憲法を有名無実化する戦争法制の閣議決定に抗議する
――日本を戦争する国に戻してはならない(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2015-05-14
2015年5月14日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌田 一
 
 政府は本日(14日)、昨年7月1日の集団的自衛権行使容認などの閣議決定を具体化する戦争法制の関連法案を閣議決定した。
 戦争法制は、海外で戦争に参加するためなどで法「改正」を要する10法案を一括して束ねた「平和安全法制整備法案」と従前の特措法にかわり自衛隊の海外派遣を恒久化する「国際平和支援法案」(新法)の2法案として、15日にも国会に提出するとしている。
 戦争法制の主な内容は、①自衛隊が集団的自衛権による武力行使を可能とする法制(武力攻撃・存立危機事態法案など)、②戦争中の他国軍の戦闘支援を可能とする法制(重要影響事態法案、国際平和支援法案など)、③「グレーゾーン事態」など警察と外交の領域に自衛隊の出動を可能とする法制(自衛隊法「改正」案)、④「国際連携」を名目とした自衛隊海外派遣を拡大する法制(国連平和維持活動(PKO)協力法「改正」案)など、複雑・多岐にわたっている(詳細は【別記】戦争法制の概要参照)にもかかわらず、安倍政権は、関連する法案をまとめて審議し、早期成立をねらっている。
 
 これらの法制は、日本が直接攻撃されていない事態でも海外で他国の戦争に参加することを可能とする点において、日本国憲法の平和主義原則(※注①)とそのもとでの専守防衛(※注②)の基本姿勢や「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」とした歴代の政府の憲法解釈を大きく逸脱するものである。しかも、海外派兵の判断は、国家安全保障会議(NSC)の首相をはじめとした限られたメンバーで行い、国会の事前承認の例外も多く、歯止めがきかない危険なものである。
 
 この間、戦争法制について安倍首相は、「日米同盟の抑止力を向上させることが、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要だ」などを強調するとともに、集団的自衛権の行使について「憲法9条で許容される『武力の行使』に含まれる」と、きわめて乱暴なこじつけを行い、憲法違反との批判をかわそうとしてきた。
 しかし、憲法の枠内であるとか、専守防衛の範囲内である(12日・中谷防衛大臣国会答弁)などといくら理屈をつけても、法律の名称に「平和」や「安全」を多用しても、戦争法制は、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争和解決する手段として、永久にこれを放棄する」とした憲法9条に明確に違反する立法であり、許されるものではない。
 国公労連は、憲法違反の戦争法制の閣議決定に断固抗議する。
 
 安倍政権はこの間、戦前の軍国主義回帰に狂奔してきた。しかもその手法はきわめて強引である。内閣法制局長官などの要職の人事配置、昨年の解釈改憲と武器輸出三原則撤廃の閣議決定、戦争法制を先取りした日米ガイドライン改定の強行(4月27日)、米議会での戦争法制成立約束、戦争法制の与党内のみでの協議など、国民の理解や国会の議論を経ずに、時の政権の意のままに、国の進路を左右する課題を推進してきたとは、憲法の立憲主義を軽視した蛮行であり、選挙で議席を多数獲得したからといって、何をしても許されるものではない。
 こうした強引な政権運営を許すならば、戦前のように、民主主義が形骸化して、立憲主義は機能せず、政権への批判を許さない雰囲気が増長されかねない。その上この戦争法制の成立を許すこととなれば、日本国憲法は有名無実化し、権力の暴走に拍車をかけ、安倍政権がめざす「改憲」と戦争する国への回帰を許すことになりかねない。
 
 戦争法制は、自衛隊が米軍の戦争に地球規模で協力できる仕組みに変えられた改定日米ガイドラインとともに、米軍との共同行動が従前以上に求められ、拒否できなくなることは火を見るより明らかである。また、それにともない軍備増強が求められ、莫大な戦費調達が必要となることは想像に難くない。
 アメリカは、海兵隊を擁して先制攻撃も辞さない強権的な軍事行動を繰り返してきたため、テロなどの標的となり自国民の生命が脅かされ続けている。他方で日本は、平和憲法のもとで非戦の姿勢を貫いたことが、日本人の評価と安全につながり、それが日本の経済発展の礎ともなってきた。しかし、ひとたび自衛隊が米軍の軍事行動に組み込まれたならば、戦後日本の平和と民主主義の有り様を一変させ、国民の命と安全が危険にさらされることになりかねない。
 いま、国際社会が求め、日本がなすべきことは、第2次世界大戦の反省を踏まえて世界に先駆けて制定した平和憲法を活かし、率先して戦争のない平和な国際社会をめざすことであり、アメリカの戦争に荷担することではないはずである。
 
 国公労連は、憲法で規定された「全体の奉仕者」(第15条第2項)として、また、「憲法尊重擁護の義務」(第99条)を負う公務員労働者として、憲法を踏みにじる戦争法制に反対し、直ちに撤回することを求める。そして、国民の権利を保障し、民主的な行財政・司法の確立をめざす立場から、幅広い団体、国民諸階層と連携して、憲法を守り、改憲を許さず、戦争する国づくりを阻止するたたかいに力を尽くす。
 
※注と別記はPDFファイルを参照ください。



資料:3156 15-05-14 憲法を有名無実化する戦争法制の閣議決定に抗議する(談話).pdf