衆院行革特別委・6月7日中央公聴会〈午後・省庁再編〉
--国公労連・藤田委員長が公聴会で意見陳述
国民サービス切り捨ての「行革」にあらためて反対の態度表明--

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年6月7日付 第119号)


国公労連・藤田委員長が公聴会で意見陳述
=国民サービス切り捨ての「行革」にあらためて反対の態度表明=
 中央公聴会は、午後からもひきつづき4名の陳述人をまねいて、中央省庁等改革関連法案にかかわって、公述人の意見陳述と質疑がつづけられました。
 この意見陳述では、国公労連の藤田忠弘中央執行委員長が公述人としてまねかれ、国公労働者を代表して意見をのべました。
 藤田委員長は、冒頭で15分にわたって意見表明し、今回の中央省庁再編関連法案には、国民サービス切り捨ての独立行政法人や、25%の公務員削減など、5つの問題点を指摘したうえで、行政の現場で働く仲間の声を代表して、あらためて今回の行革関連法案に反対するとの態度を明確に国会に示しました。
 なお、そのほかには、経団連の内田光三事務総長(自民・自由推薦)、行革国民会議の並河信乃(民主党推薦)、会社役員の西崎哲郎(公明党推薦)が公述人として意見をのべました。
 午後からの公聴会には、藤田委員長が意見陳述することもあって、国公労連から20名以上の傍聴者が参加しました。以下、冒頭陳述と、各党議員との質疑の要約のみ掲載します。

25%の公務員削減は「はじめに結論ありき」だ
●藤田忠弘(国公労連委員長)
 国民本位の行政を発展させる立場を重視している。その立場から、省庁関連法案には、以下の5点について強い危惧の念を持っており、到底納得できるものではない。
 第1点目は、省庁の大ぐくり再編について、それぞれがどのような「任務」をもって再編していこうとするのかが不明確な点だ。国土交通省は、開発優先の巨大公共事業官庁として機能強化され、厚生労働省では、労働者保護の立場が福祉一般に埋没させられるのではないかと危惧する。結局、行政責任の後退につながり、「全体の奉仕者」たる公務員の役割と使命を変質させるものだ。
 第2は、行政減量化が実施部門に集中することにより、行政サービスの後退が危惧される点だ。政策の企画立案機能と実施機能の分離が前提とされ、実施部門について「官から民、国から地方」という再配分がはかられようとしているが、これらは本来一体的でなければならない。それを、あえて分離するのは、結局、実施部門のスリム化自体が目的の「行政改革」と言わざるをえない。
 第3は、公務員の25%削減に関して、現在の職場実態、労働実態からして、まさに想像を絶する数値目標だ。この20年間で5万人をこえる定員が純減されている。行政サービスの後退という面からの検討もない数あわせの削減では、政府はサービスの低下を当然視しているとの批判はまぬがれない。
 第4は、独立行政法人にかかわって、国がおこなう必要がないとする基準や根拠が曖昧な点だ。なぜ、別法人としなければならないのか、あるいは、特殊法人と何がどう違うのか、など制度全般にわたって不明確な点が多い。結局、本来、国が一体的に政策実施しなければならないはずの事務事業を、法人化によって小さく分断し、民営化や廃止をやりやすくするための制度と考えざるをえない。
 第5として、公務員制度の非民主性をさらに深めるのではないかと危惧する。政治的任用では、行政の中立性をそこない、政治と官僚の癒着を深めかねない危険がある。公務員の中立性を厳格に確保することこそ必要だ。
 全国津々浦々で日夜奮闘している国家公務員労働者にとって、25%の公務員削減を「はじめに結論ありき」のやりかたで強行する手法への不信と不満ははかりしれない。政府がすすめる「行政改革」にあらためて反対の態度を表明し、改革の原点にたった審議をつくすよう切望する。

もっと多くの機関を独立行政法人にすべき
●内田公三(経団連事務総長)
 省庁再編法に賛成であり、早期成立を求める立場から意見を述べる。
 今、わが国は転換点にあり、民間企業は身を切る努力を続けているが、官も政治主導を確立し、民間の活力を受け入れる改革をすべきだ。
 経団連は、これまでも規制緩和など行革に力を入れてきたが、今次の行政改革でも委員を選出するなど、積極的な役割を果たしてきた。
 17法案は、基本法の趣旨をふまえたものと評価している。1つは、内閣総理大臣の指導性の明確化であり、発議権などの指導監督権の制度化だ。特に経済財政諮問会議などの合議制会議で、首相を議長に民間の人材ももいれて政策決定をする仕組みを経済界としては高く評価している。
 2つは、省庁再編と副大臣、政務官の新設だ。大臣の数を減らすことはスリム化に対する政治の決意を示すもの。副大臣等は、政治と行政の関係を元にもどし、政治の官僚依存を是正するうえで大きな意味がある。
 3つは、政策評価、調整のであり、特に多段階の評価システム、民間人もいれた評価システムということで高く評価している。
 4つは、権限規定削除は裁量行政是正の面から評価したい。
 5つは、独立行政法人であり、対象機関がふえたことは評価する。しかし、廃止・民営化を検討すべきところを独立行政法人にとどめたり、公務員型が大部分を占めるなど問題もある。3〜5年の見直しの時期に、民営化や非公務員型に進めて欲しい。また、大学や他の業務の独法化も進めるべきだ。
 新省庁の2001年1月スタートは国際公約であり、とん挫は国際的にも、国民的にも信頼を損ねることになる。今国会での成立をのぞむ。
 最後に、法律成立後の運用にかかわって、1)あらゆる公務部門での民間の人材活用、2)省庁間人事交流の基準の明確化、3)経済財政諮問会議のメンバー選定、4)所掌事務が権限を示すかのように運用されることは極力回避し、個別産業への介入排除を重視すべき、ことを要望する。

国民の行政への参加を第一の目標に
●並河信乃(行革国民会議事務局長)
 昨年成立した行革基本法と照らし合わせても、疑問が残る点は多くある。
 中央省庁再編法案は、金融庁を内閣府に、公正取引委員会を総務省に置くとしているが、なぜ別々に設置するのかが疑問だ。企画立案部門と実施部門とを分離するために独立行政法人を創設するとしてきたが、計画されているのは、研究機関や国立病院など、行政の中心ではなく、いわば、「周辺部門」ばかりではないか。これでは、行政のスリム化やタテ割り行政の風通しをよくすることはできない。また、独立行政法人の情報公開も、いっそう推進する方向で検討が必要だ。
 行政改革にかかわっては、国民が行政にいかに参加していくのかの観点が重要だ。国民の意見が行政に反映されるように、実際の運用にかかわる部分で、たとえば、行政手続法などの制定を検討することも必要ではないかと考える。

改革の達成度は高いが、現時点ではまだ6合目
●西崎哲郎(KPMGフィナンシャルサービスコンサルティング理事長)
 行革関連法案に賛成する立場で、2001年の改革をめざして早期成立を期待する。内閣機能の強化は高く評価する。また、省庁再編は、今後の改革をすすめるうえで重要なステップである。政策評価システムや、情報公開制度なども歓迎できるものである。
 独立行政法人の対象機関も、当初の計画よりも増えており、前進といえる。国家公務員の25%削減も、中央の仕事の削減にむけた効果となるものだ。法律としてみると、改革の達成度はかなり高いと評価できる。
 しかし、あいまいな点も残している。たとえば、内閣府の経済財政諮問会議などは、できる限り内容を開示することを明確にすべきであるし、任用の面でも、従来の人事ルールをあらためたり、民間人の登用を積極的にすすめることを法律としてあきらかにすべきだ。また、業績の評価については、国民の意見を反映するためにも、行政評価法の制定や、行政審判庁の設置も必要だと考える。
 さらに、独立行政法人法の解散手続きなどについては、別法で定めるとなっているが、すぐにでも関連法をつくるべきだ。
 そのうえで、今後のスケジュールも明確にすべき。独立行政法人の設置は、政令にゆだねるとしているが、その内容如何で、独立行政法人の基本精神がゆがみかねない。必要な項目については、国会への報告義務をもうけるべきと考える。
 全体として、改革は6合目まできたという感想だ。今後、政令や細目が決定される段階で8合目に到達し、適正な人材配置によって頂上に登りきることができる。まだ頂上ははるか先だが、基本的には現在の方向ですすめていくことに賛成する。
25%の公務員削減、業績評価制度、独立行政法人などが焦点に
= 冒頭陳述につづいて、6名の議員が質疑応答 =
 15分づつの陳述が終わった後、行革特別委員会の大野松茂(自民党)、西川太一郎(自由党)、田中慶秋(民主党)、並木正芳(公明・改革)、松本善明(共産党)、深田肇(社民党)の6名の国会議員による質疑応答がつづけられました。
 公務員の削減や独立行政法人化による、行政のスリム化などが質疑の中心でしたが、このなかで、藤田委員長は、最後に、「25%の定員削減とは、どこを押せばそんな数字がでてくるのかとの感想だ」と強くのべ、現場で奮闘している職員の声を直接、行革特別委員会の議員に伝えました。
 以下、質疑のポイントのみ報告します。

【大野松茂議員・自民党】
 政策評価への高い期待があるが、実効性を高める方策をどう考えるか。
(内田公述人)
 政策評価は初めての課題。会計検査などと違い、二段階評価、民間人の参画などで、順次定着し効果を上げると期待している。
(並河公述人)
 評価の前提として、行政目的の明確化が必要であり、それがなければ評価は恣意的になる。行政の内部にも契約概念を持ち込むなどの工夫が必要。
(西崎公述人)
 評価を入れることは画期的。また政策の事前評価を入れたことは大きいが、組織法では不十分。評価法などの作用法が必要。
(藤田公述人)
 評価の基準として、民主・公正・効率を過不足なく確認することが必要。

【大野議員】
 内閣府の合議制機関への経済界の期待を聞きたい。
(内田公述人)
 単なる諮問機関ではなく、首相、閣僚を含むメンバーの議を経て実質的な内閣の方針として位置づけられると思う。特に、経済財政諮問会議には期待している。

【大野議員】
 省庁再編、地方分権を経済界はどう位置づけているか。
(内田公述人)
 官から民、国から地方は、経済界の10年来の主張。規制緩和、分権、省庁再編が三位一体で進むことを期待する。

【西川太一郎議員・自由党】
 省庁再編などを、明治維新、戦後改革につづく第3の改革と位置づける意味はどこにあるか
(内田公述人)
 1つは、内閣総理大臣のリーダーシップを制度化したこと、2つは革命でもおこらなければ実現しないとも言われる省庁の再編に手をつけたことだ。

【西川議員】
 機動的な政策決定ができる体制が、省庁再編でできると考えるか。また、高コスト体質の是正にはどう結ぶつくと考えるか。
(内田公述人)
 日本の政策決定の遅れに対する批判を財界人としてはもどかしさを感じていた。それは行政機構の壁に阻まれてきた部分が多い。リーダーシップの強化、民間の意見反映を的確におこなう仕組みができることで、産業界としての力量もアップすると期待している。

【西川議員】
 個人的には公正取引委員会型の省庁をもっと作り、事後規制型に変えていかなければ25%削減はできないし、効率化も進まないとおもうがどうか。
(西崎公述人)
 理論的には異議はないが、現実的には委員会方式に行政が全て移行することは困難と考える。

【田中慶秋議員・民主党】
 今回の省庁再編は、スリム化・効率化に逆行していると思うがどうか。
(内田公述人)
 省庁の数を減らせば巨大省ができるのは当然の結果。これを批判すれば改革はできない。大ぐくりで、政策調整は進みやすくなる。要請に沿った改革だと思う。

【田中議員】
 巨大省は、スリム化に逆行し、透明性や機動性を阻害しないか。
(並河公述人)
 国土交通省の地方整備局をプラスの方向で活用するといった検討も必要だ。財源をブロック単位に配分し、ローカルの参加で決定する仕組みを作っていくことで、巨大省の問題解決はできるのではないか。

【田中議員】
 地方出先に権限を渡す省庁再編より、地方にわたす分権が良いのではないか。
(並河公述人)
 全国一本の国鉄が失敗したように、財政もブロック毎に分割するなどを考えないと問題は解決しない。国土交通省も、地方分権と一体で議論されたと思うが、結果はそうはなっていない。

【田中議員】
 行政コスト30%削減が、省庁再編でできるとおもうか。
(西崎公述人)
 仕事を減らしてから組織を考えるのが手順だと思うが、それを並行してやることでの様々な問題がでている。
 30%も、民、地方にどれだけ仕事を移せるかだ。財政も含めて大胆な改革を進めるべきだ。

【田中議員】
 特殊法人などが改革から抜けていることをどう考えるか。
(内田参考人)
 独立行政法人は、国の事務事業をどれだけ外に出すかの手法と理解している。見直しの時期に、民営化、廃止につながることを期待している。独法より民間企業に類似している特殊法人は、もっと早く民営化すべきだし、これを独法化するなどは逆行と言わざるを得ない。

【並木正芳議員、公明・改革】
 内閣機能の強化にかかわって、法案では、内閣府の合議制機関の運用等について示されている。決定機関として、これらの合議制機関の強化が必要であり、委員の選定についても、配慮が必要だと思うが、それについてはどう考えるか。
(西崎公述人)
 たとえば、経済財政諮問会議は、必要な閣僚だけに限定し、半分は民間からの参加するなどして、ハイレベルの議論をすすめるべき。有能な人材を集められるかどうかが今後の課題となるのではないか。

【並木議員】
 行政評価制度は難しい問題だが、「約束・評価・責任」をどうやって法律化するのかの点などについて、何かアドバイスがあればもらいたい。
(西崎公述人)
 日本の行政は、評価という面からの意識が遅れている点に問題がある。事後のチェック制度だけではなく、事前に、政策を決める段階からの評価が必要ではないのか。
(並河公述人)
 やりながら考えるしかない。金をどう使うのかではなく、何をやるのかを契約の内容にすべきだ。たとえば、イギリスのエージェンシーがとっているシチズン・チャーター制度では、それぞれの機関の努力目標と達成率をわかりやすく市民に示している。

【並木議員】
 25%の定員削減については、どう考えるか。
(内田公述人)
 官僚は、総定員法で着実に減っていると答弁するが、定員と実員は違う。実際の職員数は減っていない。25%の定員削減にむけて、本当に実質的な削減をめざすべきだ。

【松本善明議員、共産党】
 25%定員削減を先取りするように、すでに、新規採用の抑制が行政の現場ですすんでいる。これについてどう考えるか。
(藤田公述人)
 平均4%の離職率を前提としているが、それは平均離職率であり、職種ごとに千差万別である。その実態に則して考えれば、一律削減は大変乱暴な議論だ。

【松本議員】
 行政水準を維持する面から、予算の執行についてどう考えるか。
(藤田公述人)
 行政コストの一律30%削減は賛成できないが、予算の効率的運用は必要だ。しかし、現場を見てみると、予算の節約を口実にして、無理な予算の切りつめが強制されていることは問題だ。真に国民に必要な部分の予算が使われていない。問題は、そうしたいびつな予算執行の実態にあり、予算や定員の一律削減は賛成できない。

【深田肇議員、社民党】
 市民本位、公務員の雇用・労働条件確保が必要と考える。真の改革のためには、政治家のリーダーシップが必要であり、官僚体質にもメスをいれるべきと考える。それについて何か意見があるか。
(並河公述人)
 官僚を批判するだけでは不十分であり、官僚を市民がコントロールしていく議論が必要ではないか。行革の基本は、官の権限を、政治・民間(市場)・地方に分散することだ。その点で、省庁再編は不十分であり、内閣機能の強化によって暴走する可能性もありうる。

【深田議員】
 25%公務員削減は、根拠が不明確であり、「はじめに削減ありき」の感じもする。国家公務員の労働組合として、現場の職員の感想を聞かせてほしい。
(藤田公述人)
 25%の定員削減とは、どこを押せばそんな数字がでてくるのかとの感想だ。

6月7日− 憲法会議と共同で衆院議面行動100人が結集
 国公労連は、7日の昼休み衆院議面行動を憲法会議と共同で開催し、100人が結集しました。これは、国会に憲法調査会を設置する動きが強まっていることに対応したもの。
 主催者あいさつは、国公労連松村副委員長が行い、国会報告は、共産党・平賀高成衆院議員が行い、連帯・激励のあいさつを柳沢公務共闘副議長(特殊法人労連委員長)が行い、国公労連から全通産入澤、全労働木下両副委員長が決意表明、最後に行革闘争について国公労連福田書記長が行動提起しました。

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