長期の農業研究は独法化になじまない
--12月10日午後の参議院行革特別委員会審議

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年12月13日付)

 10日午後1時から4時25分の予定で参議院行革・税制特別委員会が開かれ、独立行政法人個別法等の審議が行われましたが、公明・自由党が質問をせず、自民党が質問時間を短縮したため、3時50分に終了、13日に締めくくり討論が行われることとなりました。以下は、審議の要旨です。
〈社民党・日下部 禧代子議員の質問〉
(傍聴が午後1時30分からとなったため、質問後半部分のみです)
日下部議員 独立行政法人で国立名をつけるための要件はなにか。
持永総務庁政務次官 法令上国立としているもののうち、国民への直接サービスを行い、広く国民の協力を求めるものは信頼性確保の観点から国立をつけることを認めた。
日下部議員 国立文化財研究所だけがなぜ国立を使用しないのか。
持永次官 国立文化財研究所は、埋蔵物の発掘・保存などを目的としており、広く行政サービスを行ったり、国民の協力を求める必要がないためだ。
日下部議員 独立行政法人の理事や役員の数は、職員数をもとに決めるのか。
続総務庁長官 59法人で役員定数は288、うち監事が118で、理事長・理事の上限が170となる。小さな組織では、理事長1名に、監事2名の最低となる。理事の定数は2だが、規模・事業内容等をみて、理事の空席もある。必要最小限の運営に努めるし、天下りの温存はしない。
日下部議員 独法化の職員(公務員型のもの、非公務員型のもの)は、どの年金制度を適用するのか。 続長官 双方とも国公共済年金の適用となる。
日下部議員 医療保険はどうなるのか。 続長官 これも同様だ。
日下部議員 外国人の採用はあるのか。
続長官 国家権力に直接たずさわる国家機関は外国人の採用は認めていないが、独法化になる研究機関は、活性化・効率化の趣旨にそって広く人材を求める観点から外国人の採用はできる。
日下部議員 剰余金の使途は制限はないのか。例えば職員のボーナスに当てられるのか。
続長官 ボーナスは経費であり、剰余金は当てられない。剰余金が企業努力で生み出せれば、インセンティブを与えるために活用すればよい。かえってタガをはめることはマイナスとなる。主務大臣が次の中期目標の計画段階で剰余金の使途の方策を講ずることになると思う。
日下部議員 文部関係は剰余金を生み出す可能性のない機関が多い。美術館や博物館が独法化になった場合、収入を増やそうと入場料の値上げにつながるのではないか。
河村文部政務次官 美術館や博物館は、文化財や美術品を広く鑑賞する機会をつくることに使命がある。独立行政法人は、自ら入場料を決められるが、使命を果たすために入場料を中期目標のなかで適切に設定することになる。むしろ、入場料を下げて広く利用してもらう考えもある。
日下部議員 ルーブル美術館では日曜とか夜間の開館のしているが、どうか。
河村次官 ぜひ研究していきたい。 日下部議員 マスコミ報道では、美術館や博物館の独法化に関しては世間の厳しい声もあるが、どうか。
河村次官 国民サービスの低下のために独法化するのではない。これらの評価委員会には、専門家やワーキンググループにも入ってもらい、国民サービスの観点から、そういうことが起きないよう中期目標をたてていきたい。
日下部議員 文部省関係予算は一般会計比0.1%でしかないが、独法になると変動するのか。
河村次官 現在、文化関係予算は805億円で、うち国立美術館・博物館予算は111億円と文化予算の14%となっている。移行期には、現在の予算はそのまま確保したい。
斉藤科学技術庁政務次官 現在、科学技術関係予算は3.3〜3.4%だが、、独法化になっても、基礎研究の充実のため、平成7年の科学技術基本法にのっとり、予算は確保されると思う。

〈民主党・藤井 俊男議員の質問〉
藤井議員 農水関係は、26事務・事業を17法人にした基準・根拠は何か。
谷津農水政務次官 行革審最終答申や中央省庁等基本法第36条に定めた3つの要件にもとづいて定めたものだ。
藤井議員 行革最終答申より後退しているのではないか。 谷津農水政務次官 農業者大学校を民営化せず、独立行政法人としたのは、農政課題にもとづくリーダー養成や教育ができなくなるとの判断にもとづくものだ。水産大学校も同じ趣旨にもとづく。種苗管理センターも新種栽培など大事な問題を中立・公正に実施する必要からだ。
藤井議員 試験研究機関のすべてを独法化するのは乱暴すぎる。農業基本法では、研究機関の活性化や国の役割の強化を定めているが、このことと矛盾しないか。
谷津農水政務次官 農水省の研究は、かなり長期にわたること、リスクを伴うこと、地理的条件により研究が変化すること等を考えると、地域に密着した研究をする必要性から独法化にした。農業基本法がかかげている機動的な組織編成が運営交付金の弾力的運用により可能となる。中期目標で、研究目標の明確化や大学との連携が可能となるよう十分配慮していきたい。
藤井議員 法人の役員は定員上は枠内か枠外か。
玉沢大臣 農水省の定員の枠外となる。
藤井議員 スリム化をいうなら、定員枠に入れるべきだ。役員が官僚の天下りの温床の場にしてはならないと考えるがどうか。
玉沢大臣 優秀な人材を配置するため、天下りというだけで全部否定していよいか。任権者が適正に適材適所の任命をすると思う。

〈共産党・須藤 美也子議員の質問〉
須藤議員 筑波の農業研究センターを視察してきたが、例えば稲の研究は全国19カ所、麦は18カ所の試験場で研究している。研究者や職員は、これまで築きあげてきた農業研究が続けられるのか、縮小されるのではないか、と大変心配している。
玉沢大臣 稲や麦の品種改良には大変な年数と努力を要する。独法化になっても何ら心配なく研究がすすめられることを明確にしたい。
須藤議員 研究の重点化や効率化が独法化の目的であり、これまでの研究を続けられる保障はあるのか。
玉沢大臣 評価委員会では3〜5年ごとに研究評価を行うが、麦・稲の研究など長期にかかるものは、その重要性をみて、研究者の効果があがるようしていきたい。
須藤議員 日本の気候にあった農業のために技術の向上が必要だ。自給率低下により日本農業の再建もまったなしの状況のもとで、農水研究はむしろ農水組織あげて充実・強化の保障をすべきだ。
玉沢大臣 技術研究は大事なことは一致する。例えば自分の地元の岩手で南部小麦が世界的な生産を高めるなど、これまでも大変な成果を上げている。研究の大切さを考え、研究者が萎縮しないようにしたい。
須藤議員 世界的に認められた稲ゲノム、SPF豚、英国黒牛病を未然に防いだ羊等の病気研究、あるいは13年もかかったコシヒカリ、20数年かかったリンゴの富士などはいずれも長期にわたる研究成果だ。研究を保障するなら、3〜5年ごとの評価はなじまない。農水の研究機関は独法化は無理だ。
玉沢大臣 長期のもの、短期のものと多種多様なので、柔軟に対応したい。品種の育成など長期にかかるものは段階的に評価し、適切に研究がはかれるようにしたい。
須藤議員 3〜5年で研究評価を論議されることになれば、評価委むけの研究に陥ることになり、基礎研究が崩れる心配はなのか。
玉沢大臣 研究者の自由な発想は生かされるべきだ。評価ばかりを気にしていたら、真の研究はできなくなる。
須藤議員 効率化本位でなく、適材適所でやるなら今までどおりでよいではないか。
 農水省は行政職二表の職員を90年から99年まで欠員を後補充していない。研究を支援する職員の補充をきちっとすべきだ。
玉沢大臣 なんでも国でやるのでなく、民間の自由な発想を取り入れたり、大学とも連携してやりたい。象牙のなかでヌクヌクと関係のない研究しているのは排除すべきだ。
 技能・労務職員は、閣議決定で採用は控える方針で人員が減少している。ただ、熟練技術を要する要員は確保しており、独法化に際しても業務に支障の生じないよう対処したい。
須藤議員 遺伝子組み替え食品がどんどん導入されているが、2002年から遺伝子表示が義務づけられる。遺伝子検出には時間もコストもかかる。農林水産消費技術センターはいずれ民営化されるのではないか。消費者のためにも国立で拡充・強化すべきだ。
玉沢大臣 一般消費者保護の観点から運営していきたい。一部民間委託は考えていない。しっかりやっていく。

〈改革ク・菅川 健二議員の質問〉

菅川議員 国立大学の独法化は平成15年に結論をえることになっているが、文部省は、来年早い時期に大綱を決める意向と聞いている。現段階の検討状況と今後の見通しを伺いたい。
河村文部省政務次官 文部省は、9月に「自主性・自立性、世界的教育水準の確保、教育・研究条件の整備」の3つの柱からなる独法化の基本方向を提起した。制度の詳細に十分時間をかけるため、平成12年のできるだけ早い時期に基本方向の結論を得たい。
菅川議員 文部省の9月の基本的な考え方はもっともな内容だ。そこで、評価方法だが、大学には技術系や文化系など、さまざまな分野があるが、どのように評価するのか。
河村次官 国立大学の教育分野は広く、一律にはいかない。制度運営にあたっては、各研究分野の特性を生かしていく必要がある。そのため、評価については、多面的な評価ができるよう、大学関係者だけでなく相当広く専門家の参加もえて自主的な運営する方向で整備していきたい。
菅川議員 文部省の下部機関でなく、大学が共同設置して自主性をもった性格にすべきだ。
河村次官 大学共同利用機関と同じように、第3者機関的な存在となる。
菅川議員 高等教育へ公費の支出をどの程度するのか。現在、国家予算に占める割合は、アメリカが1.1%、独・仏が0.8%英が0.7%にたいして、日本は0.5%と先進国中もっとも低い。独法化するにしても公費の維持・増進による財政基盤の安定が必要だ。
河村次官 先進国に比べて低いことは認識している。平成10年の大学改革答申でも高等教育の基盤整備の必要性と、高等教育への公費支出を先進国内なみにすべきだと提言されている。重く受けとめ、条件整備に努めたい。
菅川議員 毎年の折衝でなく、3〜5年の中長期の安定的な財政システムをつくるべきだ。河村次官 独法化は5年計画のなかで全体計画をねっていくことになり、単年度主義は改めたい。中期計画はこれから研究していきたい。
菅川議員 ぜひ大学関係者との意志疎通を密接にもち連携して進めてほしい。 河村次官 昨日、国大協幹部が文部大臣に独法化容認発言をしたと報道されたが、大学側は、通則法適用の独法化は反対、特別措置が最低条件だと述べ、予算拡充についても強い要請があったと聞いている。これまでも国大協とはたえず協議しているし、今後も大学改革にむけて連携・協議をしていく。

〈民主党・谷林 正昭議員の質問〉
谷林議員 独法化の学校以外に、国家公務員を対象にした研修所があるが、これらも独法化に踏み込むべきだ。
続総務庁長官 行革会議でも検討し、もっぱら国の職員の研修学校は独法化しない方針となり、その方針にしたがった。
谷林議員 なぜ、そのような方針になったのか。 続長官 独法化は一般を対象にしており、各省庁の研修所は内部職員を対象にしたものなので、なじまない。
谷林議員 交通安全環境研究所は独法化になって、これまでの性格は変わらないのか。
中馬運輸省政務次官 業務は国民の生命・安全を守る公共的役割であり、確実に実施していく必要がある。したがって、行うことは、従来と代わらない。
谷林議員 保安基準の作業もやるのか。
中馬次官 保安基準や目標は国で決め、それにもとづき法人で実施してもらう。
谷林議員 同じ生命をまもる医療研は独法に入ってなく、交通安全研は独法化というのは矛盾してないか。
続長官 医療研は厚生省の性格にかかわるもので、厚生省の政策立案にかかわる研究所であり、独法化はしない。

〈自民党・中島 啓雄議員の質問〉
中島議員 独法化と特殊法人とはどうちがうのか。
続総務庁長官 従来の特殊法人は、非効率的で、透明性がない。しかも、天下りの温床になっているとの批判が強い。特殊法人では、21世紀の国の期待に応えられない。独法化は、準公共財として生きるために魂を入れ、国会が監視し、国民の期待に応えていく。 中島議員中期計画に定める予算をどう担保するのか。
大蔵省主計局次長 行革推進本部では、中期計画期間中の総額を国庫債務負債行為として定め、毎年度歳出化をしいく方法と、投資計画にもとづく毎年度計画にしたがい執行していく方法が出されているが、いずれの方法にしても、単年度のもとでも必要額の確保は可能。

(以上)

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