行革法案の採決強行は絶対に許さない--冷たい雨の降るなか「座り込み行動」を決行
【国公労連「行革闘争ニュース」98年5月11日付より】

 行革特別委員会での採決強行がねらわれた11日、国公労連は、昼休みの議員面会所集会につづき、国会前の座り込み行動にとりくみました。
 公務共闘主催で開催された衆議院議員面会所の集会は、公務共闘の各組合の代表をふくめ全体で約150名が参加しました。集会では、福島議長(自治労連委員長)の主催者あいさつのあと、日本共産党の平賀衆議院議員から国会情勢が報告され、衆議院で大づめをむかえている「行革基本法」の審議のもようが集会参加者に生々しく伝えられました。各組合の決意表明では、郵産労・福祉保育労などから発言があり、国公労連からは、全法務の内藤副委員長が決意表明しました。
 昼休みの議員面会所の集会のあと、国公労連の参加者は、そのまま国会議員会館前に移動し、「座り込み行動」をつづけました。折からのどんよりとした曇り空は、昼の2時をすぎるころから雨が降りだし、あいにくの天候のなかの行動となりました。
 行動では、国公労連藤田委員長が主催者あいさつし、「政府は明日の本会議で法案の衆議院通過をねらっているが、たとえ強行されたとしても、参議院でのたたかいへと続く。廃案をめざして最後の最後まで奮闘しよう」と呼びかけました。西田書記長の闘争報告のあと、各単組の決意表明や県国公・職場からのメッセージの紹介や、シュプレヒコールなどをくりかえし、冷たい雨をついて国会前で座り込みをつづけました。  悪天候にもかかわらず、座り込みには150名が参加、採決強行をねらう政府にたいする怒りと、「橋本行革」を絶対に許さない決意を力強く示しました。

 ○民主党提案の「行政改革基本法案」を審議

 5月11日午前の衆議院・行革特別委員会は、7日に提案された民主党提案の全12条からなる「行政改革基本法案」に対する各党質疑を実施しました。提案した民主党からは、伊藤忠治、枝野幸男、北脇保之の各議員が答弁をおこないました。
 山口俊一議員(自民)は、「基本法案が抽象論、建前論に終始しており空虚だというなら、民主党案も同様」と述べ、中央政府の役割について政府案との差異をただしました。答弁に立った伊藤議員は、「政府案のプログラム法を基本に対案を作成、改革を行うには避けて通れない国の権限を地方と市場に移し、市民に振り分け、中央政府の役割を限定する。政治家が行政をコントロールできるために副大臣制の新設を提起した」と述べました。
 平野博文議員(民主)は、提案者の一人として質問し、「政府案は抽象的で不透明、内閣機能の強化が主体になっている、抜本的にメスを入れ、国民のニーズにあった行政の仕組みは大事、政府案との違いは何か」と質問。北脇議員は「キャッチアップ型社会から自由、安心の社会、身近なことは身近で、自分のことは自分でやることが民主主義。今は国の地方へのしばりが大きい、地方の職員を減らし、国と地方の区分けを計り具体的には行革調査会で2年かけて検討する」と説明しました。
 若松謙維議員(平和・改革)は、「考え方は基本的に一致している」として、「調査会と特別委員会とはどう違うのか」と質問。北脇議員は「昭和22年の両院法規委員会を参考に考えている。政治と行政を分け癒着をただす」と回答。
 中井ひろし議員(自由)は、「民主党法案は残念ながらおつきあいできない。行革の考え方はサンセット方式、副大臣制などは賛成するが時間がかかりすぎることに問題。国と地方の配分はどこでやるのか。基本的に党内はどこで一致しているか。地方分権で自治体の合併をしないでやっても行革にならない」とのべ、具体的に財源の配分、税の徴収について質問をおこないました。答弁に立った北脇議員は合併の必要性を認めました。
 平賀高成議員(共産)は、「調査会をもうけて2年間議論することは賛成だが、その他は我が党の方向とは一致しているとはいいがたい」とし、「行革の発端は癒着、腐敗をただすことだったが、提案されたものはそうなっていない」と追及。伊藤議員は「政府案は真の改革がむずかしいと考え対案を出した」、枝野議員は「地方分権で癒着構造をなくせる」と答弁しました。

 ○総括質問後、採決強行で政府案可決

 午後の委員会では総括質疑が行われました。
 冒頭質問に立った牧野 隆守議員(自民党)は、行革基本法は大きな痛みを伴うことは十分承知しているが、不退転の決意で実施を求めるとの立場を明らかにし、(1)速やかに内閣機能が果たせるように、事務次官会議や各省庁権限という官僚主導の事前調整を改めよ。(2)各省庁の権限行使にかかわる各省各レベルの覚え書きによる行政はやめよ。(3)中央省庁再編とあわせて独立法人の制度化、規制緩和、定員削減など行政のスリム化、効率化、透明性を具体的に実行せよ。C地方分権は市町村の合併が基礎的条件となるが、権限だけでなく予算もふくめ推進せよ、と迫りました。
 これに対して、政府側は、(1)事務次官会議等は法令の定めのないもので、あくまで事務的な最終確認であり、官主導との指摘は当たらない(村岡官房長官)。(2)国民にわからない、外部に出して困る覚え書きはすべきでないとの立場で、現在、実態調査し検討をすすめている(村岡官房長官)。(3)行革基本法は行政のスリム化、効率化、透明性を最大の目的としており、厳しい抵抗もあるが、きちんと実行していきたい(小里総務長官)。(4)目下、地方分権推進委員会において市町村合併の具体的対象を検討中であり、近々答申が出されるので、それをふまえて努力する(小里総務長官)、と答えました。

 つづいて、質問に立った民主党の伊藤忠治議員は行政改革の基本認識について、現在の行政の問題点、政治や国会のリーダーシップの欠如やそれらの原因を指摘したうえで、「この国のかたち」の再構築のためには、国家機構を改革し、「国民主権」型の行政をめざすべきと迫りました。これに対して、橋本首相は、現在の行政の問題点の原因について「戦後混乱期の中で、資源の重点配分などに中央政府が果たした役割は否定すべきではないが、民間が成長をしても行政の本質が変わらなかったことが、原因の一つ」と述べたうえで、行政改革が必要となる要因として「人口構成の変化、少子・高齢化の急速な進展がある」と表明。しかし、基本法において「官民の役割分担の見直しや中央から地方への権限の委譲を図り、行政のスリム化・効率化を柱としている点で、(民主党と)主張は変わらない」と答えました。さらに伊藤議員は、中央省庁の再編に関わり「中央から地方への権限委譲、官民の役割分担の明確化の議論を具体的に先行させ、国の役割を限定的に確定させたあとに再編すべきではないか」と質しました。これに対して、橋本首相は、「規制緩和については、、すでに4月1日から新たな規制緩和推進3カ年計画がスタート、進行しているし、地方分権についても近々地方分権推進計画を公表し、進めていく体制になっている」と回答しました。
 規制緩和について、伊藤議員は「これまでのように、特殊法人をつくって(官僚が)天下りして処理していくような規制緩和にならないように注意を払うべき。また、最低限残される規制についても時限制とすべきだ」と迫りました。これに対して小里総務庁長官は「いたずらに既得権益を守るといったことにならないように政治が注意を払っていかなければならないし、特殊法人についても、独立行政法人化や整理・合理化も含めて検討していかなければならない。(規制の)時限制については、にわかに賛否を表明できないが、参考にすべき議論だ」と回答しました。伊藤議員は、規制緩和の推進を迫る一方、豊島産廃問題を例に出し、「行政サービスが住民福祉から乖離することを是正することは国の役割。こうしたことを繰り返さないためにも産廃にたいする規制は強化すべきだ」と迫りました。これに対して、大木環境庁長官は「そのような規制の強化は当然のことだ」と回答しました。
 また、公務員制度について、中央人事行政機関の役割分担の見直し方向について質したところ、中川総務庁人事局長は、「基本的には公務員制度調査会で出されている意見にそって具体的に検討していく」と回答、公務員の定員管理について、河野総務庁行政管理局長は「一般的に共通の具体的な算出根拠はない、行政需要に応じた積み上げ」としたうえで、公務員数を10年間で10%削減する前提となる数字は、2001年までにスリム化・効率化を進めたうえで、さらにそれ以降の削減目標だと回答しました。
 また、関連する質問に立った同じく民主党の池田元久議員は、金融と財政の分離について、この間の議論で「弾力的な財政出動の必要性」という趣旨から「金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案については、今後検討」として当面分離されないことにたいして、「財政出動が必要であるにしても、金融庁が財務省と破綻処理のスキームについて協議すればよい。金融について財務省に残すべきではない」と質しました。これに対して橋本首相は、与党3党合意を受けて議論をし、法案にも盛り込んでいる。そのような金融の破綻処理や危機管理をしないですむ状況になればよいと思っている」と回答するにとどまりました。

   若松 謙維議員(平和改革)は、(1)中央省庁等改革推進本部に設置される第3者機関に民間人を登用することと、その位置づけ・権限を明確にせよ。(2)独立行政法人や定員削減によってどの程度スリム化・効率化がはかれるか金額で示せ、と述べました。これに対して、橋本首相は、(1)推進本部が機動的・弾力的に対応するには民間の第3者的立場でものを言う人が必要。拒否権をふくめ決定機関は推進本部が持ち、第3者には意見を反映してもらう。(2)現在、定削を行い、2001年にむけ独立行政法人化をすすめており、具体的な数字を出すことは困難だ。それらをふまえ2001年1月時点以降の目標を示している、と答えました。
 続いて平和改革の冨沢 篤紘議員が、(1)国が地方分権推進を地方に押しつけるるのでなく、地方版の推進委員会を常設し地方が自ら決定するようにすべきだ。(2)郵政三事業の特殊行政法人化は民営を圧迫する制度を温存するもの。国は民間の手助けに徹するべきだ。(3)財政と金融を分離し、財務省は主計と財政に限定すべきだ。また、公務員倫理法と情報公開法を早期に成立させよ、と質しました。これに対して、橋本首相は、@地方の考えは地方制度調査会や地方6団体でも真剣に議論している。介護保険制度の議論でも都道府県と市町村のぶつかり合いや財政豊かなところとそうでないところで意見がまちまち。地方分権推進委員会の第4次答申でもまとめることは非常にむずかいしい。A行革会議ではさまざまな意見があったが、最終的に国民感情をふまえ郵政事業庁とした。事業運営の限度額、預託廃止、郵便事業への民間参入などを評価してほしい、と答えました。

 つづいて質問に立った自由党の佐藤茂樹議員は、近々出される地方分権推進計画やすでにスタートしている新たな規制緩和3カ年計画が法案にどのように生かされているのかと質しました。それに対して小里総務庁長官は「地方分権や規制緩和が(行政改革の)車の両輪であるという認識のうえで、すでに具体化、実施しているものだ。今後の課題は見直しもあり得る」と回答しました。さらに、佐藤議員は「省庁再編は官民の役割分担、中央と地方の役割分担のそれぞれ明確化とセットでなければならない。まず国の行政の範囲を定めるべき」と迫りました。しかし、小里総務庁長官は「法案では政府の果たすべき役割も提起し、その考え方や検討の手順についても制度設計上示している。十分なものとは思っていないが、精力的に議論をしているし、考え方は(自由党と)変わらない」と回答しました。また、内部部局の削減について、地方分権推進計画も検討の要素になっているのかという質問に対して、小里長官は「大きな要素になるが、自治大臣などの意見も聞いていくことになる」と回答しました。
 さらに、行革推進本部の設置について、基本法制定後4カ月以内に設置とされていることに対して、なぜ時間がかかるのかと質したのに対して、橋本総理は「実際に4カ月もかかるとはおもっていないが、例えば民間からどのような人に来てもらえるのかによって、どのようなことをやってもらえるのかも異なるし、そもそも来ていただけるのかどうかも考えれば、ある程度の時間は必要だと思う」、また小里長官は「できるだけ機敏に作業をしていく」と回答しました。また、第3者的に検討する機関の設置について、地方分権などについても当該機関がきちんと意見をいえるだけでなく、チェック機能を果たせるようなものとして検討すべき、と主張しました。これに対して橋本首相は「地方分権については、計画を公表したら、これを確実に実施する。そのためには、相当数の法改正が必要になるが、来年の通常国会に関連法を提出する。また地方分権推進委員会は再来年まで任期があり、それが現存している間にそれとは別の組織を設置するような議論をするのは失礼になるのではないか」と回答しました。

   松本善明議員(共産党)は、(1)小里総務長官は参考人質疑で基本法について、「いろいろ欠陥があるが」と答えているが、21世紀を展望した国づくりにはほど遠いものだ。(2)500兆円もの負の遺産の解決が提起されているが、政府の経済対策である財革法がすでに崩れ、恒久減税をやれば完全に破綻する。にもかかわらず5全総により、さらに負の遺産を増やそうとしている。今の基本法は負の遺産解決に役立つと考えられない。(3)国家100年の大系をつくると言うなら、食糧の自給率向上を言及すべきだ。(4)第32条で独立行政法人の対象を政策実施にかかわるものと規定しているが、国家公務員の75%が国家的大リストラ計画の対象になりうる。国家公務員にとって大問題だけでなく、公務の責任放棄につながる。(5)21世紀を迎える時点で日本に米軍基地があるのか、と追及しました。
 これに対して、(1)基本法に欠陥あがあるとは言っていない、完全無欠という気負いはないという主旨で述べたものだ。(2)考え方が大きくずれている。財革法の必要は否定されていないし、そのうえで緊急経済対応策を講じることも否定しない。(3)行革最終答申は、食糧の供給確保策をかかげているし、もともと食糧の質量の確保、自給率の向上の必要性を訴えてきている。(4)独立行政法人の対象が70〜80%というが、無原則的に言っていない。国民の合意を得てすすめるとの原則は理解してもらいたい。(5)日米安保条約は極東とアジアの安定に寄与しており、21世紀を迎える時点で必要だと考えている。

 最後に総括質疑に立った社民党の深田肇議員は「国民が行革にどんな印象をもっているのかが問題だ。行革が必要だという声はあるが、率直に言ってまだその内容がよくわからない、ということから、支持を得ているとは言い難い。法案成立後に徹底的にその内容を説明していくことが必要だ」と前置きしたうえで、「全国民的な理解を得る出発点としても、官公庁現場に働く公務員の立場に配慮することが必要。特に、よくわからないといわれるもののうち、独立行政法人についてが一番大きな問題。労働組合との事前の協議などの配慮を。また、スリム化に関しても、雇用問題への配慮を」と求めたのに対し、小里総務庁長官は「最終報告をまとめるにあたっても配慮してきたし、法案が成立し具体的な検討や独立行政法人化の作業においても健全な労使関係は重視していかなければならない。強制的な解雇や強制配転はあってはならない」と回答しました。また、深田議員が「公共事業など巨大官庁ができるなかで、地方分権との関係で財源も含めて、大胆な地方自治体への権限委譲をすべきだ」と質したのに対し、橋本首相は「事業を進めるうえで国と地方の適切な役割分担を行うことになれば、権限の委譲も当然出てくる。国の事業は基礎的、広域的なもの、それ以外は自治体の事業とする方向で見直しも進めている」と回答しました。
 以上の総括質疑が終了後、平和・改革の大口善徳議員から、大蔵省改革が不徹底との観点から@金融、為替管理部門を当面、財務省に置くことについて、「当面」の期限を2001年3月31日までとすること、A金融危機管理・破綻処理について、財務省の編成方針から除くこと、などとする修正提案が行われました。
 その後、民主党案、平和・改革修正案、政府案一括して討論が行われ、
 自民党・虎島和夫議員が政府案賛成、民主党案・平和改革修正案反対の立場から、
 民主党・北脇保之議員が政府案反対、民主党案賛成の立場から、
 平和・改革の若松謙維議員が、政府案・民主党案反対、修正提案賛成の立場から、
 自由党・佐々木洋平議員が政府案反対の立場から、
 日本共産党・平賀高成議員が政府案反対の立場から、
 それぞれ討論をおこないました。また、自由党・佐々木議員は民主党案、平和・改革修正案、それぞれに一部には同意できる部分もあるが、全体としては賛成しかねることを表明、日本共産党・平賀議員は民主党案、平和・改革修正案について、基本的な立場が異なるため、賛成できないことを表明しました。
 そのうえで、採決が行われ、政府案が賛成多数で、原案通り採決されました。

 また、採決後、法案に関わり、自民党、民主党、平和・改革、社民党から附帯決議が共同で提案され、小里総務庁長官が「提案された内容については、政府として配慮をしていく」ことを表明し、賛成多数で採択されました(附帯決議は別記)。

 【別記】中央省庁等改革基本法案に対する付帯決議(自民、民主、平和・改革、社民共同提案)

 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
 一 政府は、内外の社会経済情勢の変化を踏まえ、我が国の社会経済構造の転換を促進し、より自由かつ公正な社会の形成に資するため、中央省庁等改革による新たな体制の実現に向けて、不退転の決意で取り組むこと。
 一 国民負担の軽減を図るため、政府は、行政のスリム化、特に国の事務・事業の廃止等を含む見直し、公務員数の削減、府省の局・課・室数の削減を着実に実行すること。
 一 政府は、中央省庁等基本法案に基づく国の行政機関再編成の大前提となる、規制撤廃・緩和、地方分権の推進、公務員制度改革等について速やかに具体策を策定し、国会の審議に供すること。
 一 行政機関の編成は本来柔軟であるべきこと等から、政府は、今後再編成の具体化に当たっては、社会情勢の変化等を踏まえて柔軟に対応すること。
 一 各省設置法その他関係法律の立案に当たっては、事前裁量型の行政から明確なルールに基づいた行政への転換を目指して、各省の裁量による恣意的行政を排除し、行政指導の濫用を招くことのないよう、設置法の権限規定等の在り方について検討を行うこと。
 一 今後の中央省庁等改革の推進に当たって、中央省庁等改革推進本部に第三者的機関を設置する方向で積極的に検討すること。また、同機関は、中央省庁等改革基本法案に関する国会審議を踏まえ、中立・公正な立場から審議するものとすること。
 一 同機関の人選に当たっては、国会における議論を踏まえ、広く有識者や国民の意見を反映できるよう留意すること。
 一 独立行政法人制度の適用に当たっては、職員団体等、各方面の十分な理解を求めつつ行うこと。
 一 公務員の定員削減については、雇用問題に十分配慮して対応すること。
 以

以上


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