闘争ニュース第29号 たたかいの道理を確信に、控訴審での勝利に向けて奮闘しよう

【とりくみ:公務員賃下げ違憲訴訟】2014-10-31
たたかいの道理を確信に、控訴審での勝利に向けて奮闘しよう
 
 2012年5月25日に提訴から約2年半。「公務員賃下げ違憲訴訟」は10月30日に判決日をむかえました。判決言い渡しに先立ち、14時から東京地裁前行動を実施しました。15時からの判決言い渡しは、人事院勧告を無視した給与減額について、憲法28条には違反しないとして合憲と判示し、国公労連との誠実交渉義務違反も認定せず、原告らの請求を全て棄却する不当判決でした。(国公労連速報No.3111 2014年10月30日)
 続いて開催した報告集会では、弁護団より判決概要について報告がありましたが、国側の主張を正当化するための内容であることが指摘されました。引き続き控訴審での裁判勝利に向けて、原告団・弁護団ともに全力をあげてたたかう決意をかためあいました。
 
◎判決要旨および全文、闘争本部・弁護団声明を国公労連ホームページにアップしました。また、記者会見動画を“youtube”にアップしていますのでご覧下さい。(国公労連ホームページからもリンクしています)
 
裁判所は正しい憲法判断をおこなえ
 ~東京地裁前行動~
 
 14時からの東京地裁前行動には、全労連、公務労組連絡会、全教、自治労連、全大教、医労連、生協労連、通信労組、郵政ユニオン、特殊法人労連、東京地評、航空連、農民連、建設首都圏共闘など支援の団体を含め200名が参加しました。
 主催者を代表してあいさつした国公労連の宮垣中央執行委員長は、「東日本大震災の復興財源の確保を理由にして政府は、私たち公務員労働者の権利を侵害し、生活設計を狂わしてまで行った賃下げに高度の必要性があったのか。人事院勧告を無視してまで給与減額を強行しておきながら、支払い能力ある企業に対して、その総額をはるかに上回る減税を行っている。古久保裁判長は、毅然として正しい憲法判断を行うべき」と強く訴えました。
 違憲訴訟弁護団の尾林弁護士は、「すべての労働者のために労働基本権を保障した憲法28条に違反しないためには代償措置がなければならないと最高裁が判示しているのに、それを無視したなら法律家としての資質がないことになる。公務員バッシングは、大企業を免罪し、弱い立場の国民を守る公務員=全体の奉仕者への攻撃だ。憲法の歴史に残る判決を勝ち取るとともに、全国津々浦々で働く国公労働者が、民間労働者と国民と連帯して攻撃を跳ね返そう」と呼びかけました。
 激励に駆けつけた全労連の井上事務局長は、「憲法無視する安倍政権の暴走にストップをかけ、公務員バッシングがなくなるまで地域・官民一体で最後まで奮闘しよう」と訴え、全大教の長山書記長は、「私たちは国公労連に勇気づけられて、国立大学法人と独立行政法人を相手に一方的に減額された賃金の請求訴訟をたたかっている。国民の教育を受ける権利を守るためにも労使自治と労働条件改善は重要だ。労働基本権が保障されるよう、ともにたたかおう」と連帯のエールを送りました。
 決意表明に立った国土交通労組の安附原告(写真左)は、「東日本大震災のとき、空の安全を守り、一刻も早く復旧するため懸命に働いてきた。労働基本権が大切だと職場に広げていくとともに、低賃金に苦しむ全国の労働者のために奮闘する」と述べました。
 続いて、全厚生の田口原告は、「国民の人権侵害の法律に胸を痛めながら行政を遂行している。憲法違反の賃下げは断じて許せない。裁判所は憲法にもとづいた公正な判断をしてほしい」と訴えました。
 行動の最後、国公労連・千葉中央執行委員のリードで、裁判所に対して「東京地裁は公正な判決を下せ」「裁判所は政府の暴挙を許すな」「労働基本権を回復しよう」とシュプレヒコールを行い、参加者全員で原告団を送り出しました。
 
不当判決 人勧無視の賃下げを「合憲」と判断
 
 裁判所前で判決の第一報を待っていた国公労連・各単組や支援に駆けつけた各団体の仲間は、法廷から走り出してきた山添弁護士と宮内原告(国土交通労組)の掲げる「不当判決」「違憲認めず」の幕を見るや、「不当判決糾弾」「裁判所は政府の言いなりになるな」「憲法違反の賃下げは認めないぞ」「我々は勝利するまでたたかうぞ」と怒りを込めてシュプレヒコール。
 16時からは、宮垣委員長、松木原告(全労働)、岡村弁護団長、加藤弁護士らが出席して司法記者クラブで記者発表を行いました。
 また、判決を受けて、国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部と弁護団は、「控訴して逆転勝訴をかちとる。全ての労働者の権利擁護、賃上げと安定した雇用の確保など、憲法にもとづく基本的人権の保障をめさし、いっそう奮闘する」との声明を発表しました。
 
裁判勝利へ全力をあげてたたかおう
 ~報告集会~
 
 主催者あいさつした国公労連の鎌田書記長は、「激しい公務員バッシングのなか、全国の皆さんの奮闘や公務・民間労組から多くのご支援・ご協力をいただいた。判決の内容はともかく、不当な賃下げを2年で終了させ、組織強化を含めた少なくない成果をこのたたかいで得ることができた」と謝辞を述べたうえで、「このたたかいは、私たちの権利を守ると同時に理不尽に虐げられてたたかっている多くの労働者のたたかいの延長線上にある。国公労連がめざす誰もが安心して働ける社会の実現のためにもこの一つ一つのたたかいで実を結んでいくことが非常に重要。たたかいの道理は我々の方にあることを確信にして引き続き裁判勝利に向けて全力をあげる」と述べました。
 弁護団を代表して小部弁護士より判決概要を報告しました。はじめに、「人事院勧告を経ずに国会が一方的に団体交渉もせずに立法したことが憲法に違反するか否かが最大の争点」と述べたうえで、今回の判決について、「最高裁判所が全農林警職法事件で示した違憲の枠組みさえ無視し、勤務条件法定主義・財政指針に基づく立法裁量ということで国会の裁量権を広範に認めた判決」として、「『労働基本権が奪われた以上、国会が代償措置である人事院を無視してよいのか』という私たちの主張に対して、国側がずっと主張してきた『人事院勧告に拘束力はないという立法裁量論』を鵜呑みにしたもの」と指摘しました。
 そのうえで、「立法裁量はあるとしても、『①当該立法に必要性がなく、または②人事院勧告制度がその本来の機能を果たすことができないと評価すべき不合理な立法がされた場合には、立法府の裁量を超えるものとして当該法律が憲法28条に違反する場合があり得る』と判決に明記したことは私たちのたたかいによるもの。しかし、人事院勧告制度が無視され、国会が勧告とは関係なく大きく賃下げしたことを容認しており、極めて例外的な時にだけ違憲としている点は私たちの考え方と異なっている」と述べました。【要旨P6(エ)】
 続いて、今回のケースが上記①または②の条件に該当するか否かについて「国側の主張をほとんど論証もなく鵜呑みにし、立法の必要性を判断するに際して『日本は財政難だった』、『東日本でお金が必要だった』という抽象的一般的な判断でこの①の条件を安直にクリアさせた。これはは、民間では通用せず、例えば、役員の報酬を減らせしてできなかったのか、他の経費を減らせなかったのかを考え、最後に人件費を減らすことになる。つまり、回避努力をしたのかが問われ、そのシミュレーションが求められるが、今回の判決は政府の予算だけ見て、そういったシミュレーションもせずに安直な判断をしている」と指摘し、立法内容の合理性については、「原告陳述書と本人尋問によって、『大きな減額幅は、国家公務員に予想外の打撃を与え、個々の国家公務員においては著しい打撃を与える場合もあり得る』と判決に明記されている。それにも関わらず、『本件の給与減額支給措置にいては、給料の絶対額の少ない若年層に対して減額率を逓減するなどの配慮を加えている』、『平均7.8%の減額率と同様、もしくはそれを超えて減額された地方公務員の例もある』、『昭和57年から昭和59年にかけては国会が人事院勧告を4.58%ないし3.07%減じて給与改定した例(※賃上げ勧告の上げ幅を下げたもの〔凍結、値切り〕で今回とは状況が異なる)』などとして賃下げを容認し、『2年間に限定されたものであって、長期間でも恒久的なものでもない』として一時的だから良いとしている。そして、『政府としても本件給与減額措置を極めて異例の措置と位置づけ、今後とも人事院勧告を尊重していく姿勢を示し、国会議員らも同様の認識を示していた』とし、②の条件にはあたらないと言っている。これは、憲法違反になる場合もありうると認定していながらも、国の主張を鵜呑みにし、事実を見ていない判決である」と厳しく指摘しました。【要旨P7(1)(2)】
 次に国公労連との団体交渉について、「判決では、『政府と国公労連との交渉結果を見ると、結局のところ、両者間において給与臨時特例法案の実質的内容について協議が行われることはなく、交渉を終了した』として、まともな交渉は行われていないということを認定しているが、最終的に国会が法律で決めることだから労使交渉の義務が無いとまでは言わないがそれが十分に果たせなかったからといって直ちにその法律が無効となることはないとしている。民間では不誠実交渉としてそんな交渉に基づく結論は受け入れられないこともあり得る。ところが判決では、『団体交渉の義務が無いとまでは言わないけれども・・・直ちに問題になるわけではない』と筋の通らない理屈になっている」と指摘しました。【要旨P8 3】
 
 続いて、各弁護士から、「今回の賃下げはILO条約にも違反するという主張をしてきたが、判決はわずか1ページそこそこの言及しかしていない。今までも国家公務員の基本権の制約、特に団体交渉権の制約が争われた裁判例では裁判所は同じ対応をしていて、今回も従前の判決から一歩も出ない判断内容となっている」、「自立的労使関係を作って人事院を無くしてしまおうという当時の民主党の考え方からも、人事院勧告制度を将来にわたって尊重するという部分と矛盾する」、「『公務員組合に団体交渉権が原則としてある』と言った以上、会議体である国会が自由に国家公務員の労働条件を引き下げるとことがあってはならないというところまで進まざるをえないのではないか」など判決要旨への指摘、原告団・弁護団ともにたたかっていく決意が述べられました。
 
 激励に駆けつけた、全労連・小田川議長は、「今回の判決が、基本的人権など憲法に全く踏み込まず、素通りしているという点で極めて不当である。国公労連の判断をできるだけ尊重すると同時に全労連としても引き続き皆さんと一緒にたたかっていく」と連帯のあいさつを述べました。続いて、原告団を代表して2名が決意表明し、全労働・黒岩原告は、「今日は通過点に過ぎず、まだまだ長いたたかいの道のりがまっている。労働基本権の回復にむけた足がかりにしたい」、全医労・佐藤原告は、「高裁でのたたかいになるが、自らの職場実態も広く市民に訴えて世論を更に大きくつくりあげて、たたかい抜いていく」と訴えました。
 集会の最後、記者会見を終えて到着した国公労連・宮垣中央執行委員長が「高裁での勝利にむけて、今日をスタートに奮闘していこう」と呼びかけて、団結ガンバロウで集会を閉じました。
 
以上