社保庁不当解雇撤回・京都事案の第二審はじまる

【とりくみ:社保庁 分限免職】2015-12-04
不当解雇された原告みずから裁判長に訴える
~ 逆転判決を勝ち取る新たなたたかいはじまる ~

 社保庁職員の不 当解雇撤回を求める京都事案の裁判は、12月1日に大阪高等裁判所での控訴審がはじまりました。第1回口頭弁論では、原告団が答弁書と準備書面を提出し、 原告2人から意見陳述がおこなわれ、理由もなく解雇した政府・厚労省へのやり場のない怒りをのべ、裁判長に十分な審理を訴えました。
 裁判には多くの 支援者が駆けつけ、解雇を正当化した第一審での不当判決を逆転して、全員の解雇撤回を勝ち取る決意をあらためて固め合いました。
 
解雇回避の努力をおこたった政府・厚労省の責任追及を
 
大阪高裁 口頭弁論に先立って、大阪高裁門前での宣伝行動にとりくみ、大阪国公やJAL争議団などをふく めて約30人が3か所に分かれて、社保庁職員の解雇を撤回してもとの職場にもどすようにビラを手渡しながら訴えました。
 
 集まった支援者で約40の傍聴席が満席となるなか、14時から開廷した裁判で原告団から控訴理 由がのべられました。

 訴訟代理人の村 山弁護士は、「まじめに仕事してきた職員が、ある日突然解雇された。雇用が一方的に奪われないのは、労働者として当たり前の権利だ。にもかかわらず、社会 保険庁廃止にともなって一方的に解雇された。司法として、権力の横暴をチェックすべきなのに、大阪地裁判決は論理をすり替えたうえ、政府の責任を不問にし た。また。過去に懲戒処分がある職員を問答無用ですべて切り捨てるのは、民主主義とはあいいれない。問題点はたくさんあり、地裁段階で議論し尽くせていな い点は十分な審理が求められている。公正な判決を下すため、慎重な審理を要請する」と裁判長に求めました。
 
 同じく原告側代理人の渡辺弁護士は、「解雇の根底には、社会保険庁職員は悪だという決めつけが 根底にある。解雇は、法律上はまったく根拠がない。政府・厚労省が解雇回避の努力をすれば、原告らは救済されたはずだ」とのべ、使用者として解雇回避の義 務をおこたった厚労省の責任を強調しました。

「国民のためにな れれば」と働いてきたのに突然クビを切られた

 その後、原告2 人が代表して意見をのべました。京都社会保険事務局で働いていて解雇された鴨川さんは、「クビになるとは夢にも思わなかった。突然、寒空に放り出された悔 しい気持ちが忘れられない」とのべ、解雇されてからは理髪店で働く妻や義母に支えられて暮らしてきたが、心労がたたって妻も義母も病気になり、苦労しなが ら生活している今の状況を切々と語りました。そのうえで、「人生設計を狂わされ、『国に裏切られた』と訴える妻には謝ることしかできない。年金業務から排 除される理由は何もない。いかに解雇が乱暴だったか、十分な審理を通して明らかにしてほしい。その上で、処分の取り消しを求める」と強く訴えました。

 同じく、京都社会保険事務局を解雇された寺坂さんは、「少しでも国民のためになれればと、一生 懸命働いてきた。休日出勤もして、人一倍、社会保険行政に貢献してきた。なのに、解雇回避の努力もせずに、クビを切られた厚労省に怒りを感じる。今は市役 所の非常勤職員として働いているが、収入が半減するなか、日々不安をかかえて仕事をしている。解雇取り消しにむけ、裁判所は公正で公平な判断をしていただ きたい」と求めました。

 原告側からの意 見を聞いたあと、裁判長は被告の国側からの意見を求めましたが、とくに発言はなく、今後の日程について協議したうえ、次回の弁論を来年の2月24日14時 から開くことを確認して閉廷しました。
 原告側では、今後、2人の学者から意見書の提出を準備しています。また、11月に出された ILO勧告をふまえた意見書を、来年1月中には裁判所に提出する予定です。

ILO勧告と世論 を力に何としても裁判勝利を

報告集会 裁判終了後には 近くにある大阪弁護士会館にて、報告集会を開きました。弁護団からは、第1回口頭弁論で結審もねらわれたが、次回以降の弁論日程も確認されたことで当初の 目標は達成したことや、地裁判決の誤りを一つ一つ崩していくことなど大阪高裁での裁判の焦点が報告されました。各弁護士からは、「客観的に反論していくた めに、過去の膨大な新聞記事を時間をかけてすべて調べ上げ、裁判所に資料として提出した。政権維持のための公務員たたきで、『社保庁職員=悪者』というつ くり出された印象を、裁判を通して変えていきたい」「高裁が逆転無罪の判決を出した例は多い。裁判に勝利して夢を実現しよう」などの決意ものべられまし た。

 国公労連本部、全厚生本部、京都総評をはじめ支援にかけつけたJAL争議団などから、激励・連 帯の言葉がおくられ、これに応えて原告の一人一人から、何としても勝利判決を勝ち取る熱い決意が思い思いにのべられました。
 11月に国公労 連がジュネーブに派遣したILO要請団に、京都から参加した原告の川口さんからは、その際のILO結社の自由部とのやりとりも紹介され、ILOも政府によ る解雇を問題視し、裁判に注目していることが報告されました。
 
 報告集会では、 大阪高裁あての署名運動を引き続き強化し、大きな世論で裁判所を包囲していくことを確認し、最後に、参加した闘争団全員で決意をこめて自作曲「はな」を合 唱し、決意あらたに報告集会を締めくくりました。
 
大阪高裁あて署名 のとりくみを強化しよう
 
 京都事案の第2 審がはじまり、来年にむけて審理はいよいよ本格化します。とりくみ中の大阪高裁あての署名は、現在、約18,000筆の提出にとどまっており、世論で裁判 所を抱囲していくために、署名を多くの人たちから集めていく必要があります。
 国家公務員に対する一方的な解雇の不当性を、職場・地域に一回り大きく伝え、署名への協力を求 めるよう呼びかけます。

12.3争議総行 動、京都の原告が訴え

 12月3日東京 都内で全労連・東京地評の「12.3争議総行動」が行われ、京都の原告3人、東京原告1人、中部闘争団1名が参加、終日奮闘しました。

 厚労省前での社保庁不当解雇撤回抗議行動は、全労連の井上事務局長が主催者を代表してあいさつ し、民間の争議団の仲間などから激励・連帯のあいさつがおくられました。これをうけて、京都原告の永田さんが決意表明し、「分限免職されて6年になる。年 金記録問題を職員に押しつけて首を切られた。現場の職員は一生懸命に働いてきたのに許されない。現在は、非正規の仕事を転々とし大変苦労しており、家族に も迷惑を掛けている。厚労省はただちに分限免職を取り消す判断をして欲しい」と力強く訴えました。
 最後に京都原告の鴨川さんのリードで、厚労省にむけて怒りのシュプレヒコールをくり返しまし た。争議総行動は、引き続き各所でとりくまれ、JALを解雇された仲間の復職を求めてJAL本社前の行動で締めくくりました。