2012年11月2日
国公労連書記長 岡部勘市
本日、政府は国家公務員の退職手当を平均で402.6万円削減するとともに45歳以上の職員を対象にした早期退職募集制度の創設、年金払い給付の導入などを盛り込んだ、退職手当「改正」法案を閣議決定し、国会に提出した。
国公労連は退職手当「見直し」にあたって、①退職手当の位置づけを明らかにするとともに、「見直し」のルール作りが必要なこと、②人事院の調査結果について納得できる説明を行うこと、③「見直し」にあたっては公務の特殊性をふまえること、などを要求してきた。
しかし政府は、退職手当を「長期勤続報償の要素が強い」として労働条件であることを認めず、労働組合の主張・要求を「聞き置く」だけに終始した。加えて、退職手当法には「情勢適応の原則」が示されていないにもかかわらず、公務の特殊性や人事院の調査結果について納得できる説明も行わないまま、官民比較結果を唯一の根拠に「最終的には国会で判断するのがルール」だとして削減を決定した。
国家公務員制度改革関連4法案が店ざらしにされる中で、一方的に政府・使用者の削減提案を押しつけ、法案を閣議決定したことは断じて許されるものではない。
法案では、退職金削減とセットで早期退職募集制度の導入と定年前早期退職特例措置の「拡充」を盛り込んでいる。一方で民間企業による国家公務員の再就職あっせんの導入が目論まれている。
これらの制度は2010年6月に閣議決定された「退職管理基本方針」にもとづくものであるが、「基本方針」は総人件費抑制を進めることを目的としている。この間、限界を超えた定員削減が押しつけられていることをふまえれば、「退職募集」に名を借りた退職強要・公務リストラが横行することは想像に難くない。雇用不安を生じさせることによって行政サービスの低下を生じさせる一方で、労働者を食い物にしている民間人材ビジネスを後押しすることになる制度の導入は認められない。
加えて、共済年金職域加算に変えて、年金払い給付を導入することとしており、職域加算を減額するとしている。
今回の退職手当削減の根拠となった官民比較では、民間における退職金と企業年金の合計を公務における退職手当と職域加算の合計を比較し、402.6万円の較差があるとした。退職手当削減提案時に政府が「当面の退職者について官民較差の全額を一時金である退職手当の支給水準引下げにより調整する」としていたことから、退職手当以外の給付には手をつける必要がないことは当然であり、認めるわけにはいかない。
退職手当の大幅な引き下げは、住宅ローンや高額な教育費を抱える職員をはじめとして、青年層も含めたすべての職員の働きがいや将来への期待を破壊するものと言わざるを得ない。今だにメドの見えない東日本大震災からの復旧・復興業務をはじめ、地方の第一線で奮闘している多くの職員の労苦に報いるどころか冷や水を浴びせるものに他ならない。
加えて、「給与改定・臨時特例法」による賃下げが行われていることともあわせ、退職手当の削減が疲弊した地域経済に追い打ちをかけ、デフレ不況をいっそう深刻にすることは明らかである。
国公労連は、「賃下げ法」廃止を求めるたたかいとあわせ、労働者としての生活と権利を守り、賃下げのスパイラルと雇用破壊を断ち切るため、広範な労働者・国民との連帯を広げながら、全国の職場・地域で引き続き奮闘するものである。