2012年2月21日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市
民主・自民・公明3党は2月17日、継続審議となっている政府提出の「国家公務員給与の臨時特例に関する法律案」(以下、「賃下げ法案」)と「国家公務員制度改革関連4法案」(以下、「改革関連4法案」)の取り扱いについて「合意」し、今週中に衆議院通過を目論んでいるとされる。
「合意」の内容は、<1>2011年の人事院勧告を実施し、さらに7.8%まで国家公務員の給与削減を深掘りするため、自民・公明両党共同提出の「一般職の国家公務員の給与の改定及び臨時特例等に関する法律案」を基本に、a)経過措置額の廃止は2014年4月1日に一度に実施するが、それまでの間、2012年4月1日及び2013年4月1日に経過措置所要額の自然減に対応した昇給回復を実施する、b)東日本大震災に10万人を超える体制で対処した自衛官等の給与減額支給措置は、特段の配慮をして政令で定める、ことで修正する。<2>地方公務員の給与については、地方公務員法及び給与臨時特例法案の趣旨をふまえ、各地方公共団体での対応のあり方について国会審議を通じて合意を得る。<3>「改革関連4法案」については、「国家公務員制度改革基本法」の趣旨をふまえ、審議入りと合意形成に向けての環境整備を図る、というものである。
この三党協議は法的に何ら根拠のない談合であり、民主党が国会運営を有利にすすめるため、党利党略で自公案を事実上「丸飲み」したものと言え、「合意」は到底認められない。
それは第一に、議員立法によって合理的根拠のない大幅な賃下げを行うことは、「勤務条件法定主義」と「財政民主主義」のもとであっても憲法の趣旨をふまえたものでなければならないこと。第二に、政府提出の「賃下げ法案」は棚ざらしとなり、「情勢適応の原則」にもとづき内閣と国会に対して出された国家公務員の唯一の賃金決定のルールである人事院勧告を、政府は引き続き無視すること。第三に、当事者である国家公務員を代表する産別労働組合・国公労連の合意を得るどころか何の説明もないこと、など行政府も立法府も基本的人権を保障する憲法を、二重三重に蹂躙する暴挙と言わなければならない。
加えて、「改革関連4法案」も、「合意形成に向けての環境整備」の扱いにとどめたことは、法案の審議入りすら棚上げにしたことに等しく、重大である。
民主党の2009年総選挙時のマニフェストであった、国の財政事情を口実とした「国家公務員総人件費2割削減」を発端に、直接的には2010年人事院勧告の「深掘り」議論から始まった国家公務員の賃下げ攻撃に対して国公労連は、一貫して現行制度にもとづかない憲法違反の賃下げに反対してたたかってきた。
とりわけ、東日本大震災を経て昨年5月に具体的な提案が行われて以降、<1>「2割削減」マニフェストや賃下げ提案には何の根拠も道理もないこと、<2>デフレ経済下で625万人以上の労働者をはじめ地域経済にも多大なマイナス影響を及ぼすこと、<3>消費税増税など国民負担増を強いるための露払いであること、<4>労働基本権制約のもとで国家公務員労働者の生活や権利を顧みず、現場第一線の職員の士気を下げることは復興にもマイナスであること、などを内外に堂々と主張し、公務大産別一体で各県労連や民間労働組合とも共同した全国各地での宣伝や賛同署名、国会議員地元要請などのとりくみを旺盛に展開し、国民的な理解と共感を広げてきた。
政府・野田内閣は2月17日、年金・介護・子育てなど社会保障制度を改悪する一方で国民に消費税大増税を押し付ける社会保障と税の一体改革の「大綱」を閣議決定し、「国民の納得と信頼を得るため」に衆院比例定数の80削減法案の提出と「賃下げ法案」及び「改革関連4法案」を位置づけ、早期成立をはかると明記した。同時に、政府・民主党は、「賃下げ」による6000億円を復旧・復興財源の税外収入にすり替え、マスコミも動員しながら世論誘導を行っている。
国公労連は、あくまで「賃下げ法案」の廃案を求めてとりくみを継続・強化するとともに、使用者たる政府に対し、この間の経過説明を含めて2012年統一要求を正面から受け止めた責任ある回答を迫る交渉を強化する。
また、「改革関連4法案」については、戦後60有余年も無権利状態に置かれてきた公務員労働者の権利回復に向けた一定の到達点であることはふまえつつも、看過できない重大な問題点が含まれていることから「抜本修正要求」を堅持し、引き続きその実現を求める運動を強める。
そして、今春闘で「すべての労働者の賃上げと安定した雇用の確保」など国民的な要求課題の実現をめざし、職場・地域から全力をあげて奮闘する決意である。
以上