「2015年中央労働学校」を開く

【とりくみ:憲法・平和問題】2015-12-08

戦争法廃止へたたかいの方向、国公労働運動の歴史を学ぶ

~ 16春闘での実践にむけて「2015年中央労働学校」を開く ~


 国公労連は12 月8日、全労連会館ホールにおいて「2015年中央労働学校」を開催し、単組本部、在京・近県組織などから85人が参加しました。
  5年ぶりとなる中央労働学校は、国公労連が1年間のたたかいとして「まもろう憲法・国公大運動」にとりくんでいるもと、戦争法廃止のたたかいをはじめ憲法 をとりまく情勢について理解を深め、結成から40周年をむかえた国公労連の運動の歴史を学ぶことを目的に開かれたものです。
 講 師として、一橋大学名誉教授の渡辺治氏、元全労連議長で国公労連の書記長をつとめてきた熊谷金道氏を招きました。


第 1講義・渡辺講演

労働組合には戦争法廃止の運動の中心に立つ責務がある


渡辺教授 第1講義では、一橋大学名誉教授の渡辺治氏から、「安倍政権の戦争法強行と対抗する運動の課題」と題して講演を受けました。
 渡辺氏 は、戦争法を中心にして、安倍内閣はなぜ戦争法案に固執したか、戦争法反対のたたかいは安倍政権をどう追いつめたか、安倍政権を倒し戦争法廃止の政府をめ ざす展望はどこにあるのかなどを、約2時間の講義を通してわかりやすく解き明かしました。
 憲法9条に違反 する戦争法の制定は、 安倍首相の個人的な考えにもとづくものなどではなく、憲法9条によって、戦後の政権がどうしても突破できなかった自衛隊の海外派兵という壁をすることが目 的だったことが、戦後の米ソの冷戦構造や歴史的なたたかいとなった「60年安保闘争」などをふりかえりつつ、明らかにされました。

  とりわけ、湾岸戦争でアメリカが「日本も血を流せ」とせまり、そのとき、憲法9条があったことでアメリカの要求に応えられなかったことが自民党の「教訓」 となり、その結果として、戦争法が強行されたことが示されました。その点から、渡辺氏は、安倍内閣を退陣に追い込むだけでなく、自民党政治を根本から変え る新しい内閣をつくり、戦争法を廃止する政府を国民の手で作り上げることこそ重要であると強調しました。

  講義では、若者をはじめ多くの国民がなぜ戦争法案反対のたたかいに立ち上がったのかを、6月はじめの国会憲法審査会で、自民党推薦をふくめて3人の憲法学 者がそろって戦争法案反対の意見をのべたことが、運動の急速なひろがりにつながったこと、運動の力が「8月上旬成立」とする安倍内閣のシナリオを崩させた ことなどが示されました。
 全労連も参加する「総がかり行動実行委員会」による共同の実現が大きな役割を果たし、今まで実 現しな かった民主党と共産党の国会での共闘、2つに分かれていた「5・3憲法集会」の共同開催などを実現するなか、渡辺氏は、戦争法案反対のたたかいは、学者、 SEALDsなど若者、女性の参加などで「60年安保闘争」を上回るたたかいに発展してきたことを強調しました。

  最後に、今後のたたかいの方向として、「戦争法廃止2,000万署名」を武器にもっと幅広い層の結集をめざすこと、地域から戦争法反対の恒常的組織を確立 すること、安倍政権のねらう社会保障改悪など新自由主義改革に反対するたたかいを、「戦争する国」づくり反対のたたかいと両翼でとりくむこと、9条をいか してアジアと日本の平和を実現して安保のない日本をめざすことがのべられ、渡辺氏は、「その運動の中心に労働組合が立つべきであり、その責務をみなさんが 持っていると」と力を込めてのべ、講演を締めくくりました。

第2講義・熊谷講演

民主的 な行財政・司法の確立へ組織の拡大・強化は重要課題


熊谷氏 第2講義では、元全労連議長であり、82年から86年まで国公労連書記長として、運動の前進に 力を注いできた熊谷金道氏から「国公労働運動の歴史から何を学ぶか」と題して、約1時間半にわたって講演を受けました。

 熊谷氏は、戦後まもなく公務員にも労働基本権が全面的に保障され、労働運動の先頭に立って奮闘 してきた官公労をアメリカ占領軍が敵視し、占領政策を転換させたことが労働基本権剥奪につながっていった歴史が語られました。
 さらに、戦後の 新しい憲法のもとで「全体の奉仕者」となった国公労働者は、国家行政の執行という特殊な業務をおこなっていること、国家行政機関は、法律や予算にもとづき 政治を具体化する執行機関であり、国家公務員の仕事はその担い手となること、そして、これらがよって立つ基盤は憲法に置かれなければならないことを指摘し ました。

 結成当初から、 「二つの責任と一つの任務」を運動の基調として追求してきた国公労連の歴史を振り返りつつ、熊谷氏は、国公労働者とその家族の生活向上と国民本位の行財 政・司法の確立の課題を一体にして、暮らしや雇用、いのちが大切にされる平和で民主的な社会をめざして、広範な諸階層とともに政治革新をめざす任務を国公 労働者が持っているとのべました。そして、「まもろう憲法・国公大運動」は、その具体的実践であり、すべての国公労働者と労働組合の参加が求められている ことを強調しました。

 これからの国公 労働運動に求められていることについて、熊谷氏はあくまで「私的意見」と断りつつ、公務職場にひろがる非正規労働者の要求把握と組織化の追求をはじめ、定 員削減を上回って組合員が減少しているもとで、組織拡大・強化を最大の課題とのべました。最後に、「仲間たちを信頼して、仲間たちに依拠して、大いに力を 合わせてたたかう国公労働運動を前進させてほしい」と期待の言葉をおくり講演を閉じました。

「運動の成果に展望が見えた」との感想が寄せられる

労働学校 参加者からの感想文では、渡辺氏の講演には、「アメリカのねらっていたことと安倍政権とのかか わりが、すっきり理解できた」「今まで成しえなかった共同が実現に向けて動いている。青年や女性が立ち上がったという、この間の成果に展望が見えました。 何としても運動をひろげたい」「野党共闘などこれまでにない変化が起きていることをうれしく思うと同時に、アメリカのこれからの攻撃の予想など興味深く聞 いた」などの声が寄せられ、熊谷氏の講演には「何より民間労組との連帯を強めることがあらためて重要だと感じた」「国公労働運動の歴史をあらためて学ぶこ とができた。認識を新たにできて良かった」など、いずれも積極的な感想が集まり、「まもろう憲法・国公大運動」にむけた決意を固め合う場となりました。