大蔵省による官僚汚職事件の全容解明と腐敗構造の改革をもとめる

(1) 1月26日、大蔵省金融検査部の検査官2名が、大手4銀行(あさひ、第一勧業、三和、北海道拓殖)からの収賄容疑で逮捕された。いわゆる「金融スキャンダル」は、大蔵省OBである道路公団理事につづいて現職の官僚も逮捕されるという事態にまで広がり、大蔵省の金融行政の根本のところにまで腐敗が広がっていることを示している。

 収賄容疑の内容は、銀行からの接待などへの見返りとして、業務にかかわる検査情報を提供し本来指摘すべき不正融資の「見逃し」を行っていたとするものである。今回の事件は、「国民の公僕」である公務員本来の役割を自ら否定し、特定の企業・業界の利益を最優先した結果であり、国民の信頼を全面的に裏切るものである。

 同時に、行政の第一線で、国民の負託に応えるため日夜奮闘している多くの公務員労働者に対する背信行為でもある。


(2) 公務員が特定企業等の接待に応じ、その代償として利便をはかることは明確な犯罪である。「公務員の職務の公正さとこれに対する社会一般の信頼」を損なう行為であり、断じて許されない。加えて、国公法が「信用失墜行為の禁止」、「守秘義務」、「職務専念義務」などを規定し、中立・公正な職務執行を求めているように、犯罪行為以前の問題として公務員には高い倫理感が求められている。

 ところが、大蔵省に限っても、近年連続して「汚職事件」が明らかになり、その都度「綱紀粛正」が言われ続けていたにもかかわらず、全くといっていいほどその教訓が活かされてはいない。むしろ、大蔵省と、この監督を受ける業界との癒着の根深さ、双方に共通する不正・腐敗隠しの体質が一層深刻なものになっている。労働組合敵視の労務管理が現在も続いていることに示される内部からの批判と変革を認めないことを含め、構造的な問題にまでふみこんだ原因や背景の究明と責任追及が、大蔵省自らの手で進められなければならない。


(3) 事件の責任をとる形で、大蔵大臣が辞任し事務次官などが辞意を表明し、服務監査官というあらたな官職が既に発令されている。しかし、このような対症療法だけで、問題点が解決される訳ではない。

 1980年代以降の臨調行革によって、国民の権利や生活を守る行政の役割が否定され、大企業の経済活動を支援することが国の中心的な任務とされるという「行政の変質」が進行した。その影響が、「官庁の中の官庁」と言われ、財政面から「行革」を推進した大蔵省により集中していることは明らかである。例えば、銀行の横暴な「貸し渋り」への批判に対して「自然の経済プロセス」と居直り、不良債権処理に対する銀行の責任を問うことよりも「国際競争力が大事」と官僚が言い放つ状況が、そのことを端的に示している。

 また、国際化、巨大化が著しい金融の検査・監督の体制はわずか500人弱であり、企画・立案部門からの独立性も確保されていない。国民の貴重な財産をまもるべき責任と役割からして、きわめて貧弱な体制でしかないことのモラルへの影響も見逃せない問題である。


(4) 国公労連は、官僚腐敗の根絶をもとめ、公務の民主化を繰り返し求めてきた。今回の事件が極めて根深い問題であることをふまえ、次の点をあらためて主張する。
1)大蔵省自身の責任において、国民の前に事件の事実と原因を明らかにすること 2)不正・腐敗に対する厳正、的確な処分と責任の追及(とりわけ幹部公務員についてはより厳正に対処すること) 3)「服務監査官」を独立の機関として企画・立案から距離をおき行政目的に照らした役割を持たすとともに、不正行為について職員からの「内部告発権」を保障すること 4)特権官僚優遇の人事管理の見直し、「天下り」「天あがり」の禁止、労働組合敵視施策の撤廃、行政運営に対する職員の意見反映の保障など職場の民主化措置の徹底 5)現行制度のもとでも可能な検査結果や、予算の執行結果などの情報公開 6)大企業本位の経済施策中心の行政から国民生活重視の行政への転換と金融の検査・監督部門の独立性確保と体制充実 7)職務遂行上必要な会議費や渉外費などの適正予算化







 あわせて、国公労連は、今回の汚職事件と表裏の関係にある銀行支援のための公的資金30兆円投入のための法律を政府として撤回することを強く求める。

1998年1月28日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  西 田 祥 文(談話)

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