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衆議院解散にまぎれて退職手当を削減する暴挙◆衆参わずか2時間足らずの審議で採決を強行!
【とりくみ:各種とりくみ(中央行動など)】2012-11-19 衆議院が解散される11月16日、政府・民主党は国家公務員の退職手当削減法をわずか1日で衆議院及び参議院の本会議において採決を強行。国公労連は全労連・公務部会の仲間とともに、参議院議員面会所において横暴な退職手当削減法の採決強硬の暴挙に断固抗議する集会を実施しました。
「衆議院総選挙で審判を下そう」
国公労連は全労連公務部会に結集して、参議院での退職手当削減法案が本日(11月16日)強行された直後の午後3時40分過ぎから参議院議員面会所において抗議集会を実施しました。
参議院本会議から駆け付けた日本共産党の山下芳生参議院議員(写真・左)は、「退職手当削減法案を衆参で、可決・成立したことに満身の怒りを表明する。先ほどの総務委員会では、樽床大臣は、『労働組合の合意は得られている』と全く事実と異なる答弁をした(その後、政務官が訂正)。労働組合との合意にはその程度の関心しかないことが明白。もはや民主党は、労働者の権利侵害を平気でおこなう党であることが明らかになった。この退職手当削減は民間労働者にも波及し、日本経済をさらに疲弊させることになる。この暴挙に対して、12月16日の総選挙で明確な審判をくだそう」と述べました。
その後、公務三単産の代表が怒りの発言を行いました。国公労連・全司法の門田委員長(写真・右)は「国公労働者は、労働基本権制約という手足を縛られた中にあり、唯一使える口を使って反撃してきたが、今回の暴挙によって、口だけでは何もできないことが明らかとなった。10月29日に行われた『公務員賃下げ違憲訴訟』の第2回口頭弁論で国側は、宮垣委員長の総務委員会の証人発言を捉えて、『国公労連の意見は聞いた』などと反論している。労働基本権を回復するしか政府の暴走に歯止めをかけることはできない。この怒りを12月16日の総選挙にぶつけよう」と訴えました。
自治労連の関口中執は、「委員会審議を傍聴してきたが、総務委員会の委員長が『慎重な審議をお願いします』と述べたことに対して委員が笑っていた。これがいまの政治の実態を表している。東京都でも退職手当の削減が提案された。その中身は管理職より一般職のほうが削減が多いというものだった。この提案は交渉で押し返したが、許し難いもの。引き続き奮闘する」、全教の波岡中執は、「委員会では、共産党、社民党、みんなの党が法案に反対した。但し、みんなの党の反対理由は、削減額が少ないということでの反対だった。労働者の権利侵害も甚だしい」と述べました。
最後に全労連・公務部会の黒田事務局長は、「衆院の委員会と本会議、参院の委員会と本会議を1日で終わらせたことは憲政史上初めての暴挙だ。政府は、今日衆議院を解散することが明らかな中で、昨日、地方公務員法改正案を持ち回りで閣議決定し、法案を国会に提出した。当然、法案は廃案となるが、まさにアリバイづくりの法案提出だ。このことが現在の政府の姿勢を物語っている。この怒りを忘れず、衆議院総選挙にぶつけよう」と報告しました。
<衆議院総務委員会>
わずか1時間の審議で退職手当の大幅削減を強行採決
衆議院総務委員会では、橘慶一郎(自民)、福嶋健一郎(国民の生活が第一)、西博義(公明)、塩川鉄也(共産)、柿澤未途(みんな)、吉泉秀男(社民)の各議員が質問に立ちました。
多くの議員が質問の冒頭で、わずか1時間の審議で法案を強行採決することに対して抗議の意思を表明しました。
国民の生活が第一の福嶋議員は「1時間の審議で法案の賛否を決めなければならないような状況をつくったことは大きな責任が問われる問題だ。民間と公務で402万円もの差があるというのは本当に妥当性があるのか? 中小企業と比べると下がるのではないか?」と述べました。
公明党の西議員も「十分な議論ができないバタバタ劇は残念だ。法案の十分な議論が必要だ。また、5年の経過で官民較差が大きく広がった。大きく広がる前に是正すべきだ。400万円の削減では不十分。そもそも退職金と企業年金一時金を合算して官民比較しており、企業年金一時金を除くと官民較差は1900万円になる」と法案の議論と減額の不十分さなどを述べました。また、みんなの党の柿澤議員も西議員と同様に減額の不十分さを述べました。
これらに対して、樽床総務大臣は「人事院の給与勧告と同じものを使うことが現時点では妥当だと考えており、概ね5年ごとに見直していく。公務と民間は歴史的経緯が異なるためトータルで官民バランスをはかってきたが、今度は検討をはかりたい」と答え、笹島人事・恩給局長は「長期勤続報奨の性格があり、安定的に支給する必要があるため、概ね5年ごとの調査で官民均衡をはかってきた。今後は調査の頻度など改善措置をはかりたい」と述べました。
社民党の吉泉議員は「国家公務員と地方公務員、その家族も含めて数百万人の生活設計に重大な影響を与える法案をたったの1時間の審議とすることは乱暴そのもので立法府の一員として強く抗議する」と述べました。
自民党の橘議員は、「政府は今年の人事院勧告を実施せず、平成26年4月からの実施としたが極めて遺憾であり、法律に基づく行政の実施を求める」と迫り、樽床総務大臣は「給与を平均7.8%削減する臨時特例法が実施されているため、給与の減額措置が終わった段階の平成26年4月から実施する方向で来年中に結論を出したい」と答えました。
共産党の塩川議員は、「政府自身も慎重審議をと言っていたのに、このような短時間では慎重審議のしようもない。国家公務員労働者の働きがいや若者の将来展望を奪う退職手当の大幅削減を、こんな乱暴な委員会運営で強行することに強く抗議する。退職手当の額は官民較差で行うとはどこにも書かれていない上に、労働基本権が制約されているもとでの不利益変更について国会での様々な角度からの十分な議論が求められているにもかかわらず、国家公務員総人件費2割削減方針のもとでの退職手当400万円削減ありきは認められない。また早期退職募集も総人件費削減のツール、人減らしの道具として使われることになる。国立ハンセン病療養所は国家公務員総人件費削減によって職員の大幅削減が続き、入所者の命が脅かされている。消費税増税の地ならしともなっている、総人件費削減、退職手当削減を撤回すべきだ」と迫りました。これに対して、樽床総務大臣は「退職手当削減分は結果として総人件費2割削減に含まれることになるが、第一義的には官民較差の解消にあるものだ。早期退職募集は組織の年齢構成の最適バランスをはかるものであり、リストラはまったく念頭にない」などと述べました。
塩川議員による反対討論の終了後、共産党、社民党、みんなの党(削減額が少ないとの理由)は反対しましたが、賛成多数によって法案は強行採決されました。
<参議院総務委員会>
45分のみの形だけの審議で採決強行
13時半から開かれた参議院総務委員会の傍聴には、国公労連、全労連公務部会、自治労連、全教などから10名が参加しました。
冒頭、樽床総務大臣が「退職手当引き下げ法案」「厚生年金保険法一部改正法案」の2法案の趣旨を説明、末松信介(自民)、木庭健太郎(公明)、主濱了(生活)、寺田典城(みんな)、山下芳生(共産)、又市征治(社民)、行田邦子(み風)の各議員が質問に立ちました。
すべての質問者は共通して、重要法案にもかかわらず国会解散直前で突然委員会を開催し、1時間の審議で強行採決するという委員会審議のやり方に抗議しました。自民・公明の両議員は、法案の趣旨に賛意を示しつつも、「400万円もの大幅な引き下げは国家公務員とその家族に大きな影響がある。また有為な若手公務員の確保にも支障をきたす恐れがあるが、どう考えているか」と質問。それに対し樽床大臣は「現在の財政状況と国民の置かれた状況を考えれば、官民較差はただちに埋めるべきだが、大幅な引き下げなので激変緩和のため3段階に分けて行うこととしたい。また有為な若手職員の確保・士気の維持のためには、高齢層に偏っている職員の年齢バランスの歪みを解消するため、早期退職募集制度を措置する」と述べました。
主濱議員(生活)は、日本の国家公務員数が英・米・仏との比較でも3分の1と非常に少ないこと、平成21年と比べると今年度の新規採用者が60%も減っていることなどを指摘し、その上で退職手当まで削減し、日本を支える優秀な国家公務員を集めることができるかと問いただしました。樽床大臣は「我々は審議で決められたことを全力でとりくむだけ。国家公務員が少ないとの意見はよく聞くが、海外比較だけでなく、国内の社会全体のバランスを考えて与えられた状況のなかで努力するしかない」などと答えました。
寺田議員(みんな)は、国家公務員の人員整理計画について、スケジュールを組んでもっと迅速に行い、再就職支援制度についても公務・民間組織問わず活用すべきではないかと問い、樽床大臣は「貴重な意見だ。より良い再就職支援制度を作りたい」と答えました。
山下議員(共産)は、「今年2月に国家公務員の労働基本権を制約したままで強行された平均7.8%の賃下げは憲法違反であり、さらに退職手当の大幅削減まで行われようとしている。給与と同様、退職手当も重大な労働条件だが、労働組合と十分に協議の上、納得と同意は得たのか」と質問。それに対し、樽床大臣は「関係者には説明して納得してもらった。労働組合とも合意を得ている」と回答。その直後、稲見政務官が「労働組合は連合・公務労協だけと合意を得た」と訂正しました。山下議員は「合意していない労組もあり、その労組は多くの労働者を組織している。合意を得ずに強行するなど、民主党は労働者の権利侵害を平気でおこなう党だとしか思えない。国家公務員は国民の基本的人権を守る責務を負っているので、国家公務員の権利侵害は国民への権利侵害でもある。消費増税のための『身を切る改革』と言うなら、政党助成金に手をつけるべきだ。政党助成金を1年分やめるだけで、退職手当の削減分よりもさらにおつりがくる」と主張しました。
又市議員(社民)は「生活設計にかかわる重大な労働条件の切り下げだ。少なくとも公務員制度改革4法案の成立が先であり、労働組合にも国会で話を聞いて議論を進めるのが筋。今回の削減案は人事院の調査の問題もある。調査対象の民間企業の実態が企業規模によって大きく違う。国家公務員は万単位の職員がおり、比較すべきは大きい企業なのに『50人以上』を比較対象にするのはおかしい。いずれにせよ公務員組合と合意の上で決定できる制度設計が必要だ」と主張しました。
討論では、山下議員が反対討論を行い、「きわめて重大な内容の法案なのに45分の審議だけで強行採決されることに強く抗議する。官民比較を唯一の根拠とする決まりはどこにもなく、『総人件費2割削減』ありきとしか思えない。労働組合の協議状況について総務大臣が把握していないことも論外だ」と述べ、法案に強く反対する態度を明らかにしました。
その後、採決に移り、2法案とも共産・社民・みんな(削減額が少ないとの理由)を除く各党の賛成多数で採択されました。
以 上