公務の切り売りによる労働者の使い捨ては許さない!
――「官製ワーキングプア」告発集会
(国公一般すくらむブログ2009-02-15)

【とりくみ:官製 ワーキングプア】2009-02-15
 「手取りは9~10万円しかなく、灯油も買えませんでした」
 
 鳥取県の国立病院で働く非常勤職員の女性です。正規職員と同じ仕事をしていましたが、独立行政法人化で賃金は半分の10万円以下に。劣悪な労働条件のもとで働きつつ、「私は病院が好きですから、患者さんのために、懸命に働いています」と仲間と励ましあいながら、労働組合運動をたたかってきました。労働組合で交渉し時給が10円上がり、やっと灯油を買うことができたといいます。彼女は「子どもが『ストーブつけたら暖かいね』と言いました。子どもにきちんとした生活をさせてあげたい」と涙ながらに訴えました。
 
 2月14日にひらかれた「使い捨てにされてたまるか!官製ワーキングプアの実態告発集会。公務職場で働く非正規労働者の現場からの悲痛な声が続きます。
 
 集会では、「構造改革」の名のもとで進行した公務の切り売りにより生じているさまざまな矛盾・弊害の実態を告発し、公務のあり方について問いかけることが目的です。
 
 「構造改革」による公務員削減・総人件費削減のもとで、正規職員から非正規職員への置き換えや民間委託がすすみ、国や自治体の職場で、非正規職員である臨時職員、非常勤職員、委託職員が増加してきており、雇用形態も多様化しています。また、競争入札の増加などにより、労働者が商品のごとく扱われ、公務職場でも雇用破壊が行われようとしています。
 
 道路や河川を監視する国土交通省職員などを輸送する日本道路興運労組の仲間は、専門性が高いのに競争入札化され、2000人が職を失いかねないと告発しました。
 
 日夜を問わない国民の安全・安心を確保するための迅速な災害対応のため、公用車は必要不可欠です。車両管理業務という災害現場への迅速な職員や車両・資材の搬送は、沿線の様々な情報に精通した運転技術が必要な極めて専門性の高い業務です。彼は、「残業代もつかずに自宅で待機しています。誇りをもって30年間働いてきました。しかし、国交省は車両管理業務について、約52%にあたる1372台を削減すると発表。行政改革の名のもとで、堂々と首切りをする政府は許せません。私たちは、憲法でいう健康で文化的な最低限度の生活も営むことができないのです」と訴えました。
 
 その民間の仲間の発言に呼応して、国土交通省全建設労働組合(全建労)九州地本の仲間が、「私は大分の出先機関で働いています。台風など緊急事態で、迅速に現場に向かう出動態勢ができるのも運転手のおかげです。転勤の多い国家公務員ですから、経験のある委託労働者から多くの知識と知恵をいただき、地域で業務を遂行することができるのです。安ければいいとか、免許があれば誰でもできるという行革の結果、被害を受け、命と財産が奪われ一番損をするのは国民ではないでしょうか。国だけでなく自治体にも訴え、社会問題として世論をつくっていきます!」と力強く呼びかけました。
 
 法務局の登記業務を委託されている財団法人・民事法務協会の労働組合の仲間からは、競争入札で大幅賃下げ、620人の首切りがされようとしていると告発しました。
 
 「私たちは37年間法務行政の一翼を担い、誇りをもって働いてきましたが、『市場化テスト』という何でも規制緩和し、民間参入させるという国の政策によって、仕事はあるのに職場を追われる現実に、怒りと悔しさを感じています。いま、失業の危機に立たされ、雇用と生活への不安におしつぶされそうになる思いを抱えながら、日々を送っています」と語ります。
 
 4月から法務局の一部登記窓口業務を受託する業者は、27社にものぼります。専門的知識と経験を必要とする業務が、未経験の人たちに委ねられようとしています。1、2年で競争入札を繰り返し、業者が代わり従事労働者が変わります。個人の財産となる不動産登記、取引の糧となる商業法人登記に関わる業務が、不安定な環境にさらされることになって、信頼性・安全性を保つことができるのでしょうか。
 
 民事法務協会で働く職員のほとんどは女性ですが、労働組合でたたかっています。最後に語ります。「いま、団体交渉で運動を積み重ねています。私たちは貧困と格差をなくすため、全国一律最低賃金制と均等待遇、公契約法を求めていきます」
 
 続いて、東京公務公共一般労働組合の仲間から、多摩市にある福祉施設が正規職員採用を理由に非正規職員を雇い止めするなど50人が首切りされようとしていることや、ある自治体では民間の「派遣切り」された労働者を受け入れながら、足元で働く非正規労働者の首切りをする実態など報告。「反貧困運動に呼応して、4月26日にナショナルセンターを越えて『反・官製ワーキングプア』集会を開催しますので、参加してください!」と、幅広い仲間との連帯と共同の運動を呼びかけました。
 
 埼玉県高等学校教職員組合の仲間からは、「年収80万円のみで、生活保護を受けて教壇にたっている非常勤教員がいます。給食の民間委託など自治体で把握できないほど教育現場の非正規労働者は増加しています。厳しい労働条件で働く非常勤教職員は、次々と労働組合に加入してくれます」と仲間を増やすとりくみも紹介してくれました。
 
 また、大阪の自治体で働く労働組合の仲間や、民間委託した下水処理場業務の落札額が下がり続け、すさまじい劣悪な賃金と業務で企業の撤退が続き、住民サービス向上のために最賃運動と均等待遇を訴えた全労連全国一般の仲間などから発言が相次ぎました。
 
 北海道から駆け付けたハローワークで働く仲間からは、「ハローワーク窓口の第一線で働いている非常勤職員の雇い止めは大きな問題です。10万円という低賃金と職員間の賃金格差問題や、通勤手当は一律350円で、もらっていない非常勤職員もいます」と劣悪な労働条件を報告。全労働北海道支部では、5年前から非常勤職員の生の声を直接聞き、職場機関紙発行で伝え要求を束ねて、話し合い、予算要求を突き付け、待遇改善、雇い止めや賃金問題で交渉を積み重ねています。
 
 彼は最後に、「同じ職場で働く仲間として、みんなが笑顔で働き続けてほしいのです。私たちは同一労働・同一賃金をめざしています。いまの失業の厳しい情勢を打開するためにも、労働行政の拡充と非正規労働者から正規労働者への転換など運動で、一人ひとりの力を結集して乗り越えたいです」と語りました。
 
 ブログでの掲載は一部で残念ですが、現場から12名の告発がありました。
 
 雇用悪化がすすむいま、公務職場から新たな失業者を生み出さず、「官製ワーキングプア」をなくす運動を、すべての労働者の連帯で展開しなければいけないと思います。雇用破壊にストップをかけ、労働条件の底割れを許さないための「公契約」(国や自治体などの公的な機関を相手に結ばれる契約。生活できる賃金など労働条件確保が求められています)運動の発展も大切です。
 
 今回の告発集会で、住民・国民の命と暮らしと財産を守るため、公務・公共サービスの拡充をめざして、あらゆるとりくみを強めたいと確信を持ちました。
 
 公務・公務関連職場で働くすべての労働者のみなさん、叫びましょう!
 公務の切り売りによる労働者の使い捨てを許さない!!
 
 (byブレッド&ローズ)