○行革特別委・運輸省、建設省、郵政省、自治省、総務庁等にかかわる審議(5/7午前)
「国土交通省は公共事業に力点」西川議員(自由)
「公共事業の見直しができるのか」中島議員(共産)
「ブロック機関を残すのはなぜか?」上田議員(平和改革)
「財政悪化した自治体への関与は?」石垣議員(自由)
「郵政事業のユニバーサルサービス確保だけでは不十分」矢島議員(共産)
5月7日午前中の衆議院行革特別委員会は、西川太一(自由)、中島武敏(共産)、上田勇(平和改革)、石垣一雄(自由)、矢島恒夫(共産)の5名が質問に立ち、国土交通省にかかわって、公共事業問題や調整機能、郵便事業、補助金、地方支分部局の再建や機能などについて質問を行いました。
1 西川太一議員(自由党)
同議員は、@国土交通省で道路行政と運輸行政が一緒になってタテ割りの実態は変わらないのではないか、A総合的行政といいながら、公共事業=インフラ整備に力点がおかれ、生活者の観点からのソフトな行政が確保できるのか、Bこの機会に特定財源制度を大胆に見直してはどうか、C調整官庁としての国土庁の機能は再編によってどう変わるのか、D政府全体のスリム化の理念から不補充主義についての政府の決意はどうか−−などと政府側の見解を求めました。
これに対しての政府側の答弁(要旨)は以下の通り。
1)単純な公共事業の一元化ではなく、執行のやり方の整理合理化、地方支分部局の役割・組織などもこのさい見直す(総務庁長官)。道路を含めた陸海空の大きな範囲の交通網の整備を少子・地方分権などの変化、環境面や業者の利便性も考えながら整備する必要がある(運輸大臣)。
2)ハード・ソフト両面からの交通体系の整備は、行革会議の最終報告でも入念に踏まえられた。組織が大きくなるので、可能なものはより総合的一貫した政策形成でこのさい整備していく(総務庁長官)。
3)道路財源は立ち後れた道路整備を計画的に進めるためのもの。安易に転用することは納税者の理解がえられないのでは(建設大臣)。受益と負担の適正なバランスの問題があり、別の施設整備に回すには慎重な検討がいる。効率的で効果的な一貫した交通体系の整備が必要(運輸大臣)。
4)中央防災会議が内閣に一括されるが、国土交通省は国土庁を一つの大きな母胎とし設置される。新たな所掌事務等は、各府、各省の任務、行政機能を踏まえながら推進本部で設置法段階で整備される(総務庁長官)。国土庁の担当の全総など総合的計画は引き続き(国土交通省)が担当するし、今後は計画と実施が一体となり、むしろ実効性が上がる(国土庁長官)。
5)世紀の大施策であり、幅広く研究し、知恵をしぼる。国会の意思が決まれば不退転の姿勢で臨む(総務庁長官)。
2 中島武敏議員(共産党)
同議員は、@国土交通省でムダや浪費につながる公共事業の見直しができるのか(苫小牧東部開発プロジェクトなどを例に)、A現在でも本四架橋など大型プロジェクトのつけを地方自治体に回しているのに、さらに6つの海峡、湾岸プロジェクトを継続するのか、B地方支分部局に公共事業の執行権を移すことが、かえって北海道開発庁の例にみるような利権構造をもたらすのではないか、C運輸省は規制緩和の一環として需給調整行政を撤廃するというが、それで国民の足を守れるのか−−などと質問。
これに対し、政府側は以下のように答弁しました。
1)今回の省庁再編は広い視野で効率的で簡素な行政体系を確立することにあり、公共事業の効率性についても、この千載一遇のチャンスに国と地方の分担含め一段と検討する。国がやるべきは企画・立案とか広域事業に限り、他はできるだけ地方に任せる(総務庁長官)。
類似の公共事業の調整、再評価の観点に努めている。調整としては公共事業官庁の次官メンバーで連絡会議を開いているほか、道路や汚水施設など個別にも連絡会議を開いている。再評価は、新たな再評価システムについて実施要領を3月に公表した。計画決定後5年経過して未着あるいは10年後も継続中のものは再評価を行い、停止か中止することにしている(建設大臣)。苫小牧は6月までに結論をだす。昭和46年にスタートし、備蓄基地など一定の機能は果たしたが、社会経済情勢の変化で厳しくなっており、時代に合った検討は必要と考える(北海道開発庁長官)
2)6海峡・湾口プロジェクトは平成6年に調査し、環境への影響、費用と効果の問題などあり、コンセンサスが必要(建設大臣)。
3)本省に企画立案部門を残し、地域の実情に応じた実施は地方支分部局で決定できるよう、執行権をできるだけ地方支分部局の長に委任し、予算も一括して配分する(総務庁長官)。行革の目標に縦割りの排除があるが、それがなく、国の直轄公共事業を一括しているフが北海道開発庁だ(北海道開発庁長官)。
4)一昨年の12月に運輸分野の需給調整規制の廃止を3〜5年掛けてやることを決めた。一大転換だが、そのための生活交通、消費者保護などの政策が必要となり、審議会に諮問している。それを踏まえ、廃止後の政策に対処したい(運輸大臣)。
3 上田勇議員(平和改革)
同議員は、@地方支分部局の整理方針(ブロック単位に1つ、都道府県に1つ)とはどういうことか、またブロック機関を残す理由は何か、A補助金の性格や補助金交付の手続きはどう変わるのか、B省庁の調整での縦割りはなくならないのではないか。Cアウトソーシングと言いながら、公益法人への民間委託の余地を残しているのは問題ではないか−−などと質問しました。
これに対し政府側は次のように答弁しました。
1)最終報告では可能な限り統合化するとしているが、それぞれの機関の業務の性質や内容を考慮することは当然。その点を精査のうえ今後検討するが、第22条6項の運輸省、港湾、建設省は原則統合。49条関係は運輸関係で59カ所あり、技術的・専門的な機関もあり、統合が可能なのかというものもある。具体的にはこの次の省庁再編時に吟味する(内閣審議官)。
地方分権でためらうことはない。残りの統一的・広域的なものは国がやるが、それも簡素・効率的にというのが、基礎的感覚だ。ブロック機関を含めた地方支分部局も国の機関であるが、これについては簡素効率的に統合を図ることにしている。これだけでも進歩であり、改革だ(総務庁長官)。
2)統合的補助金は公共事業関係を地方に移していくことから、決定事務は可能な限り地方支分部局の長と考えるべきだが、具体的にはこれからだ。統合的補助金は適切な目的を付与したものだが、目的、範囲や内容は今後の検討だ(内閣審議官)。
3)今回の適切な大括り再編で縦割りは是正され、類似、重複事業はできるだけ整理される。この観点から各省の業務も整理する。公共事業は厚生省のものもあり、行政目的からそうならざるをえないこともあるが、類似、重複事業の整理、連携などは進める必要がある。今回は省間の調整のための仕組みも設けることにしている(内閣審議官)。
調整の仕組みは次元がいろいろあり、公共事業の調整は各省間でやればよい。全体の調整の仕組みとしては、内閣官房が乗り出す必要を認めれば乗り出す(すべてについてやるわけにはいかないが)。省間の調整は各省がそれぞれの行政目的との関係で積極的に行うべきだし、現在の調整官庁はこれに吸収されたり、内閣府の一部に移される(内閣審議官)。
4)公益法人は民間だが、民間委託にあたっての留意点として、「効率が高まること」「長期間固定しない透明な手続きとすること」「定期的に見直すこと」を定めている。なお、公益法人の設置や補助金については、基準を設けてそれぞれ改革を進めている(内閣審議官)。
4 石垣一夫議員(自由党)
同議員は主に@再編後の交通安全対策の推進体制はどうなるのか、(1)国の収支不均衡の地方公共団体への関与(17条4項ハ)の意味とラスパイレス問題への対応方針、(2)通達依存行政の解消についての考え方、(3)郵政事業の「民営化」はないことを規定した(33条6項)意味−−などについて質しました。
政府側は、(1)再編後も交通安全対策は国家公安委員会の位置づけも含め国を挙げて積極推進の行政組織に組み込まれる必要がある(国家公安委員長)、(2)国の自治体への関与は現行では、一定規模以上の赤字団体へのものがあるが(起債制限など)、必要最小限であるべき。また経常収支比率など運営上のガイドラインもあるが、注意喚起に留まっている(自治省財政局長)。公務員給与の適正水準は国公を基準に、団体規模、地域の水準や、生計費など住民から支持されるものであるべきで、国の水準を上回る団体は制度と運用の見直しを要請している。(3)通達は法律の施行にともない発出される情報提供的なものも多く、事務の簡素化の観点からこれからも極力見直していく(自治省官房長)。(4)公社への移行を確実にするために当面郵政事業庁となる。したがってこれは民営化ではないことをきちんと記したもの。また、職員に公務員身分を付与する(8項)のは、組織法からも総定員法からも対象外となることから、新たな公務員の概念を特別に付与する根拠をあたえるもの(総務庁長官)。郵便事業はユニバーサル・サービスを確保を前提に民間参入の条件を検討するとしているが、これは民営化ではない(郵政大臣)−−などと答弁しました。
5 矢島恒夫(共産党)
同議員は郵便事業への民間参入の規定(33条3項「政府は、郵政事業への民間事業者の参入について、その具体的条件の検討に入るものとする」)を中心に質問。(1)郵便法5条(郵便事業の独占規定)などとの関係、(2)前提となるユニバーサル・サービスの定義、(3)民間参入とユニバーサル・サービスが矛盾すること−−などを質しました。
これに対する政府側の答弁は以下の通り。
1)基本法案には民間の参入についての検討が入っている。郵便法5条を含め具体的な方向は今後検討する(総務庁長官)。郵便法5条も各条も含め検討が必要だが、諸外国で参入を認めているものもあるが、ユニバーサル・サービスの確保義務を規定している。この事情をまず調べて法令全般の検討をしたい(郵務局長)。
2)定義として明確に何をさすかというものはない。外国の例を参考に調査中だが、基本は不採算地域を含め均一料金でサービスを提供、ポスト投函制というイメージか(郵務局長)。
3)民間参入で困難な問題を伴う。採算地域だけのサービスを認めると半額でもよくなるが、地方は3倍にもあがる。外国ではスト多発、赤字部門に限って認めた例がある。これを参考に検討する(郵務局長)。ポストを含めサービスの低下を来さないことを深く胸に刻み、機械化による経費や人件費節減に努め、近代郵便制度の基本であるユニバーサル・サービスを維持するための知恵をしぼる(郵政大臣)。
○行革特別委・一般質問(5/7午後)
「少なくとも10%の定員削減は必要」島津議員(民主)
「行政評価システムの確立を」中桐議員(民主)
「国立病院の統廃合は?」福島議員(平和・改革)
午後は一般質疑で、本会議散会後、16:00より行われました。民主党の島津尚純議員及び中桐伸五議員、次いで平和・改革の福島豊議員が質問にたちました。
島津議員(民主党)は、「500兆円を超える財政赤字を抱える日本の危機的状況の下で、無駄をなくさなければいけない。中央・地方あわせてどのくらいの歳出削減ができるのか。また、公務員の数を10年間で1割減らすといっているが、『火だるまと』いうにはあまりに小さい数字ではないか。もっと高い目標をたてるべきだ」と質しました。
これに対し、小里総務庁長官は「10年間の定員削減は移行後、あらたな削減はこれを可能な限り大きく積み上げる。少なくとも10%。スリム化は必要。財政的な効果はあらかじめ定量的にあらわすのは困難だ」と答弁。
また島津議員は「政治家主導の行革に期待している」と述べたうえで、より一層の定員削減を主張しました。
地方分権について島津議員は「徹底した地方分権と規制緩和が必要」という意見に対し、小里長官は「これまで4次にわたる分権委員会を進めてきたが、地方分権推進計画の概要が今月末にはできると思う。今政治関係筋でまとめている。」と答弁。なお、民主党は本日、地方分権の政府に対する対案を提出したそうです。
関連で中桐議員(民主党)は行革課題の「政策評価」について質問。アメリカを例にあげながら、「国民の行政に対する不信は高まっている。アメリカでも同じ状況。まず、行政官がどのような仕事をしていくのか、国民の立場に立った評価のものさしは作るのに時間がかかる。アメリカでも10年がかりで、最終的には全省庁で達成するという計画を策定している。行革のツールが『行政評価』である。今回政策評価といってもみえてこない。省庁間の相互評価はなにか?たとえば子供の安全にしても、一つの省庁だけではなく、横断的に各省庁が関連している。いくら省庁を再編しても、原則とツール、それを支えるためのシステムを確立しないとうまくいかない。どうやって効率よく、透明性をもってやるのか政府の案ではよくわからない」と述べ、さらに、労働基準監督官の業務内容を例に挙げながら質問。そして、中桐議員は、「省庁の再編ありきでは手順がまちがっている。行革の基本である、仕事の改善、プログラムをつくっていくべきではないか」と質しました。これに対し小里長官は、「日常の仕事の見直しや意識は必要。再評価システムは時間がかかるという趣旨はわかるが、それを構築するために省庁再編はまてない」と答弁し、内閣審議官は、「省庁の枠を越えて政府内部の評価をしていく。政策評価のシステムを確立する意義は大きい。予算編成過程も含めて生かしていきたい。行政監察の機能も活用していきたい。政策評価、施策評価はさまざまな次元の評価のレベルがある。基本法成立後、体制を整えて、推進本部をおいてシステム作りをしていきたい。」などと答弁しました。 最後に中桐議員は「行政官は法律にもとづいて仕事をしている。ノウハウが古いシステムを固定している。たとえば企業経営・マネージメント・顧客調査等にかかわる人を導入しないとうまくいかないのではないか。公共事業などの大型プロジェクトは、専門的な評価のシステムをつくる必要性がある。外に評価する機関・組織が必要。政治家がリーダーシップをとらないと行政改革は難しい。行政外の人たちも含めた評価委員会をつくり、本気で取り組んでほしい」と述べました。
福島議員(平和・改革)も政策評価について質問、また、国家公務員の一括管理についての質問をしたあと、国立病院・療養所の統廃合の今後の状況及び国立研究機関の再編について触れましたが、あくまでも政府の行革基本法案の意向に添った、形式的な質問に終始しました。
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