出先機関の廃止・移譲は国民生活の安全・安心を破壊する
~広域実施体制の枠組み(方向性)について(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2011-12-26

2011年12月26日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 岡部勘市


 政府は本日、地域主権戦略会議(第15回)を開催し、国の出先機関を廃止し事務・権限を移譲するとしている広域実施体制の枠組み(方向性)を確認した。その内容は、①執行機関は、権限と責任を有する長(構成団体の長との兼任を妨げない)を置き、②区域の設定は、必ず含まなければならない都府県の区域を定めたうえで自治体(都府県と政令市)の自主性に委ねるとともに、③解散や脱退の手続きを別途法定化する、などであり、「アクション・プラン」推進委員会(第4回・12月19日)で示された2案から政治的に妥協し、関西広域連合などの意向に沿う選択をしたものとなっている。

 広域実施体制は、国の事務・事業を担う出先機関を「丸ごと」地方に移譲するための受け皿とされているが、看板の付け替えにとどまらず国と都道府県・政令市との間に新たな行政機構を設けるものであり、手続面などでムダが生じることは想像に難くない。政府が喧伝する「行政の無駄を省く」との矛盾からも、出先機関の原則廃止が国民議論不在のまま遮二無二すすめられていることを指摘せねばならない。また、構成団体の利害が一致しない場合の調整機能が担保されるとは考え難く、出先機関と本省が一体となって国家的見地から広域的に利害を調整している現状と比べ、サービス提供の偏りなど国民・住民への不利益の発生も懸念される。外部監査の義務付けも現行の会計検査制度と比較し、事務・事業や予算の適正な執行を確認する体制としては後退を免れないものである。

 さらには、関連する事務・権限の広域実施体制への集約も検討されており、行政サービスが住民から遠のくばかりか、財界自らが「究極の構造改革」と称している道州制導入への足掛かりとなる危険性もはらんでいる。出先機関の廃止・移譲は、同じく「地域主権改革」のもとで進められている「義務付け・枠付けの見直し」や「ひも付き補助金の一括交付金化」、さらには「社会保障と税の一体改革」とも並び、国の予算における国民向けの支出を最小化して財界向けの重点化を追求するとともに、規制緩和などによる営利企業の参入機会拡大で公共サービスへの民間資金投入や業務委託などを促進する狙いを持っている。そのことは、国民本位であるべき公共サービスを財界本位へと変質させ、TPPなどと同様に国のかたちを新自由主義一色に染め上げるものである。

 東日本大震災では公務・公共サービスの重要性や「構造改革」路線の問題点が指摘され、国民のいのちを守り安全・安心を確保するためには、国と地方の双方による責任と役割の発揮が不可欠なことが改めて証明された。現に被災地の市町村長などから、民主党地域主権調査会などさまざまな会合において、大規模災害など緊急時のオペレーションへの危惧はじめ、「全国的組織はやはり必要だ」、「地に足がついた議論が必要だ」など、全国各地で国の出先機関が果たしている役割をふまえ、廃止・移譲を不安視する意見が相次いでいる。国公労連は、生存権や幸福追求権など国民の基本的人権の後退を許さず、憲法を暮らしと行政に生かすため、広範な労働組合や国民と共同して奮闘するものである。


以上