違憲法案のごり押しは異論を封殺するファッショそのもの
――戦争法制関連法案の衆議院特別委員会での強行採決に抗議する(談話)

【私たちの主張:私たちの主張】2015-07-15
2015年7月15日
日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)
書記長 鎌 田  一

1 安倍政権は本日(7月15日)、衆議院平和安全法制特別委員会において、民主・共産党など野党多数が採決に反対した騒然とするなかで戦争法制関連法案(以下、戦争法案)の採決を強行した。そして今週中にも衆議院本会議で数の力を頼りに可決させ、参議院に送ることをもくろんでいる。
 与党は、昨日の特別委員会理事会で「審議は十分尽くした」「審議時間が百時間を超えた」などと主張し、野党の反対を無視して委員長職権で採決することを強引に決めた。しかし戦争法案は、国会審議でも著名な憲法学者や研究者、歴代の内閣法制局長官や閣僚経験者などが憲法違反と相次いで指摘され、直近の中央公聴会(13日)でも憲法違反と公述人から指摘されるなど、国会審議によって憲法違反の疑念が晴れるどころか、ますます深まるばかりである。
 そのうえ、安倍政権に近い自民党議員からの「マスコミを懲らしめる」という暴言が発覚し、自らの意に沿わない報道機関の存在を許さず、言論・表現への抑圧も辞さないとする傲慢な態度に、安倍政権の本音が透けて見え、国民の批判はさらに高まった。
 そのため、法曹界・学者・研究者・文化人等の著名人が次々と反対の意思を表明するとともに、約300の地方議会が反対・慎重の立場で意見書を衆議院に提出するなど、マスコミの各種世論調査でも戦争法案反対が多数を占めるなど、反対の世論と運動は急速に高まっている。昨日も日比谷野外音楽堂での反対集会と国会請願デモに老若男女問わず2万人を超える市民が集まり国会を包囲するなど、国会周辺や全国各地で連日、戦争法案反対の集会や行動が展開されている。
 しかし、安倍政権は、こうした世論を無視するとともに、国会審議でも反対討論に耳を傾ける真摯な姿勢をまったく示さず、憲法学者等の違憲との指摘を軽視し、納得できる説明ができないままで、ひたすら理解させようと自説を押しつけ、強行採決に踏み切った。この安倍政権のやり方は、徹底した討論と合意形成を図るという民主主義とは相容れない態度であり、異論を封殺するファシズムの手法そのものである。
 したがって国公労連は、こうした政権与党の強権的な国会運営と違憲法案の強行採決に厳重に抗議する。

2 戦争法案の国会提出にあたって安倍政権は、11法案を2つの法案として束ね、特別委員会を設置して、審議を加速して成立をめざしたが、会期内では、それも及ばなかった。国会の会期制と会期不継続の原則(国会法第68条)を踏まえるならば、廃案とすべきが筋である。それにもかかわらず、95日間もの大幅会期延長を強行して、憲法第59条のいわゆる「60日ルール」によって衆議院で再可決して強引に成立させようとしていることは、国会での少数派の対抗手段を封じる禁じ手である。
 また、昨年12月の総選挙で自民党は、戦争法制を争点からそらし、結果、有権者のわずか4分の1の得票で政権を維持したものであり、小選挙区制度の構造的な問題をふまえるならば、政権与党として謙虚であってしかるべきである。さらにいえば、衆・参両院ともに一票の格差の違憲判決を放置したままでの強行採決は、有権者が平等の立場で投票を行うことを前提としている議会制民主主義の本旨にもとる行為である。
 そして安倍首相は、本日の特別委員会の総括質疑に際して、戦争法案について「残念ながら国民の理解が進んでいる状態ではない」と認めながら、強行採決におよんだ。 
 このように、国民が理解しなくても、選挙で勝てば何をしてもいいという独裁者的な態度は、憲法の立憲主義を否定するとともに、法の支配という大原則を根底から崩すものであり、主権者として見過ごしにはできない。

3 国公労連は、戦争法案の国会提出以来、一貫して法案に反対の立場を明らかにして、一致する諸団体との共同行動など、廃案にむけて全力をあげてとりくんできた。
 それは戦争法制に重大な問題があるからにほかならない。その最大の問題は、違憲立法であることである。法案は、地球上いつでもどへこでも自衛隊がアメリカの戦争に参戦する集団的自衛権の行使を可能にする点で、戦争と武力行使の放棄、そして、交戦権を否認した憲法第9条に明確に違反する。また国会審議では、戦争法案に盛り込んだ「後方支援」が国際的にその概念は存在せず、実際は武力行使と一体不可分なものであることが明らかとなった。
 ところが安倍首相は、「憲法で許容された武力行使の範囲内」であるとか、「専守防衛の基本姿勢は変えていない」などと、あくまでも憲法に違反していないと詭弁を弄してきたが、与党が国会に招聘した憲法学者からも憲法違反と言明された。
 また安倍首相は、戦争法案の立法事実については、「国際環境の変化」というあいまいな答弁に終始し、存立危機事態という集団的自衛権行使の要件についても、最終的には「総合的に判断する」といった抽象的な答弁に終始している。そして答弁に窮すると「私は総理大臣だから」と不遜な態度をとってきた。自らを最高責任者と自認するのであれば、意味不明な答弁を繰り返すのではなく、説明責任を果たすべきである。そして、それができなければ廃案とすべきである。
 安倍内閣は、首相をはじめ閣僚全員が、憲法第99条で「憲法尊重擁護の義務」を負っている。それにもかかわらず、違憲立法を強行しようとする安倍政権は、二重の意味で憲法違反であり、このような憲法の規範性を揺るがす蛮行を認めるわけにはいかない。
 
4  安倍首相の強引な手法も看過できない。安倍政権は、「戦争する国づくり」にむけて、内閣人事局長官人事やNHK会長人事などにも影響力を行使するなど、自らの野望を果たさんがために、強引な政治手法を駆使してきた。
 また、財界の求めに何でも応じ、法人税減税や労働法制の大改悪など、国民犠牲も甘受してた。さらに、アメリカの要求に対しても、辺野古新基地建設やオスプレイ配備も受け入れ、こともあろうに戦争法案の国会提出前にアメリカ議会にその成立を約束し、戦争法制を先取りした日米ガイドラインの改定を強行するなど、国会軽視も甚だしい。
 安倍首相は、戦争法案によって「日米同盟が強固となり、抑止力が高まる」という説明を繰り返しているが、日本が、この間戦争に巻き込まれなかったのは、憲法9条を定め、非戦の姿勢を貫き、諸外国に脅威を与えない国として評価されてきたことが、世界各地での日本人の安全につながり、日本の経済発展の支えになってきたことは疑う余地のない事実である。
 したがって、戦争法案の成立は、日本を戦争する国に逆戻りさせるもので、国民全体のリスクが高まることは、この間、軍事力を背景に外交を展開してきた諸外国の例を見れば明らかであり、なんとしても戦争法案の成立を阻止しなければならない。
 
5 私たちは、憲法第15条で「国民全体の奉仕者」という役割を担い、第99条で「憲法尊重・擁護の義務」を負っている公務員労働者として、憲法違反の戦争法案の成立を許すわけにはいかない。
 そのため、国公労連は、引き続き戦争法案の廃案をめざして、反対の世論と運動をさらに広げるために全力をあげる。
 全国の仲間のみなさん。
 このたたかいは、9月の会期末まで続くが、戦争法案の危険なねらいと今の事態を友人・知人など多くの国民に伝えるとともに、戦争法案の廃案を求めて全国各地で展開される集会・行動などに積極的に結集することをよびかける。
 そして、国民的な運動の発展で戦争法案の廃案を勝ちとろうではありませんか。


以 上



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