京都15人の第1回口頭弁論は、1月11日11時から大阪地裁(第5民事部合議1係・中垣内健治裁判長)809号法廷で30分間行われました。
裁判開始前の10時から40分間、大阪地裁の東・南・西のそれぞれの門前で宣伝行動を行い、原告と全厚生、京都国公、国公近ブロの仲間が通行人や裁判所に入っていく市民に闘争団のニュースを配布しました。
法廷には50人を超える傍聴者が駆けつけましたが、傍聴席は39席で入りきれなかった方は、法廷の外で裁判を見守りました。
弁論は、原告側の渡辺弁護士が、「今回の分限免職のキーワードは社保庁不信にあるが、それは業務目的外閲覧ではなく、50年前から放置されてきた年金記録問題にあり、その責任を個々の職員に転嫁し人生を奪った不当なものである」と主張しました。続いて荒川弁護士が、社保庁の解体民営化と国鉄の解体民営化を比較して「双方とも国民不信が背景にあるが処分の必要性は全くなかった」、「名簿方式による新組織への採用方法での解雇」などの共通点と「国鉄はなくなったが国はなくなっていない」、「清算事業団のような仕組みも作られずいきなり解雇となった」などの相違点をあげて今回の社保庁分限免職の不当性を強調しました。
原告の意見陳述では、北久保和夫さんが「15名の原告は何ら免職になる理由はなく『年金制度の信頼回復』の名のもとに生贄にされた犠牲者である。私の懲戒処分取消によって分限免職の前提が崩れており、一刻も早く職場に戻すべきである」と述べました。また、北川浩祥さんは、「夫婦そって分限免職になり、自分は社保庁時代に激務からうつ病になり、今も働くことができない。妻もパートで収入が激減し生活は大変であり、こんな理由のない分限免職は認められない」と生活の実情を切実に述べました。
国側は弁論を行わず、次回3月14日13時30分からの日程が決めて閉廷しました。
裁判終了後は、大阪弁護士会館で報告集会を開き、渡辺弁護士が、今回の社保庁分限免職の裁判の特徴を簡潔に説明し、10名の弁護団が裁判の感想や決意を述べました。参加者からの激励では、国公労連の岡部書記長が「数年前から心配していた国公労働者への攻撃が強まっている。国民生活を守る立場から、全力を挙げてたたかう」、全厚生の杉浦書記長が「支援者の皆さんに感謝します。京都を先頭に北海道・大阪・香川が提訴した。人事院では、厚労省人事課長など追加証人尋問が決定した」、国公近ブロの林委員長が「大阪の大島さんを支える会が結成され、大阪労連も一緒になってたたかう」、京都総評の岩橋議長が「人事院の審理では不当性を明確にすることができた。国民の年金権と働く者の権利を守るために奮闘する」とたたかいを励ます発言を行いました。
原告は、仕事により参加できなかった2名以外の13名からそれぞれ感謝や決意を述べました。最後に全厚生の山本委員長のあいさつと団結がんばろうで報告集会を終わりました。
1月23日 京都に続き香川でも第1回口頭弁論が開かれる
1月23日午前10時30分より高松高等裁判所第1号法廷で香川闘争団・綾信貴さんの第1回口頭弁論(裁判長:横溝邦彦)が開かれました。傍聴席57席がすべて埋め尽くされ、支援者が見守る中、原告の綾さんが意見陳述を行いました。
意見陳述では、2002年4月に社会保険庁に採用されてから2009年12月末に分限免職となるまで、一生懸命真面目に取り組んできたことや、その評価が一般職員よりも高い評価を得ていたこと、また、年金記録問題解決のために昼休みもまともにとることができず、給湯室で立ったまま食事を済ませ、すぐに業務に戻ったこと、毎日の帰宅が23時ごろになることがほとんどだった、と述べました。また、そういった過酷な業務が元で病気となり休職することを余儀なくされ、その休職中に社会保険庁廃止後の意向調査を受け、当時、仕事に対する自信を無くしていた時期でもあり、厚生労働省への配転を希望したが願いがかなわず分限免職となったこと、国民全体の共同の利益のために仕事がしたいと考え国家公務員となり、結婚もして子供も生まれたにもかかわらず、分限免職になったことにより、将来展望を無くした妻から離婚を切り出されて協議離婚にも至ったこと、綾さんの人生だけでなく、妻や子供さんの人生まで大きく狂わされた分限免職処分を早急に取り消してほしいと、涙ながらに陳述しました。
続いて、代理人の則武弁護士が、今回の分限免職の背景として2004年の参議院選挙で自民党が大敗したことの原因として、社会保険庁職員が年金記録を「のぞき見」しマスコミに情報を流したと決めつけたことがあると陳述しました。また、問題点として第1に、社会保険庁の業務を引き継ぐ日本年金機構へは民間から1000人もの新規採用を行い、雇用が継承されなかったこと。雇用の継承がされていれば、分限免職処分の必要性がなかったこと。第2に、分限回避努力がほとんどされておらず、分限免職直後の4月には、厚生労働省が200人もの新規採用者を雇い入れており、採用抑制などを行って配転させれば分限免職の必要性がなかったこと。第3に、綾さんが二重、三重の被害を受けたことの3点が問題であると述べ、最後に、三権分立の制度の下で、行政の過ちを正すのが司法の本来の役割であり、最後の人権の砦である裁判所が、綾さんの訴えに耳を傾け、司法としての役割を十分に発揮されることを期待していると述べました。
口頭弁論終了後に開かれた報告集会では、「綾さんを励ます会」事務局長の森さんが司会を努め、傍聴参加者が83名であったと報告しました。弁護団を代表して呉弁護士が本日の裁判内容を報告し、綾さんが「たくさんの傍聴者の皆さんが集まってくれたことに感謝をし、長いたたかいになるかもしれないがご支援をよろしくお願いします」と感謝と決意を述べました。この後、則武弁護士と新たに弁護団に加わった萩田弁護士、郷原弁護士が決意を述べました。
会場からは、JAL不当解雇撤回裁判の客室原告団事務局次長の小栗さんが、労働者の使い捨てをなくすたたかいを大いに盛り上げようと訴えました。また、京都原告団の谷口さんと中本さんも激励と連帯のあいさつを行いました。最後に国公労連の川村副委員長が人事院審理の動きと決意を表明し、綾さんを励ます会の代表である香川県労連の堤議長が閉会あいさつを行い、報告集会を終えました。(全厚生闘争団News第42号より転載)
以上