ILOが8度目の勧告、「賃下げ法」にも言及
◆結社の自由委員会・理事会で採択

【とりくみ:労働基本権 公務員制度】2013-04-01

 3月28日までスイス・ジュネーブで開かれていたILO理事会は、同結社の自由委員会で確認された日本の公務員制度改革にかかわる「中間報告」を採択しました。
 中間報告は、02年の全労連などによるILO提訴を発端にしたもので、02年11月以降8度目の「ILO勧告」が日本政府に示されることとなりました。
 今回の中間報告は、全労連が今年1月8日にILOに提出した「追加情報」(国公労連速報NO.2874参照)を受けたもので、国・地方の公務員制度改革関連法案が廃案となり、その一方で「給与改定・臨時特例法(賃下げ法)」で国家公務員の平均7.8%の賃下げが強行されたこと、さらには、国公労連などが裁判闘争をたたかっていることにILOも注目し、裁判の結果など必要な情報提供を日本政府に求めています。
 とりわけ、ふたたび政権に復帰した自公政権に対しては、公務員への労働基本権の保障にむけた改革を「これ以上遅滞なく完了させる」ために、労働組合との「完全、率直で意味のある協議」を追求すべきだと明快に勧告しています。
 政権交代後、労働基本権回復にむけた具体的な動きは見られませんが、政府は、8度におよぶ勧告を重く受けとめ、権利回復にむけた検討作業をただちに再開すべきです。
 (全労連「公務員制度改革」闘争ニュース№129より転載)

◆結社の自由委員会報告(勧告部分のみ、ILO理事会採択、全労連国際局訳)

【委員会の勧告】

 前述の中間的結論に照らし、委員会は理事会に以下の勧告を承認するよう理事会に要請する。

 (a) 2012年12月26日に発足した新政権がこれまでの経緯の総括も行ったうえで、国家・地方公務員制度改革の具体的内容を検討するという日本政府の表明に留意し、委員会は日本政府に対し、これらの問題での完全、率直で意味のある協議を追求し、批准済みの87号、98号条約に示された結社の自由原則を完全に適用させるため、公務員制度改革が勧告の線に沿って、これ以上遅滞なく完了させるために必要な措置を取るよう要請し、特に以下の点を強調する。
(ⅰ)  公務員への労働基本権の付与
(ⅱ)  消防職員及び監獄職員への団結権、団体交渉権の付与
(ⅲ)  国の行政に関与しない公務員に団体交渉権と団体協約締結権を保障し、および団体交渉に関して法的制限がある職員に関して適切な代償措置が保障されること
(ⅳ)  国の名において権限を行使しない公務員が結社の自由原則に則ってスト権を行使でき、この権利を正当に行使した組合員や役員が重い民事・刑事罰を課されることがないよう保障すること
(ⅴ)  公務分野における交渉の範囲

 委員会は日本政府に対し、上記すべての件に関する進展に関する情報提供を継続すること、また解散によって廃案になった国家・地方公務員制度改革法案が再提出されるか示すよう求める。

(b) 委員会は政府に対し、賃下げ法による賃金切り下げに対して、国公労連が2012年5月25日に東京地方裁判所に訴えた裁判、また国立大学法人等の労働組合が大学法人を提訴した裁判の結果について、報告を継続するよう要請する。