大震災被災自治体が「出先機関廃止に反対」を表明◆大規模災害で地方整備局の大切さを痛感
(「国公労連速報」2011年12月9日付)

【とりくみ:地域主権改革 道州制】2011-12-09
12月地方議会での意見書採択の要請や首長・地方議会議員との懇談など、「アクション・プラン」にもとづく国の出先機関の廃止・委譲の問題点を明らかにし、理解と共感を拡げる行動が全国で旺盛にとりくまれています。東日本大震災以降の職務での奮闘や、この間とりくんできた「総対話MAP運動」ともあわせ、基礎自治体から「出先機関は必要」の声が広がっています。No.2660(12月1日)に続き、昨日の報道記事を転載します。
 
 「全国的組織は必要」 出先機関廃止に反対表明
 ――佐藤宮城・南三陸町長(『建設通信新聞』12月8日付)
 
 宮城県南三陸町の佐藤仁町長は6日、民主党地域主権調査会(海江田万里会長)で、「全国的組織はやはり必要だ」と、被災後の国土交通省東北地方整備局対応を踏まえ、国出先機関の必要性を訴えた。発言は、政府が検討を進める『出先機関の廃止に伴う事務・権限のブロック単位での移譲』に事実上、反対表明をした形。民主党は5日から、出先機関の原則廃止と廃止に伴う関西広域連合などブロック単位の受け皿への事務・権限移譲についての議論をスタートさせていた。出先機関廃止撤回を求める市町村長は数多く存在しており、同党にとって難しい議論が続くことは確実だ。
 佐藤町長は、関西の自治体含め多くの支援に感謝の意を示した上で、道路、鉄道、電気、通信などすべてが遮断され庁舎も被災した中、「東北地方整備局は自衛隊が活動を行うための道路啓開だけでなく、衛星電話は関東地整、資機材を北陸地整から調達してもらい、仮設庁舎も早期に建設してもらった」と、今回震災での東北地整の役割を説明。
 さらに「東北地整の徳山日出男局長から、われわれは(どんな要望にも応える例えで)闇屋の親父。なんでも言ってほしいと言われ、本当にお世話になった」とした。その上で、「大規模災害に対しては、強力な組織が必要。国交省については災害のプロだと改めて痛感した」とした。
 また、大規模・広域災害が発生した場合、「権限を移譲された地域が被災した場合に災害対応が可能かどうか疑問」と、事務・権限が移譲されたブロックが被災した時の機動的な災害対応を問題提起した。
 民主党は5日の会合で議員から、「出先機関廃止推進知事の発言だけをマスコミにオープンにするのはおかしい」「市長もヒアリングするべき」との指摘を受け、6日の会合からヒアリングを公開することと、今後市長からもヒアリングをする方針を決めた。
 すでに関西や九州、四国などの基礎自治体首長から、出先機関廃止撤回を求める声が上がっているほか、同党内にも出先機関廃止への慎重論が出始めており、議論の行方が注目される。
(建設通信新聞からの転載はここまで)
 
 「地域主権改革」をはねかえすたたかいは正念場
 
 「アクション・プラン~出先機関の原則廃止に向けて~」の具体化は、東日本大震災や台風災害などにおける国民の安心・安全を守る出先機関の役割が国民や地元自治体に改めて認識されるとともに、「総対話MAP運動」などの運動により理解や共感を拡げるなか、作業に遅れが生じています。しかし、地域主権戦戦略会議(第13回・10月20日)で野田議長(首相)が「おしりを叩いて(中略)来年の通常国会には法案を出したい」と述べるなど、「地域主権改革」の後退に危機感を抱いた財界の巻き返しがはじまっています。「アクション・プラン」の実行スケジュールは、広域的実施体制と人員移管の枠組みの決定や移譲対象事務・権限の整理を内容とする年内の「中間とりまとめ」、2012年3月の閣議決定、5月の法案提出という政府方針に変わりはありません。関係政務3役を中心とした政治決着の色合いが濃厚になっており、まさに2012年春闘期が最重要局面となります。
 移譲対象事務・権限の調整は5月に関西広域連合と九州地方知事会が求めた経済産業局、地方整備局、地方環境事務所の3機関を先行するとされていますが、広域的実施体制や人員移管は13機関(都道府県労働局、地方厚生局、地方運輸局、地方農政局、北海道開発局、総合通信局、法務局、漁業調整事務所、沖縄総合事務局、森林管理局)全体の委譲・移管を見通してすすめられるため、国公労連全体の課題として各単組各級機関が各県国公に結集して最大限のとりくみが求められます。
 一方、「義務付け・枠付けの見直し」では、第1次(2011年4月)・第2次(8月)一括法で施設管理基準などに係わる666条項が改定または廃止され、国民生活の最低限を規定する基準が地方条例に委ねられることになりました。2012年4月に予定されていた条例の一括施行は、関連する政省令公布の遅れや、次期通常国会に291条項の見直しを行う第3次一括法案の提出が予定されていることもあって先送りされる可能性がありますが、条例化による公共サービス水準の低下を許さないたたかいも2012年春闘期が大きな節目となります。
 出先機関の廃止・委譲や「義務付け枠付けの見直し」と「ひも付き補助金の一括交付金化」は、国家予算における公共財としての国民サービスへの支弁を最小化して財界向けの私財化を追求するとともに、規制緩和などによる営利企業の参入機会拡大で公共サービスへの民間資金投入や業務委託などを促進し、国民本位であるべき公共サービスを財界本位へと変質させ、TPPと同様に国のかたちを新自由主義一色に染め上げるものです。
 「社会保障と税の一体改革」などの国民的要求課題とも結合し、首長や地方議会議員をはじめとする多くの住民に理解・共感を拡げるとりくみに全力をあげましょう。
 
以上