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○参院 行財政改革・税制特別委(6月3日午前) --省庁設置法、国土交通省、独立行政法人、推進本部について質疑 6月3日午前10時より、参議院では、全閣僚出席のもと行財政改革・税制特別委員会で「中央省庁等改革基本法案」の総括質疑が行われました。自民党の亀谷博昭議員の「省庁設置法を新しく作り直す場合、各省庁が持っている膨大な所掌事務があると思うが、その場合、国がやるべきものと、そうでないものと区別すべきと思うがどうか」の質問に対して、橋本首相は「今回の改革は、行政のスリム化を目的にしているので、基本法に則して新しい省庁を作るわけであるから、それにふさわしいものにしたい」と答えました。 国土交通省に関わって、亀谷議員は「運輸省や建設省、国土庁の所掌業務は膨大なもので、巨大官庁にになる懸念が指摘されている。国土交通省の所掌業務をどのようにスリム化するのか」とただしたのに対して、橋本首相は「巨大官庁ということがよく言われるが、現行の権限掌業務をそのままにして再編するわけではない。たとえば、建設省などは、国が行う公共事業を地方に移していくものが相当ある。国と地方の役割分担の明確化、上下の関係でなく対等の関係で進めていくということだ」と答えました。 自民党の国井正幸議員からは「独立行政法人の創設に当たって、一言で言えば、国民にとって、どういうメリットがあるか」との質問に対して、小里総務長官は「1つは、組織運営の原則を明確化することであり、2つには、独立行政法人は今までの特殊法人のように大臣等の意向に左右されるものではなく、自立的に運営が出来ること、3つには、企業会計原則を導入することになるので、職員のやる気を出させることが出来ること、そして、4つ目には、徹底した情報の公開だ」と回答しました。 国井議員は、「独立行政法人の創設は、これまでの特殊法人を総括して考えられているものだと思う。今までの特殊法人には様々な経営形態があった。収益をあげる団体、政府の補助金をただ使う団体などだ。独立行政法人の創設に当たっては、内容を十分に吟味してやってもらいたい。今ある特殊法人の中にはどうにもならないものがある。それが宇宙開発事業団だ。その決算書を見ると、累積の欠損は1兆7千億円、今期の欠損は、2千億円と言われている。研究開発型の団体は収益を生むものではないのだから、これは別途に財政を見ていかなければならないのではないか。他の特殊法人と同様の会計処理というのはおかしいのではないか」とただしました。 これに対して、谷垣科学技術庁長官は「宇宙開発事業団の平成8年度の累積欠損は、1兆8千億円。宇宙開発事業団はしょうもないことをやっているわけではない。H2型ロケットのように世界に比類ないものを作っている。研究技術開発法人は、別のルールの会計原則を持っているわけではなく、他の法人と同様の原則でやっている。出資金という形でやるのがいいか、あるいは補助金や交付金というやり方もあるが、法人に主体性を持たせるためには、補助金がよい。宇宙開発が事業団出資金という形を取っているのは、研究成果を政府が利用するという観点から、この形になっている」と答えました。 さらに、国井議員は、中央省庁の再編に当たっての推進体制について質問し、行革推進委員会の中に置かれる事務局は、国民に開かれた体制にしなければならない。事務局に国民の代表を入れると言うことだが、それだけで良いのか、もう一つ何か出来ないのかとただしました。これに対して、橋本首相は「この事務局に民間の方に多数入って頂こうと考えているが、それだけでよいとは考えていない。もう少し高い立場で推進本部の長である総理の私に様々な意見の具申や相談相手をしてくれる学識経験者や専門家に入ってもらおううと考えている」と答えました。引き続き、国井議員から、政策評価機能について画期的なことだとした上で、どういう手順で進めるか質問。これに対して、橋本首相は「政策の評価を客観的に行い、それを新政策を作るときに反映していく。その点で、誰が政策評価をしていくのか。より客観的な評価を持つ機能を具備するのは大変重要なことだ。この評価システムについては、基本法案成立後早急に作業を進めていきたい」と答えました。 ○参院行財政改革・税制特別委員会(6月3日午後) --行政スリム化、地方分権、行政の裁量権限、環境省の設置などについて質疑 午後の質疑で最初に質問に立った石田美栄(民主党)議員は、最初に少子化問題について北欧での取り組みを例にとりながら、今回の省庁再編のなかでこうした問題への対応が盛り込まれているのか質すとともに、男女共同参画についての法案での具体化について質しました。これに対して橋本首相は「70年代以降、少子・高齢化への対応ははじめていたが、これほど少子化が継続するとは想定していなかった」「男女共同参画の推進は行革のなかでも内閣の大きな使命。特定の省の任務として位置づけるのではなく、各省の政策に対して横断的な対応をしていく」と回答しました。 また、同議員が法案で示されている減量化について行政経費の削減目標の設定を求めたのに対して、小里総務庁長官は「組織定員の削減目標は示しているが、本法案成立後、規制緩和や地方分権など大きな改革や独立行政法人化で大きな変革も行われる。そうした作業の手続きなどを進めていない現時点では定量的な目標を示すのは困難。しかし、来年の通常国会で各省設置法などを提案するような中間的な段階で、その全容を国民に明らかにしていくことは必要だ」と回答しました。また、独立行政法人について、民営化への過程として位置づけているのかと質したのに対して、小里長官は「現段階で独立行政法人として検討の対象とされているもののなかには、業務の性格上、民営化にはなじまないものもあるが、民営化に向けて検討が必要なものもないとはいえない」と回答しました。 関連して、質問に立った小山峰男(民主党)議員が、地方分権問題に関わって地方自治体への補助金の整理をおこなえば、国の事務は相当整理され、体制もスリムにできるのではないかと質したのに対して、橋本首相は「機関委任事務を廃止し、法定受託事務にしていくことでは、国の事務量の変化は出ないが、一方、公共事業について国がおこなうべきもの以外は地方に権限を委譲していくなど補助金、負担金の整理をおこなえば、事務量の削減につながる」と認めました。また、その財源問題で、所得税の構造を見直したり、消費税の一部を地方に交付するなど、地方の一般財源化を求めたのに対しては、橋本首相は「それぞれの税の性格を十分に考える必要がある」と回答するにとどまりました。 続いて、海野義孝(公明)議員は、「法案には行政の裁量権限の見直しが盛り込まれておらず、官民のもたれあい構造を見直すよう、設置法段階であいまいな行政の裁量権限を削除すべきだ」と質しました。これに対して橋本首相は「今後、各省設置法の権限規定のあり方も検討することになるが、各省庁、労働組合の抵抗も激しく大変な作業になるだろう。この法案の目的を達成するために関連法案策定へのご協力をお願いしたい」と回答しました。また、関連して法案成立後の推進体制について、不十分であるとして、事務局編成にあたり広く民間にも人材を求めるべき、また官主導の行革とならないように、第三者機関の設置は欠かせない、と質しました。これに対して橋本首相は、「(第三者機関の設置は)必要だが、意志決定の責任は閣僚も参加している推進本部が負うべきだ」と回答しましたが、大筋で主張に理解を示しました。 続いて質問に立った清水澄子(社民党)議員は、環境行政の裏付けについて、法案の規定の具体的方策を質すとともに、戦略的な環境アセスメントの必要性を訴え、その法制化について質しました。これに対して小里総務庁長官は「法案のなかにも環境の保全に関わる制度は環境省として一元化するとともに、各省に対する勧告権を認めることなども規定している」「戦略的環境アセスメントに関する法制化はできるだけ早く具体化したい」と回答しました。さらに行政の裁量権限の削減問題について、その提携として大蔵省の姿勢を質したのに対し、松永蔵相は「基本的に透明なルールを確立するため、通達も全面的に見直しをして基本的には廃止していく」と回答、小里総務庁長官も「この機会の行政の裁量の余地を小さくするルールの検討は重要だ」と回答しました。 吉岡吉典(共産党)議員は、法案検討の前提として21世紀を展望して20世紀を総括し、歴史に学ぶ姿勢が必要だと切り出しました。これに対して、明治以降の社会変化を整理したうえで、吉岡議員の指摘に対して「一部、ものごとの見方について見解を異にするところもあるが、大きな認識の差はない」と回答しました。そのうえで吉岡議員は「法案には歴史の総括に基づく展望や現状分析がない、例えば内閣機能の強化が必要としているが、これまで、これがなかったために悔いを残したことがあるのか」と質しました。これに対して橋本首相は「複雑多岐にわたる行政課題に機敏に対応すべきとの観点から法案に盛り込んでいる」と回答するにとどまりました。さらに、法案中に「今後検討」としている項目が多いことに関わり、それならば検討を行ったら1府12省の枠組みが変わることもあるのかと質したのに対し、小里総務庁長官は「今後検討としているが、大枠としては国会として意志を確認する法案であり、1府12省の枠組みは変わりうることはないだろう」と回答しました。また、昨日の共産党の吉川春子議員の質問に対する伊吹労働大臣の答弁に関わり、速記録などに基,u「鼎j^討傍Y棘ネされてないことを答弁したことの事実関係を質したのに対して、小里総務庁長官、伊吹労働大臣はそれぞれ「質問の趣旨に対して答弁をしたにすぎない」と事実関係の確認を回避し、発言の解釈に問題をすりかえる答弁をおこないました。さらに小里総務庁長官は「(独立行政法人などの検討対象の)累計を示していることは、それらすべての行政の淘汰を意味するものではない」と答弁しました。 続いて、質問に立った平野貞夫(自由党)議員は、本法案が首相が会長を務める行革会議の最終報告の実現をめざすことを目的とすることに対して、為すべきことをなすのに行革会議の報告の実現とするような隠れ蓑は使うべきではない、法案としての体をなしていない、と指摘しました。また、外務省の任務のなかに国益の追求、との文言があることについて、現在の政権がその立場で施策をおこなっているのか疑問を呈しました。これに対して橋本首相は「国益の追求ということは、外交や安全保障、経済などさまざまなものの背景にあってしかるべきものだ」と答弁するにとどまりました。 つづいて、佐藤道夫(二院クラブ)議員は、旧国鉄公社の破綻による民営化の過程での当時運輸大臣だった橋本首相の「公社制の限界」という認識について、現時点の確認を求めたうえで、公社制の限界を口にしながら、なぜ今、郵政事業について公社化を持ち出したのか、と質しました。これに対して、橋本首相は「かつての三公社は自主的な裁量が許されないなかでの独占の形態だったが、今回は、企画部門と実施部門を分離し、独立採算を基本に経営の弾力性を認めるもので性格が異なる」と答弁しました。佐藤議員はさらに、郵政公社の法的性格について、その業務が国の行政権の行使にあたるのか確認したうえで、郵政公社に対する国務大臣の監督権限が「法令に定めるものに限る」と限定されていることに対して、業務にたいする監督権限が限定的にしか認められていない内閣が国会に対してどうして責任を負うことができるのか、国会権限の軽視、憲法違反だと追及しました。これに対して大森内閣法制局長官は「郵政公社の業務は国の事務とはいえ、国の企業としての事務であるということがポイントで、それに対する内閣の責任は法案の規定でも全うできる」と答弁しました。,u刋ネw) 本日の最後に質問に立った奥村展三(さきがけ)議員は、環境省の設置に関わり、児童に対する地方での環境学習の実践を例示しながら、国においても国有林の利用や農業体験などでの自然体験学習の取り組みを求めました。これに対して、島村農林水産大臣、町村文部大臣は、その趣旨に賛意を示し、関連する省庁と連携をとってやっていきたいと答弁、大木環境庁長官も国立・国定公園の活用などで取り組みを示唆しましたが、国が一律的な取り組みを形作るのではなく、地域がおこなうことを手助けしていくべきだ、との見解を示しました。 |