中央省庁等再編基本法案(行革基本法案)審議をめぐる国会情勢について

1. 3月29日付けの日本経済新聞は、「橋本行革の象徴・『省庁再編法案』・自民、今国会成立をめざす」とする報道をおこないました。また、31日付けの読売新聞は、「省庁改革基本法案、日程窮屈、成立へ道険しく。財改法改正が焦点浮上」とする報道もおこなっています。
 これらの新聞報道で共通しているのは、1)3月27日に、橋本首相が自民党の国対委員長と参院国対委員長を呼び、今国会での行革基本法案成立を指示したこと、2)この指示をうけて、自民党は、当初予算成立後(4月10日頃)ただちに行革基本法案の審議入りすることを確認したこと、3)そのことから、補正予算はサミット(5月15日)後に財政構造改革法「改正」と同時に提出し、会期内(6月10日頃)成立をめざすこと、4)旧国鉄債務処理法案、金融システム改革関連法案、国連平和維持活動協力法案や、国会提出が予定される公務員倫理法案、政治腐敗防止法案、「新ガイドライン」関連法案などの重要法案が目白押しであり、これらの法案成立との関係で行革基本法案の審議日程になお流動的な要素が残っていること、などとなっています。
 そして、読売新聞報道では、1)自民党が、3月30日の衆議院運営委員会理事会で、「予算成立後、行革基本法案の審議入り」を提案したこと、2)基本法案の審議で答弁する閣僚を首相、官房長官、総務庁長官に絞り、他方案の審議を進める案が自民党内で浮上していること、3)橋本行革のずれ込みが政権基盤に影響することを懸念する声と、法案の審議を少しでも進め意気込みをアピールすればとする声の双方が自民党内にあること、なども述べています。

2. 国会筋から入手した非公式の情報では、衆議院行革特別委員会の理事会は開かれていないものの、「質問時間を委員一人2時間」(特別委員は40名だが、自民党委員は質問を行わないと想定されることから、実質審議時間40時間程度と想定される)での調整が水面下ではじまったことが伝えられている。
 この審議日程でいけば、最短で衆参1週間づつの集中審議で行革基本法案の強行成立が画策される危険性があるものと考えられる。
 なお、98年度予算案の成立が、4月8日となる見通しであり、9日以降に衆議院本会議で行革基本法案の趣旨説明がおこなわれる可能性が生まれています。

3. 以上のような状況からして、1)行革基本法案の成否にかかわる98年度予算成立後の法案審議の日程をめぐって、国会での綱引きが熾烈におこなわれていること、2)98年度予算の成立が10日程度早まる状況になっていること、3)98年度予算成立直後の補正予算審議という当初想定した日程ではなく、ここにきて行革基本法案等の4月審議入りの状況が強まっていること、4)行革基本法案の成立にかかわっては、その見通しが自民党内でもたっていないこと、などが推測される。
 このことからして、現段階は、行革基本法案の今国会での成立を許すのか否かの極めて 重要な段階にあるものと考える。
 そのことから、あらためて、1)4月3日、10日の国会行動の重視、2)4月17日までに全県で、地元選出国会議員への要請をやり遂げ、その成果を4月17日の中央行動に持ち寄ること、3)行革大規模署名や宣伝行動を軸とする「網の目キャラバン行動」を4月の早い段階から具体化することなど、国公労連連絡(行革)第18号(3月24日付け)にもとづく行革闘争の一段の強化が求められている。情勢を攻勢的に変えていくために、全国の仲間の大奮闘を重ねて呼びかける。

98.03.29 日本経済新聞朝刊 2面
橋本改革の象徴「省庁再編法案」、自民、今国会成立めざす――予算の成立後最優先に。
 自民党は橋本内閣の行政改革路線の象徴となっている中央省庁改革基本法案について、四月十日前後と見込まれている98年度当初予算案の成立後ただちに審議入りし、今国会成立を目指す方針を固めた。当初予算案成立後に編成する補正予算案の国会提出は5月中旬の主要国首脳会議(バーミンガム・サミット)後となる見通しで、この一カ月余りの期間を利用して最優先で処理したい考えだ。ただ、その結果、他の重要法案の処理に大きな影響が出るのは確実で、財政構造改革法の改正問題も絡んで後半国会は綱渡りの日程を余儀なくされそうだ。
 「何とかして今国会中に上げてほしい」――橋本竜太郎首相は27日、自民党の保利耕輔国対委員長と倉田寛之参院国対委員長を首相官邸に個別に呼び、1府21省庁を2001年1月から1府12省庁に再編する中央省庁改革基本法案の今国会成立を求めた。
 自民党内では同法案については今国会では審議時間に余裕がない事情もあって衆院段階で継続審議にするとの案も出ていた。しかし、首相の強い意向を受けて自民党執行部は、参院で審議中の当初予算案を4月10日までに成立させ、ただちに衆院行財政改革特別委員会で同法案の審議に入ることにした。同法案は重要法案のため、野党側が衆参両院の委員会審議で首相と全閣僚の出席を求めてくるのは確実で、その場合、他の重要法案の審議日程に割り込む事態になり、この兼ね合いが難題となる。
 自民党は参院選投票日を7月12日にする方針で、6月10日までの今国会の会期を小幅延長する考え。16兆円超の総合経済対策を盛り込んだ補正予算案の審議入りはサミット後になる見込みで、小幅延長してもこの時点で残る会期は1カ月足らずだ。
 議員立法の土地再評価法案と自社株取得の範囲を広げる商法改正案は週明けに相次いで成立する見通しだが、金融ビッグバンに対応するための金融システム改革法案の中には7月1日施行予定の内容もあり、今国会中に成立しないと多大な影響が出る。国連平和維持活動(PKO)協力法改正案、組織犯罪対策関連3法案、旧国鉄長期債務処理関連法案などは国会に提出されたものの、審議入りのメドは立っていない。
 日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)関連法案、公務員倫理法案、政治腐敗防止法案などは現在、国会提出に先立つ与党内調整の段階で足踏みしている状況だ。
 財革法の改正問題も焦点。政府・与党は当初予算案成立後、財政構造改革会議を開催して補正予算案の編成作業と並行して財革法改正問題を協議する方針。自民党内では当初予算案成立を機に積極財政路線に転換、大型の所得税減税に踏み切るべきだとする意見が強い。その場合、サミット後に財革法改正案を国会提出し、補正予算案とともに会期内成立を目指すことになり、終盤国会の審議日程はますます窮屈になる。

(国公労連「行革闘争ニュース98年3月31日付より

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