憲法をいかす国と自治体のあり方を考えるシンポジウムを開催
――「地域主権改革」と橋下「維新の会」は国民に何をもたらすのか
(「国公労連速報」2012年10月29日《No.2841》)

【とりくみ:地域主権改革 道州制】2012-10-29
 全労連は10月28日、都内で「憲法をいかす国と自治体のあり方を考えるシンポジウム」を開催し、80人が参加しました。

 岡田知弘氏(京都大学大学院教授)による基調講演後、尾林芳匡氏(弁護士、自由法曹団)をコーディネーターに、シンポジストとして岡田氏にくわえ、池田知隆氏((元)大阪市教育委員会委員長)、岡庭一雄氏(長野県阿智村村長)を迎えて討論しました。
 
 ◆「構造改革」の矛盾と対抗軸が明らかに
 
 シンポジウムの冒頭、主催者あいさつに立った全労連の小田川事務局長は、「自民党や維新の会などが道州制を打ち出している一方で、市町村段階では国の積極的な役割発揮を求めている」とし、「地域・地方でTPP参加や消費税増税に反対、賃金や雇用の確保を求める運動とも一致できる状況になっている」と述べました。

 岡田氏からの基調講演では、はじめに「東日本大震災で市町村合併や『地域主権改革』の弊害が明らかになり、復興を利用して『構造改革の再稼働』が行われている」と指摘し、「東京一極集中の国土構造を続けるのか。それとも持続可能な地域産業と地域社会の再生をはかるのか」「道州制・さらなる基礎自治体合併と市場化を推進する『地域主権改革』を進めるのか。それとも憲法をいかし、住民自治に基本をおいた国や地方自治体をめざすのか」など国と地方自治をめぐる対抗軸が明確になっていると述べました。その上で、「道州制・大阪都構想では、周辺各県に住み続けることができない地域が一層拡大する」しかし、「『維新の会』をめぐっては矛盾と軋轢が拡大しており、この流れがそのまま進むわけではない」と述べました。

 引き続き行われたシンポジウムでは、コーディネーターの尾林氏から「地域主権改革」は住民に自己責任を押しけるものであり、同時に「公務員バッシング」と「もの言わぬ公務員」づくりが一体で進められている。しかし、公共施設の指定管理者制度やPFI 法のもと明らかになっている問題が「構造改革」の矛盾を見えやすくしている。「反対する運動は広がっており、今日のシンポジウムを契機にさらに全国へ広げるために知恵を出し合おう」と提起がありました。

 それをうけて、池田氏は、「教職員に対する管理強化がきびしくなっている」、「話し合いよりもスピードを重視した改革が強行されている」、「大阪市の学校改革では、民間人校長を50人採用し、その面接に企業人をいれることになっている。教員評価の徹底で、生徒や保護者のアンケート結果を賃金に反映させようとしている」と報告しました。

 岡庭氏は、平成の大合併を検証した全国町村会の報告から、「合併した町村では、行政と住民相互の連帯が弱まり、周辺部の衰退などの弊害が顕在化している」「地域の独自性を認め、小規模自治体の自治を保障してこそ、地域を維持し国民の生活権を守ることができる」と指摘し、「公務員バッシングも激しいが、自らの権利を主張できなければ、住民の権利も守ることはできない」と述べました。
 
 ◆運動の方向性を確認
 
 その後のフロア発言では、「自治体の首長などとの懇談にとりくんできた。国民の安全・安心を守ることが私たちの使命である」(国土交通労働組合)、「憲法25条の解体がねらわれている。ナショナルミニマムを守っていくことが公務の役割」(全生連)、「事務権限移譲にかかわる条例化にあたって人員削減で仕事がまわらない」「モノを考えられない公務員が増えることは、モノ言わぬ公務員づくりにつながる」(自治労連)、「いじめをなくすためには、いじめる側に寄り添うことも重要。そして十分な体制を構築することが求められている」(全教)など現場や運動にかかわる報告がありました。
 
 シンポジウムのまとめとして尾林氏は「権限移譲や出先機関廃止などの問題点を明らかにして改悪を押しとどめる運動を大きくしていくことが重要」「構造改革の矛盾が明らかになってきているが、道州制を推進する側もまきかえしを強めている」「そのなかで、公務組合への期待は高まっている。それぞれの職務を通して対話をすすめ、さらに地域では、国・県・市町村の労働者が連携して、住民の目に見えるようなとりくみを進めていこう」「中央・地方でのとりくみをタイムリーに発信していこう」と述べました。

 閉会のあいさつに立った全労連公務部会の宮垣代表委員(国公労連委員長)は、「シンポジウムで『地域主権改革』は、地域に構造改革の責任をおしつけ、ナショナルミニマムの切り捨てを行わせるもの」「これまでの成果を確信に、社会保障の改悪をゆるさず公務・公共サービスの充実をもとめてとりくみを進めよう」と呼びかけました。