21世紀の大災害から、みなさんの生命や住宅・財産を守るために★建築研究所

【とりくみ:独立行政法人労組のとりくみ】2013-11-08
■これまでの行政改革と東日本大震災

 住宅や建築物の多くは私有物であり、工務店や建設会社によって建設されています。従って、「住宅や建築は民間による行為(事業)であって、国が規制を加えたり、研究を行うことは不要でムダ、すべて民間=市場原理にまかせるべきである」などの意見が、まかり通る時期がありました。
 しかし、このような人間の考えが安易である事を、自然が示しました。2011年3月11日東日本大震災が発生し、39万におよぶ住宅などが全半壊する被害を受け、2万近い人命が失われました(※右写真:東日本大震災による住宅等の被害)。その被害額は、16~25兆円と言われています。
 市場原理や事業仕分けのような経済優先の考え方では、大災害から住宅や住民を守ることはできませんでした。




■建築研究所の重要な役割と残念な現状
 
 住宅や建築物を自然の猛威から守るためには、人間の英知をあわせた仕組み、制度や技術が必要です。
 このための仕組みの一つが、住宅や建築物に対する法規制であり、これらの規制が最適なものになるように研究を行っているのが、建築研究所です。
 建築研究所は、1946年に戦災復興院と一部として設立された国立研究所で、災害を防ぐための研究を実施してきました。しかし、行政改革=民営化の風潮の中で、2001年に独立行政法人化(非公務員化)され、研究体制も分割・縮減、研究者数・研究予算の大幅削減が行われました。
 しかし、国の規制を最適なものにするための研究が、非公務員(=民間)によって実施されるという、独法の制度設計に矛盾や無理が生じています。
 例えば、非公務員(=民間)では国や自治体の持つ公的な情報を十分に活用できない、国(=公務員)としての調査・依頼が実施できない、地方自治体等の依頼に即座に対応できない(民営化=原則有償)、臨機応変の研究ができない(中期計画・大臣認可のしばり、運営費交付金の制約)など、国の時代には無かったさまざまな弊害が生じています。
 現場を知らないトップダウン型・経済優先の組織改革・制度改変が、災害を防ぐための研究をますます阻害してしまう、残念で悔しい現状があります。



■今緊急に必要な・・・

 東日本大震災で、多数の住宅等が損壊し多数の生命が失われたことは、建築研究所の研究とそれを支える研究体制が不十分であった事を示しています。
 21世紀に入り、日本の各地で大地震が頻発するようになりました。今後は、大都市直下の地震・都市火災、南海トラフなどの地殻変動を伴う大地震・大津波・津波火災・火山の噴火(富士山など)も予想されています。被害の甚大さを考えたとき、これらは日本が取り組むべき最優先の課題です。
 これらの大災害から、みなさんの住宅と生命・財産そして雇用の場である産業を守るために、建築研究所のさらなる研究と研究体制の復活・強化を強く求めています。


(国土交通労働組合 独立行政法人建築研究所労働組合)