をせまる運動を開始している。この運動をさらに強化しつつ、98年度予算の修正と悪政打破をめざして、全労連の一翼を担って奮闘する決意である。
 全国の仲間に、生活と労働条件をまもり改善を目指す立場に立ったこれまで以上の奮闘を強く訴える。

 1997年12月25日
日本国家公務員労働組合連合会 書記長  西 田 祥 文




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