大阪高裁が請求棄却の不当判決

【とりくみ:社保庁 分限免職】2016-11-22
 11月16日、大阪高裁(森義之裁判長)でたたかわれていた社保庁不当解雇撤回闘争京都事案の控訴審判決が言い渡され、請求棄却の不当な判決をだしました。争点となっていた分限免職回避義務の主体を間接的ながら「政府全体が努力すべき」と政府全体にもあるとしたものの、「不履行について立証責任を負うのは原告である」とし、本来被告側(国)に立証責任があるとする行政法をもねじ曲げる判決でした。

判決前に原告、支援や約30人で宣伝行動実施
 判決に先立ち、大阪高裁周辺で原告や全国から駆け付けた全厚生闘争団、支援者など約30名の仲間がチラシ配布やマイクでの街頭宣伝を行いました。チラシを受けとった市民から「がんばれ!」と声をかけられる場面もありました。



主文のみ読み上げさっさと退席
 大阪高等裁判所73号法廷において、午後1時10分から控訴審判決が言い渡され、森義之裁判長が「主文、本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。事実及び理由については判決文に書いてあります。以上、終わります。」とだけ早口に言い渡しすぐに退廷しました。

道理のない判決に怒り
 判決後に近くの会議室で報告集会が開かれ、80人以上が参加し会場に入りきれないほどの支援者のみなさんが駆け付けました。開会あいさつを京都支援共闘会議代表世話人で京都総評の梶川議長(写真左)が「悔しいという言葉では言い表せない。政府の誤った判断に追従している司法を許すわけにいかない。行政がその組織をなくすということがあったときに、そこにいた人をみんなクビにすることが許されるのであれば解雇の山になってしまう。こんな前例をつくらせるわけにはいかない。支援の輪をもっと広めて最後までたたかう」と、開会のあいさつ不当判決に屈せずにたたかう決意を述べました。
 全国でたたかう全厚生闘争団からもあいさつがあり、愛媛原告の児島さんは「3月30日に言い渡された高松地裁の不当判決を改めて思い出して怒りがこみ上げてきている。裁判の中で自分も成長できたという思いはあるが、長い年月が経ってしまった。労働者が安心して働き、安心して老後を迎えられる世の中にするために今後も奮闘したい」、広島原告の平本さんは「厚労省への転任を希望していたが、最終的に分限免職となった。この一連の経過で精神不安定になった妻が自殺し、国に損害賠償を求める訴訟を提起した。そのときにお世話になった弁護士さんとのご縁もあり全厚生に加入した。全厚生には大きな支援を頂き感謝している。今後もがんばっていきたい」、東京原告の松本さんは「裁判の結果がどうであろうと、僕たちががんばってきたという事実は変わらないし、社保庁闘争は続く。今後もご支援をよろしくお願いしたい」と各地の原告から決意が述べられました。また、秋田闘争団の小林さん、中部闘争団の磯貝さんからも各地の裁判状況と決意が述べられました。連帯のあいさつとして、JAL闘争団の小森さんと西岡さん、明治乳業争議団の加藤さん、JMITUの細見さんからそれぞれ連帯のあいさつをいただきました。


上告審で必ず逆転勝訴を勝ちとる
 判決の内容を京都弁護団事務局長の渡辺弁護士(写真左)が、「総論的には、地裁判決より前進した判決となった。分限免職回避努力義務を負う主体について、社保庁長官と厚生労働大臣だけでなく、政府についても間接的ではあるが回避努力義務を負う、という認定をした。このように、義務を負う主体の範囲が地裁よりも明確に広がっている」としたうえで、敗訴に至った理由として2点挙げられるとし、「① 回避義務を負う時間軸を狭くしている。我々は、どんなに遅くても、機構法が成立した平成19年7月以降は義務を負うと主張してきた。判決は、基本計画が閣議決定された平成20年7月29日までは具体的に動きようがないので、回避義務を負うのはこの日以降である、と判断した。しかし、この日以降はすでに平成21年度新規採用の内定を出した後であり、事実上回避努力として出来ることは少ない。また、② 判決は、回避努力義務の不履行について立証責任を負うのは原告である、とした。行政法学的には、行政処分の適法性の証明責任は国にあるとされている。理解不能な判決で、十分な上告理由になるもの」と報告し、上告審で逆転したいとの意気込みを語りました。
 続いて、村山弁護団長は、「本当にひどい判決。判決文を読んで怒りしかない」と述べたうえ、判決文の中からいくつかの箇所を引用しつつ、「このように理由がまったく書かれていてない。結論しか書いていない。矛盾だらけで結論ありきの判決だ」と説明したうえ、「最高裁判所の大法廷で15人の最高裁裁判官に、こんな判決はおかしい!と言わせたい。それを聞くまで弁護士をやめない」と会場の笑いも誘いながら、今後も勝利判決にむけて奮闘する決意が述べられました。
 その後、全国の弁護団から報告がなされ、東京弁護団の中川弁護士が「東京事案は、12月1日の期日で国公労連の盛永顧問が証人尋問を受ける。公務員の人事行政を知らない裁判所に対して、判断が間違っているということを訴えることになる」と報告し、「(京都事案が)最高裁に来るということなので、東京の仲間にも声をかけ、京都の勝利に向けてともにがんばっていきたい」と述べました。また、北海道弁護団の神保弁護士からは、「学説も、判例も、論理も無視したひどい判決。こんなひどい判決はみたことがない」と、原告に立証責任を負わせた今回の大阪高裁判決の不当さを述べたうえ「北海道事案は大詰めを迎えており、今月24日に結審、年明けに判決という流れ。なんとしても勝利して京都でのたたかいの後押しをしたい。一緒にがんばりましょう」と会場を盛り上げました。


原告それぞれが上告を決意
 原告それぞれが次のように発言しました。寺坂さん「ひょっとしてとの期待もあったが、不当判決でくやしい。勝つまで最後までたたかっていく」草川さん「判決は本当にあっさりとしたもので、裁判官もそそくさと帰ってしまった。理由がしっかり書かれた判決なら諦めもつくが、なんの理由もない判決は絶対に許せない。みなさんのお力をお借りしながら最後までがんばりたい」鴨川さん「期待と不安をもって今日を迎えたが、判決は不当なものでショックだ。みなさんのご発言を聞き、怒りとともにまたがんばろうと思えてきた」永田さん「不当解雇から7年になる。今回は負けたが、最高裁で勝てばいいんだという前向きな気持ちになれている。落ち込まずにがんばっていく」川口さん「裁判官が最後にひとこと『理由は書いてあります』と言って逃げるように去って行った。裁判官も人間なんだなと思った。引き続きご支援を」などと日頃の争議支援への感謝と、本日の不当判決への怒り、引き続きたたかう決意を述べました。
不当判決後にも関わらず、元気あふれる原告のあいさつで会場は笑いに包まれ、いかにも関西らしい報告集会になりました。司会をしていた全厚生の藤江中央執行委員が「負けた原告のあいさつが明るくてよかった。変な原告団ですねぇ」と会場に振ると、どっと沸くシーンも見られました。
最後は、全厚生の山本委員長が閉会のあいさつを行い、「裁判所がきちんとした判断から逃げたというのがこの結果となった。今後は、裁判所を逃がさないたたかいを広げていきたい。突き上げた拳を絶対に開かず、勝利まで握り続ける決意だ」と力強く締めくくりました。
 
以上