|
|
参議院行財政改革・税制特別委員会 −7月2日午前の審議(一般質疑) <自民党:依田智治議員> 依田議員:防衛庁はなぜ省に昇格せず、庁なのか。 太田総務庁長官:不自然さは残っているが、行革会議の議論をふまえて最終報告での取り扱い。 野中官房長官:自衛隊の出動は、国会の議決や内閣総理大臣の総指揮のもとで文民たる防衛庁長官が動くというシビリアンコントロールのもとにある。そういう現状をふまえて、いろいろな議論の結果、内閣府の中における長官と位置づけられている。 依田議員:諸外国では国防をしっかりやるのが常識になっているが、各国の状況はどうなっているか。 野呂田防衛庁長官:スイス、アメリカ、フランス、ドイツ、ロシア、イタリア、カナダなど省扱いされていない国はない。 依田議員:過去に防衛省への動きもあったと聞いているが、戦後50年このままでよいのか。防衛を国の基本として位置づけ、早期に政治の場で議論して、内閣として責任ある防衛体制を作るべきだ。 野中官房長官:戦争世代としての反省がある。ガイドラインに対しても近隣諸国から警戒心が出ているが、自衛隊は専守防衛に徹することを明らかにして近隣諸国と強調すべきと考える。いろいろな議論の結果であり、政治の場で十分な議論をしてもらいたい。 依田議員:内閣機能の強化と関わって、テロへの対応など随分体制ができてきていると思うが、まだまだ経過的な気がする。今後の危機管理体制についてどう考えるか。 野中官房長官:危機管理の専門家として危機管理官を置くことにしている。内閣府が危機管理についての企画立案、総合調整を行うとともに、危機管理官を危機管理専門の官房副長官として位置づけるなど内閣機能を強化しており、新たな体制で十分機能すると考えている。 依田議員:危機管理では情報管理体制が重要だが、わが国は極めて弱い。情報分析要員も他省から集めていると聞いているが片手間で担いきれるのか。合同情報会議は機能しているのか。十分な対応を求めておく。 住田内閣情報調査室長:情報機能強化のために、要員の拡充と体制の強化をはかる。民間のスペシャリストの中途採用なども考えている。各省の情報を内閣に集中し、内閣情報会議や合同情報会議など情報機関が共通の認識を持ち、検討の上総理にあげていくことにしている。情報収集のため多チャンネルを利用しているが、直接派遣も必要と考えており、各省と協議して進めたい。情報衛星による情報分析を進めるために要員を確保して、何年かかけて分析、対応できるよう準備を進めている。 依田議員:危機管理は専門的に対応することは大事だが、内閣府における官房副長官の柔軟な対応などでよいのか。 伊藤安全保障危機管理室長:内閣危機管理官のもとで専門的に十分な対応は当然必要であるが、3名の内閣官房副長官の事態に即した柔軟な対応や、緊急時には他からも動員して機動的な対応を図る。 依田議員:地方行革、地方分権について、財政、人材をどうするかも大事だが、規模も重要だ。市町村合併の促進、道洲制の促進を含めた抜本的な議論が必要だ。 野田自治大臣:地方公共団体の処理能力を高めることは大事であり、地方の力を高めながら権限委譲を考えている。市町村合併は進めたいが、道州制として都道府県の合併を一緒に進めると議論だけに終わる。道洲制は中・長期の課題として検討を進めたい。 依田議員:現在3,200といわれる市町村の規模を、当面どの位にしようとしているのか。それを実現するために何を重点にするのか。 野田自治大臣:3,300弱の自治体をおおむね三分の一にするという議論があることは承知している。しかし、数字があるとそれが一人歩きし誤解も生まれる。合併支援策も折り込んでおり、合併を進めることによって住民の福祉向上につながるということに思いを寄せて積極的に検討してほしい。あまり時間をかけてズルズルやる課題ではないと思っている。市町村の任務が高度化、広域化しているとき、包括的、一体的なサービスが必要だ。行政主体の強化として理解を得たい。 依田議員:行革の受け皿として適正な市町村規模を確保する必要がある。国として財源をきちんと見ることをしながら、市町村合併を中心的に進めるべきだ。広域連合というのはよりましだと思っているが見解は。 野田自治大臣:広域連合という特定の事務事業の連携はそれなりに成果を上げている。しかし、一体的、包括的に処理しなければならないニーズは多い。そのため主体的な対応力の強化がどうしても必要と考えている。市町村合併を進めるために、人口だけで一律に括るのは無理であり、地域の実情に応じた類型的なパターンとしてのガイドラインを示したい。 依田議員:国と地方の対等の関係という気持ちは大事だが、自主財源がないと生活の面倒を国が見て、小さいまま固まって居心地がよいと進まない。平成の大改革として、国の責任で大胆に指導的にやることが必要だ。ある期間を過ぎると不利な扱いになるということも含めて進めるべきだ。 野田自治大臣:小さな所に国が援助して合併を阻害しているという意見があるのは承知している。サービスには財源だけでなく、組織力、対応力が必要。合併を進めることで高度な職員の確保、対応能力の強化、財政力もアップし、高度なサービス提供につながる。精力的なPRに努力する。 <自民党:日出英輔議員> 日出議員:32年ほど公務員生活を送ってやめたものとして、こんどの行革には大いに賛意を示すものだが、行政にいたものとして、いくつか異議というか引っかかりを感ずる。特に独法化について、新聞報道などでは今回の行革の象徴になっているが、行政機能のアウトソーシング=減量化のために寄与しているというのはいかがか。国民は公務員削減が行革だと受け止め、公務員の数を減らす手法としての独法化と受けとめている。職員は国家公務員、金も国から出る、いまの特殊法人と同じで行革にならないと思っている。それは誤解だとは思っているが、行政組織の活性化のため、民間手法を取り入れるための独法化だと受けとめている。その点をもっと明らかにすべきだ。 そこで、参考にしたといわれる「サッチャー行革」でのエージェンシー化の議論について、政策立案と執行部門を分離して、執行部門には民間手法を取り入れサービスを向上させるためであると受けとめているが間違いないか。英国の国家公務員の四分の三がエージェンシーに関わっているといわれており、民営化された状況はどうなっているのか。 河野内閣審議官:エージェンシー化の考え方は意見のとおり。356,000人がエージェンシーに関わっており、138機関の内11機関約6,200人が民営化されている。民営化されているのは研究所、計算センター、刊行物印刷センターなど。 日出議員:民営化は少ないが、予算の削減にかなりの効果があったと聞いている。サービスも着目すべきものがあると聞く。独法化は、公務部門の一部であり、組織に関するというより、管理に関する変革だと思う。国家公務員の数を減らすためのものでないはずだ。 太田総務庁長官:我が意を得たりの思い。独法化は、行政の効率性、質の向上、透明性を確保するためのもの。独法化することと定員削減することとどちらが厳しい選択かと問われれば、行政の透明性を確保し、緊張感のもとで効率性を追求するものであり、独法化が厳しいと思う。独立法人の責任で定員管理も行い、トータルとして自らを縛るものとしての決意が「25%」に現れている。 日出議員:行政の肥大化ということが安易に使われているが、行政領域の肥大化が正しいと考えている。行政の経験の中で、定員は減る、業務は増える、緊急な対応を求められてもタテ割で苦労したが、独法化は、行政組織の硬直化にはいい影響をもつと思う。 官僚は、いかに独法化の実を上げるか努力中と聞いている。独法化で自分たちの可能性を拡げられるとの受け止めでいろいろ作業をしていると聞いており、本来の趣旨に沿って検討が進んでいると思う。独立法人の発足にあたって、大蔵省、総務庁、人事院など、その趣旨を活かすような協議が必要だと思う。職員のやる気をどう引き出すかも大事。そこで、独法化の毎年度の予算措置はどうするのか。中期の努力を打ち消すようなものであってはならないと考える。 河野内閣審議官:基本は職員のやる気を起こすように弾力化することであり、中期計画に従い、毎年度予算の手当を行い、事業の実施が円滑に進むよう配慮する。 日出議員:職員の採用について、公務員試験合格者に限っては駄目だ。外国の学者、若年者の育成、財政・金融の専門家を呼ぶなどいろいろなタイプの採用が必要だ。 河野内閣審議官:基本は国家公務員の身分を持ったものだが、任用は弾力的に考えたい。公正、中立な方法で、独法の長の判断により採用できるよう範囲を拡大するなど人事院と相談していきたい。 森田人事院任用局長:特定独法の職員は一般公務員であり、成績主義の原則で、試験や選考などで能力の実証により採用を決定する。ただし、現在も、大学院の博士課程修了者や研究者を任期付き任用で試験がなくても採用しており、独法の採用にあたって、長の判断を尊重して必ずしも試験にこだわらず採用できるようにしたい。手続きも簡略化したい。日出議員:独法の税金の取り扱いはどうなるのか。税金の関係で仕事が動かないということがないようにすべき。 河野内閣審議官:税法上の措置として、国税は、民間出資のないものは公共法人として非課税。地方税は、全額政府出資するものは法人税、住民税非課税となっている。 日出議員:89機関73,000人の独法化がうまく進めば、国立大学がなじむかどうかは別にして、実施に近い部門の活性化、効率化、サービス向上につながると思うので成功を確実にする必要がある。問題が起きた場合の責任追及などの問題もあるが、国会の監視なども長い目で育てていくことが必要だ。 今回の行革は前進したものとして評価しているが、行政経験者としてやや引っかかりがある。内閣機能の強化、行政領域の肥大化などもっと議論すべきであったという声が霞ヶ関にはある。新人議員として言うべきことではないかも知れないが、国会自身の問題として、行政に対する監視役になっているのか、そのシステムがあるのかということが気になる。予算委員会も決算委員会も審議結果が予算に反映できていない。政治の側から予算、決算に対する尺度がないような気がする。政党自身も政策を判断する尺度がないと思う。国会や政党が行政の監視役としてのシステムを考えるべきだ。この一大改革の時期、政治と行政の間の緊張感と強調が必要だ。心を一つにして進むことが必要だと考える。 野中官房長官:改革にともなう課題について、政治の場にあるものとしての所見だ。一部官僚の腐敗が相次いだ時期と行革が重なったため、官僚バッシングにより公務員が萎縮しているのではないかと危惧している。 しかし2001年にむけて具体的に動き始めている。多くの政治家が行政に入っていくが、お互いに緊張感をもたず、支配や媚びにつながるようでは困る。政治が協力してこの改革を進めるものであるが、まだまだ一つの段階、不断の改革努力が必要だ。 国会の問題は国会が判断するものだ。政党も考え方を新たにしていく必要があると思う。いってよいことかどうかと考えるが、衆議院と参議院同じ形式で扱うことがよいのか、と思う。衆・参の審議のありよう、政治家同士のありよう、官僚との質疑のありようなど改革の必要があると考える。今後の議論に期待したい。 日出議員:重視したいのは政策評価だ。客観的な評価基準の欠如が指摘されているが、体系的にシステム的にきちんとやっていくことが必要だ。しかし時間もかかる。かといって、できあがってからでは国民の期待に背くことになる。公共事業などいくつかの分野は明らかにしながら進めるべきだ。 太田総務庁長官:行革会議の議論を受けて、これまで結果が見逃されがちであったが、各省自らが結果を評価するとともに、それにとどまらず総務省が客観的に評価するものとして導入する。政策評価を進めるためには相当の勇気と努力が必要だと考えている。この成否はこれができる体制ができるかどうかだと考えている。 日出議員:国の会計にバランスシートの導入、が報道されている。かなり困難とは思うが、本質的には国民に知らしむること、段階的にでも手を着けるべきだ。 坂大蔵省主計局次長:問題点の整理、費用の検討、導入の意義など実務的な検討を始めている。特別会計38の内、企業会計に近い24はバランスシート的なものが使われている。独法には企業会計を導入する。 日出議員:公務員制度改革も重要だが、総務庁長官の受けとめは。 太田総務庁長官:公務員制度改革も同時に進める。新しい試みも進めており努力を続けたい。 <民主党・高嶋良充議員、輿石東議員の質問> 高嶋良充委員(民主) 厚生事務官の地方事務官への切り替えについて、福利厚生の実態把握の調査をして欲しい。また、地方事務官の廃止に当たっては処遇が後退することについて、激変緩和の経過措置を考慮してもらいたい。 宮下厚生大臣 実態調査はしたい。国として対応可能なものについてはできるだけ努力する。 高嶋 都道府県が市町村に対し権力的に関与ができるようになるが、なぜこうしたのか。 野田自治大臣 国が市町村に対し行うより、市町村の実態を把握している都道府県が行う方が適当と判断した。 高嶋 都道府県と市町村は対等平等の協力関係であるべき。対立をあおる措置は好ましくない。国の指示で、都道府県が市町村に是正指示をする場合、市町村はどこへ訴えればいいのか。国・地方係争処理委員会でやるべきではないか。 野田 国の指示で都道府県が市町村の法定受託事務に関与する場合、都道府県が主体的に判断して指示する。市町村への国の指示について都道府県が不服があれば、都道府県と国の係争処理の対象となる。 高嶋 都道府県と市町村の紛争は、自治紛争処理委員会で対処するが、この事務局は自治省に置かれる。自治省から都道府県に是正指示が出され、都道府県が市町村に指示する場合、紛争処理委員会事務局が自治省では不公平ではないか。事務局を置く場所の再検討を。野田 緊急の必要がある場合は、国が直接関与できる。この場合は国・地方の係争処理になる。論理的にはともかく、自治省が市町村の事務処理に関与することは想定できない。地域のことに限定されているので、公正な判断はできる。自治紛争処理委員は、同一政党、政治団体に所属する者が過半数を占めることはできない。政治活動の制限もあり、心配ない。 輿石東委員(民主) 中教審答申では何が問題とされ、教育行政をどう変えていこうとするのか。 有馬文部大臣 個性の尊重、生きる力を育てる、心の教育の充実を図る。そのため各学校が地域の特性を生かせるよう、教育委員会が自主性、自立性を持って指導できるようにということ。(1)国の役割の明確化、A文部省の教育委員会への指導、助言、援助を改める、(2)教育委員の数の弾力化、C教育長の任命制を廃止し、教育委員から選出するといったこと。 輿石 法定受託事務の処理基準は、各大臣が作るが、その方法が明文化されていない。基準の作成方法と、通知と通達の違いを聞きたい。 野田 通達は機関委任事務の包括的指揮監督権。通達で一般的な定めも、個別の指示もできた。国との協議も承認もできた。指導、助言、勧告は、権限的なものではなく、通知になる。通達は整理されなければならない。処理基準は、現時点で各省で整理整頓しているが、本法案の施行までに作成されるべき。一般的な処理基準として定められ、最小限度とすることになる。 (この後、教育行政に対する中央統制の象徴として、教科調査官、県の指導主事のあり方、学校事務職員の処遇についてのやりとり。) 輿石 官房長官は、学校現場の混乱を防ぐため、日の丸・君が代の法制化をする。強制するものではないと言ったが、確認できるか。 野中官房長官 国旗掲揚の義務づけは考えていない。学校における指導は、児童、生徒が国旗・国家を理解し、敬意を育むために行っている。教員組合と学校管理者が対立して苦しんできたが、法制化して根拠を設けることは重要な教育への配慮だ。 7月2日 昼休み独自議面行動を展開 −40人が参加 7月2日、国公労連は、行革関連法案で、国会議面行動を展開、各単組から40名以上が参加しました。 主催者あいさつに立った森崎副委員長は、「参議院審議は、大詰めだが、極めて不十分な審議だ。国立病院や国立研究機関を独立行政法人化して、役割が果たせるのかという点や、25%定員削減をして行政サービスは大丈夫かなどに政府は答えられない。国公労連は、労働条件の改善と共に、よりよい行政をめざすことを任務としている。最後まで頑張ろう」と呼びかけました。 国会報告に立った共産党・八田参議院議員は、「国のあり方を変えようとする法案であるのに審議は不十分という言葉では言い表せない。独立行政法人化は、生命安全を投げ捨てるものということが明らかになってきた。自自公のひどいやり方が生活を踏みつぶしている。それを許さず最後まで頑張ろう」と訴えました。 ついで公務共闘副議長・医労連委員長の江尻さんが激励のあいさつ。江尻さんは、「国公の皆さんの仕事は国民生活全般に関わる。それを変えようとすることは大変なこと。例えば、国立病院は、高度な医療を安価に提供している。それをなくそうとしている。公務共闘も同じ基盤で亜闘っている。ともに頑張ろう」と呼びかけました。 単組の決意表明は、全通信、全税関、全医労が行いました。全通信河野中執は、「案の定、独法は、25%以上の定員削減を要求されている。共同通信の記者が、55年生きてきて今が一番あぶない、といっているが本当だ。攻撃を許さず闘おう」と決意表明、全税関高橋書記長は、「税関の組織統合がすでにやられた。地元住民が訪れるところだ。通関のチェック機能がどんどん低下している。利権はそのままで、行政サービスは切り捨てられている。それを許さず闘う」と決意表明、全医労渡辺副委員長は、独法化で7万以上が定員削減されるが、そのうち4.6万人が国立病院・療養所。2004年度までに、60カ所つぶす計画。この乱暴なやり方に対し、900議会が反対決議をし、160万人の署名が集まり、紹介議員は146議員になっている。最後まで闘う」と決意表明しました。 さいごに、福田書記長が「最後の最後まで国会審議を監視していこう」と提起、議面行動を終了しました。 |