政府による自作自演、地域経済を疲弊させる理不尽な賃下げに抗議する
――2014年人事院勧告の取り扱いに関する閣議決定にあたって(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2014-10-07
2014年10月7日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌 田  一
 
 政府は本日(10月7日)、2回目の給与関係閣僚会議を開き、2014年人事院勧告の完全実施と退職手当法「見直し」を決定し、その後の閣議で「公務員の給与改定に関する取扱いについて」を閣議決定、即日関連する法案を国会に提出した。
 
 国公労連は、本年度の月例給・一時金の改善勧告と来年度からの「給与制度の総合的見直し」(以下、「総合見直し」)による新たな賃下げ勧告の二つの勧告に対して、政府に改善勧告の早期実施と賃下げ勧告の不実施を中心とする要求への対応を求めてきた。また、退職手当の現行支給水準を確保する措置についても追及を強めてきた。
 本日の閣議決定について、改善勧告の実施については、公務員労働者の生活改善や非常勤職員の処遇改善に資するものであり当然の対応であるが、それ以外の要求にはまったく応えておらず、大変遺憾な内容である。
 
 とりわけ、民間賃金の低い地域の官民比較による全体の賃金水準と高年齢層の賃金水準を引き下げ、それを財源とした中央優遇・地域間格差拡大の「総合見直し」は、給与決定の根本基準である「職務給原則」(国家公務員法第62条)を逸脱したもので大きな禍根を残した。
 「総合見直し」は、総人件費抑制を企図した政府の「地場の賃金をより公務に反映させるための見直し」、「50歳台後半層の官民の給与差を念頭に置いた高年齢層の給与構造の見直し」といった要請(2013年11月15日)に人事院が応じたものである。
 労働基本権を制約しながら、その代償機関である人事院を、使用者たる政府の意向に従わせることは、国家公務員の権利を侵害するに等しい行為である。このことは、人事院が国公労連の意見を聞き入れずに賃下げ勧告を強行したことや、勧告を受け取った政府の好意的な認識、その後の政府の不誠実な交渉対応などからも明らかである。
 こうした経過をたどりながら政府は、「人事院勧告制度の尊重」を理由に、「地域間・世代間の適正な給与配分等の実現を図る観点からの給与制度の総合的見直しを実施する」と賃下げ勧告通りの閣議決定を行った。
 このように今回の「総合見直し」による新たな賃下げは、政府による自作自演であり、国家公務員労働者の権利を踏みにじり、労働条件を一方的に不利益変更する政府とそれに応じた人事院の姿勢に厳重に抗議する。
 
 また、閣議決定では「退職手当制度については、給与制度の総合的見直しの影響を踏まえ、現行の支給水準の範囲内で、職務の貢献度をより的確に反映させるよう、必要な改正を行う」ことを盛り込み、退職手当法「改正」案を国会に提出した。しかしこれは、「給与構造改革」の現給保障を一方的に打ち切った政府に対して、最低限、不当な賃下げによっても退職手当の支給水準が確保されるよう必要な措置を求めてきた私たちの要求を逆手にとって、高級官僚優遇の退職手当調整額のみを積み増しするもので、結果として、地方勤務職員の多くが「総合見直し」によって退職手当の支給水準までもが引き下げられることとなる。
 退職手当は、賃金の後払いであり、重要な労働条件である。それにもかかわらず、交渉・協議も尽くさず、不利益変更となる退職手当制度の「見直し」を強行する政府の姿勢は、国家公務員労働者の権利をないがしろにするものであり、容認できない。
 
 閣議決定では、定員について「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」(7月25日閣議決定)による新たな定員合理化計画に沿って「厳格に管理を行う」ことも盛り込んだ。「総合見直し」や寒冷地手当の改悪が実施された場合、多数の地方勤務職員の賃下げが強行される。それに加えて、さらなる定員削減は、行政機関の機能を脆弱にし、国民の権利保障機能の低下を招き、災害対応など懸命に第一線職場を支える職員にむち打つものである。
 いま政府がなすべきは、職務に応じた処遇改善と行政需要にみあった定員の大幅増員による体制確保、それらによる公務・公共サービス機能の向上である。
 
 国公労連は、先述の要求にもとづく政府・内閣人事局への追及を強め、公務員制度改革を所掌する内閣人事局として、勧告の取り扱いについて、公務員制度の趣旨に則った公正な判断を求めてきた。しかし、勧告制度尊重という立場を繰り返し述べるにとどまり、十分な説明責任を果たさなかった。
 その点で、引き続く国会段階で、給与法「改正」案や退職手当法「改正」案の矛盾や問題点を追及するとりくみが重要である。
 したがって、国会闘争を強化するとともに、「総合見直し」は全国知事会等が「官民を通じて地域間格差が拡大することとなりかねない」との懸念を表明しているように、地方公務員や地域の民間賃金などに影響して地域経済を冷え込ませ、「地方創生」政策とも相容れないものであることを明らかにして、職場・地域から共同を広げるとりくみに全力をあげる。
 また、今回の閣議決定もうけて、都道府県人事委員会の勧告やそれをふまえた自治体での賃金確定闘争や、独立行政法人をはじめとする勧告準拠の機関での賃金交渉も本格的に展開される。国準拠の押しつけに反対する各労組のたたかいに結集した地域からのとりくみを強化する。
 これらのたたかいや「公務員賃下げ違憲訴訟」のたたかいを通じて、理不尽な賃下げを食い止め、すべての労働者の賃上げの気運を高め、賃上げで景気回復をめざす来春闘にむけたたたかいに結集する。
 
以 上