「官僚腐敗構造」の緊急な改革を求める(談話)
- 行政に対する国民の信頼回復にむけ真剣な取り組みをはじめよう -

 3月5日、大蔵省証券局の現職課長補佐等が、収賄容疑で逮捕され、大蔵省官僚が腐敗の泥沼に落ち込んでいることを改めて白日のもとにさらした。  我々は、憲法が定めている全体の奉仕者としての公務員の本質を改めて確認する必要が生じていると考える。公務員が法に規定された職務上の権限を行使できるのは、主権者・国民の人権を確保・保障する行政目的を達成するためである。この当然の理をないがしろにすることは断じて許されない。同時に、近年相次ぐ汚職事件の背景を公務員の倫理観の欠如としてだけ捉えるだけではなく、官僚腐敗の根本原因にまでふみ込んだ改革が必要である。  我々は、次の点が、相次ぐ官僚の汚職事件の根底にあると考える。  一つは、これまでの各省における汚職事件に対する政府及び各省当局の対処が、「トカゲの尻尾切り」に終始し、根本的・構造的な問題点の解明と改革に背を向け続けて、自浄努力を怠ってきたことである。「政・財・官」の癒着の構造は、「天下り」の全面禁止などの制度的規制と同時に、行政当局自身の自己点検が必要であり、そのためにも政府・当局自らが、汚職事件の全体像を国民の前に明らかにする努力がまず求められる。監督責任の問題として、国公法上の処分をおこなえば済むものではない。  この点でいえば、本年1月に発覚した大蔵官僚の汚職事件にかかわって、政府・大蔵省が、国会からの要求があるにもかかわらず、金融検査監督の資料提出にまともに応じていないことは厳しく問われなければならない。  二つには、公務部内の民主化が立ち遅れていることである。特に大蔵省では、全国税、全税関に対する熾烈な組織破壊の攻撃が1960年代後半からおこなわれ、いまなお人事管理等でのこれらの組合員に対する差別・選別を続けている。東大法学部卒の特権官僚を頂点とする「封建的な官僚制度」が温存されていることとも相まって、職場の民主化が大きく立ち遅れている。このことが、行政を内部から監視する機能を喪失させてきた。公務部内を民主化する改革は進んでおらず、そのことが「上司の命」を至上とする公務員の存在と官僚組織全体の腐敗にもつながっている。  三つには、そのような公務部内の非民主性の土壌の上に、田中内閣以降、行政運営への政治介入が強まり、「財政運営至上」の風潮が加速するもとで、特に大蔵官僚の傲慢さが増してきたことである。また、80年代からの臨調行革路線が、国民生活の基盤を支える行政の切り捨てを改革と位置づけ、その改革の実行を官僚に迫ってきたことも官僚腐敗を加速している。行政本来の目的や責任を投げ捨て、政策の企画・立案を重視した役割発揮を官僚に求めてきたことが政治と行政の一体化をさらに促し、企業と官僚の癒着を深めた。  この点では、橋本内閣が進める行政改革も行政サービス切り捨て、企画・立案重視の内容であることから、このような改革の中止が求められることはいうまでもない。  我々は、相次ぐ官僚の汚職事件の発覚で益々拡大する国民の皆さんの行政への不信と憤りに、公務員労働者として大きな危機感を抱いている。主権者・国民の信頼こそが、行政と公務員労働者の存在の基盤であることを改めて確認し、労働組合としての取り組みに全力を傾注しなければならないと考える。とりわけ、職場内部から不正・腐敗を根絶させる取り組みを強めなければならない。  その取り組みの緊急の課題は、1)すべての職場で、不正・腐敗につながる事象の存否を自ら点検し、自浄の取り組みを開始すること、2)特権官僚優遇の人事管理の是正など職場民主化のたたかいを飛躍的に強めること、3)行政本来の責任を否定する行政改革の強行に反対するたたかいを国民生活擁護の観点で強めていくことである。  このような取り組みは、いま国公労働者に求められる使命である。仲間の皆さんの奮闘と尽力を心から訴える。   1998年3月9日 日本国家公務員労働組合連合会 書記長  西 田 祥 文


















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