私たちは「政・官・財」のゆ着を絶つことが、行政改革の第一の課題だと考えます

 厚生省官僚のトップである事務次官などが「彩福祉グループ」の利権あさりにゆ着し私腹を肥やしていた事件、24億円ともいわれる「泉井マネー」にまつわる通産官僚への疑惑、大蔵省官僚OBがサラ金会社の未公開株の譲渡を受けていた事実、住専処理問題でも明らかになった金融システムへの官僚の過剰介入の事態等々、「政・官・財」のゆ着と高級官僚の腐敗に国民の怒りと厳しい批判がよせられています。
 1981年3月に、第2次臨時行政調査会(第2臨調)が発足した時から15年、この間の歴代内閣が行政改革を叫び続けたにもかかわらず、「政・官・財」のゆ着と高級官僚の腐敗がいっそう深刻な状況になったのはなぜでしょうか。エイズ薬害問題や「岡光事件」でゆれる厚生省の行政が、国民の生存権を保障するための行政とは反対の方向で進められてきたことを、生活保護を例に全厚生職員労働組合が告発しています(後掲の省庁別ページを参照)。全省庁が扱う補助金の45%(8兆7千億)を厚生省が占めていることを考えれば、厚生行政の変質が、その執行に悪影響を及ぼしたと考えられなくもありません。
 官僚の中の官僚と言われる大蔵省の「キャリア」組は、平均51歳で退職し、関連企業や公益法人、特殊法人に天下っています。民間大手銀行から大蔵省に「天あがり」している人数も96年度で20名にのぼっています。さらには、国から地方白治体の出向も951人(96年8月)となっています。中央省庁を基軸に、地方公共団体や特殊法人、民間企業まで官僚の人事サイクルに組み込んでいる実態に、ゆ着が生じる原因があります。
 この間の行政改革は、国民生活に対して果たすべき国の役割を縮小する一方で、利権やゆ着の温床を拡大してきたと言えなくもありません。公共事業の現場で働く全建設省労働組合・全運輸省港湾建設労働組合も、その一端を告発しています(後掲の省庁別ページを参照)。
 私たちは、このような行政のゆがみを正す行財政改革を優先させることが、国民のみなさんが望む方向だと考えています。


「橋本行革」は本当に国民のためになるの

 橋本内閣は、経済、金融、社会保障、財政、教育、行政の「6つの改革」を一体で進めるとしています。
 その中味は、どんなものでしょうか。
 経済構造改革の具体的な中味は、物流や情報通信、労働や雇用などの規制緩和や法人税率引き下げなどの税制改革があげられています。
 「日本版ビッグバン」といわれる金融改革の中味も、銀行と保険の相互参入や各種の規制の緩和です。
 社会保障改革は、第140回通常国会に提出されている介護保険法案や医療費本 人2割負担などの医療保険法改悪、さらには99年の年金見直し期にむけた年金給付の抑制などです。
 財政構造改革では、3月18日の財政構造改革会議で橋本首相が表明した「5原則」をもとに、社会保障や教育などへの財政支出を削減しようとするものです。
 教育改革では、「中高一貫教育」や「飛び級」、小学校などへの中央省庁再編、特殊法人の整理合理化、民営化、公務員削減などが進められようとしています。
 このようにみてくると、「6つの改革」の改革の中心の中味は、次の3点ではないでしょうか。
 @経済分野での国際競争に大企業が勝ち残るため、国内の規制(ルール)を緩和し、力のあるものだけを生き残させるための規制緩和(教育改革も、力のある者を選別するための改革ではないでしょうか)。
 A社会保障等の分野への財政支出を削減し、国民に自立・自助をせまる財政再建。
 B社会的な公正さや公平性を維持する国の役割は放棄し、そのような役割を果たしてきた部門はできるだけ民営化し、残ったものも整理・統合すると同時に、首相の権限を強化してこれまで以上に集権的な行政機構にする行政改革。

 各省庁の労働組合が、現在の行政の問題点として指摘している点や「政・官・財」のゆ着は、「6つの改革」で解消されるでしょう。私たちは、そのようにはとても考えられません。むしろ、行政が国民からいよいよ遠くなり、「税金をはらうだけの国民」になってしまいかねないと考えます。


財政再建のためには社会保障切り下げしかないの

 「財政構造改革元年」と政府が位置づけた97年度予算は、財政再建の一歩を踏みだすものだったのでしょうか。消費税率引き上げで5兆円、特別減税の廃止で2兆円、医療保険の改悪で2兆円、合計9兆円ものあらたな負担が、国民に押しつけられました。文教施設費は11.3%も削減する一方で、軍事(2.1%増)、経済協力費(1.6%増)や公共事業関係費の前年並み確保という内容も含んでいます。このような予算は、「財政再建とはほど遠い」、「国民いじめだ」とする国民からの批判が強まりましたが、政府は強引に成立させてしまいました。
 3月18日に橋本首相がしめした「財政構造改革5原則」では、歳出削減は「一切の聖域なし」といいながら、「一定の収入以上の高齢者への公的年金、医療費給付の見直し」、「義務教育費等国庫負担金の見直し」など社会保障や文教予算の削滅は極めて具体的であるにもかかわらず、公共投資、軍事費、経済協力費などは「抑制を検討する」としか触れておらず、97年度予算でも明らかになった「国民いじめ」の姿勢はかわっていません。
 97年度末で国だけで254兆円もの長期債務残高、国と地方をあわせれば長期債 務残高は492兆円と、他の先進国にくらベても深刻な財政事情にあるのは事実で す。しかし、政府は、なぜこのような深刻な財政事情にになったのか、まともに説明もせず、国民に犠牲を転嫁することだけを強調しています。
 この間増大している予算は経済協力費や国債費、軍事費です。また1990年に「公共投資基本計画」(当初430兆円、94年以降630兆円)がスタートした以降、国債発行残高が急激に増加しています。冷戦構造が崩壊し、世界各国で軍事費の削減が進められる中で日本の軍事費は今のままでよいのでしょうか。全建労や全港建は、公共事業の内容を転換するよう求めています。税金の使い方を抜本的に見直すことが国民本位の財政再建だと払たちは考えます。

規制緩和で国民生活は

 停滞している日本経済を立て直すためとして、あらゆる分野の規制緩和が進められようとしています。
 最近では、「持ち株会社の解禁」、「労働時間や雇用契約の規制緩和」、「医療事業への営判法人の参入規制の緩和」、「交通分野での需給調整の撤廃」、「飛び級など教育分野の規制緩和」などが検討されています。
 「護送船団方式」と言われる大蔵省と銀行などの間にある行き過ぎた規制、「談合」といった不明朗な競争関係を生み出す規制や、行政指導に名を借りた経済活動への行政の過剰な介入など、整理・見直しが必要な規制がないわけではありません。
 しかし、今進められている規制緩和は、経済的な条件などもともとの力関係が大きく違うもの同士を同じ土俵で勝負させようとする「弱肉強食」の論理に貫かれています。公平性を促つための保護の分野や、社会的な強者の規制まで撤廃しようとしています。そのことの実態や問題点を全税関、全運輸、全労働が指摘をしています。また、競争の結果の適否を判断する裁判所の態勢が、不十分なものであることを全司法が指摘をしています。
 私たちは、国際的な経済競争に大企業が勝ち残る「体力」をつけるためだけにすすめられる無秩序な規制緩和には反対です。たとえば、大企業優遇税制にも見られるように、日本は大企業の活動を今でも保護しているのです。膨大な内部留保をため込みながら、下請けいじめや労働者の使い捨ての自由を主張する企業の論理では、国民生活は豊かにならないと考えます。社会のルールは必要であり、国民の基本的な生活を保障し、公正な経済社会を実現するための規制は、むしろ強化しなければなりません。

中央省庁の再編ってなに

 政府は、行政改革の目玉として、中央省庁再編を打ち出しています。これを検討していた行政改革会議は、3月5日に「主要論点項目」を公表し、首相の権限強化が重要な課題であることを明らかにしました。いまこの時期に、首相の権限を強化しようとするのは、阪神・淡路大震災や日本海でのロシア船籍タンカーの座礁・重油流出事故、動燃原子力発電所火災事故などの「危機」の際に、政府が機動的な対応ができないからだとしています。そのため、首相の「閣議発議権」など規定し、「危機管理室長」(仮称)などを検討するとしています。
 ところで、災害などの際に、国の対応が遅れたり、阪神・淡路大震災や重油流出事故などにも見られたように、復興支援をボランティアに依存する状況が生じています。それは、全運輸省港湾建設労働組合が指摘するように、災害時の即応体制を軽視し、充実を図ってこなかったからに外なりません(後掲の省庁別ページを参照)。仮に情報を首相が一元管理したとしても、いまの行政体制では十分な対応は困難な状況です。 日本は海に囲まれ、地震も多く、気象的にも災害の多い国です。私たちは、このような現実に目をむけて、災害時を想定した行政の拡充が必要だと考えます。
 政策決定では閣議の合意を必要とする今の内閣のあり方は、一つの価値観の暴走で国民とアジア諸国の人民に多大な犠牲を強いた第2次世界大戦への反省から生まれたものです。その点では、憲法に照らしても、首相への権限集中は問題があるのです。
 私たちは、数合わせや一層の中央集構化につながる省庁再編ではなく、「民主、公正・効率」の行政連営ができる行政組織のあり方を国民のみなさんの合意にもとづいて検討すべきだと考えます。

公務員の数は、先進諸国にくらべても少ないのです

 「公務員が多い。だから行政改革でスリムに」これまでの行政改革で、繰り返し主張された点です。しかし現実はどうでしょうか。政府の資科でも明らかなように、行政改革が進んだと言われる英米に比べても、日本の公務員の数は半分でしかありません。しかも、国家公務員だけをとってみても、1982年からの15年間で、43,169人も純滅になっています。増大する行政需要のもとでの定員削滅の影響の深刻さを、全法務労働組合が告発しています(後掲の省庁別ページを参照)。
 多額の開発経費が財政を圧迫している東京都の臨海副都心の開発は、民間企業と国・自治体が共同して出資する「第3セクター」(民活)方武と言われる形態で進められました。全国各地で、同様の方式での大規模開発がおこなわれました。税金などの公的資企を使って、民間でできるものは民間でやるとする民営化路線の失敗が、今国民に押しつけられようとしています。
 定員削滅の一方で増加する業務の民間委託、公益法人の増加などでも公務と民間の「境界」があいまいになり、行政の公正さや公平さが失われてきています。そのような効率性重視の行政の問題点を全気象労働組合が告発しています(後掲の省庁別ページ参照)。
 私たちは、国民の安全や健康、権利を守る分野や教育や医療などを公平に保障するための分野は、国が直接行政サービスを提供すべきだと考えています。また、経済状況の変化にともなって強化すべき行政分野があることを全通産が指摘しています(後掲の省庁別ページ参照)。私たちは、27万をこえるにもかかわらず定員削減の「聖域」とされてきた自衛隊や、国民生活にとって不急の部門の縮減をおこなうなど、真に効率的な行政の達成にむけた検討が必要だと考えています。

【法務省】−国民の財産と権利を守る職員が不足しています(全法務労働組合・発)

【法務局】

 法務局は登記・戸籍・国籍・供託・訟務・人権擁護など国民の権利と財産を守る行政をおこなっており、国民生活に密着した官庁です。
 登記の業務量は、1971年(2億件)以降日本列島改造計画・民間活力導入による都市再開発やリゾート開発・バプル期の土地投機などで激増し1995年には5憶4千万件に達し、その後も業務量は毎年増加し今日に至っています。しかし、職員数は政府の定員削減計画により厳しく抑制されており、この間でわずか19%しか増加していません。
 今後も、日米構造協議による公共事業投資計画(630兆円規模)の具体化に伴 う不動産取引、住専の不良債権、金融破たん、会社合併などで登記、業務量は引き続き激増することが予想されます。
 現在でもバブル経済崩壊による不良債権・金融機関破たん関連で大量に申請される登記の影響で、通常の登記事件処理の遅れも生じており、深刻な問題となっています。
 このように激増する事件に対して、私たちは業務のコンピュータ化や組織の近代化などで効率的な業務処理に努力していますが、審査業務を中心に『人』による処埋の部分を中心に職員数は絶対的に不足しています。
 登記以外の部門でも帰化申請事件・人権侵犯事件・国を相手にする裁判事件などの行政需要の増加に比して職員数は著しく不足しており、国民の期待する法務行政の態勢には程遠い状態です。
 法務局を真に国民生活向上のための組織にするためには、職員の増員が必要です。

【更正保護官署】−激増する処遇困難事件に対応できない

 更正保護官署では、暴走族事件やシンナー等の薬物乱用事件など複雑多様化し、高水準で推移している少年非行の立ち直りを助けています。その最前線の職場は困難かつ繁忙をきわめ、職員は高度の専門性を求められ危険にも遭遇します。しかし必要な定員・予算などが十分に確保されず、労働カ強化に苦しんでいます。

【入国管理官署】−危機的状況の出入国管埋業務

 入国管理官署では、国際化が急速に進み、日本の出入国者数は1日平均10万人に達しようとしています。外国人の入国者数も1975年と比べると5倍で年間400万人に達しようとしています。他方、日本人の出国者数は同じ期間に6.2倍となり、年間1,530万人です。
 しかし、出入国管理業務の職場の労働条件は劣悪で、職場では慢性的な長時間・超過労働のもとで健康がむしばまれ、過労による現職死亡、病休者が続出しています。

【大蔵省国税庁】−変質する税務行政(全国税労働組合・発)

 1992年に消費税の導人が強行され、97年4月からは税率が5%に引き上げられ ました。この消費税の導入によって、税務署の組織も明治以来と言われる改革がおこなわれています。間接税部門が廃止され、税目別の管理体制が法人と個人という納税者の態様に応じた管理体制にあらためられました。そのことから、税務調査も同時に複数の税金の処理が求められ、労働密度が一気に高まりました。
 同時に、税務行政も大きく変化しました。国税庁は全国の国税局・税務署に対して、「納税者との適度な緊張関係の持続」をもとめ、従来の「適正・公正な課税の実現」とする姿勢から「申告水準の向上、課税人員の確保」を掲げて徴税の強化を指示しました。その結果、納税者とのトラブルが増大し、第一線で働く職員は心理的にも肉体的にも追い込まれています。国税庁全体での職員の年齢構成の若返りもあって、若年層への負担のしわ寄せが大きく、大量の退職者が発生する事態も生じました。
 今国税庁は、業務のコンピューター化、「国税総合管埋(KSK)システム」を1994年から進めています。国民総背番号制にもつながりかねないこのシステム開発のために、国税庁はすでに1000億円もの巨額の費用をつぎ込んでいます。97年度予算ではさらに400億円をつぎ込もうとしています。完成しても、その後のランニングコストが年間700〜1000億円と試算されており、巨額の費用が投じられています。納税者サービスの向上には結びつかないばがりか実際に使用してみると、使い勝手が悪く効率的なシステムとはなっていません。
 このように、国税庁は、国民一人一人から税金を集めることには躍起になっていますが、一方で大企業優遇の様々な税制はまったく改めようとしていません。大企業の海外進出を税制面から後神ししている「外国税額控除」や、企業の内部留保蓄積の背景ともなっている各種の引当金などは、それらを活用しているのはほとんどが資本金10億円以上の会社です。
 税務行政の面からも、国民収奪が強められています。

【大蔵省関税局】−国民の食があぶない(全国税関労働組合・発)

国民の健康、安全、食料を守ろう

 日本の食料自給率は42%(供給熱量)と世界のなかでも最低のグループに属しています。
 総理府は、1月11日「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」の結果を発表しました。それによると、米食を中心とする「日本型食生活」維持派が96.9%に上がった反面、約7割の人が異常気象や地球環境問題の深刻化などを理由に、食料供給の行く先に不安を感じていることが明らかになりました。調査は、コメの流通を大幅に自由化した新食糧法施行後の昨年9月に全国の成人5,000人を対象におこなわれたものです。食料の生産、供給のあり方についても、「外国産より高くても、国内で作る」が83.4%に達し、「外国産の方が安い食料は輸入する」の10.8%を大きく引き離しました。
 昨年、大きな問題になったO-157食中毒事件の発生源と専門家から指摘されている牛肉は、昭和60年度から平成7年度の11年間で、72%から39%へと自給率が激減しています。
 O-157は1982年にアメリカのオレゴン州などのハンバーガー中毒事件で最初に発見されています。
 ところが、アメリカからの牛肉輸入は、O-157が発生した1982年から95年の14 年間に合計で約187万トンと膨大な量となっています。
 今回の一連のO-157菌中毒事件では、輸入牛肉の問題にはあまり触れられてい ません。「命をはぐくむ学校給食全国研究会」代表の雨宮正子さんは「7月23日にフジテレビで、O-157問題で意見を述べる機会がありましたが『輸入牛肉のことは言わないでください』といわれた。」(「自治体の仲間」7月30日)とも述べています。
 「水際で侵入を食い止めなければたいへんなことになる」ということがわかっていながら、なんら輸入検疫措置をとらなかった政府の対応もとわれます。
 こうしたことが、WTO協定、衛生・植物検疫協定=SPS協定のもとで進めら れいる行革・規制緩和の一例です。
 全税関は、輸入食料品の安全性の確保、食料自給率の向上をめざして、この十数年消費者、農民、労働者、学生、科学者など10万人におよぶ人達と交流し、運動してきました。国民の声を実現するため、いっそう共同の輪を広げていきたいと考えています。

【厚生省】−生存権は守られているか〜変質する生活保護行政(全厚生職員労働組合・発)

金をかけない行政のゆがみ

 96年4月に東京豊島区で「母子が餓死」する事件が起こりました。生活保護をめぐるこうした事件は、「二度と役所のお世話になりません」と言い残して自殺したと老人や、ガス・電気を止められ老夫婦が餓死したといった事件など各地で起こっています。
 こうした事件が起こると、「福祉事務所の職員は冷たい」「市の福祉行政は醜い」といった批判の声がもち上がります。しかし、福祉事務所の担当者は、こうした餓死者を出すために仕事をしているのでしょうか、行政の本分を餓死者つくりにおいているのでしょうか。決してそんなはずはありません。
 「行政改革」の嵐が吹きあれた1980年代に第2臨調がスタートした頃から、社会保障、福祉の切り捨てが始まりました。厚生行政については、「ばらまき行政」と決めつけ、白立自助、民間活力の導人を強調し、お金のかからない行政へ変質させてきました。
 厚生省は、第2臨調がはじまった直後の1981年に、生活保護について一部の「不正受給者」を例にあげ、「適正化」という名の締め付けを強化する通知を出しています。この通知の内容が、ニセ「行政改革」の本質を如実に物語っています。
 この通知では、申請者の資産、収入状況調査について白紙委任同意書をとり、これを拒めば申請を却下sすることなどを検討するよう指示しています。このため、申請者に対しては、つきあいのない親戚であってもその親戚に資金援助を命じるなど、申請者は耐え難い対応を受けています。ある社会保険事務所の窓口で「年金を貰わなくてよい方法はないか」という相談を受けたという事例があったそうですが、この相談者は「年金が少しでも出れば生活保護を打ち切られ生活ができなくなる」と訴えていたそうです。
 こうした徹底した「不正受給防止」の対策によって、現在では1985年当時に比べ生活保護受給者は、6割程度に激減しています。生活保護受給者が減少することによって財政効果は上がりますが、一方で餓死者がでるという実態をどのように見ればよいのでしょうか。
 こうした給付の抑制と経済効率の追求こそが、本来の厚生省行政の目的をゆがめ、自殺・餓死といった悲しい事件を引き起こしてきた原因なのではないでしょうか。
 国民の生命や暮らしより大切な「行政改革」とは、いったいどのようなものでしょう。
 ムダを無くすことは大切ですが、国民生活に必要な予算まで削減する必要はどこにもありません。私たちは、国民生活の向上につながる真の行政改革をめざします。

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