「中央省庁再編等基本法案(仮称)」について申し入れ

 国公労連は、1月20日午前10時30分から、「中央省庁再編等基本法案」について、 別掲・橋本首相(再編準備委員長)あて申し入れ書にもとづき、行革会議に申し入れ をおこないました。これには、国公労連から、安部副委員長、小田川書記次長、木下 中執、飯塚中執が参加。行革会議は、高野参事官補佐が対応しました。

 国公労連は、冒頭、行革会議最終報告に基づく「法案化」に反対であり、改めて 広範な国民の意見を反映する民主的手続きをとることを要求しました。そして、法案 化にかかわって、(1)独立行政法人の制度化を行わないこと、(2)民間委託は法案に盛り込まないこと、(3)地方支分部局の整理「合理化」の「基本方針」の法案化を行わないこと、(4)定員削減の数値目標は法案化しないこと、の4点を強調しました。

 これに対して、高野補佐は要旨次のように回答しました。

●民主的手続きをというのはもっともだが、行革会議は、会長の首相と会長代理の 総務庁長官以外、官僚OBも排して、組合代表も含めた民間のいろいろな方々で議論い ただいた。また、広範囲の改革であり、個々の改革の議論以前に基本的な法案でプロ グラムをプログラムを示すことは必要であり、その法案は国会で慎重に審議されるも のと考えている。その点で問題はない。
●公平性についてはきちんと確保されていると思う。民主制という点でも、政府は 政府でないと出来ないことのみを行い、それ以外は民間にまかせるという点でも、あ るいは最終報告でも、パブリックコミットメントの導入など国民の参加を打ちだして いる点でも確保されている。
●独立行政法人は効率、簡素だけを目的としているのではない。最終報告の理解が 違う。基本法では、具体的な設置ではなく、制度はこういうものであり、段取りはこ うで、作業やスケジュールはこうするという記述になる。特定の名称が載るかは申し 上げられないが、少なくとも「独立行政法人にする」という書き方にはならない。そ れは別途の政府のアクションになる。各独立行政法人は個別の設置法が想定されてお り、政府の判断だけでは独立行政法人化できない。
●民間委託については、基本法はプログラム法案であり、具体的な名称は載せない 。地方支分部局の合理化は政府の基本方針であり、受け入れられない。
●定員削減ついてだが、おっしゃるように定員を押さえている公務の努力を世間一 般に理解してもらえればいいが、世間一般では公務のリストラは不足という指摘が事 実としてある。一層厳しい事務・事業の見直しや定員の再配置をする必要がある。い ままで以上の努力をするということだが、最終報告の文言は、行政実務上の立場から 言えば、純減と言うことではなく、定員削減を指しているのではないかと思うが、対 応せざるを得ない。

 (申し入れ書の第3項について)
●首相の発議権は、首相は国務大臣であから、国務大臣としての発議権はいまもあ るというのが法解釈だ。国民の声は、政府を率いている人のイニシアティブをもっと はっきりさせるべきというものだ。法解釈上当然だというものを書くことだ。内閣官 房は実際に企画立案をやっており、これをきちんと位置づけて、むしろ企画立案が重 要ということをはっきりさせる。首相の権限強化に対するカウンターバランスは最終 報告に書き込んである。政治的任用については、政治的中立性のご指摘があるのは分 かるが、閣議了承人事についてきちんとするよう行革会議から言われており、政府の 対応も進んできている。
●基本的人権の実現が大事というのはその通りで、最終報告にもそうした文言が載 せられている。しかし、3)の「とりわけ」以下の総務省などの大括り再編に反対する 記述は趣旨は承ったが内容は受け入れられない。各省の局以下の再編は政府の権限で 、政令以下で決められる。基本法に基づき設置される推進本部で、各省庁設置法、組 織令、運用面なども含め検討されるべきものだ。局の削減目標については、最終報告 で、大きな省でも10局以下、全体の局の数を128から90近くまで減らすという2つのし ばりをしている。具体的には作業中であり、申し上げられない。
●5)の「実施事務と企画立案事務の分離は、個別の事務、事業、機関ごとの行政目 的や公共性などの検討と国民の行政需要を吟味し、慎重な検討をおこなうこと」はそ の通りで、推進本部で、基本法の文言を踏まえ吟味する。
●6)の「公務員制度の「改正」は、当該労働組合との協議と合意を前提に検討をお こなうこと」は、「改正」は事実上相談することになる。公務員制度調査会は、5年 間、多岐にわたる審議をされるが、組合代表が入っている。

 (省庁再編等基本法は時限立法かどうかについて)
●いまは申し上げる段階にないが、3年ないし5年でびしっと終われば時限立法にな るだろうが。財政構造改革法は、予算が対象であり、予算は年度ごとに区切りがある からびしっと終われる。しかし、基本法の理念だけがずチと生き残るというのはなか なかないだろう。

 (法案の提出時期)
●予算関連法案であり、閣議決定は2月10日までにすることになっている。ただ、相 当新しい事項があり、検討すべき点も多く、厳しい。しかし、2月10日めざして作業 を進めている。
 最後に国公労連は、再度、改めて広範な国民の意見を反映する民主的手続きをを 保障し、慎重な検討を行うよう求め、申し入れを終えました。

別掲    1998年1月20日

中央省庁再編等準備委員会

  委員長  橋 本 龍 太 郎  殿

日本国家公務員労働組合連合会
  中央執行委員長  藤 田 忠 弘


「中央省庁再編等基本法案(仮称)」策定作業にかかわる申し入れ

 昨年12月3日に行政改革会議がおこなった「最終報告」をふまえて、「中央省庁再編等基本法案(仮称)」を今次通常国会の提出するための作業が、貴委員会において進められていると承知しています。

 私たちは、先の「最終報告」が、国家の中枢機能の強化にのみ重点をおき、国民生活充実のために不可欠な行政サービス提供を軽視する行政組織の機構いじりに終始したものであり、憲法がもとめる行政の変質となる「改革」を提起したものと受けとめています。そのことからして、私たちは、「最終報告」の全体かかわって基本的に反対であり、これを前提とする「法案」作成にも断固反対の意見を持っています。

 同時に、「最終報告」をうけて、これを「最大限尊重」するとの閣議決定が行われ、法案作成作業が進められている現実の動きに対して、最低限の意見表明をおこなうことは、行政の第1線で寄せられる行政に対する国民の要望を承知し、国家公務員労働者の労働条件改善をめざす労働組合としての責務であると考えます。

 以上の立場から、国公労連として特に問題意識を有している下記事項について、貴委員会の法案作業に対する意見を表明し、その実現についての誠意ある対応を求めます。



1 国の役割を一面的に限定し、国民生活の基盤を損なう危険性がある行政改革会議「最終報告」にもとづく法案作成については、あらためて広範な国民意見を反映する民主的手続きを保障した慎重な作業をおこなうこと。

2 行政改革の目的として、「民主、公正性の確保」を法案の中で明確に掲げること。

3 最終報告の中でも、国民的な批判の強い次の点については性急な法案化をやめ、引き続き慎重な検討をおこなうこと。 1) 首相の発議権や内閣官房に企画立案機能を付与するなどの内閣法改正は、憲法規定との整合性や、いわゆる「首相の独走」に対する歯止めやチェック機能との関係など、慎重な検討を行うこと。 2) いわゆる「政治的任用」の範囲については、行政の中立性確保を阻害しないよう慎重に検討をおこなうこと。このことからして、各省庁の次官、局長等幹部人事の「内閣承認」の法案化はおこなわないこと。 3) 各省庁の区分については、憲法がもとめる基本的人権実現の観点から、行政目的を改めて論議し、「最終報告」の撤回を含む抜本的な見直しをおこなうこと。とりわけ、中央集権化となる「内閣府」、「総務省」の大括り再編、行政目的のことなる公共事業と運輸・交通行政や労働と厚生行政の統合は取りやめること。 4) 各省庁の行政目的を明確にし、そのことを前提に局以下の在り方を検討するすること。そのことからしても、数値目標を前提とする局等の削減目標を法案化しないこと。 5) 単純には区分出来ない実施事務と企画立案事務の分離は、個別の事務、事業、機関ごとの行政目的や公共性などの検討と国民の行政需要を吟味し、慎重な検討をおこなうこと。 6) 公務員労働者の労働条件、処遇の変化をきたす公務員制度の「改正」は、当該労働組合との協議と合意を前提に検討をおこなうこと。





4 以下の点については、断じて法案化しないこと。 1) 行政の効率化、簡素化のみを目的としている「独立行政法人」の制度化はおこなわないこと。そのことからしても、国立試験研究機関や国立病院などを独立行政法人の対象業務として特定することは断じてやめること。 2) 職域病院、教育訓練機関などの民営化や、社会資本整備、各種検査検定業務などの包括的な民間委託は法案に盛り込まないこと。 3) 行政実態を顧みない地方支分部局の整理「合理化」の「基本方針」の法案化はおこなわないこと。 4) 国民の行政需要や行政実態をふまえることなく「一律削減」を強要する不合理な「定員削減」の数値目標(10年間で10%以上の国家公務員削減など)は法案化しないこと。



以  上

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