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参議院行財政改革・税制特別委員会 −横浜地方公聴会意見陳述 1999年7月6日新横浜プリンスホテル 全医労委員長 遠山 亨 私は、厚生省の管轄であります国立病院・療養所の職員で組織している労働組合である全日本国立医療労働組合(略称・全医労)委員長の遠山です。全医労は、終戦直後より今迄51年間、国民の医療と働く者の生活を守る運動を進めています。こうした立場から、私は国立病院・療養所の独立行政法人化がもつ問題点にかかわって、大きくは3点の意見を述べさせて頂きます。 第1は、国民の医療・社会保障に対する要求がかつてなく高まっている時、国の責務、果たすべき役割が大きく後退の方向に向かうのではないか、危惧しているところです。 医療の提供体制で言えば、国の施設として国民への医療提供をよりせばめていく方針から国立病院・療養所の独立行政法人化がすすめられているように思われます。 独立行政法人化では、医療の公共性が失われるのではないかという点です。 この機会にこそ、この国の医療はどうあるべきか、大きな変革にかかわるわけですので、もっともっと議論が必要だと思います。 独立行政法人化では、「企業会計」原則による採算優先の病院運営が強いられ、国立医療がこれまで維持している不採算部門の医療の撤退がはかられるのではないかと予測されます。差額ベッドの拡大などによる患者負担の増大や、現在の結核・難病・重心・筋ジス・感染症など長期入院を余儀なくしている医療の切り捨てが浮かび上がってきます。こうしたことは、国立病院・療養所と同じように国や自治体から財政補助を受けて運営している他の公的医療機関にも波及していくことはないのか、と思います。こうした様々な点から見ると、国民の医療に及ぼす影響はきわめて大きいものと考えられます。 今、日本の社会は高齢化により、医療、看護、介護に関わる施策の充実は国としての緊急課題ともなっています。 また、結核が、学校での集団発生や病院内での感染などにより、患者数が増加している傾向は、新聞やテレビニュースのとおりです。多くの民間病院から結核病床がなくなっているもとで、国立病院・療養所での結核入院患者のシェアが48%を超えているように、結核医療の拠点ともなっています。 そして、財政基盤の弱い山間・僻地・離島など公的医療に恵まれない地域で積極的な役割を発揮しており、このまま継続して欲しいと国民は願っており、独立行政法人化はそれに対して応えるようになっていないように思えるからです。 国立病院・療養所は、北海道から沖縄に至るまで地域医療を基盤にネットワークされている日本最大の医療組織です。この国立病院・療養所が果たしている全国ネットワークを駆使した充実・強化が今ほど必要と思われる時はないと考えるからです。 ところが、国立として残ることが見込まれるのは、国立がんセンターなどの高度専門医療センター(6施設8病院)、ハンセン病療養所(13園)のみであり、このようにがん・循環器病等のセンターに限定するのでなく、国立医療を存続させ、不採算医療や政策医療に対する全国ネットワークの機能を発揮すべきです。 国立病院・療養所は民間で対応が困難な領域分野の医療の要請を受けてその役割を果たしています。 今後さらに近隣の医療機関や福祉施設との信頼と協力の関係をより強め、長所を伸ばし短所をカバーする全国的なネットワークを敷いた国の医療機関がどうしても必要だと考えます。 第2は、働く職員の身分に関わる問題です。 国立病院・療養所が独立行政法人化されれば、国家公務員型となっても人事院制度からも除外され、首切りあるいは強制配転・労働強化に直接つながるのではないかと思われます。本来、医療現場は、人の生命を救い、いのちと健康を守るきわめて公共性の高い業務であり、それにふさわしい人員を確保し、身分や処遇の保障が必要です。しかし、独立行政法人化することによって定員を削減し、身分不安定な労働条件に切り下げられることが、医療を守る上で危惧をもつものです。具体的な職員の身分や処遇は、今後「個別法」の審議に多くの内容を委ねるとしています。本来こうした事項は団体交渉で取り決められるべきものです。 しかし、私たちはスト権を奪われています。私たちの生存権に関わる重大事項が政府の手で一方的に行われることがあっていいのか、この点で危惧しているところです。 第3は、国立病院・療養所を存続させ、さらに拡充してほしいという国民からの期待が高いことです。 この点で、全国的な特徴点を申し上げさせて頂きます。 中央省庁等関連法案では、内閣機能の強化で権限集中を図り、その一方で住民の暮らしや、医療と直結する事務・事業の89の機関を選び、独立行政法人化を図ろうとされています。その対象人員は7万3000人で、そのうち4万6000人は国立病院・療養所で最大規模になっています。 さらに重大なことは、2004年度から独立行政法人に移行するとしていますが、その間に、現在、国立病院・療養所切り捨ての再編成計画中の残る60カ所を廃止するとしています。神奈川県では国立小児病院二宮分院と神奈川病院の統合、横浜病院と横浜東病院の統合、さらに横須賀病院の移譲という3ケースが含まれています。 提出しています資料1の「週刊文春7月8日号」でも掲載されているように、「行き先さえ決まらず不安におびえる患者・家族の悲痛な叫び」が上がっています。住民の安全・命と健康を守ることこそ国の本来やるべき仕事であり、そのことを訴えている一例ではないでしょうか。 国立病院・療養所が、戦後50数年にわたり国民の医療と健康を守るため果たし続けた業績は何人も否定し得ないところです。国立医療が国民共有の財産であり、これを再編成したり、独立行政法人化することは、地域住民とともに長い歴史の中で医療要求に応えてきた地域医療をくずしていく道に通じるからだと思います。 今日、独立行政法人化に反対する地方議会の反対決議が既に894議会に及んでいることも、160万を超える国会請願署名についても、みなさんよくご存知のところです。宮崎県では県議会を含む100%の議会が反対決議を挙げているように、全党の一致した決議となっています。 ここ神奈川県でも、5月30日に「第10回よこはま健康まつり」を開催し、過去最高の5000人の住民が参加し、「国立病院を守ろう」「独立行政法人化ノー」の声を上げました。 3月18日に拡大見直しとして廃止計画が発表された大阪の千石荘病院では、住民のアンケートをとり、98.7%の人が国立として存続を望むという廃止計画反対の声が寄せられています。まさに国民は国立病院・療養所の発展を期待しています。 資料2にありますように、北海道新聞の社説では、「公共事業や官公庁のあり方を見直すのと地域住民の要求に結びついている医療機関を同一のレベルで実施していいのか疑問が残る」という声があがっています。 資料4の元国立病院長の秋元波留夫先生は、「半世紀にわたる国民のぼう大な税金と多数の関係者の総意と努力で築き上げたものを独立行政法人化によって捨て去ってはならない」と強調されています。 国立病院・療養所の使命は、単に現在の7万人の入院・外来患者だけの医療の問題ではなく、国民の期待に答える国の責任として、いっそう充実、発展させなければならないと考えるものです。 私たちは、こうした広範な国民の声を大切にして、進んだ医学・医療を貧富や地域の差なく広く提供する運動をすすめていきます。そして少子・高齢化社会を迎えた医療・福祉・介護の充実、一般医療を基盤とした高度専門機能の強化、長期にわたる難病など長期慢性疾患の治療研究、エイズ、エボラ出血熱など感染症に対する研究・治療体制、さらに地震等の災害医療の強化などしっかりした展望を見据えながら、憲法に基づく医療機関として国立病院・療養所がますます拡充、発展することを申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。 <公述人への質疑の独法化関連部分(要旨)> 7月6日、参議院行財政改革・税制等に関する特別委員会の横浜地方公聴会で、中央省庁等再編関連法案について、遠山亨公述人(全医労委員長、共産推薦)、山上晃公述人(神奈川県経済同友会副代表幹事、自民・自由推薦)ら4人の意見陳述の後、6人の議員から公述人への質疑がされました。その中から独立行政法人化関連部分の質疑(要旨)を掲載します。 ◇清水嘉与子議員(自民) 働いている方が意欲をもって働けるようにと言われたが、国立病院が今のままでいいのか、国立のままで改善できるのか、という問題がある。独立行政法人になった時にどうなってほしいのか? ◇遠山公述人 現状を見た時、これが国立と言えるのか、という状況もある。国の予算のしわよせを受けてきたのが原因。何を望むのか、ということだが、独立行政法人問題の議論は不足している。今のままでは、国立病院がそっくりなくなってしまう。独立行政法人化は効率化路線であり、賛成できない。国立で存続し、意欲をもって働けるよう、先生方の努力をお願いしたい。 ◇川橋幸子議員(民主) 国立病院・療養所の再編成、独立行政法人化への危惧はわかるが、独立行政法人化により公共性が失われるとうという発言は短絡的だと思うが? ◇遠山公述人 問題点は4点ほどある。
意見陳述の際、「独立行政法人化によって国民生活に支障を与えないよう配慮を」と言われたが、具体的には? ◇山上公述人 今、考えられている仕事の中には、かなり経済効率性からするとむずかしいというか、低採算であり、非効率な分野であるがゆえに、国が担って、公平なサービスが低下せぬように手当をしている、そこを独立行政法人化することで、一体、公平なサービスが担保されるのかという不安、それから経済効率性をあまりに追求するために、サービスが劣化をしていくという側面というのは、どうしても否定できない。そういう点で、実際、運用する過程できめこまかい手当が必要ではないか。中には、独立行政法人にすることが好ましくない、そういうものも含まれていはしないか、ということを充分吟味しながら、この問題は進めていく必要がある。 ◇富樫練三議員(共産) 統廃合・移譲と独立行政法人化の関連は? ◇遠山公述人 2004年までに、統廃合・移譲を推進し、残りを独立行政法人化する計画だ。独立行政法人化の裏に隠れた廃止計画が進められている。 ◇富樫練三議員(共産) 再編成計画を大まかに説明してほしい。 ◇遠山公述人 86年に74カ所の削減計画が出され、これまで、26カ所実行されている。今春12カ所追加されたため、現在は60カ所の削減が計画されている。ハンセン病療養所とナショナルセンターを除いて、147カ所を独立行政法人とする計画だ。 ◇富樫練三議員(共産) 大半が独立行政法人化され、かなり廃止する計画である。結核、山間・僻地・離島の医療への影響は? 神奈川県内の再編成の状況について聞くが、病院の廃止後は医療の空白が生まれないか? ◇遠山公述人 結核のベッドは再編成と病棟集約で、すでに5000床以上減らされている。単に建物がなくなるというだけでなく、今まで、国立病院・療養所がはぐくんできた医療の蓄積が消されようとしている。また、神奈川県の話が出されたが、二宮分院は小児ぜんそくの治療で重要な役割を果たしている。子どもが元気になり、大学受験をするようになった、13年前にこの病院がなくされていたらどうなっていたことか、とお母さんからも言われた。この例のように、全国の国立病院・療養所は重要な役割を果たしている。 ◇富樫練三議員(共産) 病院は世の中にたくさんあり、民間にまかせればいい、という議論があるが? ◇遠山公述人 国立病院・療養所の発足時、国立は病院全体の30%を占めていたが、今は6%になっている。政府は、国立病院・療養所を縮小してきた。診療報酬の問題点もあるが、民間病院等で採算があわない医療は国がもつべきである。地方議会決議や住民の要望もそういうことを切実に求めている。 参議院行財政改革・税制特別委員会 −大阪地方公聴会意見陳述 1999年7月6日 石渡団長(自民) 自民党 大島、狩野、海老原 民主党 高島、福山 公明党 山下 共産党 八田 社民党 大脇 自由党 入澤 参議院の会 管川 公述人 関経連 井上(ダイキン工業) 大阪市大 馬淵(法学部) 岡山大 山本(経済学部) 大阪国公 滝口委員長 石渡:まず公述人、一人15分づつ発言して下さい。 井上:今日の中央省庁の再編は、日本経済の再生に関しても重要である。日本経済はまだまだ、先行き不透明で予断を許さない。戦後50年手つかずにきた省庁再編には賛成である。内閣総理大臣には強いリーダーシップをとってほしい。この改革は、中央省庁の改革に向けた大きな一歩である。しかし、小さな政府の実現は今回の省庁の統合では達成できない。地方分権をあわせて、財源や権限を移行しさらに(改革を)推進すべきである。こくの役割は限定すべきで地方公共団体に移行すべきだ。今後もフレキシブルに改革できる体制をとっていただきたい。 馬淵:今回の再編については、独法化・民営化の問題と省庁再編の問題の二つがある。後者については因果関係の見通しがない。政治力学などが結論に大きく作用している。私は改革は学習でなく忘却によって行われると考える。機構改革の知識不足を補うため過去の改革の歴史をまとめた。(以後資料を説明) 政策フロンティアの開拓、発展、消滅は過去3度あった。この間スクラップアンドビルドがかなり厳格に守られてきた。機構の改革と変化は違う。スクラップアンドビルドは省内だけではなく、政策フロンティアを見つけた省庁が有利になり、見つけられなかった省庁が不利になった。省庁には組織的活力がなくなったところもあり、見直す必要がある。 山本:単純な賛成論でも単純な反対論でもない。全体の印象としては、機構改革が中心となっている。具体的に改革後の運営をどうするか。政策デザインに関する検討が少ないように思う。この間権威・信用を失墜させる行為が多かった。国民に向けた行政への転換を図らなくては行けない。アカウンタビリティーの確保、コストに見合ったベネフィットがあること。正当性を確保することが必要。 立法府としても政策評価システムを持ち、民主的統制を確保すべきだ。 滝口:
海老原:独立行政法人化をどのように受け止めているのか。 滝口:独立行政法人化は民営化へのワンステップだと危惧をしている。採算についても5年をメドに見直す考え方は、究極は民営化ではないかと思う。たとえば国立病院にしてもこの間移譲などが進められているが、民間の総合病院でもなかなか採算がとれない状況にある。 また、省庁ごとの職場によっておかれている状況が違う。 海老原:研究所の政策評価は難しいか。 山本:イギリスのエージェンシーには研究所も含まれている。しかし、研究所は現実の業績評価はしていない。研究計画、進捗度の管理、研究コストをどれだけ説明したか、を評価する。 研究所は付帯業務もやっている。商業サービスや、受託収入のウエイトをどの程度に設定するのかによる。また、クライアントの満足度調査もやっている。研究所は政策の執行機関なので最終的な研究結果に責任を持たない。顧客の満足度、どれだけアウトプットしたかが評価され、責任は省の大臣がとる。 法的な独立性があっても経済的な独立性がなければ独法の意味がない。 海老原:独法人は、英国では行政上の権限を持たされる場合もあるのか。 山本:行政から独立しているだけでは独法人の意味を持たない。英国の国税庁のような組織ではエージェンシーと同じ流れの管理をしている。 海老原:権限とはたとえば、国立文書館を独法化するが、文書を集めるのに省庁に対して権限がないと集められない、という意味だ。 山本:そのような権限は付与されている。 海老原:1府12省庁として集約することが今後の行政に大きな影響を与えると思うがいかがか。 馬淵:やってみないとわからない。機構改革は1961年以降、パッチワーク的にやられているが、今回動かしてよかったと思う。 海老原:スクラップアンドビルドは絶えず行ってきた。 現行の課体制よりスタッフシステムの方が(改革を)流動的に出来ると思うがい かがか。 馬淵:これまでは局の数が減っても課の移動が行われただけだ。今回どれだけ深い変化(課の現象など)になるかウオッチしたい。 海老原:人事管理体制とも関連するが、スタッフシステムにするとピラミッド形から寸胴形になると思うが、労働組合としてはいかがか。 滝口:高卒で入って60まで、40年程度つとめることになるが、入るときの人数による。団塊の世代など、世代によって違う。また新しい法律が出来れば採用も増える場合がある。省庁によっても違う。将来的には一部にスタッフ制導入を考えているところもあるようだ。 労働組合としては、政府は採用し退職するまで雇用責任があるので、世代によって差があるのはおかしいと思う。 海老原:世代のこぶは省庁にあるが、かなり薄くなりつつあると思う。寸胴形になりつつあると思うが、民間ではいかがか。 井上:本社機能はピラミッド形ではもたない。ものを考える機能としてはピラミッド形は考えられない。 海老原:省庁をおおくくりにした事への見解は。 井上:減らすことは基本的にはいいこと。中身がこれから問題になってくる。国土交通省が巨大官庁だといわれるが、中身を地方に移すべき。防衛庁は国防省にしてしかるべき。 海老原:1府12省庁の構成については。 馬淵:どうすればどうなるかについては考えていない。経緯を見たら「ばたばたしたな」思う。もっとじっくり議論すべきだ。 山本:残念なのは、財務省と総務省の切り分けの問題。十分連携が保たれていない。 滝口:憲法のもとで省庁を考える場合、主人公である国民・労働者の立場での頭出しがほしかった。 福山:肥大化した行政を、簡素化史、効率的で透明な政府をつくる目的と少し違うと思う。 井上:現在のシステムは、変化に対応できていない。企業が動きやすい、対応しやすくするためにスピーディーな意志決定が出来るよう期待する。 規制緩和の要望は関経連などでも出している。経済分野については一度白紙に戻してもいいのではないか。 福山:外圧ではなく自立的変化が行われると言ったが自立的変化が行われる要件、要因は何か。 馬淵:メカニズムはスクラップアンドビルドにある。「新しいものを作らなければ古いものをつぶさなくてもいい」、という考え方ではないようだ。 福山:80年代以降、自立的変化のエネルギーが落ちていると言ったが(シーリングなどの)財政的な背景があるのではないか。 馬淵:可能性としては、「規制緩和・小さな政府」が議論されると役人の元気がなくなるようだ。 福山:今回はかなり大きな外圧が働いた。省庁再編ではある程度変化が起こる。行政の中ではどのような化学変化が起こるかの見通しは。 馬淵:1984年、運輸省の改革があり陸・海・空の別が、業務別になった。しかし、知っている限りでは1990年にほぼ元に戻った。(外圧は)役人には抵抗感がある。風が強ければ歩調を合わせるが、風がすぎれば元に戻る。 今回についても単にくっつけるだけでなく、再編しないといけない。昔ながらの課が残れば、意図された目的を達成しない。 福山:財金分離の評価は。 馬淵:大蔵省の財金分離は一定の成果だ。金融監督庁もモラールが高いと思っている。英語名は変わらないと言うが、やった方がいいと思う。 福山:政策評価が一つ目の課題。総務省の評価も含めてどう思うか。 山本:国土交通省の政策評価については、利害とチェックは相反する。審査庁を外局あるいは内閣に作る。英国のエージェンシーに似た組織が必要。 総務省が行う政策評価は学識経験者がパートタイマー的に行い、実効性がない。国会で本来的な議論をして、政策的なビルドをしていただきたい。 山下:独法人をなんのために導入するのか。イギリスと日本で根本のところで違う。期待できない。 山本:日本における独法化の本音は、総定員法の枠外になることでの法廷定員の減少。政治学的な力学だ。リストラ論としては有る意味で正論。国民から見て何も変わらない。効率を求めてサービスがなおざりになる不安感がある。 英国では効率が上がった部分はサービス向上にあげることができる。専門職の生き甲斐を得るために再投資する必要がある。効率とサービスの向上を両立させる。民営化は絶対にないと明言する必要はない。 山下:会計検査院の役割は。 山本:検査院の役割が明確化された。国民は血税が無駄にされていないことを求めているが、政策評価のマクロ的な評価を求める機運が必要。政策評価についてはマニュアルなりガイドラインを作るとしているが、行政庁と合同でガイドラインを作るべき。 山下:国立大の独法化について、平成15年までに結論を出すという閣議決定がある。 馬淵:研究者の業務の評価を誰がするか。役人がする評価、学者がする評価、学生がする評価などがある。学生はAをたくさん出せば評価があがるだろう。海外での専門誌への掲載なども考えられるが、国によって研究の重点が違うのでこれも難しいと思う。 山本:現行の国立大学特別会計での管理運営がよいとは誰も思っていない。独法人の通則法ではちょっとあわない。大学の自主性が失われる。結論は広範な議論をし、慎重な判断をするべき。 八田:国民の身近なところで働く公務員として、国民のための事業がどうなるか教えてほしい。1府12省庁に再編されるが、省著の権限は縮小されていない。一方で国家公務員の25%を削減する方針が出されている。一般公務員41万人の25%がカットされたらどうなるか。 滝口:労働組合の立場だけでなく、行政を行う公務員として、14万人者縮減について心配をしている。それでなくても、9次にわたる定員削減でほとんどの部署が減らされている。 国民関連の部署、たとえば国立病院・療養所だとか研究期間についても不安を持っている。 これらの問題は、どのような「物差し」使うかによって変わってくる。国民の立場の「物差し」で図ってほしい。 八田:独法化で民営化への道筋がつくのではないかと心配している。国立病院でもペイできるところは独法化し、収益があがると民営化され、ペイできないところは統廃合されるのではないか。 滝口:病院にはそれぞれ役割があります。大学病院は研究をはじめと史、医療の発展をめざす機関。自治体単位の病院は住民の健康を守る機関。国立病院の多くは地方に配置をされいて、広域の医療を守る機関です。民間の総合病院は経営が成り立たなくなっている今、国立病院の果たす役割は大きいと思う。 医療を守ることは、採算ベースでは考えられないと、職場からも出されている。 八田:行政改革は日本国憲法にも関わる問題。憲法の原理原則に照らして今回の改革が寄与するのかどうか所見を聞きたい。 井上:矛盾することはない。これまでの行政は同一性、公平性を追求しすぎたため活力を失った。 馬淵:機構改革について政治家の関心がなかったのではないか。機構は権力の問題だと考えているので、先生方でもっと議論し、国民に広げるべきだ。 山本:ニューパブリックマネジメントという面から、全く危惧がないわけではない。結論の評価ばかりで、プロセスコントロールが抜ける。プロセスの中で公務にあるまじき行為が出る可能性がある。パブリックエイソス(?)をビルドインする必要がある。 滝口:内閣機能の強化が打ち出されているが、民主主義を確保するために国会の中で十分議論し国民にわかるようにしてほしい。そのためには十分な機関もとってほしい。 大脇:機能論に終始して市民原理になじむもの、なじまないものの議論がなかった。民営化という観点からいかがか。 井上:官から民へ中央から地方へが原則化された。自由にやらせ責任を持たせることが重要。出来るだけ民営化することが必要。 大脇:省庁の省庁の権限が大きく官・財のゆ着を生んできたと思う。公務員の倫理規定や企業団体献金の禁止などが求められていると思うが。 滝口:パンフの22ページにもあるが、結果として政・官・財のゆ着を加速しかねない。労働組合の立場からも大きな問題として取り組んできた。「お代官と悪徳商人」の時代劇のシーンが今まで続いている。一人一人の問題として政・官・財のゆ着はあらためるべき。行革の基本理念に入れてほしいと思う。 大脇:官・財の癒着はなおるか。 井上:中央で権限握ることで生まれる。地方へ移していく。中央省庁の改革はその方向を向いていると認識している。 大脇:省庁の再編で省庁の壁は低くなったり壊れたりするのか。 馬淵:省庁別に元気さを計測したことがある。AとBをくっつけたら元気になるか。今はわからない。 大脇:政策評価システムの導入は重要だと考えるが。 山本:現在の政策評価は「決定済み」のことについてやっている。複数のオプションについて、コストや目的について議論すべき。立法と行政を明確に区分すべきだ。 入澤:21世紀に向けてさらなる改革を必要としているか。 井上:行革は大きな一歩。地方分権と省庁再編は一体。財源を地方に移し、今後もフレキシブルに(機構を)変えていくべきだ。 入澤:通産省の果たした役割、今後のあり方をどう思うか。 井上:通産省は過去においては重要な役割を果たした。これから民間はもっと自由にやらせ、自己責任を追及する。今後は通産省にはそれほど大きな役割を期待していない。 入澤:馬淵公述人は自立変化についてお話になったがMけいざいかんちょうと調整官庁では違う。官僚の力を引き出すにはピラミッド形ではだめだと思う。台形的な組織論が必要。スタッフ制を中心にすることはいかがか。 馬淵:スタッフ制にすれば何が起こるか、私にはわかっていない。 入澤:技官の処遇を台形組織にして柔らかく運用することについては。 馬淵:技官について昇進についてもたかいところに行けない。高い技術で採用されているので「間口は狭い」というメカニズムがある。工夫する余地はあると思う。 入澤:政策評価についてはいかがか。 山本:会計検査院が政策評価を行う機能を有するようになるが、米英では外部で評価している。専門的には外部スタッフが必要だが、シンクタンクの専門性を高め、プロフェッショナル化する必要がある。 入澤:滝口公述人の労働組合の主張はわかる。しかし国だから国民のためにたち、民間だから役に立たないとは思わない。ところで、公務員の女性の処遇改善だが、男性が抵抗していてなかなか改善しないと聞いているが、労働組合としてはどうか。 滝口:労働組合としては、男女平等で議論している。本省でも地方でもポストの制限があり、なかなか改善しないが、男性が抵抗しているとは思わない。運輸の職場でも検査部門に女性が配置されたりしてきている。いろいろなポストで女性が働くことを歓迎している。 |