人事院の「意見の申出」を無視した「再任用の義務化」は認められない
~「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2012-03-23

2012年3月23日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部 勘市


 本日、行政改革実行本部・国家公務員制度改革推進本部は合同会議を開催し、年金支給開始年齢の段階的引き上げに「再任用の義務化」で対応する「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」(以下「基本方針」)を決定した。昨年9月30日に人事院が国公法23条に基づいて行った、定年の段階的延長を求める「意見の申出」を事実上無視した重大なルール違反であり、到底認められない。

 国公労連は、労働政策審議会の議論状況などもふまえ、2月27日に「高齢期雇用に関する要求書」を改めて提出し、一貫して定年延長を求めてきた。働きがいや人生設計にも関わる重要な労働条件を変更する方針を、当事者の合意なく強行した政府に強く抗議する。

 3月9日閣議決定の「高年齢者雇用安定法改正案」では、定年延長は見送られたものの対象者の選定基準に基づく制度は廃止されている。しかし、「基本方針」は「再任用の義務化」としながら「人事の新陳代謝を図り組織活力を維持」するため、「義務の抜け道」や「職場追い出し」の方策が随所に盛り込まれている。公務員制度としての定年制・高齢期雇用のあり方に関わって、消費税増税などの国民負担増を押し付ける突破口に行政改革・公務員総人件費削減を位置づけ、推進する「行革実行本部」の決定としたことがその証左である。

 具体的には、以下のような重大な問題が含まれている。

 一つは、義務を免除する規定が設けられていることである。「基本方針」では「最下位の職制上の段階の標準的官職に係る標準職務能力及び当該官職についての適正を有しない場合、任命権者はその義務を課されない」としている。長年職務を遂行し、一定の官職に就いていた職員に、係員等の能力がないなどということはあり得ず、義務化というなら削除すべきである。

 二つは、再任用時の官職に恣意的な運用が可能なことである。「能力及び適正に応じて」係員から管理職までの幅広い官職に任用できるとしているが、現に職員が就いている官職は、能力・適正評価の結果であることから、退職時の官職を基本に本人希望とするべきで、任命権者の恣意的な人事運用を排除する仕組みが必要である。

 三つは、任期を1年を超えない範囲としていることである。雇用と年金の接続を目的とするのであれば、支給開始年齢までの一括任用が当然である。再任用の更新は、①意欲と能力の十分な発揮、②継続的な業務遂行への支障、③年度更新の雇用不安、などの弊害が想定され、公務の運営上からも問題があると言わざるを得ない。

 四つは、「総人件費改革」の観点からの制度検討となっていることである。「早期退職の支援」、「短時間再任用の活用」、「複線型人事管理の推進」をはじめ、60歳超職員の増加に対する必要な措置の検討など、いずれも総人件費抑制の観点が貫かれようとしている。60歳を機に、またはそれ以前の段階から事実上の退職強要や、差別選別の再任用が行われることがあってはならない。
さらに、再任用職員の給与の在り方についても、「総人件費改革や職員の能力活用の観点も踏まえつつ別途検討」とされているが、職務給原則とともに年金支給までの生活を支える水準が保障されなければならない。


 国公労連は定年延長要求を堅持しつつ、今後の具体的な制度検討にあたっても長年培ってきた知識・経験・技能を活かし、安心して働き続けられる公平で納得性の高い制度確立と職場環境のの整備に向け、引き続き政府との交渉・協議を強化する。

 同時に、年金・介護・医療など社会保障制度の拡充と、安定した雇用確保と賃金・労働条件の改善をめざす国民的な運動に結集し、奮闘する。


以上