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国公労連は、5月26日午前、定員管理を担当している総務庁行政管理局に対し、新たな定員削減計画策定に係わっての2001年度概算要求にむけた要求書を提出しました。(別紙「定員削減計画策定、2001年度概算要求にむけた要求書」参照) 交渉では、総定員法「改正」法案が成立し、中央省庁等改革基本法に基づく、「10年間で10%の定員削減」の計画が進められようとしているが、改めてこれ以上の定員削減には反対であることを強く主張し、各単組から職場の実態を訴えました。また、政府として、法律で定められている10%の目標に対する考え方や今後の策定作業に付いての質問をし見解を求めました。 交渉には、国公労連から、小田川書記次長を責任者に、黒田行革対策部長、津田中執、全労働、全港建、全運輸、全通産、全建労、全医労、全厚生、全気象の代表が出席、総務庁からは、定員総括担当の横田福管理官外1名が出席しました。 交渉の概要は、以下のとおりです。(○は国公労連の主張、●は総務庁の見解) 冒頭、小田川書記次長から、以下の指摘をし、考え方を質しました。 ○ 総定員が成立し、行革基本法に基づいて、2001年からスタートする、10年間10%の定員削減計画の策定が進められようとしていることは、承知している。改めて、要求書を提出する。 1)基本的には、これ以上の定員削減はできない。増員するところはあっても、減らせるところはない。基本法で10%の目標が決まっていても、数合わせの押しつけは絶対反対である。これまでの定員削減計画は、目標があったとしても、各省の積み上げ結果であった。今回は、上から計画を押しつける考えであると思うが、その様なことは止めるべきだ。 2)10年間で10%というが、行政のニーズなど情勢の変化が激しい中で、10年間は長すぎる。 3)職種毎に分けて議論すると思うが、特にこれまで、行(二)や海事などに定削が掛けられてきた。これらに片寄ることのないようにすべきだ。 4)定員削減計画の本来の意味を損なう、シーリングが掛けられ、それがここ数年強化されている。必要なところには、必要な要員を確保すべきだ。 これに対して、横田福管理官は、次のような見解を示しました。 ● 1)総定員法が通った。しかし、これには、定員削減について書いているわけではない。行革基本法の考えでは、総定員法を改定した後、定員削減計画を策定するようになっている。先だっても、閣議で、各大臣に定員削減計画策定のお願いをし、総理からもしっかりとした計画を作るようにと指示された。 スケジュール的には、予算とも関連するので、13年度の概算要求に間に合うようにと思っている。今回は、新しい府省を作るので、なかなか大変であるので、早め早めの作業をと思っている。しかし、総選挙もあるので、厳格な日程は決めかねている。 今回は、行革基本法に、10年間で10%の定員削減と書いている。これは、今までの定員削減にはないものである。今までは、各省庁が積み上げた結果だったが、今回は、これこれを達成すべし、削減率が定まっている。今までにない作業なので、各省庁と相談しながら進めたい。 対象となる定員の範囲は、今までの定員削減と同じだ。ただし、独立行政法人がある。独立行政法人になってしまえば、定削の枠からばれる。独立行政法人になるまでは、行政機関なので、定削の対象であるが、なってしまえば外れるということだ。 2)10年は長すぎるという意見については、時代の流れが速い中で、10年間の計画をキチンと決められるのかどうかと、我々も思っている。 これで行くというような考えは、まだ決めていない。そこは、新しい内閣が決めていくべきことになる。 以上の回答を受けて、以下の質疑を行った後、各単組から順次職場の状況を出しながら、これ以上の定員削減には、反対であることを再度訴えました。 ○ 定員削減計画は、1条定員がベースであると考えてよいのか。 ● 総定員法の1条には、現業が入ってないので、3条定員も対象となる。 ○ その上で、独立行政法人として1条定員から抜けていけば、定員削減から外ということだが、この場合、削減率が問題であって、削減の数は問題ではないということか? ● 基本的に求められているのは、削減の率であり、数ではない。結果的に何万人削減となるだけだ。 (全労働) 職業安定所の窓口で、職員が減るなどということは、想定できない。ある40名の職場で、ロビーにあるコンピュータによる求人の検索を行った人が、一日1800名に上っていた。窓口の待ち時間が長いとよく言われるが、コンピュータの検索待ちに1時間などもざらである。しかし、求人情報を見るだけなら、コンピュータ端末を増やせばよいが、高齢者などは、そもそも求人がない。求人条件から少し年齢は超えているが、この人でどうですかと、職員が企業を説得しないといけない。これは、長年の経験と勘そして企業との結びつきである。コンピュータ端末や臨時職員を増やしてもダメだ。職員は、トイレ休憩にも行けず、昼休みを削ってまで対応し、膀胱炎になる女子職員など体を壊す職員が増えているいる現実を直視すべきだ。 民間でも同じような求人業務を行っているが、民間はもっと時間を掛けてやっているようだが、能力のない人や酔っぱらいなど対応しない。しかし、我々はそんなわけにはいかない。 (全港建) 9次定削では、8.09%の削減がされている。公共事業職場では、景気対策として事業費がどんどん付き、超過勤務が年間1000時間を超える人も出ている。今職場ではどんな仕事をしているのか知ってほしい。住民運動が盛り上がりの中で、地元の要望に対して色々な調整をしたり、環境に配慮した工法に変更したと相当の時間がかかる。単にものを造るだけではなく、調整業務が増えてきてということだ。 また、コンクリートの崩落事故が、あちこちで取りざたされているが、キチンとした監督体制でやらないとダメだ。特に、海の見えないところの仕事なので、なおさらだ。 (全運輸) 運輸の職場は、国民の足の安全を直接担当する職場である。私は航空の出身だが、航空の需要は着実に増えている。しかし、9次に渡る定員削減、そして10年で10%の定員削減は、空の安全に影響が出かねない。大変心配している。規制緩和の流れの中で、事前チェックから事後チェック体制なってきているが、キチンとしたチェック体制が確立されていないといけない。 一方で、本省も長時間過密労働で大変である。0時を過ぎても、昼間のようにみんな仕事をしている。人事院が出している、超過勤務の上限年間360時間の目安からしても、逆行している。現場の実態、本省の実態をしっかり見るべきだ。 (全通産) 内は通常残業省と言われているのはご存じのとおりだ。法律は、1.66倍、予算は16倍になったが、定員は14%の純減である。取り分け地方は4割の削減である。本省の内部部局職員のアンケートで、業務が多すぎるのに定員が足りないと答えた人が56%、また、3人に1人が健康の不調を訴えている。健康にまで影響を及ぼしていることをしっかり見るべきだ。 1)通産はこの間他省庁より削減率が高いのは、何故なのか内容を明らかにしていただきたい。それぞれの職種ごとになぜなのか明らかにしていただきたい。 2)通産は、新省庁発足後3カ月経つ4月に、研究所などが独立行政法人に行く。定員の3割が抜けることになるが、定員削減は同率だと言われると、この場合どうなるのか?我々は、独立行政法人化に反対はしてきたが、一方で、定員管理から外れるというメリットも言われてきた。この3カ月をどのように取り扱うのか? (全建労) 毎年、職場の超過勤務実態を調査しているが、99年度の一人当たりの年間平均超過勤務時間が360時間を超え、98年度に比べても増えている。公共事業職場は、景気対策として事業費が増えているのに職員は毎年どんどん減らされている。また、監督体制の不備などにより、現場での事故も増えている。病気の要治療者も増えている。 我々は、国民のために良質な公共施設を造りたいと思っているが、こんなに人が減らされてはできない。職場では、定員削減などとんでもない、大幅増員すべきだとの声が相当大きくなっている。 (全医労) 国立病院でも医療事故が増えている。新聞やテレビでの医療事故報道が増えているとおり、民間も含めて看護婦不足である。 二交代では、夜間15時間勤務し続けるが、人の生命を預かる現場で、15時間も緊張状態は続かない。三交代でも、日勤してから夜勤に入る場合や準夜勤明けで日勤に入る。体がぼろぼろだ。医療事故は、個人の責任が問われるので、夜勤をやっていると定年まで続かない。看護婦の平均年齢も段々下がってきている。 ある病院で、停電による事故で、患者さんが1人亡くなった。ボイラー技士が電気設備技師も兼務していた。本来のボイラー業務があるので、電気設備の点検までなかなか手が届かなかったのだろう。また、定期の電気保安点検も半年ほど入っていなかったことが重なった。患者さんは命を守るために病院に入院しているのに、病院が命を奪う奪っている。 患者さんから「看護婦さん、あんた具合が悪そうだから休みなさい」と言われるほの職場実態になっている。これ以上の定員削減には絶対反対だ。 (全厚生) 平成9年3月6日に自殺した本省係長の公務災害が、過労死として認定された。帰宅時間が毎日、1時2時3時という状態が続いていた。その後上司もまた突然自殺している。これも過労死だ。本省で毎年職員アンケートを取っているが、退庁のピークは、22時30分、0時過ぎも3割に上っている。アンケート結果では、月平均残業時間も78時間であり、100時間を超える人もかなりいる。やや不調も含めて、健康への不安を訴える人が75%にも達している。複数回答だが、残業の理由についても、業務量が多すぎるが、62.8%。国会待機が、46.5%の回答だった。年々定員不足が明らかになってきている。年休の取得率でも、年間5日しか取っていない人が一番多いという実態だ。机上の作業で定員削減率が幾らでは、人間の命は計れない。 (全気象) 定員削減のしわ寄せで測候所の廃止が行われている。自治体の首長から、測候所の廃止はしないでほしいと要望が上がっても、「国の方針だから仕方がない。サービスの低下はさせないから」と当局は答えているが、サービス低下は免れない。再任用の職員アンケートで、多くの40〜50歳代の職員が、こんな気象庁では働きたくないと回答している。 有珠山の対応でも、人のやり繰りに大変苦労している。災害は思わぬところでやってくる。十分な人員の対応をしていないとダメだ。 以上の各単組からの訴えを受けて、小田川書記次長から以下の追及を行いました。 ○1)定員削減計画の策定は、直ちに止めるべきだ。 2)職場の実態は大変深刻だ。作業を進めるとしても、これらの職場実態をどう作業に反映するのか? 3)8次定員削減や9次定員削減で、基礎になっている事項があると思うが、今回の計画策定では、それらを踏まえて検討するのか?1からやり直すのか? 4)作業基準の公表など情報公開をすべきだ。 ●1)定員削減計画の策定自体は、法律で決められているので、やらざるを得ない。10年間で10%という数字だけなので、今後各省庁と協議しながら削減数を積み上げていく。 2)現在の職場の実態を聞かせてもらったが、それらの話しを無視して策定するとは考えていない。全部一律10%削減にするようなことも考えていない。 3)率ありきなので、今後どうするかは、各省庁とも相談してながらということになる。 4)情報公開については、策定作業を見極めながらどうするかと思っている。 最後に、小田川書記次長から、これ以上の定員削減は絶対反対でると再度強調し、我々の意見が反映できるよう、引き続き対応するよう強く申し入れました。 (以 上) <別紙> 2000年5月26日 総務庁長官 続 訓 弘 殿 日本国家公務員労働組合連合会 中央執行委員長 藤 田 忠 弘 定員削減計画策定、2001年度概算要求にむけた要求書 中央省庁等改革とかかわって、国家公務員の定員削減計画の策定などが進められていると承知しています。 私どもは、9次・30年余りにわたって続けられた定員の計画削減、特に1980年代以降の定員の「純減」施策によって、国家行政組織のいずれの機関、事務も、必要な人員さえ確保されず、行政サービスと労働条件が大きく後退していると考えています。 国立大学、国立病院で相ついでいる医療事故は、ぎりぎりの定員下での「2交替制勤務」などの過酷な労働実態と無関係ではありません。複雑多様化する社会状況を直接反映する教育の場での「荒廃」と、「40人学級」や大学での「マスプロ授業」といった状態との関連も指摘されはじめています。あるいは、「安全神話」に埋没した結果、原子力行政の実施部門における体制と人員の不十分さに、国民の非難が高まっています。多数の国民がサービスを求めて訪れる職業紹介や登記業務などの窓口での人員不足が深刻なことや、地域の意向さえ無視して進められる測候所廃止と定員削減との関連など、行政サービスと労働条件後退の具体例は、これまでも、私たちが繰り返し指摘してきたところです。 そのような実態を顧みない行政の「減量化」・アウトソーシングに、私たちは反対です。すでに、中央省庁等改革基本法や総定員法が成立し、「10年間・10%」削減の計画立案等が求められていることは承知していますが、その具体化をすすめる条件は、行政や職場実態からすればありません。同様の観点から、政治的な目標数字とされる「25%削減」の達成のみを優先し、定員削減の強化や数あわせのための独立行政法人化などは、断じてすすめるべきではないものと考えます。 以上のような立場から、下記事項を要求し、その実現にむけた貴職の誠意ある対応を求めます。 記 1 増大する行政需要や複雑・高度化する行政実態や、長時間・過密労働による過労自殺など深刻化する職場実態をふまえない定員削減計画は強行しないこと。2 雇用の継続を困難にする配置転換などの雇用不安を引き起こすような組織・定員の削減はおこなわないこと。 3 行政需要に見合ったサービスの拡充、職員の労働強化を解消するため、必要な要員を措置すること。 4 中央省庁等改革基本法第47条にもとづく「10年間・10%」の新たな定員削減計画の策定にかかわっては、以下の点をふまえること。 @ 行政や職場の実態を無視した数合わせはおこなわないこと。 A 行政組織や社会状況の変化に柔軟な対応が可能なものとすること。 B 実施事務や地方支分部局、一般事務職、技能、労務職、海事職などに過度な削減を押しつけな いこと。 また、独立行政法人対象機関への計画削減の押しつけはおこなわないこと。 C 新規採用の抑制や定年退職後再任用の制限、省庁間配転の強化などにつながるものとしないこ と。 D 計画削減を口実とする行政サービスの切り捨て、事務・事業の民間委託などを強制しないこと。 5 2001年度概算要求ともかかわる定員関連の「方針」については、以下の点をふまえること。 @ 「新規増員要求ゼロ」などのシーリングを設けないこと。 A 再任用制度の実施にともなう定員については別枠要求を認めること。 B 恒常的な超過勤務などの労働実態に着目した定員要求を認めること。 C 独立行政法人への職員削減、人件費抑制の押しつけはおこなわないこと。 D 常勤的な勤務をおこなっている非常勤職員の定員化を認めること。 以 上 |