年金機構発足3カ月、国民の信頼回復には程遠い◆現場から混乱状況次々と告発
~3.26院内集会に87名が参加
(「国公労連速報」2010年3月29日付【社保庁職員不当解雇撤回闘争本部ニュースNo.2】)

【とりくみ:社保庁 分限免職】2010-03-29
 年金機構発足3カ月、国民の信頼回復には程遠い
 現場から混乱状況次々と告発
 3.26院内集会に87名が参加
 
 3月26日、安心年金つくろう会は「どうなる?私たちの年金~年金機構発足3カ月を検証する3.26院内集会」を衆議院第2議員会館内で開催し、会場を埋め尽くす87名が参加しました。集会は、今年1月に発足した日本年金機構が「国民の信頼回復」のうたい文句に反して業務が混乱している職場実態が報告され、あらためて経験を積んだ旧社保庁職員の多数の排除や分限免職(整理解雇)の反社会性が浮き彫りになりました。
 岸田全医労書記長の司会で始まった集会は、まず主催者を代表して宮垣国公労連委員長が、「年金機構がスタートしたが、職場は混乱し、長い待ち時間、かからない電話など多くの苦情が寄せられている。その原因は525人もの分限解雇をはじめ、2500人もの社保庁職員を排除し、一方で2000人を民間から採用したが経験もスキルも伴っていない。一番求められていることは、525人の処分を撤回し、経験ある職員を正職員として採用することだ。国公労連は3月23日、分限免職の撤回、雇用確保のため闘争本部を立ち上げた」とあいさつしました。
 続いて、佐々木憲昭衆議院議員(共産党)が国会情勢を報告し、「鳩山内閣が発足して半年経ったが、良い政治生まれてきたのか。落胆と期待はずれだ。年金問題もさらに後退している。本来、行政がどういう役割を果たすべきか問題点を明らかにし正していく。この集会もその期待に応えるものだ。国民本位の政治の実現に奮闘していく」と、激励と決意を述べました。
 
 「窓口3時間待ちはザラ」「経験積んだ職員が不可欠」「分限免職の撤回を!」
 ――現場から、利用者から職場混乱を指摘
 
 集会では、2月26日に大阪朝日放送が放映した「どうなった日本年金機構」のDVD放映を交えながら、現場からの報告を行いました。年金機構本部の峰全厚生中央執行委員は、「スタートして、大混乱した。月45時間を上限、特別条項で100時間の36協定を結んだ。特別条項は年6回使えるが、すでに3回使った。記録問題の再裁定件数が半分に落ちた。業務に精通していないと対応できない。労働強化と人員不足とあわせて、派遣300人が来ているが、毎年の入札で業者が変われば、初めからの教育の繰り返しとなりスキルが蓄積されない。直接雇用の体制が必要だ」と経験者不足と派遣労働の問題点を指摘しました。
 年金事務所の平丸全厚生書記次長は、「お客様相談室室長を務めているが、相談員など窓口職員がどれほどのスキルを持っているのかも知らされないままスタートした。3コール以内での電話応対、30分以上待たせないなどにはほど遠い実態。3時間待ちがざらだ。スキルを上げて、経験者を増やすこと必要だが、非常勤職員は給与も安く、苦情に耐えられず辞めていくし、4回しか雇用更新ができない。それでも昼食も取らずに相談員の研修をしている。機構本部からは1カ月150本以上の指示メールがくるが、社保庁時代の取り扱いと混乱するケースもある。年金機構になって、責任の所在が曖昧になっていて、指示系統も機能し切れていない。現場の状況を踏まえた組織・運営体制になっていないことが問題だ」と現場の状況を生々しく報告。
 飯塚全厚生委員長は、「職場の混乱は3000人の定数削減、2000人の民間からの採用、525人の分限免職が最大の原因だ。タイムカードを押してから仕事を続ける職員が1月だけで3割もいた。2、3月は若干減ったが、そんな状態が続いている」、さらに飯塚委員長は厚労省が年金記録問題に関する旧社保庁職員等に対するアンケート調査の結果にふれ、「年金記録問題が発生した原因として『本人の事情によるもの』が多い。また年金記録回復に向けてとりくむべき方策では、『体制に関するもの』が多いという調査結果からも、業務に精通した職員が不可欠であることが明白になっている」と記録問題解決に向けた根本問題を指摘しました。
 フロアからも発言が相次ぎました。元全厚生副委員長の社会保険労務士は「現場の職員から問い合わせが来る。機構本部の回答が信頼できなかったり、かなり待たされるからだ。現場が事務処理工場になっていて、権限が厚労省、機構本部に集中しているためそういうことが起こる」と指摘。年金者組合の役員は「12月25日にホームページに載っていたことを2月に年金事務所で問い合わせたが、窓口で知らないと言われた。難しい質問にはなかなか回答が出てこない。窓口の相談能力が低下している。年金制度は難しく、10年以上でやっと一人前。525人は宝であって、職場に戻してほしい」と、安心、信頼できる年金制度の確立にむけた要望を語りました。
 自由法曹団の加藤弁護士は、「記録問題などについて、国は職場と職員に責任を押しつけてきた。これほどの解雇は歴史上ないひどいものだ。欠員が生じているのに職員を解雇する一方で民間から人を採用している。525人は最終の人数であって、それ以前にも見切りをつけて辞めていった職員が多数いる。弁護団も解雇を許さないたたかいに総力をあげる」と決意を述べました。
 分限免職の当事者で、現在人事院に不当処分取り消しの申し立てをしている全厚生中央執行委員の國枝さんは、「機構は正規700人、準職員2000人を募集しているが、懲戒処分を受けた者には応募もさせない。分限免職は決して許さない。撤回、雇用確保、職場復帰めざして奮闘する」と決意を述べ、支援を訴えました。
 安心年金つくろう会事務局の川村国公労連副委員長が、(1)厚生労働省に年金機構の体制確立を要請しよう、(2)安心年金の確立などの請願署名にとりくもう、(3)5月29日に社会文化会館で開催する「国民の年金権を考える集会(仮称)」を成功させよう、(4)国公労連・全厚生の解雇撤回のたたかいを支援しようと、4点について訴えました。
 最後に、榎本婦団連事務局長が「混乱を解決するには、分限免職撤回、雇用確保が一番。女性として、育児休業中に分限免職をするなど絶対許せない」と閉会挨拶をおこない、集会を終えました。
 
以上