約100名で国会前座り込み2日目--自治労連、公務共闘、全労連が激励あいさつ

【国公労連「行革闘争ニュース」98年6月5日付より】


 曇り空の下、行革基本法案の廃案を実現するため、2日目の国会前座り込み行動を13時30分から15時30分までを実施しました。
 主催者挨拶をおこなった国公労連の藤田委員長は、「いよいよ重要な局面になった。結束して最後まで奮闘しよう」と訴えました。
 この行動に自治労連の伊藤副委員長、公務共闘の吉田事務局長、全労連の藤吉事務局員が激励ののあいさつをおこないました。また、全国の国公の仲間から寄せられたメッセージが読み上げられました。座り込み行動と並行して、行革法案反対、慎重審議を訴える参議院議員への要請行動を実施しました。

 □ゼネコン型公共事業を放置し国と地方の役割分担だけを強調
  (参議院 行財政改革税制特別委・6月5日午前の審議)

 参議院の行革特別委員会は5日、総括質疑をつづけました。午前中の質問に立ったのは、民主党の竹村泰子議員、公明の渡辺孝男議員、共産党の吉岡吉典議員など6名です。
 国土交通省に関して質問した竹村氏は、「予算10兆円の巨大な利権を持つ公共事業官庁が誕生する。ムダな公共事業がいっそう加速されるのではないか」と、省庁統合に対する懸念をあらわし、政府の考え方をただしました。
 橋本首相は、「公共事業に関しては、国と地方の役割分担が必要だ。国は、全国的かつ基礎的なものの企画・立案にたずさわる。実施にあたっては、地方の裁量にまかせ、国からは統合的な補助金を交付する。巨大な利権が集中することはない」とし、従来の回答をくりかえすのみで、ムダと浪費のゼネコン型公共事業の見直しにはいっさい言及しませんでした。
 環境省にかかわって質問したのは、竹村氏と公明の渡辺氏の二人です。竹村氏は、「省組織に格上げしても、現状では予算が少なすぎる。揮発油税を環境行政予算にまわすことなども検討を」と要望しました。また、公明の渡辺氏は、「ダイオキシンや環境ホルモンなどの問題を通して、最近は環境行政への不信感が高まっている。国民の信頼の確保こそ必要」としたうえで、環境省の役割をただしました。
 これに対して、「揮発油税の活用も一つの選択肢としてはあるが、短絡的でなく、財源についての十分な検討が必要だ」(橋本首相)、「タテ割行政のなかで責任がはっきりしていない現状をあらため、環境行政を一元的にあつかうことによって、迅速かつ明確に、効果的に対応することが再編の目的だ」(大木環境庁長官)と答弁しましたが、命と健康をうばう環境破壊や、日本が世界に果たす環境保全の責任などについてはしめされず、「環境省」の役割についても明確な答弁はありませんでした。
 共産党の吉岡議員は、税制など所得再配分機能について質問しました。昨日(4日)の参考人質疑において、紺谷典子参考人が「市場原理が貫徹されればされるほど、国の所得再配分の役割はむしろ大きくなる」と意見を述べたことを示し、吉岡氏は、「行革会議の最終報告でふれている所得再配分機能の縮小は、弱肉強食の原始的な資本主義へ逆もどりさせるもの」ときびしく追及しました。
 小里総務庁長官は、「参考人の意見はきわめて常識的であり、参考になることをきかせてもらった」などと質問をはぐらかし、橋本首相も、「国の所得再配分機能を絶対に後退させない立場をつらぬく」などと答弁しましたが、実際には、法人税や高額納税者の所得税の税率を引き下げ、いっぽうでは消費税を引き上げるなど、まさに弱肉強食の施策を行っているのは政府自身です。そのことを棚に上げ、国の役割は後退させないなどと強弁する態度はとうてい認められません。
 これらの審議を通して、国民生活を守るうえで、国の果たすべき役割の重要性があらためて明らかとなっています。総括質疑はこれで終了し、午後からは、各省大臣の出席する「集中審議」へとうつりました。

 □5日午後の行財政改革・税制特別委の審議
   --総理府、内閣官房、自治、国家公安に、郵政、総務庁関係集中審議

 5日午後1時30分からは、総理府、内閣官房、自治、国家公安委員会、郵政、総務庁などにかかわる集中審議がおこなわれました。
 最初に質問にたった海老原義彦議員(自民党)は、「中央省庁等改革基本法は、悪文だらけで国民にわかりづらい」と批判した上で、以下のような質疑をおこないました。
海老原議員 府省間の調整にかわって、「総合調整」、「一元的調整」、「調整」などの書き分けがされている。法28条の調整システムともかかわって、どのような違いがあるのか。総務庁長官 内閣官房、内閣府の機能にかかわってのみ「総合調整」の概念を使っている。対等関係にある省間の「調整」とは異なるからだ。
内閣審議官 法28条の調整システムは、新しい行政機能であり、すべての政策調整に適用出来るよう検討する。
   いずれの調整も、積極的調整(調整機関による指導や勧告など)が基本であり、そのためにも企画・立案の機能を備えたものとして考えている。
総理大臣 何を内閣官房の総合調整の対象とするかは固定的ではなく、必要に応じて弾力的に対応すべきと考えている。
海老原議員 事後評価である政策評価は、どんな仕組み、手法でおこなうのか。行政内部の評価だけでは不十分だ。
総務庁長官 政策点検をしなければならないとする仕組みを作ることが大切。国会による行政監視、政策評価のあり方は国会で論議を。
海老原議員 公務員の人事管理は、結局一括採用につきるのではないか。国家全体を見ることの出来ない公務員は必要ない。
総理大臣 縦割り行政是正の観点から、一括管理を進めていく。一括採用は検討課題ではあるが、行革会議の中では専門性の高い職種での採用等で障害があることが指摘されている。
   続いて質問にたった朝日俊弘議員(民主党)は、「中央省庁等改革基本法案は、地方分権推進を阻害する恐れがある」と批判し、次のような質疑をおこないました。
朝日議員 各省の編成方針で、国土交通省や農水省では地方分権が積極的に掲げられているが、環境省や労働福祉省では記述もされていない。
   省庁再編及び地方分権のスケジュールを聞きたい。
総務庁長官外 地方分権関連法案は、先の推進計画に基づき99年の通常国会に出す。省庁再編関連法案は、基本法の公布、政省令の公布を経て推進本部の設置となる。法案は、99年の3〜4月(後に首相が作業の困難さをのべて答弁を修正)に提出し、2000年度予算では具体的な措置を講ずるスケジュールでいきたい。
   省庁再編の前提としての地方分権は、すべての省編成の前提だ。
朝日議員 最終報告では道州制にも言及している。行き着くところ財源の問題が大きいが、今後の地方分権の検討機関をどのように考えているか。
総理大臣外 地方分権推進委員会の任期が2000年7月まであり、ここで分権推進のチェック、推進の役割が果たしてもらえる。
   財源問題は、交付税、地方消費税、法人事業税などのあり方を検討しなければならない。分権の受け皿は、広域自治体か合併かは自治体の判断だが、行政改革と一体で新たなあり方を検討すべきだと考えている。
 牛嶋正議員(公明)は省庁再編と地方行政との関連を中心に追求。地方行革推進計画を含めた地方の事務減量合理化の議論が国の事務である機関委任事務中心になっていること、地方分権の推進のためには地方の自主財源確保や行政能力育成が前提となると指摘しました。これに対し、政府側は「各自治体が行政能力育成のために環境整備や行政規模の拡大などにとりくんでほしい」(上杉自治大臣)、「機関委任事務問題に議論が偏ったのは地方6団体の共通の要求がそうだったから。中央省庁が蓄積している企画立案のノウハウを地方に移植することが地方分権のカギ」(橋本首相)などと答弁しました。
 渡辺四郎議員(社民)も地方分権の観点から、基本法案17条の4を中心に質問。国の関与を縮小するとしながらまだ残り、法定受託業務が増えていること、住民投票に消極的だし、県の収容委員会の形骸化し、市町村合併を強調している、などの問題があると指摘。さらに地方事務官制度について、地方分権推進委員会の勧告にもかかわらず住民に身近な行政は地方でやるべきだと主張しました。
 政府側は「国の関与に関する新たなルールを確立し、タテの主従関係とか中央集権といわれるような在り方を転換しなければならない。その大改革を進める上で留意すべきは、事務の大半をなす福祉、教育、公共事業をどう考えるか、租税比率をどうするかなどがの諸問題があり、それを念頭に適切に対処する」(上杉自治大臣)。「地方分権推進計画を着実に進めることが前提」(阪野内閣審議官)、「地方事務官問題は分権推進委員会の勧告によって国が直接執行ということになったので理解願いたい」(上杉自治大臣)などと答弁しました。
 吉川春子議員(共産)は内閣機能強化問題、とりわけ内閣総理大臣の指揮勧告権の弾力化のねらいや憲法との関連を中心に質問。カンボジアやインドネシアへの自衛隊機派遣での首相の関与についてもただしました。
 これに対し政府側は、「内閣総理大臣は閣議にかけて決定した方針に基づき行政各部を指揮監督できるが、すべてその都度決定しなければならないものでもなく、想定される事態に備えて基本方針を決めておくことはある」(大森内閣法制局長官)と答弁。さらに吉川議員が想定した周辺有事などの事態については、「危機はあらかじめ想定できず、どのような事態かは自ずから決まる場合もある)(阪野審議官)と明言をさけ、さらに橋本首相は「在外邦人が危険にさらされるなかで、国として救出の工夫するのは当然であり、カンボジアでは目的どおりの使用がなくて幸いだったが、このときはマニュアルがなくてロスが生じた。今回(インドネシアでは)十分対応できた」などと答弁しました。
 泉信也議員(自由党)は、基本法の行政機能の記述では従来の省庁との関連しかなく、具体的な各省の所掌事務が判断できない点を中心に質問。政府側は「基本法では主な任務、機能をひとまず整理したものであり、所掌事務は省庁再編時に具体化される」(小里総務長官)などと答弁しました。西川きよし議員(二院クラブ)は交通安全対策の所掌問題をとりあげました。

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