国による不当解雇を不問にする道理なき判決に抗議する
――社保庁解雇撤回の完全勝利にむけて全力をあげる(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2015-03-26
2015年3月26日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一

 3月25日、大阪地裁は、旧社会保険庁・京都社会保険事務局職員の分限免職処分の取り消しを求めた裁判で、「原告らの請求をいずれも棄却する」という不当な判決を行った。
 判決は、争点となっていた①国家公務員法78条4号(行政組織の改廃による本人の意に反する免職)の要件妥当性、②裁量権(分限回避義務等)の逸脱・濫用、③国賠法上の違法性、の三点についていずれも原告の主張を退け、国による不当解雇を不問にするきわめて不当な道理のないものである。

 そもそも2009年末の社会保険庁の廃止・解体には、道理がない。
 当時、年金未納や年金記録問題など年金制度に対する国民の不信が高まる中で、過剰なバッシングを背景に、政府が「信頼回復」を口実に自らの責任を転嫁して、社会保険庁の廃止・解体へと強引に進めたものである。
 そして、日本年金機構の発足にあたっては、国会で「雇用継承はしない」とか「分限免職すべき」などが議論され、2008年7月には「懲戒処分を受けた職員は年金機構には採用しない」との過剰な閣議決定が行われ、分限免職処分回避の努力が十分実施されないまま、525人もの分限免職処分・不当解雇が強行された。
 そのため、新たに発足した日本年金機構は、業務に精通した職員の大量解雇にともない、それにかわる大量の有期雇用職員で構成する体制のもとで、業務の専門性や安定的な運営が損なわれ、大混乱した。
 そして今日に至っても年金記録の未解決が2,112万件も残されているなど、「国民の信頼を回復する」ことを口実に、熱に浮かされて冷静な議論がないまま強行された、社会保険庁の廃止・解体の合理性は乏しい。
 社会保険庁の廃止・解体にともなって、可能な限り分限免職を回避するという従前の方針にあえて反して、政府・厚労省が前例のない525人もの大量の分限免職処分を強行した最大の理由は、政府が公的年金に対する国民の不信の原因を社会保険庁で働く労働者の問題であるかのようにすりかえて責任を転嫁したことにある。
 これらのことは、2013年11月13日付朝日新聞の社説で、責任転嫁を「政治のパワハラ」と断じて、「背後に……加熱したメディアの報道ぶりもあった」と反省の見解を述べたことや、人事院が分限免職処分された職員のうち71人が行った不服申し立てに対して、25人の処分を取消す判定を行い、解雇の非合理性を認定したことからも明らかである。

 今回の判決は、こうした私たちの主張を一顧だにせず、政府の主張に従った不当なものであり、厳重に抗議する。また、この間ご支援・ご協力いただいた多くの労働者・国民に心から感謝を申し上げる。
 不当解雇撤回を求める裁判は、現在、北海道、秋田、東京、愛知、愛媛の事案で一審段階でのたたかいを展開している。
 さらに2013年11月、国公労連・全厚生が、ILO(国際労働機構)の結社の自由委員会に「政府の不当解雇は団結権の侵害によるもの」との申し立てを行った事案が、正式に受理され、本年6月にも国際機関の判断が行われる。

 国公労連は、今回の不当判決に屈することなく、控訴して逆転判決をめざす。また、全厚生闘争団を全面的に支援して、不当解雇撤回をめざすすべての裁判闘争の完全勝利にむけて全力をあげる決意である。
 国が不当解雇に踏み切った背景には、これまで、日本の労働者の雇用と権利が著しく軽く扱われてきたことがある。
 したがって国公労連は、いま安倍政権が推進している労働者派遣法改悪などの労働法制大改悪を阻止するたたかいに結集して、すべての労働者の雇用の安定と労働条件の確保をめざすたたかいに奮闘する決意を表明する。