人事院は6月10日14時、処分の撤回を求めて不服審査を申し立てていた全厚生組合員のうち、北海道2人と秋田3人、業務センター2人の判定書を交付しました。北海道の越後敏昭さんと秋田の保坂一寿さんの処分が取り消されました。一方、北海道1人、秋田県2人、東京の業務センター2人の5人については、解雇を承認する不当な判定となりました。また、厚生労働省は、全厚生事案以外で9人の判定があり、3人が処分取消となったことを明らかにしました。
人事院前要求行動、座り込み行動で処分取消判定を求める
全厚生当事者やJMIU日本IBM支部の被解雇者が訴え
国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部は10日昼休み時間帯から取消判定を求める人事院前での要求行動と座り込み行動を行いました。この行動には、全労連の各単産と社保庁対策会議メンバー、民間労組、東京争議団、JMIU日本アイビーエム支部、JAL不当解雇撤回原告団、通信労組の仲間などが激励に駆けつけ約150人が参加しました。全厚生は、中部社保支部・関東社保支部・近畿社保支部と当事者(東京・京都)も参加しました。
12時15分から始まった人事院前要求行動で主催者あいさつした国公労連の宮垣中央執行委員長は、4月5日の大島さんの分限免職取消判定と秋田事案3名の処分承認判定にふれ、「分限免職回避のための厚労省のとりくみが不十分だったことを人事院が認めたものの、厚労省への転任の面接評価結果のみを基準とし、救済する範囲を不当に限定しており重大な判断の誤りがある。人事院が労働基本権制約の代償措置にふさわしい判定と、申立てをしている全ての人に対して分限免職処分取り消しの公正な判定を出すよう強く求める。政府・厚労省は、人事院によって分限免職処分の不適正さが断罪されたことを踏まえ、直ちに525人の分限免職を撤回すべきだ」と強く訴えました。
連帯あいさつした全労連の根本副議長は、「大島さんの分限免職の取消判定で勝利を勝ちとったことはたたかいの到達点として確認したい。JAL不当解雇や非正規切りに反撃するためにも、社保庁不当解雇撤回のたたかいに全力をあげよう」と呼びかけ、大阪労連の川辺議長は「なぜ社保庁を解体したのか疑念が強まる。年金に対する国民の批判を、雇用保険に入っていない社保庁職員に責任を転嫁して解雇した政府の責任と罪は重い。解雇撤回のために全国の仲間とともに大阪でもたたかう」と述べました。
JMIU日本IBM支部の鈴木中央執行委員は、「私はIBMにロックアウト解雇を通告され、6月中に提訴する準備をすすめている。解雇は断じて受け入れられない。ともに連帯してたたかおう」と訴えました。当事者でもある全厚生闘争団事務局長の京都の北久保さんは、「3年6カ月のたたかいで、大島さんの勝利判定を勝ち取った。全国のみなさんの支援に心から感謝する。一方、秋田の不当判定は断じて認められない。6月5日の愛媛の支援共闘会議総会には80名が参加し、裁判の準備が進められているとの報告も受けている。これからがたたかいの正念場だ。大島さんに続く勝利を勝ちとるまで奮闘する」と力強く訴えました。
要求行動のあと座り込み行動に突入
座り込み行動では、全厚生の山本中央執行委員長があいさつを行い、全厚生中部社保支部の澤村さん(岐阜県労連副議長)が厚労省と人事院への要請の報告(詳細は下記参照)を行いました。
日本共産党の山下よしき参議院議員から激励メッセージが寄せられ、全厚生闘争団の当事者である東京の伊藤さん、京都の北久保さん・中本さん・谷口さんなどが、分限免職処分の不当性を訴えました。
座り込み行動に駆けつけた、通信労組の宇佐美中央執行委員長、東京争議団の小関団長、JAL客乗原告団の斉藤さん、全法務の実川中央執行委員長、全医労の黒木中央執行委員、国鉄労働組合東海地本の上野書記長が連帯と熱い激励あいさつを行いました。
人事院の処分取消判定は3割、解雇の不当性は明らか
人事院判定について加藤健次弁護士が報告し、「4月5日の4人を加えて20人の判定がだされ、6人の解雇が取り消された。人事院が3割もの解雇取り消しを認めたことにより、政府・厚労省は致命的になっている。全員を救済するために、解雇撤回闘争を強めよう」と呼びかけました。処分承認の不当判定となった当事者は、「不当判定に怒りを感じる。不当労働行為はなにかと問いたい。人事院・厚労省は、人が生きる権利、人権についてもっと責任をもってほしい」と怒りを込めて訴えました。
国公労連社保庁不当解雇撤回闘争本部の川村事務局長が行動提起を行い、「今回の判定をふまえて、あらたな人事院総裁あて署名と厚労省大臣あてハガキ・署名行動を提起したい。525人全員の解雇撤回のために全国でたたかおう」と呼びかけました。
最後に「不当な処分承認判定は許さないぞ」「人事院は公正・公平な判定を行え」「社保庁職員の分限免職処分は全員取り消せ」「人事院は国公労働者の雇用と生活を守れ」のシュプレヒコールで行動を終えました。
「解雇撤回の政治決断を」◆全労連社保対策会議が厚労省に要請
全労連の社保庁不当解雇撤回闘争対策会議が10日午前に開かれ、厚生労働省に対して旧社保庁職員の分限免職撤回の政治決断を求める要請を行い、人事院に対しても処分取消の早期判定を行うよう要請しました。
要請は、全労連の根本副議長と小林組織局員、秋田県労連の佐々木議長、大阪労連の川辺議長、岐阜県労連の澤村副議長(全厚生中部支部)、医労連の原書記次長、国公労連の川村副委員長、全厚生闘争団の北久保事務局長と伊藤・國枝両事務局次長の10人で行い、厚労省側は年金局総務課の今井課長補佐ほか1名が対応しました。
冒頭、北久保氏の身分と権利の回復を求める要請ハガキ1208枚(累計7070枚)を提出し、全労連の根本副議長が「人事院の判定では、社保庁・厚労省の解雇回避努力が不十分だと指摘している。現在71名が不服申し立てしているが、回避努力すれば全員救済できたはず。救済の手立てをとって欲しい」と述べました。
国公労連の川村副議長は、「解雇回避努力が不十分と人事院が指摘しているのに、処分承認について主張が認められたとの大臣の発言は問題。解雇撤回の政治決断を求める」と発言しました。大阪労連の川辺議長は「社保庁・厚労省は経営責任をとっていない。労働者に責任を追わせるのはおかしい」と述べ、全厚生闘争団の北久保事務局長は「懲戒処分が取り消されて2年。処分を受けていたことで厚労省面接では低い評価を受けた。分限免職は誤りであり、謝罪して職場に戻して欲しい」と述べました。
今井課長補佐は、「かつて社保庁の現場で働いていたので、重く受け止めている。要請については、政務三役にも報告する予定」と回答しました。
「15分の面接結果での判断は問題」、人事院判定の問題点を指摘
判定交付直前となった人事院への要請には、愛知県労連の榑松議長と全厚生の杉浦副委員長と当事者の松本さんが加わり13人での要請となり、人事院側は武廣監理官ほか1名が対応しました。
全労連の根本副議長は、人事院総裁あて分限免職処分を取り消す判定を求める署名1268筆(累計96726筆)を提出し、「取消判定がでたことは画期的だが、政府の責任、年金機構の責任を言及していないのは問題。また、処分取消の基準がたった15分の厚労省転任の面接で判断しているのも問題」と指摘しました。
日本医労連の原書記次長は「解雇回避努力を怠っているのであれば、取消が当たり前。労働基本権がせばめられている中、人事院は役割を果たして欲しい」と述べました。東京の当事者の松本さんは「迅速に判定を出すべき。人権救済機関の役割を果たしていない」と述べました。国公労連の川村副委員長は「農水省職員は2010年4月にも配転で身分が確保されているのに、社保庁職員は09年12月末で分限解雇されても、平等取扱原則に反しないとの判断は撤回を」と判定の問題点を指摘しました。
人事院の武廣監理官は要請に対して、「それぞれの判定に対する発言については公平局と人事官に伝える」と述べました。