2011年10月18日
国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部
事務局長 川村好伸
人事院は9月1日、京都社会保険事務局長が行った北久保和夫氏に対する懲戒減給処分を取り消す判定を行った。一方で、川口博之氏に対する処分は承認した。これは、社会保険庁長官の許可を受けずに書記長として労働組合の活動にもっぱら従事したとして川口博之氏に、また、無許可専従となることを知りながら川口氏に書記長への就任を依頼し国民の信頼を損ねたとして北久保氏に対して、京都社会保険事務局長が2008年9月3日付で行った減給10分の2、2カ月の懲戒処分に対する不服申し立てにかかる判定である。
北久保氏と川口氏は、当該処分を不当として2008年10月29日に人事院に対して審査請求を行ったが、この懲戒処分を理由に日本年金機構の採用希望者名簿から除外され、厚生労働省への転任もされずに2009年12月31日に分限免職となったものである。
北久保氏に対する懲戒処分が取り消された以上、分限免職の前提条件はなくなったものである。したがって、厚生労働省は分限免職処分を取り消し、直ちに厚生労働事務官としての身分を回復するとともに、本人希望にもとづいて年金機構の正規職員とするよう特段の努力を求めるものである。
また、京都地裁は9月28日、川口氏の懲戒処分の取消請求を棄却する判決を行った。京都地裁の判決では、人事院判定と同様に当局との交渉とそれに付随する業務は労働組合の業務であり無許可専従と認定し、原告は本件処分を甘受しなければならないとした。しかし一方で、無許可専従は社会保険庁組織の問題の一つであること、当局の要請に応じて交渉していたもので当局により大きな問題があったこと、交渉の当事者や管理職の中には処分を受けずに年金機構に採用された者もいることを指摘し、原告を年金機構に採用せず分限免職としたことに疑問の余地があるとの考えを示した。
いま、全厚生組合員39人の分限免職処分取消にかかる人事院の公平審理が山場を迎えている。国民の信頼回復を御旗にした社会保険庁の廃止のもとでの525人の分限免職は、年金記録問題などの構造的な問題を末端職員の責任に転嫁し、正当な労働組合活動をも社保庁バッシングの材料として国民の不満をかき立て、きわめて政治的に行われたものである。
人事院は、厚生労働省の転任面接や分限免職回避努力などでの形式的な対応や主張に与することなく、分限免職の取り扱いにかかる公正原則や平等取り扱い原則が貫徹されたのか否か、当時の異様な社会状況も踏まえた上で慎重に審理し、判断するよう求める。
一方、厚生労働省に対しては、今回の懲戒処分の取り消しや分限免職手続きの瑕疵、さらには国民の信頼を回復するとした年金機構が経験者の不足によって業務運営に混乱を来していることを踏まえ、人事院判定を待たずに525人の分限免職処分を取り消すよう求める。そして、年金機構の正規職員としてその能力と経験を活かすことこそが、国民の信頼回復にむけた方策であることを指摘するものである。
国公労連は、JALの不当な整理解雇の撤回とともに、全厚生組合員の不当解雇撤回を勝ちとり、働くルールの確立と国民が安心できる年金制度の確立にむけ、引き続き全力を挙げるものである。
以上