政府・国家公務員制度改革推進本部(本部長:菅直人首相)は本日、「国家公務員制度改革基本法に基づく改革の『全体像』について」を決定した。
国公労連は、すでに3月22日に「全体像」(案)に対する見解を公表しているが、今回の推進本部決定にあたって、改めて問題点を指摘する。労働基本権問題に関わって第一に、憲法で保障された基本的人権およびILOの国際基準に沿った労働基本権ではなく、争議権が先送りされ、刑事施設職員等の団結権さえも認められていない。第二に、労働組合の「認証制」を導入し、協約締結権を保障する労働組合に「職員構成比の過半数要件」を課して、団結権、団体交渉権を侵害している。第三に、法律・政令の制定改廃を伴う団体協約について内閣の事前承認を採用し、団体交渉を形骸化させかねない。第四に、管理運営事項を交渉対象としない現行制度を継承し、いたずらに労使紛争を招きかねないなど、重大な問題が内在している。
人事行政の中立・公正性の確保に関わっても、国家公務員制度に関する事務その他人事行政に関する事務の多くを使用者機関である「公務員庁」の所掌とすることは容認しがたい。「人事公正委員会」が第三者機関として人事行政の公正の確保等の事務を担うとされているが、それを担保する機能や役割が発揮できるか甚だ疑問である。さらに「内閣人事局」設置による幹部職員の一元管理は、時の政権への忠誠度に応じた「人事の政治化」が進みかねず、「全体の奉仕者」としての中立・公正性が損なわれる危険性がある。
また、3月3日に「全体像」(案)が示されて以降の進め方、全労連・国公労連との協議経過とそのあり方についても、問題を指摘せざるを得ない。国公労連はこの間の交渉・協議において上記の問題点を幾度も指摘し、是正を求めてきたが、推進本部事務局は「意見は聞きおく」との姿勢に終始した。これでは「自律的労使関係制度」の本旨とは程遠いと言わざるを得ない。
今後の法案化作業にあたっては、「国民全体の奉仕者」として公務の民主的かつ能率的な運営を保障し得る制度設計に向け、直接の当事者である国公労連との「実質的かつ意味のある」交渉・協議を尽くすことを求める。もとより、総人件費2割削減という政権公約や震災復興財源を理由とした公務員賃金切り下げのための「措置」であってはならない。
国公労連は、国の行政機関等に働く職員の労働組合として、被災者の生活再建を最優先する復旧復興業務と支援のとりくみに全力をあげるとともに、憲法とILO基準に沿った争議権を含む労働基本権の全面回復、市民的政治的自由の確立や非常勤職員の制度整備など民主的公務員制度の実現に向け、引き続き運動を強化するものである。
以上