国公労新聞2014年11月10日号(第1427号)

【データ・資料:国公労新聞】2014-11-10
◆人勧無視の賃下げを 合憲 
 「公務員賃下げ違憲訴訟」 ― 東京地裁が不当判決
 逆転勝訴めざし控訴へ
 
 2012年5月25日の提訴から約2年半。10月30日、「公務員賃下げ違憲訴訟」の判決言い渡しが東京地裁でありました。103号法廷が原告席、傍聴席とも満席に埋め尽くされる中、15時からの判決言い渡しで、古久保正人裁判長は「1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする」と主文のみを読み上げました。「労働基本権を制約し、その代償措置である人事院勧告に基づかず、賃下げを一方的に強行したことは憲法28条に反する」等の原告・国公労連の主張を一顧だにせず、被告・国の暴挙を「合憲」と判示しました。判決を受けて、国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部と弁護団は、下記の声明を発表しました。国公労連は10月31日に開催した中央闘争委員会で、控訴してたたかうことを決定しました。
 
 
 裁判所前で判決の第一報を待っていた国公労連・各単組や支援に駆けつけた各団体の仲間は、法廷から走り出してきた山添弁護士と宮内原告(国土交通労組)の掲げる「不当判決」「違憲認めず」の幕を見るや、「不当判決糾弾」「裁判所は政府の言いなりになるな」「憲法違反の賃下げは認めないぞ」「我々は勝利するまでたたかうぞ」と怒りを込めてシュプレヒコール。
 16時からは、宮垣委員長、松木原告(全労働)、岡村弁護団長、加藤弁護士らが出席して記者発表を行いました。
 
◇道理を確信に裁判勝利に全力
 また、同時並行で行われた報告集会で主催者あいさつした国公労連の鎌田書記長は、「激しい公務員バッシングのなか、全国の皆さんの奮闘や公務・民間労組から多くのご支援・ご協力をいただいた。判決の内容はともかく、不当な賃下げを2年で終了させ、組織強化を含め少なくない成果をこのたたかいで得ることができた」と謝辞を述べたうえで、「このたたかいは、私たちの権利を守ると同時に理不尽に虐げられている多くの労働者のたたかいの延長線上にある。道理は我々にあることを確信に、引き続き裁判勝利に向けて全力をあげよう」と訴えました。
 弁護団からは、判決の概要について報告があり、国側の主張を正当化するための内容であることが指摘されました。
 原告団を代表して2人が決意表明。黒岩原告(全労働)は、「判決を言い渡された時、『そんな言い方あるのかよ』と文句を言いたくなった。国家公務員の身分と人権が軽く見られた判決だ。『税金泥棒』とバッシングを受けるが、泥棒は政府の方だ。給料と人権を取り戻し、労働基本権回復への足がかりとなるたたかいとしたい」、佐藤原告(全医労)は、「自らの職場実態も広く市民に訴えて。世論をつくりあげて、高裁での裁判をたたかい抜いていく」と語りました。
 最後に、記者会見を終えて到着した国公労連・宮垣中央執行委員長が「高裁での勝利にむけて、今日をスタートに奮闘していこう」と呼びかけ、団結ガンバロウで集会を閉じました。
 
 
◆「公務員賃下げ違憲訴訟」の不当判決を弾劾する声明
 
 本日、東京地裁民事19部(古久保正人裁判長)は、国家公務員の労働基本権制約の代償措置たる人事院勧告をも無視した給与減額について、憲法28条には違反しないとして合憲と判示し、国公労連との誠実交渉義務違反も認定せず、原告らの請求を全て棄却する不当判決を言い渡した。我々は、この最悪の不当判決を満腔の怒りを込めて弾劾する。
 
 「給与改定・臨時特例法」に基づき、2012年4月分の給与から、歴史上初めて人事院勧告によらない国家公務員給与の平均7・8%(一時金は一律9・77%)もの減額が実施された。2年間の給与減額は一人平均100万円程度にも上る。
 これに対し、2012年5月25日から、日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)と組合員370名が、差額賃金の支払いと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 
 国家公務員は、労働基本権を制約され、争議権と労働協約締結権が剥奪されている。そのことが、全ての勤労者に労働基本権を保障した憲法28条に違反しないためには、代償措置がなければならない、と最高裁は全農林警職法事件で判示している。その代償措置が、給与などの労働条件については人事院勧告制度であった。
 そうである以上、この人事院勧告に基づかずに、労働基本権を制約された国家公務員の給与を減額することは、労働基本権剥奪の合憲性の前提が崩れるから違憲である。
 
 判決は、この最高裁が示した枠さえ無視し、「人事院勧告には拘束力がない。他方で、勤務条件法定主義、財政民主主義に基づき立法裁量がある」との国の主張を受け入れ、「我が国の厳しい財政事情」と「東日本大震災に対処する必要性」があるとの立法理由を鵜呑みにして、合憲判断をなした点で重大な誤りを犯したものである。
 さらに、ILOが本件に強い関心を示しているにもかかわらず、判決は本件給与減額が、ILO87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)、98号条約(団結権及び団体交渉権条約)に違反しないとした。
 
 そのうえ、判決は人事院勧告を経ない給与減額について、国家公務員の労働組合との交渉の義務を極めて限定した。そればかりか、政府と国公労連との実質的な協議がなされていないことを認めながら、形式的な資料の提示と交渉の回数を取り上げて、原告らの主張をことごとく退けた。
 判決は、憲法・法律の解釈と事実認定のいずれについても誤ったものである。
 
 国公労連と原告らは、この間支援いただいた多くの労働者・国民の皆さんに心より感謝の意を表する。そして、あくまで給与減額措置の違憲無効認定と差額賃金、損害賠償の支払いを求めて控訴し、控訴審において必ず逆転勝訴判決を勝ち取る決意である。
 同時に、全ての労働者の権利擁護、賃上げと安定した雇用の確保など、憲法にもとづく基本的人権の保障をめざし、いっそう奮闘する決意を表明するものである。
 
2014年10月30日
 
国公労連「公務員賃下げ違憲訴訟」闘争本部
同弁護団
 
 
◆公務員賃下げ違憲訴訟
東京地裁判決の概要
 
◇争点1
 給与改定・臨時特例法は、人事院勧告に基づいていないことにより憲法28条等に違反するか
 
 国家公務員の労働基本権を制約することに見合う代償措置としては、人事院勧告制度のほかに、法律により国家公務員の身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件について周到詳密な規定が設けられているところであるが、人事院勧告制度が、国家公務員の労働基本権の代償措置として中心的かつ重要なものであるといえる。
 また…国家公務員の給与水準を決定するシステムにおいては、その増減の基準は客観的なものであることが望ましい。
 これらのことからすれば、国会は、国家公務員の給与決定において、人事院勧告を重く受け止めこれを十分に尊重すべきことが求められているといえる。そして、人事院が採用してきた民間準拠原則は、国家公務員の給与水準の増減決定においてその客観性を支えるものといえる。
 
 他方…人事院勧告は、文字どおり「勧告」として制度設計されており,人事院勧告によって国会を当然に法的に拘束できないことは明らかであり、国会は、人事院勧告どおりの立法をすることが義務づけられているとはいえない。
 実際上も…人事院勧告どおりに給与が改定されたことが多いものの、実施が見送られたり、勧告された率から減じた率による給与改定が実施されたこともある。
 
 したがって、国家公務員の給与を定めるに当たり、憲法が許容する範囲内で具体的にどのような内容のものを定めるかについては、立法府に裁量が与えられているといえる。
 また、国会による国家公務員の給与決定手続に関して国公法にいう「社会一般の情勢」の意味は、民間労働法制やそれに基づく実際の民間の労働関係における労働条件の状況を重要な要素とするが、それに限定されると解することは相当ではなく、広く社会情勢や経済情勢を含みうるものと解するのが相当である。
 
 以上からすれば、国会が、国家公務員について、人事院勧告や民間準拠原則に基づかず,給与減額支給措置の立法をすることが一義的に許されていないと解することはできない。
 ただし、人事院勧告が国家公務員の労働基本権制約の代償措置としては中心的かつ重要なものであること、民間準拠原則が国家公務員の給与水準の増減決定において客観性を支えるものであることからすれば、国会は、国家公務員について給与減額支給措置を立法する場合、当該立法について必要性があり、かつ、労働基本権の代償措置として中心的かつ重要なものとして設けられた人事院勧告制度が本来の機能を果たすという点に留意すべきであって、当該立法において必要性がなく、又は、人事院勧告制度がその本来の機能を果たすことができないと評価すべき不合理な立法がされた場合には、立法府の裁量を超えるものとして当該法律が憲法28条に違反する場合があり得るというべきである。
 そして、その判断に当たっては、給与減額支給措置を必要とする理由、減額の期間及び程度等の当該措置の内容等の事情を考慮すべきである。
 
 
◇争点2
 給与改定・臨時特例法の立法の必要性
 
 給与改定・臨時特例法が可決・成立した当時、国の財政事情は極めて厳しい状況にあったことに加え、3月11日に東日本大震災が発生し、その復旧・復興に当たって、政府として巨額の財源確保が必要となり、公務員人件費を含め様々な歳出削減・歳入確保のための措置を講じる必要が生じていたといえる。
 
 そもそも、立法の必要性は、当該立法が成立した時点を基準として判断されるべきものであり、給与改定・臨時特例法が立法された遠因として民主党が掲げたマニュフェストがあり、それが厳しい財政事情のみを理由としていたとしても、そのことは、給与改定・臨時特例法の立法の必要性を左右すべき事情とはいえない。
 
 他に財源確保措置があることはそのとおりであるが、それぞれに必要性があるといえるのであって、他の措置の存在をもって、直ちに給与減額支給措置の必要性が否定されるものではない。
 
 確かに、国家公務員の給与を減額しても年間約2900億円の歳出削減にしかならず、平成24年度末の公債発行残高705兆円に遠く及ばないことは明らかであり、今回の給与減額支給措置が直ちに被告主張の厳しい財政事情の改善をもたらすものとは考え難い。
 しかし、政府(国会)としては、厳しい財政事情を改善するために様々な措置をとる必要があるのであって、その様々な措置の取り方について議論はあるにしても、その一つとしての給与減額支給措置をとるとする判断が不合理なものとはいえない。
 もとより、厳しい財政事情が直ちに解消するとは考え難い現状において、そのことのみをもって今回のような大幅な給与減額支給措置の必要性が当然に満たされるかどうかについては議論があり得るところではあるが、今回給与減額支給措置がとられた理由としては、厳しい財政事情に加えて、東日本大震災が発生し、短期的にみて復興予算確保の必要性が生じた状況が存在するのであり、この事情を併せ考えれば、本件給与減額支給措置を実施することが、そのことのみによって直ちに厳しい財政事情を有意に改善することにならないからといって、その必要性が否定されるものではない。
 
 給与改定・臨時特例法は、国の厳しい財政事情に加えて東日本大震災への対処の必要性に鑑み立法されたものであるところ、厳しい財政事情に加えて東日本大震災への対処の必要性が存在することにおいて、同法の必要性は否定できず、この点に関する国会の判断を不合理なものとはいえない。
 したがって、給与改定・臨時特例法が必要性が認められないにもかかわらず立法されたものということはできない。
 
 
◇争点3
 人事院勧告制度が本来の機能を果たすことができないと評価すべき不合理な立法といえるか
 
 給与改定・臨時特例法に基づく給与減額支給措置と本件人事院勧告の内容とを比較するならば、上記支給措置の内容が、2年間にわたり、減額率が本件人事院勧告の内容を大きく超える平均7・8%であるという点において、本件人事院勧告の内容とは乖離している。そして、その大きな減額幅は、国家公務員に予想外の打撃を与え、個々の国家公務員においては、著しい打撃を与える場合もあり得る。
 
 しかし、…立法の必要性は否定されない。
 また、本件給与減額支給措置においては、給与の絶対額の少ない若年層に対して減額率を低減するなどの配慮を加えている。
 国家公務員においては異例の減額率とはいえ、上記減額率と同様若しくはそれを超える減額率で減額された地方公務員の例も存する。
 また、昭和57年から同59年にかけて、国会が人事院勧告を4・58%ないし3・07%減じて給与改定を実施した例も存する。
 (昭和57年に人事院は4・58%の引き上げ勧告をしたが、その勧告は、内閣、国会により、財政非常事態のみを理由に不実施とされたところ、この点について、最高裁平成12年判決は、「国家公務員の労働基本権の制約に対する代償措置が本来の機能を果たしていなかったといえない。」旨判示している。
 もとより、昭和57年は引き上げ勧告に対する不実施であり、今回は、減額の人事院勧告を実施した上でさらに減額することを内容とする立法であるから、この点に本質的な相違があるとの考え方もあり得るが、この点については、昭和57年当時はそれまで増額勧告、実施が長く継続していた時期であり、一方、今回はそれまで減額勧告又は据え置きが長く継続していた時期であるところ、これらの経過の背景となる経済事情の相違も考慮されるべきである。)
 そして、本件の給与減額支給措置は、2年間に限定されたものであって、長期間でも恒久的なものでもない。
 また、人事院は設立以来数十年という長い期間にわたって極めて重要な機能を果たしてきており、今後も果たすことが期待されているし、政府としても本件給与減額支給措置を極めて異例の措置と位置づけ、今後とも人事院勧告を尊重している姿勢を示し、また、給与改定・臨時特例法の審議において、同法を提出した国会議員らも同様の認識を示していた。
 これらの事情からすれば、給与減額支給措置が恒久的、あるいは長期間にわたるものや、減額率が著しく高いものであればともかく、今回、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性のもと、2年間という限定された期間の臨時的な措置として、平均7・8%という減額率で実施された本件給与減額支給措置について、人事院勧告制度がその本来の機能を果たすことができなくなる内容であると評価することは相当ではない。
 
 原告らの主張する準則は、そもそも、国家公務員の給与減額支給措置の場合に当てはまるとはいえず、民間労働者に適用される「就業規則による労働条件の不利益変更法理」と同様の要件が満たされなければならないことを前提とする原告らの主張は採用できない。
 
 
◇争点4
 団体交渉について違憲・違法な点が認められるか、また、それによって給与改定・臨時特例法が憲法28条に違反するか
 
 給与の改定について、国家公務員について団体交渉権が認められ、政府として団体交渉に応じる義務があるとしても、果たされるべき団体交渉義務の内容としては、勤務条件法定主義の観点から一定の限界があるといわざるを得ない。
 結局のところ、両者間において給与臨時特例法の実質的内容について協議が行われることはなく、交渉を終了した。
 このような経過を辿った主な原因は、給与臨時特例法が違憲であるかどうかという点に関して両者の間に基本的な見解の相違があることによると考えられるが、この点に関する政府の見解については前記のとおり不相当なものとはいえない。
 また、合計6回の交渉がされ、国公労連の要求・主張に対して政府は一応資料を提示するなどして回答・説明を行っていることを考慮すると、政府の上記交渉における対応については、議題の内容につき実質的検討に入ろうとしない交渉態度であったとか、合意達成の意思のないことを当初から明確にした交渉態度をとったとはいえない。
 そして、…勤務条件法定主義の観点から一定の限度がある団体交渉義務の範囲内では、政府の対応も止むを得ないものであったといわざるを得ず、原告国公労連の団体交渉権を侵害する違憲、違法な行為があったと評価することは相当ではない。
 
 職員団体の交渉と併行して、本件決裁文書の起案を行ったこと自体、止むを得ないものと思われる。
 したがって、本件決裁文書の作成を先行させていたからといって、政府が国公労連との間で交渉において合意を得る努力をする意思がなかったといえるものではなく、本件決裁文書の存在をもって、政府が国公労連と本件給与減額支給措置について合意を得る努力をする意思がなかったとまで認めることはできない。
 
 団体交渉時において、片山総務大臣が自律的労使関係制度の考えを有していたことを疑うべき事情はなく、同大臣が虚偽の説明をしたり、その制度構築の可能性がないにもかかわらずそのような説明をしたと認めるべき証拠もない。
 
 現行法上、国家公務員の勤務条件に関する法案の提出権を内閣に独占させることを認める規定は見当たらない。
 また、給与改定・臨時特例法の内容については一定の団体交渉がなされたと評価できる。
 給与臨時特例法案と給与改定・臨時特例法案が前提条件が異なる異質の法案であるということは相当ではなく、原告らの主張は採用できない。
 
 
◇争点5
 給与減額支給措置がILO第87号条約、第98号条約に違反するか
 
 ILO条約87号条約及びILO第98号条約は、いずれも国家公務員の団体交渉権を保障したものではなく、内閣総理大臣が人事院勧告に基づく給与法案を国会に提出しないことや国会議員が給与改定・臨時特例法案を可決・成立させた行為が、これらの条約に反するものといえず、原告らの主張には理由がない。
 
 
◇争点6
 個人原告らの国家賠償請求
 
 国会議員の立法行為は、立法の内容又は手続が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うような場合や、立法の内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合など、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国賠法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものというべきである。
 
 給与改定・臨時特例法に違憲・違法な点は認められず…給与改定・臨時特例法の制定に関して、原告国公労連の団体交渉権が侵害されたと認めることはできないから、原告国公労連の主張には理由がない。
 
 
◆【宮崎県国公】
 かがやけ憲法キャラバン
 「公務員賃金や公務の民間開放」などで自治体懇談
 
 【宮崎県国公発】宮崎県国公では、10月14日から15日にかけて実施した「かがやけ憲法キャラバン」宮崎コースに、「総対話MAP運動」を付加して、公務員賃金問題、ハローワークの民間開放阻止等を主題とする自治体懇談を行いました。自治体からは、財源不足や定員削減、給与削減による職員の士気低下の問題を抱えていることの発言があり、国公側からは、安倍政権の「戦争する国づくりの危険性や、ハローワーク民間開放が地域経済を疲弊させるだけのものであることを訴えました。14日夕方には、宮崎市街頭に9団体21人が参加して、街頭宣伝行動を実施しました。
 
【延岡市】 延岡市では、高浜総務部長が国の地方再生について「削られるものも多くプラスになるか分からない」。4月からの2%削減に「賃金がまた下がれば生活設計を考えなければならない。きついなと思っている」と本音をのぞかせました。全労連の斎藤常任幹事からは「職責に見合った賃金を保障することが地方再生につながるのではないか」と要望しました。
【門川町】 門川町は、「門川町を元気に」を合言葉に、人口は横ばいで規模は小さいが、小さいからこそ目が届くと合併せずに頑張っている町です。木代総務課長は、消費税増税について「取りやすいところから取る手法に一人ひとりが怒りを持たないといけない」と不公平税制への不満もちらつかせました。
【高鍋町】 高鍋町では、町長はスケジュールが合わずに残念がっていた、と川野副町長に応対頂きました。「地方行革で職員をずいぶん減らした。メンタル面で気を使っている」とのこと。賃金を上げなければ士気も上がらないのではと問いかけましたが、「私も役場の職員上がりで組合もやっていたが、立場が違えばそうもいかない」と、人勧準拠の構えは崩しませんでした。一方、公契約条例のメリットや住宅リフォーム事業の効果など貴重な話を伺ったとし、検討してみたいとしました。
【新富町】 日米合同演習を控えた新富町では、壱岐副町長が、集団的白衛権の行使を容認する意法解釈について「本来、憲法改正によってなされるべきもの」としました。「地方再生」について、中身は地方切り捨てではないかと疑間を呈すと「来年4月からの2%カットは、地域手当の付かない新富町としては行革にも頑張っているのに不本意だ。 賃金が上がらないと消費も伸びない」と不満をあらわにしました。
 
 
◆全労連が道州制シンポジウム
「地方創生」に対抗する道探る
 
 全労連は10月25日、東京都内で「道州制を許さず、憲法にもとづく国と自治体の役割を考えるシンポジウム」を開催し、公務関係労組、市民団体、研究者など75人が参加しました。
 基調講演では、岡田知弘氏(京都大学教授)が「『地方消滅』ショックドクトリンと新たな道州制導入論~自治体消滅論に基づく安倍流『地方創生』に対抗する道~」と題する報告を行いました。
 
◇持続可能な地域づくりを
 岡田氏は、「安倍政権が「『自治体消滅』の脅迫と『地方創生予算』を餌に道州制の前提となる『地方中枢拠点都市圏』や『定住都市圏』への集約・統合を進めているが、その政策は根本的に矛盾する。農業への企業参入やTPPは、地方都市・農山村の経済を破壊し、グローバル企業が『稼ぐ力』を強化するための労働改革は、少子化対策と相反している」と指摘。「『小さくても輝く自治体フォーラム』に参加する小規模自治体では、若者が安心して働き、子どもを生み、生活できるよう定住政策に力を入れて人口を増やしている実態を紹介し、地域内経済循環と実践的住民自治のとりくみによる持続可能な地域づくりをすすめることが重要だ」と述べました。
 シンポジウムでは、永山利和氏(行財政総合研究所・理事長)の進行で岡田氏を含む3人のシンポジストにより意見が交わされました。
 髙橋彦芳氏(長野県栄村・前村長)は、自ら取り組んだ「小さくとも輝く自治体フォーラム」や「実践的住民自治」の経験を報告。「政府や財界が進める道州制は、小規模自治体を解体して合理化を図り、グローバル市場主義のために奉仕させるもの。地方創生は、特区による規制緩和で資本や企業の参入を後押しするもので、農地制度を破壊し、家族農業を消滅しかねない」と語りました。
 尾林芳匡氏(自由法曹団・弁護士)は、「まち・ひと・しごと創生法案」の矛盾点について指摘。「政府や財界の長年の懸案であった道州制基本法案を押しとどめつつある。そういう運動を私たちは展開してきたことを確信にするべき」と訴えました。
 フロアからの発言では、各団体から農政改革、公共インフラの老朽化、国土のグランドデザイン、職業安定行政、公務の市場化・民営化などの問題について報告されました。
 最後に、全労連公務部会の猿橋均代表委員が「アベノミクス、新自由主義に様々な矛盾が浮き彫りになってきている。各単産でも公務の役割を発揮する取り組みを進め、住民共同を広げて、いっせい地方選挙で安倍政権に審判をくだそう」と閉会のあいさつを述べ、シンポジウムを締めくくりました。
 
 
◆列島だより
 
【関東】
◇神奈川国公が大会
 
 神奈川国公大会が10月18日に開催されました。
 大会では、地域での公務と民間の協同にも積極的に取り組み、その中心を担う奮闘が報告されました。
 代議員からの発言では、各職場が多くの新規採用者を迎えていることから、例年以上に力を入れた組織拡大の取り組みが報告され、教訓や反省点が出されています。
 国立病院の職場からは、当局が組合対策を強化するなか、組合員との対話を積極的に進め、要求を実現していく、元気で期待される組合活動の教訓が出されました。
 各参加者も、組合の原点を見つめなおし、奮闘する決意を持ち帰ることができた有意義な大会となりました。
 
 
【中部】
◇7県の地元選出国会議員に要請書
 
 「給与の総合的見直し」による給与法改悪などを許さないため、中部ブロック国公は10月20日、中部7県の地元選出国会議員全員(計91人)に対して、要請書を郵送しました。
 国公労連が作成した産業連関表での試算に加え、各県での地域手当の増減を示して給与格差が更に拡大すること、また最低賃金も(平成17年に地域手当が創設された以降)較差が拡大していること、そして今年の人事院勧告には全国知事会・全国市長会・全国町村会が共同で声明を出して懸念を表明していることなどを強調しました。
 平均2%引き下げが全職員に及ぶ富山・石川・福井の各県国公も、それぞれ同様の要請書を送付しました。
 
 
【近畿】
◇憲法集会で全厚生闘争団が署名行動
 
 11月3日、京都・円山音楽堂において、憲法集会が行われました。
 集会では、大阪大大学院の木戸衛一准教授から「ナチス独裁前夜のドイツと今の日本」と題した講演があり、「第1次世界大戦は『集団的自衛権』が連鎖したものだ。『積極的平和主義』等の美辞麗句を使っての宣伝は『富国強兵』のはじまりであり、今の日本は危険な状況にある」と分かりやすく語られました。
 また、集会前には全厚生闘争団が裁判所宛「公正・公平な判決を求める要請署名」行動をとりくみました。
 
 
【四国】
◇人事院四国事務局と交渉
 
 四国ブロック国公は10月20日、人事院四国事務局に「2015年度昇格改善要求書」を提出し、級別標準職務表の改善や級別定数の拡大などを求めました。
 どの職場も大幅に業務内容が変化し、より高度な行政サービスが求められるなかで、交渉参加者は「職務・職責や組織の格付けを正当に評価すべき」と厳しく人事院四国事務局を追及しました。
 これに対し、三田事務局長は「行政の最前線で苦労していることは十分理解している。少しでも処遇改善につながるように努めていきたい」と回答しました。
 
 
【沖縄】
◇辺野古新基地建設NO!
 
 辺野古新基地建設反対の集会に8月23日3600人、9月20日5500人が結集し、10月9日にも3800人が沖縄県庁を包囲しました。
 沖縄県国公もそれぞれの集会に参加を行い、集会の成功の一翼を担いました。
 沖縄県内の世論調査でも辺野古新基地は「NO」の声が大勢を占めています。11月16日投票の沖縄県知事選挙は、埋立承認を撤回する知事を誕生させる事が重要です。全国からの支援をお願いします。
 
 
◆社保庁不当解雇撤回裁判(北海道事案)
 第12回口頭弁論
 原告側が7人を証人申請
 
 10月14日、札幌地裁で、高嶋厚志さんの不当解雇撤回を求める裁判の第12回弁論が開かれ、47人が傍聴しました。
 今回の弁論で、原告側は証人として、①藤原伸次氏(当時の社会保険庁総務課)②仙波信行氏(当時の北海道社会保険事務局)③前田好徳氏(高嶋さんの面接官)④細谷光市氏(高嶋さんの面接官)⑤清水美智夫氏(当時の北海道厚生局長)⑥越後敏明氏(元原告)⑦山本潔氏(全厚生労働組合執行委員長)を申請。
 国側は、11月21日までに証人の適否について文書で提出するとしました。次回弁論は12月16日14時で、そこで証人が決定します。
 口頭弁論に国公労連・中本中執と「かがやけ憲法キャラバン」行動中の全労連・小田川議長が駆けつけました。
 裁判後に開かれた報告集会で、小田川全労連議長は「国や厚労省に分限免職の責任がある。政治的背景で公務労働者が『生贄』にされたことは許せない。高嶋さんの勝利に向けて奮闘したい」と述べました。
 中本中執からは、京都のたたかいの報告を受け、「京都で勝って良い流れを作り、各地で勝ち名乗りをあげたい」と訴えました。
 神保弁護士から証人について、国の分限免職回避がいかにずさんであったのかと、高嶋さんへの分限回避が十分されていたのかを明らかにするために申請したことが報告されました。
 
◇神奈川最賃裁判第17回口頭弁論
 10月22日、横浜地裁で神奈川最賃裁判第17回口頭弁論が開かれ、原告14人、傍聴支援者91人の参加で、84席の傍聴席はいっぱいになりました。
 タクシー運転手で2人の子を持つ38歳男性原告が厳しい生活実態を意見陳述し、最賃千円以上とする判決を強く求めました。
 支援に駆けつけた国公労連の宮垣委員長が、「最賃の地域別格差拡大が公務の賃金水準に大きな影響を与えている。全国一律最賃は待ったなし。裁判勝利に頑張ろう!」とエールを送りました。
 
【神奈川最賃裁判とは】
 最賃額と生活保護基準の比較方法にごまかしがあるなどとして、国に最賃の引き上げを求めている集団訴訟。原告団は、神奈川県内の労働者134人。原告側は年内に立証計画書を裁判所に提出。来年、証人尋問が始まり、結審となる見込みです。
 
 
◆団交で自主決着はかろう
 独法労組代表者会議
 
 10月24日、国公労連独立行政法人労働組合代表者会議が国公労連会議室で開かれ、8単組10組織等28人が参加しました。賃金・労働条件の要求について、労使で自主決着をはかることや、「給与制度の総合的見直し」による人勧準拠の賃下げ押し付け阻止など、「秋季年末闘争のとりくみ」を意思統一しました。
 岡部独立行政法人対策委員長は主催者あいさつで、「独法は民間労働者と同等の権利が保障されている。国準拠の労働条件押し付けを許さず、労働条件改善をかちとっている労組もある。『総合的見直し』やむなしでなく、許さないとりくみを強化しよう。交渉・協議を強め、自主決着をはかろう。独法改革では、雇用承継の課題が重要な時期。職場にしっかりした労働組合確立が必要だ。先進的な教訓を持ち帰ってほしい」と述べました。
 笠松独立行政法人対策事務局長が給与法をめぐる情勢をふまえた上で、「独法本来のあるべき姿を見据え、到達点を対策委員会で議論しながら、全体で底上げ・改善をはかり、組織強化しよう」と提案した後、各単組から報告・討論がされました。
 青柳中執がまとめを行い、「意思統一の中身を職場にもちかえり、組合員に伝えよう。一歩でも、半歩でもとりくみを」と呼びかけ、会議を終えました。
 
◇単組報告・討論から
 「国土交通労組は全独法労組で要求書を提出。雇用承継の運動を強化していく」(国土交通労組)
 「非常勤職員の夏休みの獲得は大きな成果。来年にむけて、採用された年からの夏休みを求めている」(国土交通労組・自動車検査労組)
 「賃金要求は、自主決着を求めていく。パーマネント職員の増員を求めている」(全通信・研究機構支部)
 「産総研は調達制度の弾力化の実現、運営費交付金の拡充が課題。工業所有権情報・研修館は特許庁の一部門的な位置にある。労組は制度改悪反対を主張」(全経済)
 「健康栄養研究所と医薬基盤研究所の統合に向け、就業規則や運営規定について不利益変更しないことを求めていく」(全厚生)
 「国立病院機構は来年度から非特定化されるため、組織拡大が課題。交渉ルール、就業規則、非常勤の処遇など詰めていく」(全医労)
 「昇任・昇格では、全員4級を実現し、3種の課長級の女性が増えた」(統計センター労組)
 「7・8%の給与削減されたときに、リフレッシュ休暇を獲得したが、減額が終わってから、日数が削減された」(放射線医学総合研究所労組)
 「公務員宿舎に新人が入れないのは問題。任期付研究員が増えている。パーマネント職員を増やしていきたい」(学研労協)
 
 
◆広島豪雨土砂災害被災地を視察
 8月に広島市安佐南区の斜面にある住宅街が土砂災害に見舞われたことは記憶に新しいことと思います。広島県労連の要請を受け、全国災対連の一員として、10月11日、現地の視察に参加してきました。
 現地では流入土砂等の除去作業も予想以上に進展していたことからボランティア作業自体は中止となりましたが、現状の視察と被災者本人2人からの経験談を聞くことができました。
 お二方からの話はとても生々しくとても短い文章で表すことができませんので割愛しますが、行政が説明した対処策では不安は解消できなかったようでした。
 被災地の方々が一日も早く安心して暮らせるようになることを心より祈念するとともに、それに向けて行政がより一層の努力をしていかなければいけないということを改めて感じた次第です。
 (中執・豊田勝利)
 
 
◆国公一般第12回定期大会
 「新リーフ」活用し組織拡大はかろう
 
 国公一般は10月23日に第12回定期大会を開催し、32人が参加しました。冒頭、東京法律事務所の今泉義竜弁護士が「今、そこにある労働法破壊の危機」と題して講演し、「派遣法改悪案を阻止するため、世論を広げよう」と呼びかけました。
 国公一般は、結成12年目を迎え、①組合員のいのちと生活を守る②働きやすく、やりがいのある職場をつくる③仲間を増やし交流し学びあう―を基本方針に、本省庁前宣伝やブログ「すくらむ」による情報発信、労働相談、団体交渉、学習交流会を実施してきました。
 大会では、この間の国の非常勤職員の制度改善や雇い止め撤回と雇用継続、派遣労働者の要求実現学習会などのとりくみ成果を踏まえ、「新リーフ」を積極的に活用して、国公一般の組織と活動をつよく大きく拡げていくことを確認しました。
 黒田委員長(新)、笠松副委員長(新)、中田書記長(新)、など23人の役員を選任しました。