3月30日に衆院本会議で行われた総定員法の趣旨説明と、民主党・山元議員の質問の詳細議事録を掲載します。
民主党・山元議員
「真に国民が求める行政サービスすらおろそかになりかねない」と言いつつ、「独立行政法人化は単なる定員の移行で、つじつま合わせ」と批判
<続訓弘総務庁長官の趣旨説明>
行政機関の職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
行政機関の職員の定員に関する法律、いわゆる総定員法は、各行政機関の職員の定員の総数の最高限度を法定することにより、行政機関の膨張を抑制することを目的とするものであり、政府としては、その範囲の中で、定員の削減に努めてまいったところであります。
さきに成立した中央省庁等改革基本法においては、平成13年1月6日に行われる新たな府省の編成にあわせて総定員法を改正するための措置をとることが定められており、その趣旨を踏まえ、総定員法で定められる行政機関の職員の定員の総数について、新たな最高限度を設定する必要があります。
以上が、行政機関の職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案を提案した埋由であります。
次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一に、現在、国立学校設置法及び沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づき、総定員法の定める最高限度には含まれない定員が定められておりますが、これを見直し、総定員法の定める最高限度に含めることとしております。
第二に、現在52万8001人とされている総定員法上の最高限度につきまして、ただいま申し上げた国立学校設置法及び沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に係る改正に伴い、2万8686人の定員が付加されることとなり、その上で、府省の編成にあわせて、平成12年度予算において議決された定員まで、2万1865人の引き下げを行うことにより、新たな最高限度の数を53万4822人とすることとしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
<山元勉議員(民主党)の質問>
私は、民主党を代表し、ただいま議題となりました行政機関の職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案に対する質疑を行います。
橋本前内閣から引ぎ継がれてきた行政改革は、2001年1月の中央省庁の再編や4月の独立行政法人の発足によって、一つの大きな区切りを迎えることとなります。
そもそも、今回の行政改革の目的は、一部の高級公務員の不祥事などさまざまな端緒はありましたが、キャッチアップ型の社会経済システムの見直しに対応した形で、行政のあり方や組織自体を21世紀にふさわしいものに見直していくことにあります。中央集権的裁量型行政を事後チェック、監督型行政に見直し、規制緩和や地方分権を進めること、それに対応した形で国の行政組織のあり方を効率的なものに見直していくことこそが問われていることは言うまでもありません。
しかし、政府がこれまで進めてきた中央省庁再編や独立行政法人化が本当に国民のための行政改革を実現するものであったかどうか、規制緩和や分権化の施策が本当に進んでいるかどうか、大いに疑問と言わざるを得ません。行政改革の一環として位置づけられている本法案についても、こうした観点から見て、幾つか基本的な問題点があると言わざるを得ません。
本改正案は、現行では定員総数を計算する際、これまで加えていない、いわゆる無医大県解消計画等により昭和48年以降に設置された国立医科大学等の2万32人、昭和47年5月の本土復帰に伴い、沖縄県に置かれることとなった国の行政機関の8654人の定員も定員総数に加えることとし、その上で総定員の実質削減を図るものであります。
法定定員の総数上限の実質的な削滅は、昭和44年の総定員法制定以来初めてであり、また、新設国立医科大学、沖縄県にある国の出先機関の定員がこれまで枠外扱いされていたのは当分の間の暫定的な措置であり、一元管理されることになったことともあわせ、一定の評価をするものであります。しかしながら、私は、この法案の土台ともいうべき、そもそもの行政改革、行政の滅量化、スリム化に対する政府の基本的な姿勢について大きな疑義を持つものであります。
国際化、情報化、そして少子高齢化などの急速な進展により、国民の求める行政二ーズは近年複雑多岐にわたってきていると考えます。
御在じのとおり、この法案の埋念は、この間の行政改革の論議の中で、中央省庁等の再編と国の行政を地方や民へ移行するという、いわゆるスリム化を通じて国の定数を削減するというものであります。
ところが、定数削減に対する政府の姿勢は、平成10年6月の中央省庁等改革基本法で10%と定めておきながら、小渕総理はさきの自民党総裁選挙における公約で2倍の20%に引き上げ、昨年1月の自自連立合意でさらに5ポイント上積み、結局25%で閣議決定したという経緯があります。このことは、政府として国民へどのように行政サーピスを提供し、安心して21世紀を迎えられるか、あるいは老後を迎えるかという将来の姿を示さないままに単に国の定員を削減するという、理念も何もないことのあらわれではないでしょうか。
政府に明確にしていただきたいことは、まずもって、国民が求める行政二ーズに対してどのようにこたえようとするのかということであります。そのことが明らかにされない中で国の役人を4分の1減らしますでは、真に国民が求める行政サービスすらおろそかになりかねないという大きな不安があります。
また、際限のない官僚の不祥事は、一部の特権的官僚が行政を私物化している事実であり、国の行政の組織やその進め方そのものに問題があると言わざるを得ません。
ここで改めて、行政改革に対する官房長官の理念、基本的な考えをお伺いしたいと思います。
来年4月には、試験研究機関を中心に、80余りの機関が独立行政法人化し、定員約1万8000人が移行します。また、その後も、国立病院と国立療養所で約5万人、さらに国立大学の独立行政法人化が実現すれば、約12万人が総定員法から外れる、すなわち削減することになり、25%はあっという間にクリアします。総定員法の枠外という点からは、公務員の25%削減は簡単に達成できるからくりになっているわけであります。これが単なる移行にすぎないのは明らかであります。このように見てくると、今回の行政改革の目王と言われてきた独立行政法人化の目的や意義にまでさかのぼって疑念を持たざるを得ません。
よもや政府の公約が、このようなつじつま合わせに終始することはあってはなりませんし、万が一がそのような事態になれば、それは国民を愚弄する行為にほかならないものと考えますが、総務庁長官の見解を伺います。また、総定員法が定める最高限度数の意義を保つためには、独立行政法人への移行によって総定員法から外れる定員については、自動的に最高限度数から差し引くことをルールとすることは当然でありますが、総務庁長官の御見解をお伺いします。
そもそもこの問題は、国がやるべき仕事、地方が担うべき仕事、民間に託すべき仕事を明確にした上で、合理的、効率的な人員配置を検討するという手順が当然であります。しかし、この間の政府には、この当然の手順、判断が欠落しています。国、地方、民間の役割分担もあいまいなまま、とりあえず人だけ減らせば格好がつくと言わんばかりの、なりふり構わぬ所業ばかりが目につきます。このままでは、ともすれば国民への行政サービスの低下、公務員の労働条件の悪化をもたらすばかりで、何ら得るものはないということになりかねません。いま一度行政改革の原点に立ち返って、21世紀の行政のあり方、省庁再編のあり方、公務員制度のあり方、公務員定員の適正化について検討すべきと考えますが、総務庁長官、いかがでしょうか。
続きまして、本法案に基づく具体的な課題についてお伺いをいたします。改正案によりますと、新たな最高限度数は、平成12年4月1日現在の定員53万4822人となっております。しかしながら、総定員法の制定は昭和42年度末定員を最高限度数にして、昭和44年から定員削減計画を実施しております。こうした総定員法の制定過程からすれば、本来は、省庁再編の直前、2001年1月5日の定員52万9747人を最高限度とするのが筋と言えるのではないでしょうか。中央省庁改革法でも、省庁の再編にあわせ、行政機関の職員の定員に関する法律を改正するための措置をとるとあります。素直に読めぱ、省庁再編直前の1月5日時点の定員が適当と思われます。
そうせずに、いわば5000人余りの余裕を持たせているのは、新規採用が年度当初に行われるのに対し、退職は年を通して行われることから必要とされるいわゆる調整定員のためということのようですが、これは国民に非常にわかりづらい不透明なものとなっております。調整定員が本当に必要であれば、それを堂々と別枠で明記した方が、不必要に国民の疑念を招くことなく、わかりやすいものとなると考えますが、総務庁長官、いかがでしようか。
冒頭、述べましたように、本改正案によれば、現行では、定員総数を計算する際に、これまで加えていない沖縄県にある国の出先機関の定員も定員総数に加え、一元的な定員管理となります。しかしながら、沖縄は、現在、サミットの舞台として脚光を浴びていますが、歴史的経緯から、経済及び地城振興の途上にあります。また、地理的にも、本土との距離が大きい、離島が多いなど、特異な条件を持っています。今後も沖縄の行政需要は高いことは明らかであり、引き続き、特例的なてこ入れが必要で、少なくとも一定期間の経過措置が必要ではないかと考えますが、いかがでしようか。沖縄開発庁長官にお伺いをします。
新たな省庁再編は、2001年1月6日とされております。しかし、新たな省庁の事務事業の質と量の実態が明らかになっていない中で、定員削減だけを先行する形となることは、国民に提供すべき行政サービスとのバランスを欠く懸念があります。総務庁長官、定員削減計画策定のスケジュールと手法について明確にお答えください。長期的視野と責任を持った国の行政の継続を考えれば、新規採用を継続することは必要であります。2001年度からは、年金支給開始年齢の引き下げとのかかわりで、高齢再任用がスタートいたします。良質な行政サービスを維持し、また、職員が安心して職務に専念するためには、新規採用と高齢再任用の方向性を明らかにすべきと考えますが、総務庁長官、いかがでしょうか。
また、強制的な早期退職勧奨や配置転換を初め、いたずらに職員の雇用不安を惹起するような削減手法、出血整理を初めとする強引な手法は行うべきではありませんが、総務庁長官、定員削減に当たって、どのような姿勢で臨まれるのか、お考えをお聞かせください。
最後に、申し上げます。
国民は、単に公務員を減らせ、税全を減らせとは言っておりません。雇用や老後、教育、環境等々、将来に向かって積み重なってきている不安を減らし、解消できることを国に求めているのです。このことを常に念頭に置きながら、21世紀の国の行政の中身を十分に吟味し、その上にたった組織や定員のあり方を考えていただきたいと申し上げて私の質問を終わります。
<続総務庁長官の答弁>
山元勉議員から私に対するする7点の御質問がございました。順次お答えを申し上げます。
まず第1に、独立行政法人化は単なる定員の移行ではないかとのお尋ねがございました。
独立行政法人は、国とは別の法人として、自律的、弾力的な運営を行わせることを目的とするものであり、その職員を行政機関の定員と同じ管理のもとにおくことは適当ではないという考え方から、その法人の定員は、中央省庁等改革基本法に規定されているように、総定員法の管理対象とはしないこととされております。
独立行政法人に移行した後においては、個々の法人自身が、その趣旨を踏まえて、みずからの責任において定員管理を行うこととなりますので、単なる定員の移行との御指摘は当たらないものと考えております。
第2に、独立行政法人化と総定員法上の最高限度との関係についてのお尋ねがございました。
総定員法は、国の行政機関の職員の定員の総数の最高限度を法定するものであり、その範囲内において政府の責任で定員管理を進めるものであります。したがいまして、独立法人化等により国の行政機関の定員が減少することに伴い、最高限度をその都度引き下げるものではないことを御理解賜りたいと存じます。
第3に、行政改革の原点に立ち返って定員のあり方を検討すべきではないかとのお尋ねがございました。
行政の減量、効率化は、今般の中央省庁等改革においても重要な柱の1つとして位置づけられており、定員削減も、その考え方に沿って実施しているところでございます。定員削減を進めていくに当たりましては、御指摘のように、ただ単に人を減らすということではなく、今後、新しい世紀を迎え、新たな省庁体制のもと、真に国がやるべき仕事、すなわち各省庁の職員が担当すべき業務は何であるかという観点に立ちながら、行政需要に即して業務を見直し、その効率的な運営を一層推進することにより実施することが重要であると考えております。
第4に、調整定員についてのお尋ねがございました。
調整定員は、御指摘のように、年度当初の一定の採用数を確保し、いわゆる出血整理を避けるために、年度内の一定期間に限って認めているものでありますが、これらも行政機関の職員の定員であり、本来の定員と同じ最高限度のもとで管理すべきものであります。いずれにせよ、調整定員につきましても、毎年度の予算上明記し、国会での御審議を経ることとともに、政令で明確に規定することとしております。
第5に、新たな定員削減計画策定のスケジュールと手法についてのお尋ねがございました。
定員削減計画は、各省庁の業務を見直し、合理化可能な部門における定員を計画的に削減するものであります。中央省庁等改革にあわせた新たな定員削減計画は、単年度予算の概算要求作業に間に合わすよう、この夏ごろまでに策定すべく作業を進めてまいりたいと考えております。また、この計画は、各省庁ともよく協議しつつ、各部門の業務の実態や合理化の余地等を勘案して策定することとしたいと考えております。
第6に、新規採用と高齢再任用の方向性についてのお尋ねがございました。
平成13年度から導入される新再任用制度は、定員の枠内で実施されるものであるため、再任用職員が増加した場合には、新規採用数が抑制される場合が生じ得ることは事実でございます。しかし、組織の活力を保持する観点から、所要の新規採用者数を確保することも必要であります。このため、各任命権者においては、所要の新規採用者数を確保するよう努力しつつ、短時間勤務職員の活用を含め、できる限り高齢者の再任用の機会を確保していく必要があると考えております。
最後に、定員削減の実施の手法についてのお尋ねがございました。
政府は、昭和44年の総定員法制定の際の審議において、出血調整や強制配置転換を行わないよう配慮すべきであるとの国会の附帯決議をいただいたところであります。政府といたしましては、従来からもこの考え方を尊重して対応してきており、今後ともこの方針を踏まえて対応してまいる所存でございます。
以上であります。
<青木幹雄沖縄開発庁長官・官房長官の答弁>
山元議員にお答えをいたします。定員削減さらには行政改革の理念についてのお尋ねでございますが、行政の減量、効率化は、今回の中央省庁等改革の重要な柱の1つであり、定員削減も、その考えに治って真に必要な行政サービスの水準に留意しながらこれを進めていこうとするものであります。
また、そもそもの行政改革の基本理念につきましては、中央省庁等改革基本法にもありますとおり、行政改革は、減量、効率化のみならず、国の行政組織及び事務事業の運営の総合性、機動性、透明性の向上を図り、これにより戦後の我が国の社会経済構造の転換を促し、自由かつ公正な社会の形成を目指そうとするものであると考えております。
このような考え方に立ちまして、引き続き行政改革に積極的に取り組んでまいる所存であります。
次に、沖縄県にある国の出先機関の職員の定員管理の問題についてお尋ねがございました。
本定員につきましては、中央省庁等改革基本法の規定等に基づき、定員の総数について新たな枠組みを設定することとされておりますことから、沖縄特措法の措置を廃止し、総定員法による管理に一元化することといたしております。
今後、沖縄関係の定員につきましてけ、必要に応じ総定員法の枠の中で政府全体での定員の再配置によりまして、行政遂行上の支障を来さないように万全の対応をしてまいりたいと考えております。
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