政府は2009年4月から「秘密取扱者適格性確認制度」として、本人の同意を得ずに公務員の身辺調査を実施している。2007年8月に策定された「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」を根拠とし、各行政機関において任用上の権限で行われているものだ。日本共産党の塩川鉄也衆議院議員が7月25日、内閣委員会で行った質疑では、対象となる「特別管理秘密」は49件と答弁されるも、その具体は身辺調査の項目とともに秘匿されている。7月26日、消費者庁での調査項目が東京新聞などにより報道されたが、「人事記録、勤務評定記録書その他」とあいまいだ。
法的根拠を持たず本人同意も得ない身辺調査は、任用権限といえども基本的人権の侵害にあたる疑いが強く、思想信条や労働組合活動が調査対象とされれば、違法・不当な差別・選別につながりかねない。そのことは「もの言わぬ公務員づくり」を加速させ、中立・公正であるべき行財政・司法を歪めることにもつながる。国政を国民的要求からますます遠のけるものであり、断じて許されない。「秘密取扱者適格性確認制度」の即刻廃止を強く求めるものである。
一方で政府は、「秘密保全法」策定の準備をすすめている。2011年1月に「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」を設置し、同年10月には今通常国会への法案提出を決定した。法案化にあたって「十分に尊重」するとされている有識者会議の報告は、さまざまな問題を有している。最大の問題は、「特別秘密」として「国の安全」や「外交」とともに、「公共の安全及び秩序の維持」を位置づけている範囲の広さだ。これでは、再稼働反対や廃止を求める国民世論が圧倒的な原発をはじめ、衛生や食糧、交通や公共施設、災害や事故など国民生活に直結するさまざまな情報が隠ぺい秘匿されてしまう。
また「特別秘密」を守るため、「適正評価制度」を国家公務員のみならず、委託業務に従事する研究者や技術者、労働者にまで適用するとしている。「特別秘密」の具体を秘密にしたまま、その取扱者や情報を知らされた者にまで保持義務を負わせ、情報漏洩は故意・過失を問わず厳重に処罰するとしている。情報の取得は未遂も含めて同様に厳罰を課すとしており、取材や報道、表現の自由が侵されるばかりか、えん罪など弾圧に使われる危険性がある。
こうした動きの背景には、「社会保障・税一体改革」や「地域主権改革」など「構造改革」路線の推進とあわせ、政府の責任と役割を安全保障や治安維持などに限定し、国民の基本的人権を自己責任化する、政府・財界の「夜警国家化」のねらいがあることを指摘しなければならない。
国公労連は、憲法をくらしと行政に生かし、民主的な行財政・司法を実現するため、広範な労働組合や民主団体、国民のみなさんと共同し奮闘するものである。
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