参院行財政改革・税制特別委員会
7月1日午前の参考人意見陳述

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年7月2日付 第136号)

(内容)
1.参院行財政改革・税制特別委員会ー7月1日午前の参考人の意見陳述および質疑
2.7月1日参議院議面集会

参院行財政改革・税制特別委員会
ー7月1日午前の参考人意見陳述(地方分権)ー

 7月1日午前、参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会は、地方分権一括法案について参考人による意見陳述および、質疑をおこないました。参考人は諸井虔(地方分権推進委員会委員長=自民・自由推薦)、池田敦子(東京・生活者ネットワーク分権プロジェクト座長=民主・社民推薦)、林宜嗣(関西大学経済学部教授=公明推薦)、市橋克哉(名古屋大学大学院法学研究科教授=共産推薦)の4氏。質疑では、脇雅史(自民)、朝日俊弘(民主)、魚住祐一郎(公明)、八田ひろ子(共産)、照屋寛徳(社民)、星野朋市(自由)、奥村展三(参議院の会)、石井一二(自由連合)の各議員が質問にたちました。
 参考人の意見陳述および各党議員による質疑の要旨は、以下のとおりです。

【参考人の意見陳述】

<地方分権推進委員会委員長・諸井虔参考人の意見陳述>
 諸井参考人は、地方分権推進委員会の勧告の趣旨を説明。機関委任事務の廃止、権限委譲、国庫補助負担金等の改革、地方交付税など一般財源の改革の必要性をのべたうえで、国と地方の新たな関係を築くための方策と関係者自らの努力が必要なことを強調しました。さらに、「地方分権推進計画や法案の策定では政府が誠実に対応し、内容もほぼ勧告の趣旨にそったものとなった」と評価したうえで、「衆参両院でも地方分権推進の決議から6年を経過したが、この間、地方分権推進計画をへて一括法案に結実した。委員会として勧告を通じて明らかにした措置が実施に移されることが、地方分権の出発点と考える。分権型社会の構築をすみやかに願う」と述べました。

<東京・生活者ネットワーク分権プロジェクト座長・池田敦子参考人の意見陳述>
 池田参考人は、東京都への食品安全条例制定を求める直接請求の経験にふれながら、「生活現場の身近な問題は自治体でやる仕組み」の必要性を強調。また、機関委任事務の廃止では、自治事務に対する是正・改善命令などは「国の関与を強め、分権の理念に反する」とし、「一括法案は分権委の勧告から変節している」と指摘しました。また地方議会への制約(定数の上限性など)は、本来地方で判断すべきで、むしろ首長と議員の権限を対等にするとか議会の調査権の充実などの改善がのぞましいと指摘しました。
 さらに、都区計画審議会への国の関与を抑え、計画段階からの住民参加や意見の反映の仕組みを確立すべき事なども指摘。国から県、市町村への権限委譲にとどまらず、市民の自主性、生活者が見える分権(市民までの分権)が実現する努力を求めました。

<関西大学経済学部教授・林宜嗣参考人の意見陳述>
 林参考人は、地方分権一括法案で機関委任事務を廃止することを評価したいと述べた上で、まだ課題が残っていると指摘。その中味は、地方分権に何を期待するかで違ってくるがと前置きして「国と地方の財政構造改革、財政責任の地方分権の推進、最小の経費で最大の効果をあげることである」と、述べました。しかし、実際はそうなっていないことも指摘し、「受益と負担を連動させるシステムの構築が必要だ」と述べました。
 そのために、第1には「地方税源の拡充がぜひとも必要であり、充分な税収が得られない自治体には、財政調整が必要だ」と述べました。第2には「国がどこまでの水準のめんどうを見るのか、ナショナル・ミニマムを再検討することが重要だ」と述べました。さらに「ナショナル・ミニマムはふところさえ許せば、どんどん増えていく。今は、ナショナル・ミニマムの適正化を避けてとおっている。この点を詰めていかないと、財政調整の在り方が明確にならない」と指摘しました。第3には、どこまで財政調整をおこなうかにかかわって、地方における課税自主権の強化を強調しました。第4には、地方税の構造改革が必要性を述べた上で「法人所得課税や所得課税は、国民や財政当局にとっては都合のよい税金だが、大きく依存するものではない。税率引き下げで競争をやるべきである」と表明。それがないと財政構造改革につながらないと指摘しました。
 こうした改革、すなわち自らの責任と負担で地域づくりを進め、地方分権を推進しなければならないと強調しました。
 最後に今回の地方分権一括法案では、財政責任の面ではものたりないと述べ、第2弾を期待すると締めくくりました。

<名古屋大学大学院法学研究科教授・市橋克哉参考人の意見陳述>
 市橋参考人は、地方分権一括法案の最も大きな改正点では、機関委任事務を廃止したことを評価し、「地方自治の発展を願う長年の要求であり、画期的である」と述べました。しかし一方、機関委任事務廃止の後、「新しくつくろうとするしくみについて危惧の念をもっている」と述べました。
 地方分権の目標である、国と地方の関係を上下・主従関係から、対等・協力の関係にかえ、関与のしくみをあらためて縮減することについて「本当に、そのようになっているかが問題になる」と以下の点を指摘しました。
 第1には、関与の法定主義について指摘。「自治事務に対する国の是正の要求は、公権力の行使にわたる関与であり、権力的な関与の一つになっている」と述べました。現在の措置要求では「非権力的な関与になっていおり、措置要求に従わない道ももっている」と述べました。さらに、権力的な関与をおこなうなら「一般的な根拠規定だけでなく個別法で明確にすべきであり、具体的な条件を設けて厳しく制限すべきである」と述べました。そうでなければ「尊重義務にすぎない」と述べました。
 第2には、国の直接執行ができるしくみ、道が開かれている点について指摘。建築基準法や水道法などの改正で「形のうえでは強制力をもち、権力的の強いものになっている」と述べました。そして「直接執行は緊急の場合にのみに限定すべきであり、広い要件のもとで用いることを求めるなら、制限をすべきだ」と述べました。ぜひ、執行停止のしくみを盛り込む必要があり、そうでないなら自治権が侵害されると指摘しました。
 最後に、衆議院の審議について感想を述べ、「関与の問題は議論がはじまったばかりであり、地方自治法改正を含む475本の個別法に目を配り、きめ細かい審議を期待したい」と述べました。

【各党議員による参考人への質疑】

<自民党・脇雅史議員の質疑>
 脇議員は、(1)分権をめぐる印象と今後必要な点へのコメント(諸井氏に)、(2)住民投票による住民の関与と議会の意見との調整方法をどう考えるか(池田氏に)、(3)課税自主権へ向けた意識革命などの方策(林氏へ)、(4)評価が分かれる点があるが、やってみて手直しする方法もあるではないか(市橋氏へ)などと質問した上で、全員に首長多選禁止についての見解を求めました。
 諸井参考人は、「地域のことはなるべく住民の意向で決定(住民自治)が最終的な目標。その観点から法案は出発点を築くもので、これからやるべきことは多々ある」と述べました。
 池田参考人は、「議会は間接民主主義であり、住民投票は直接民主主義。後者はある場面では必要であり、ある事態を忌避するだけでなく、米国では条例提案や修正など提案と結びついている。住民の側も責任も含め、しだいに成熟していくものだ」と説明。
 林参考人は、「情報公開の仕方を改善し、行政サービスのコストと受益を明確にすることで、住民参加も変わる」などと説明しました。
 市橋参考人は、「国と地方の関係を主従の関係から対等な関係にする必要があることから、法律の仕組みとしてもできるだけその内容を伴うことが必要」と述べました。
 首長多選禁止については、参考人すべては法律によらず、地方の判断で決定すべきという意見を述べました。

<民主党・朝日俊弘広議員の質疑>
 朝日議員は、(1)県と市の事務分担の見直しをどう考えるか(池田氏に)、(2)分権委の残された課題(諸井氏に)などについて意見を求めました。
 池田参考人は、「基礎自治体である市町村が自治を進める構造になれば、国との中間的存在になる都道府県の権限は弱まる。国が都道府県を通じて市へ影響を及ぼす仕組みはなくすべきだ」と述べました。
 諸井参考人は、「今後は法律や政省令などが分権の趣旨に沿っているか監視する義務がある。6次勧告については、一括法案が通ったあとで内部で検討したい。分権委以後の仕組みは、国会・政府で検討することだが、国会で世論を受けてどんどん必要な法改正を進めていけばよいのでは」と述べました。

<公明党・魚住裕一郎議員の質疑>
 魚住議員は、(1)機関委任事務廃止の数など、分権委勧告と一括法案の差が多く、単純に評価できないのでは(諸井氏に)、(2)地方での「行政評価」の必要性、B事務量に見合った税源委譲についてどう考えるか(林氏に)などについて意見を求めました。
 諸井参考人は、「勧告との文言の違いは法制化作業での事情によるもので、実質的なちがいではないと思う。是正要求は、機関委任事務制度という地方を国の下請け機関のように包括的指揮監督権限で指図し処理してきたものを、根底からなくす。そのあとで、法律に反しているとか国民に不具合をもたらすような問題で、政府として何もできないことになるとバランス上まずい。トータルとして実質的に必要なバランスを維持することは、機関委任事務を残すよりはるかに前進している」と述べました。
 林参考人は、「事業評価の研究は盛んだが、行政サービスの受益がだれに帰着するかを把握するのは至難のワザ。費用便益分析にも限界がある。むしろ行政サービスのあり方を踏まえ、同じ目的のサービスをどれだけ安いコストで提供しているか(他の自治体との比較ができる形で)を評価する仕組みなども考えられる」とし、さらに税源委譲では「国の財源で保障するサービスの水準が決まらないとダメ。自治体への補助もこの問題次第だ」などと説明しました。

<日本共産党・八田ひろ子議員の質疑>
八田議員は、市橋参考人に対し今回の改正で、(1)地方自治はどのような方向に進むと考えるか、(2)周辺事態法との関係ではどう考えるか、などについて意見を求めました。
 市橋参考人は、地方自治の観点からみて「地方自治の本旨をより具体化する部分もいくつかあるが、同時に問題があるものがたくさんある」と述べました。この点では「地方分権は、住民の自治をどう充実させるかが中心にならなければいけない」と指摘しました。さらに「機関委任事務を廃止することは画期的だが、自治事務に対する是正の要求はゆきすぎたもの」と指摘。「住民の声を反映させるのが、地方自治の本来の姿である」と述べました。その点で「今回の改正は、地方自治法第11章(国と地方の関係)が厚いが、第2章(住民)のところが豊かにされなければならない」と述べました。
 市橋参考人は、周辺事態法の関係では「周辺事態法の9条で自治体の協力が問題になっている」と述べました。その上で「9条2項では、協力を拒否できることになっているが、建築基準法、水道法など個別法の改正で、協力が自治体に義務づけられるように動くことは、危惧しなければならないものがある」と述べました。

<社民党・照屋寛徳議員の質疑>
 照屋議員は、(1)住民に最も近い意志決定機関として自治体を活性化するためには、中央政府に対し、地方政府と位置づけることが地方分権を推進する上で大事な理念だと思うが、現在の問題点はどんな点にあるか(池田参考人に)、(2)自治事務への関与について、従来はなかった個別法での国の関与が強まっている。米軍用地収用法特別措置法の再改正では、憲法に基づく財産権や適正手続きがことごとく形骸化されることになる、これは分権の名に値しない。国の関与を強める中央集権の強化だと思うがどうか(市橋参考人に)、(3)国と地方に財源の問題については、地方分権推進委員会ではどんな議論があったのか(諸井参考人に)、について意見を求めました。
 池田参考人は、条例制定の際など調査機関が貧弱で議会事務局が入れ替わり、専門性が低く議員が調査するのにお粗末であること。行政のチェックシステムでは、首長と横ならびの行政委員会のチェックシステムが必要であること。議員の議案提案権の定数を緩和してもいいのではないか、などを指摘しました。
 市橋参考人は、「照屋議員と考えは同じだ」と述べ、「米軍用地特措法は従来、土地収用法を適用する形で対処する中での考え方が込められていたが、改正でなくなってしまう。住民の基本的な権利が消えてしまう」と述べました。
 諸井参考人は、地方分権委員会の勧告の中では、国と地方の財源、歳出の乖離をなくし、安定性のある財源についての方向性を示すにとどめた。政府の税調の中では、「突っ込んだ議論をしなくてはならない」と述べました。

<自由党・星野朋市議員の質疑>
 星野議員は、(1)自治体の数をとりあえず千ぐらい、やがて300に縮める考えをもっている。合併については、促進するためのメリットを与えるという考え方についてどう思うか(各参考人に)、(2)道州制の議論が出てきていないがどうか(諸井参考人に)と意見を求めました。
 諸井参考人は、「合併は自主的にやられるべきもの。今の体制では問題があり、体制強化のため合併を進めていく。強制ではなく自主的にやるべきだ」と述べました。また、道州制については「地方分権委員会の中でも多少議論した。しかし、踏み込むと収集がつかなくなるので今回は、分権のための出発点をつくることにした。道州制は、中期的な問題として議論が必要である」と述べました。その上で「道州制の中にある、連邦制という考え方は、適当でない」と述べました。
 池田参考人は、「合併ありきは、賛成できない。自治体の自治権を尊重すべきであり、合併するにしても住民投票を活用し、住民の意思を確認すべきである」と述べました。
 林参考人は、「従来の行政は内向きであり、広域の行政は県に任せてきた。合併するかどうかは、地域が決めるべきだ」と述べました。また、「地方分権が進めば、今の財政ではやっていけない。広域的行政をやらなければならない条件になる」と指摘しました。
 市橋参考人は、「法律で上から合併を持っていく、誘導するのは反対である」と述べ、「住民自治をはかるよう、公益とともに共益を考えて行くべきである」と述べました。

<参議院の会・奥村展三議員の質疑>
 奥村議員は、(1)地方分権で自治体の権限が大きくなりすぎるという懸念がある、財源と税の問題も出てくるがそんな議論はなかっったか(諸井参考人に)、(2)住民投票と地方議会との関係はどうか(池田参考人に)、B財源の話で、税のしくみを変えていかないと地方分権といってもうまくいかないがどうか(林参考人に)、と意見を求めました。
 諸井参考人は、「権限委譲で首長が思いのままになることが、地方分権とは考えていない。住民の多数の意見で進めるのが分権であり、住民の参加、協力、意見反映が大事だ」と述べました。
 池田参考人は、「知事は公選制で支持されている。直接民主制でより住民の意思が反映されることは必要がある」と述べました。
 林参考人は、「受益者負担で、しっかり徴収していく財源調達の方法を考えていく必要がある。このことで住民の自覚が高まる」と述べました。

<自由連合・石井一二議員の質疑>・・・・(省略)

盗聴法反対実行委と共同で80人、悪法廃案に
ー7月1日・昼休み議面行動ー

 7月1日昼休み、盗聴法反対実行委員会と国公労連の共催で、参議院議面行動を行いました。冒頭、盗聴法実行委員会の望月事務局長は、「自・自・公の路線に国民の怒り、国民の権利、人権が侵されることに対する怒りが広がっている。確信をもって、世論と運動を広げよう」と主催者あいさつ。日本共産党から宮本岳志参議院議員、緒方靖夫参議院議員がかけつけ、あいさつ。宮本議員は、「盗聴法案は、修正や手直しでは何らハドメをかけるものではない。全力で、廃案に追い込むためにがんばろう」とあいさつ。緒方議員は、「盗聴法案は衆議院での強行可決以来、運動が広がってきた。人権無視の法案であり、真正面から世論に訴えていくことが大事だ。悪法を廃案にするためにがんばろう」と参加者を激励しました。
 各団体を代表して、全労連・岩田事務局長、新婦人・山川副会長、全司法・井上副委員長、国民救援会(神奈川)石川さん、国公労連・森崎副委員長、憲法会議・川村事務局長の6人が決意表明。国公労連・森崎副委員長は、「民主的な行政を進めることと、盗聴法は相いれない。何としても廃案にしよう。中央省庁再編では、内閣機能の強化と国民サービスを切り捨てる大幅な定員削減が狙われている。独立行政法人の対象機関では、その6割が国立病院であり、まさに国の役割を放棄しようとしている。最後までがんばる」と決意を述べました。
 この議面集会は全体で80人、そのうち国公労連は50人が参加しました。

以   上


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